【3行要約】
・商社は新卒・キャリア採用ランキングで常に上位の人気業界ですが、求められる人材像が大きく変化しています。
・伊藤忠商事で22年間人事を担当した佐野智弘氏は「トレーディングから事業投資へのシフトで多様性が重要になった」と指摘。
・就活生は「プロ就活生」にならず、自分らしさを大切にし、素の自分を表現することが商社就活成功の鍵だと語ります。
伊藤忠商事・人事22年の著者が教える「商社で活躍できる人」
入江美寿々氏(以下、入江):今回のゲストは、業界ビジネスシリーズから
『商社ビジネス 就活生から業界関係者まで楽しく読める商社の教養』の著者、佐野智弘さんです。よろしくお願いします。
佐野智弘氏(以下、佐野):よろしくお願いします。
入江:今回は商社ビジネス。商社は本当に大人気の業界ですよね。
佐野:そうなんですよね。特に新卒の(就職人気)ランキングでは上位を占めていますし、最近はキャリア採用でも、50人、60人を採るようになってきて、そこでもだいぶ人気があるようですね。
入江:恐らく志望している方が多くいらっしゃるんじゃないかと。佐野さんのプロフィールをご紹介しますと、株式会社ザ・ビヨンドで代表を務めていらっしゃって、こちらは商社就活をする方の支援、勉強塾みたいなかたちですか?
佐野:そうですね。私は1997年に伊藤忠商事に入社をして、幸か不幸か、良くも悪くもずっと人事だったんです。
入江:すごい。22年間。
佐野:新卒採用は入社してから3年間ですので、卒業年度で言うと1998年卒から2000年卒まで3年間やりました。それ以外も、毎年面接の時期になると面接官として駆り出されて、最終面接とか、役員の方と一緒に面接する機会が非常に多かったんです。
あとは人材育成ですね。入社した社員をどうやって活躍してもらうかという視点での仕事が多かったので、22年経った時に思い切って独立しました。特に商社を目指す就活生ですので、大学3年生とか大学院の1年生を対象に、商社塾みたいなものをやっています。
入江:どのぐらいの方が通っているというか、登録されているんですか?
佐野:現在は130人ぐらいです。大学3年の年の6月から大学4年の5月までが1つの年度になるんですけど、最初は30~40人ぐらいからスタートして、秋ぐらいに100人超えになって、ちょうど今がいちばん多い時期でしょうかね。だいたい150人で、そこを上限にどんどん少なくなっていくような感じですね。
入江:今まで何人ぐらいの方が商社に実際に内定して、今活躍されているんですか?
佐野:今期が7期目ですので、今まで6期の合計で言いますと300~400人ぐらいです。1年間で平均すると40~50人ぐらいが7大商社に受かりますので、けっこうなものなんですよ(笑)。
入江:すごい確率ですよね。倍率も高いでしょうし。
佐野:そうですね。
商社のビジネスモデル
入江:そんな佐野さんに、最初は商社ビジネスの概要をたくさん教えていただこうと思っていたんですが、せっかくなので、志望者の方必見ということで、「商社で活躍できる人材はどんな人たちなのか?」というテーマで、お話をおうかがいしたいなと思っています。
とはいえ、商社ってどんなことをしているのかが外から見るとわかりづらい業界なので、ざっくりでいいので、どういうものがビジネスモデルとして成り立っているのか教えていただけますか。
佐野:まず、商社の歴史って非常に古くて、いちばん古い商社で言うと、伊藤忠商事と丸紅です。1858年に創業したので、160年以上経っているんですけど、もともとはトレーディングがメインだったんですね。
トレーディングというのは、サプライヤーと呼ばれる原料とか材料とか製品を提供する人たちがいて、もう片方にバイヤーというそれらを買う人たちがいるんですよ。商社はその間に入って仲介をするという仕事が、創業当初からずっと今も続いている仕事なんです。

その仕事においては、サプライヤーの開拓ですね。物を提供する人たちをどう開拓するかということと、バイヤーの物を買う人たちをどう開拓するか。実際に物を決まった日時に決まった量をちゃんとお届けします。「受け渡し」と言うんですけど、そういった実務も含めてトレーディングをやっている状況ですね。
入江:昔からずっと続いているということで、だからみなさん海外に行ったりするんですものね。
佐野:輸入と輸出がありますからね。サプライヤーとバイヤーが逆になることも当然あるんですけど、海外から原材料とか製品を日本に輸入して、日本のお客さんに売るという仕事が多いです。
そんな中で、やはりいったん開拓したサプライヤー・バイヤーの人たちと関係を維持しなきゃいけないということで。今もそうですけど、商社はけっこう接待が大事で、「酒が強くないとやっていけないぞ」みたいなイメージがついています。
入江:イメージがありますね。
佐野:ただ、状況は変わってきていますね。
仲介業者としての価値が下がる一方、どう生き残るか
入江:一方でこの(『商社ビジネス』)書籍を読ませていただいたら、最近だと事業投資もかなり大きいということが書いてあったんですが。
佐野:そうですね。今申し上げたとおり、トレーディングが祖業なんですけど、間に入っている価値ってどんどん下がってきているんです。かつては、商社はいち早く海外に進出して、海外のネットワークを構築していたので、情報の優位性というのがあったんですよね。ですので、商社が間に介在する価値は高かったんです。
でも、今の時代って、直接サプライヤーとバイヤーがつながろうと思えばつながれるじゃないですか。ですので、仲介する価値は減ってきています。じゃあ、どうやって生き残るかといった時に事業投資ということで、事業に対して投資をしていく。
最初は権益の確保の意味合いが強かったんですよね。要は、投資をすればその分物が確保できますし、その分物が売れるということだったんですけど、今は投資をして、その会社に人材を送り込んで事業経営をして、その会社そのものの企業価値を大きくして稼いでいこうというモデルに変わってきています。
入江:どんどん変化していって、この先につなげていこうというかたちなんですね。
佐野:そうですね。
入江:最初のテーマなんですけど、商社で活躍できる人。ざっくり言うと体育会系な、体力がある人っていうイメージ。
佐野:(笑)。
商社で活躍する人の特徴
入江:激務とか、時差がある中で働いていくところもあるでしょうし。仲介するってなると、日本語だけじゃなくて英語でのコミュニケーション、関係構築力みたいなところがかなり求められるのかなと思うんですが、どんな方が活躍されているイメージですか?
佐野:先ほど申し上げたトレーディングですと、まさに今のような能力とか資質が求められるんです。当然、英語力というのはあるんですけど、バイタリティですかね。お客さんを探してこなきゃいけないわけです。それって先進国だけじゃなくて、発展途上国も当然ありますからね。
そういったところのお客さんに入り込んで、物を確保したりとか物を売ったりとか、そういうバイタリティが必要です。あとはコミュニケーション力ですよね。お客さんとコミュニケーションを取って、どういったことを望んでいるかをしっかり把握していくことが大事なんです。
ただ、それはもちろん継続して大事なんですけど、加えて思考力。あとは「自分らしさ」というんですかね。昔はどちらかというと、例えば能力とか資質を五角形で、リーダーシップとかコミュニケーションを表すと、この五角形が大きい人がよかったんです。ですので、総合力の高い人が多くて、私の世代なんかも、だいたいみんな一緒な感じなんです。金太郎飴みたいな感じで、切っても切っても似たような。
入江:(笑)。
佐野:良くも悪くも、似たタイプの人がそろっていると。