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Actionable Ikigai: Career Planning in the age of AI(全4記事)

なぜキャリアは思いどおりに進まないのか 履歴書からは見えない迷いと選択 [2/2]

好きではない仕事と好きになれた仕事の間で揺れた

ベクテル:パンフレットを見て、「で、キャリアのアドバイスはいつ始まるの?」と思っていた人もいるかもしれませんが、まさにここが大事です。

多くのキャリアアドバイスがいまいちなのは、人が自分の過去を振り返り、相関と因果がごちゃまぜになったもっともらしい話を、あたかも指針のように語ってしまうからです。本当は、それを分解して、実際に何が起きていたのかを見なければいけない。

私が“企業の医者”として働き始めた頃は、あのいかついスーツを着ていたのですが、正直かなりつらかったです。仕事を始める前日の夜、彼女の家から自分の家に帰る車の中で、翌日からあの格好で働くのか、と思って文字どおり泣いていたのを覚えています。

その時のことを日記にも書きました。実際、その日記も見つかったんです。

「自分は、誰か他人の風に吹かれている一枚の葉っぱみたいだ」「自分を自分たらしめている虹色のいろんな要素が、これから“プロセスアナリスト”という単色の痛みに押し込められてしまう気がする」。あれは本当に苦しかった。

ただ、率直に言えば、生活費は払えました。請求書も払えた。だから1年間、必要なことをやりました。働かなければならなかったし、お金も必要だったし、大人にもならなければいけなかったからです。

でも、好きにはなれなかった。そこで転職活動をしていたら、アクセンチュアの中に別の部署を見つけました。それがアクセンチュア・テクノロジー・ラボです。そこにいる人たちは、どう見ても一番楽しそうだった。

1999年ですよ。見たところ、この人なんて、Apple Vision Proの原型のようなものを作っていたんです。私は「あの部署で働けたらいいのに」と思いました。だって廊下にはラバランプ(電球の熱でボトル内のワックスを温め、溶岩(Lava)のように幻想的に動く様子を鑑賞する1960年代に生まれたインテリア照明)があって、アートもすごくかっこよかったから。



その人たちと話している中で、「ここで働くことはできる。社内異動もできる。でも、普通のキャリアの軌道とは少し違う。利益より情熱を選ぶことになる」と言われました。当時の私は、1年間“利益はあるが情熱がない”状態だったので、「ぜひお願いします」と言いました。写真からもわかるとおり、かなりうれしかった。

でも同時に、私は“中が空洞のチョコレートのうさぎ”みたいな状態でもありました。つまり、見た目はそれっぽくても中身が伴っていなかった。ローマ・カトリック、特にアイルランド系カトリックの文化では、イースターのうさぎ型チョコをかじると中が空気だけ、なんてことがありますよね。まさにあんな感じでした。

その場にいる資格を、まだ自分は持っていなかった。技術も、腕前も足りなかった。上司が、「これでJavaを覚えて、このチームで通用する人間になれ」と私の机に本を置いたのを覚えています。その本のタイトルは『21日で学ぶJava』。そして上司はこう言いました。「君にあるのは10日だ」。

10日で本当に身についたかはわかりません。でも、覚えました。そしてうまくなった。いや、十分にうまくなったんです。魔法みたいな話ではありません。10年にわたるすばらしい思い出と、努力と、血と汗と涙、その全部があった。


必要とされる場所を選びながら何度も進路を変えた

ベクテル:そして、お金もついてきた。実際、12年ほど経った頃には昇給も昇進もしました。彼らは「おめでとう。今度からはオタクたち全員の責任者だ」と言いました。私は「それはすごくかっこいい」と思いました。



みなさん、ピーターの法則って聞いたことがありますか? それを祝っているわけですよ。すごいでしょう。ピーターの法則とは、「人は、得意な仕事で評価されて昇進を重ねた結果、やがて自分の能力を超えたポジションに就き、そこで成果を出せなくなる」という考え方です。

私はまさにそんな感じでした。「お金は稼げている。でも楽しくないし、こういう予算管理が自分に向いているとも思えない」。

そんな時、プロボノで支援していた全国規模の非営利団体から声がかかりました。「以前、うちのためにテクノロジー戦略を作ってくれたでしょう。あれが、とてもよかった」と言うんです。

私が「ありがとう」と答えると、彼らは「その戦略の10項目のうち、7番目を覚えている?」と聞いてきました。私が「いや、覚えていない」と答えると、「7番目は“最高技術責任者を採用すること”だった」と言ったんです。

一方では今の仕事に違和感があり、もう一方では必要とされている。そこで私は、「それならぜひ」と答えました。

そして、これはかなりよかった。初出勤の日、上司の夫の隣に座ったんですが、その人は後にイリノイ州知事になる人物でした。もう一人、どこかのホテルチェーンに関わっていた人もいて、その10年後にはその人が次のイリノイ州知事になった。

私は「自分はすごい場所に来た」と感じました。「世の中のためになることをして、しかもちゃんと成功もできる。これ以上ない仕事だ」と思ったんです。



でも、その翌日から1年半のあいだ、私がやっていたことは、ずっとレガシーな技術の面倒を見ることでした。自分が心からワクワクするような仕事ではなかった。私は、都市部の学校でリスクを抱える若者たちと関わる仕事がしたかった。そういう仕事だと思っていたんです。でも実際は、Windows NTからサーバーを移行するような作業だった。これはかなりきつかった。



そこでまた「よし、あの“いい感じのバランス”に戻ろう」と思いました。その慈善団体には理事が2人いて、彼らがこんな話を持ってきたんです。「ベンチャーキャピタル会社を作ろうとしている。でも、うさんくさい話やでたらめを見抜いてくれる人が必要なんだ。君にそれをやってもらえないか?」

みなさん、『ゴーストバスターズ』は見ましたか? レイが言っていましたよね。「もし誰かに“君は神か?”と聞かれたら、“はい”と言え」と。だから私は、「もちろんです。それ、やれます」と答えました。「やってみたいです。金融のことは何も知らないし、ベンチャーキャピタルのこともまったく知りませんが、ベンチャーキャピタル会社を運営してみせます」と。

数年のあいだは、また3つのシリンダーでしっかり走れている感覚がありました。でもそのうち、テクノロジーの仕組みがわかることと、事業の成長戦略がわかることは別物だと気づいたんです。

そこから、だんだんその仕事への愛も冷めていってしまいました。そして次第に、そのビジネス自体も健全な経済合理性から離れていきました。気づけば私は4戦0勝。そこで一気に現実が迫ってきました。

「もう全部わかった」と思っていたあとで、週500ドルの給付を受け取る立場になるのは、現実を突きつけられるような体験です。でも、それは大事なリセットでもありました。そのおかげで、自分が本当に好きなものに改めて向き合えたからです。お金にならなくても、私は客員教授をしていました。教えることは、ずっと続けていたんです。



そんな時、共通の友人であり同僚でもあった人を通じて、ボランティアのゲスト講義から一歩進んで、大学で非常勤講師として教える機会が見つかりました。少しだけ報酬も出る。そこからデロイトとのつながりも生まれたんです。

そこであるシニアリーダーが言いました。「大手の医療保険クライアントを担当しているんだが、私の右腕として一緒に来ないか」。私は「いや、それは自分の仕事じゃないですよ。私はテクノロジーの“新しいもの”や“次に来るもの”を扱う人間です」と答えました。すると彼は、こう切り返したんです。「要するに、もっと給料の低い仕事がしたいってことかな?」



そして彼は、新興技術のチームを紹介してくれました。彼らは、「私たちは“ホライズン3”と呼ばれる、より先の未来を見据えた技術の探索やスキャンをしている」と言いました。

私は「何のことかさっぱりわからないけれど、それなら“チーフ・フューチャリスト”という肩書きにしよう」と言いました。彼らは「君はおかしい」と言いました。でもその肩書きは世の中にも受け入れられ、私自身もしっくりきたし、まわりにも好評でした。

本当にすばらしい仕事でした。教える仕事で自分の“目的”は満たされ、デロイトではそれ以外の3つの要素も満たされていた。あれは、それまでの人生で最高の仕事だったし、これから先もそうかもしれません。

病気を機に自分らしい働き方へ舵を切った

ベクテル:でもその頃、多発性硬化症と診断されました。そして、自分がどれだけ満たされていたとしても、デロイトで2年連続“もっとも頻繁に世界を飛び回る人”として、年間133本の基調講演をこなすような生活は、MS(多発性硬化症)による疲労には耐えられなかったんです。



私は45分くらいなら、こうしてみなさんの前で強く輝けます。でも、それを朝から晩まで、年中無休で続けることはできません。その現実を受け止めた時に、「自分は本当は何をしたいんだろう」と考えました。私が本当に好きなのは、みなさんとこうして一緒にいて、短い時間でも強く輝くことなんだ、と。

そして2年前、この会場で、今のエージェントたちに出会いました。彼らは「今あなたがやっていることを、もっと自分らしく、しかも量は減らして、それでも同じかそれ以上の暮らしができるかもしれませんよ」と言いました。

さらに1年前、この場で出版社とも出会いました。そしてうれしいご報告ですが、最近、ペンギン・ランダムハウス(編注:2013年に誕生した世界最大級の英文書出版社)と大きな出版契約を結びました。近いうちに大きな本が出ます。興味があればリンクをお渡しします。本当に楽しみです。SXSWに感謝しています。

……というわけで、ここまでが本日の“褒めてほしいアピール”パートでした。

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