【3行要約】
・株式会社北の達人コーポレーション 代表取締役社長の木下勝寿氏が、キャリアに関するさまざまな疑問に答えます。
・木下氏は「リモートに向くのはインプットを自ら適切に行える経験者」と語り、新人には不向きと指摘。
・また、転職時にはエージェントより自社サイトから直接応募することで、転職成功率が高まると助言しています。
前回の記事はこちら リモートで生産性が上がる人と下がる人の違い
——フルリモートと出社勤務、生産性を極めるならどっち?
木下:これは人による部分があります。仕事をすることに対して、「インプット」と「アウトプット」というものがありますよね。自分が何かをインプットして、それを世の中で咀嚼してアウトプットしていくかなんですけども。リモートって、アウトプットにおけるデメリットがあんまりないんですよね。画面に出していくとか。
どっちにしろ、今ってメールに添付するものとかでやっているので関係ないんですけども、インプットにおいては、明らかに出社よりも不利なんですよね。基本的には人と接していない状態で情報をインプットしようと思ったら、自ら動かないとインプットされないんですね。
つまり、意図的な場合にしかインプットされないので、自然に情報が入ってくることってほぼないんですよ。会社に出社していれば、隣の人の声とかを聞いているから、「今、こんなことが起きているんだ」とわかるんですけども。
それがまったくなくなるという感じでいくと、例えばある程度のキャリアがあって、インプットがほぼ必要ない、もしくは適切なインプットを自分からできるような人は、インプットのデメリットがそこまで大きくない。集中して作業できたりとか、アウトプットの質が変わらないんだったら、リモートのほうができる人はいます。
アウトプットの質はインプットの量に比例する
木下:でも、これはある程度スキルの高い人。まだ社会人になりたての人とかが「出社する意味がないじゃないですか」と言うのは、たぶんレベルの高い仕事を見たことがないから。アウトプットというのはインプットの量に比例していくので、ほぼインプットがない状態だと、たぶん仕事ができるようにはならないという話です。
——そうなんですね。北の達人さんって、入社からずっとリモート勤務の方もいると思うんですけど、そういう方のインプットって具体的にどうされているんですか?
木下:まず最低限、「教育しなくても、ある程度のレベルでできる」という人しか、リモートは許可していないです。定期的に研修とか会議があるので、そこでインプットはできるようになっていますが、まだスキルが低い人は、たぶんそれだけではぜんぜん足りないんですね。なので、日常的にある研修とか会議でやっていけるぐらいの人だけにリモートを許可する感じですね。
業界1位の企業にはゼロイチを生み出す力がある
——今、木下社長が大学生なら、絶対に就職したくない業界は?
木下:ないかなぁ。
——逆に、就職したい業界ってありますか?
木下:基本的には産業そのものが伸びている業界がいいなと思います。これは他でも言っていますけども、世の中って全部Webマーケティング化していく。Webからの情報で人は動いていくので、やはりWebマーケティングに関わる業界に行きたいなとは絶対に思いますね。
あと、僕がけっこう重視しているのが、「業界トップ」というのに決めていて。1位の会社と2位の会社って実はけっこう大きな差があって、1位の会社は市場を生み出してきて1位になっているんですね。今までになかった市場をバーッと生み出してきて1位になっている。
2位の会社というのは、単純にそれを真似することで追いついていくところなので、新しいものを生み出す力があまりないんですよ。基本的に真似ばっかりしているという感じで。なので、基本的に1位の会社は、新しいものを生み出す力を会社自体で持っているので、そういうところのほうが成長できるかなと思います。
志望先企業に熱量を伝える意外な方法
——「希望の会社に転職したい!」。成功確率を上げるためにできることはありますか?
木下:実は1つありまして、そこの会社に応募する時に、自社サイトの応募ページから応募するのが絶対有利になるんですよね。理由は2つあります。自社サイトのホームページ以外から応募するってどういう方法があるかというと、転職サイトに掲載されているから応募するというものもあれば、転職エージェントから紹介してもらうパターンもあるんですけれども。
まず、転職サイトから応募してきた場合と、自社サイトから応募してきた場合、応募を受ける側がどう感じるかというと、転職サイトから応募してきた人は、「転職したいな」「転職サイトに行って、どこかないかな?」「こんな会社があった」といって、応募していると見ます。
自社サイトから応募した人は、「北の達人に転職したいな」。もしくは、「転職したいな」と思っているわけじゃないんだけども、北の達人のホームページを見た時に、「ここに行きたい」と思った。どちらが意欲が高いと捉えられるかなんですね。
と考えると、自社サイトから応募してきた人は、ピンポイントで「この会社に入りたい」と圧倒的に思っている。「この会社に入りたいから転職しよう」と思っている人と、転職サイトから来た人というのは「転職したいな」が先にあって、「この会社はどうかな」と思っている。というところでいくと、意欲・熱意は圧倒的に違いますよねということなんですね。
採用する側の視点から考えてみると
木下:やはり自社サイトから応募してきた人のほうが、採用確率が高くなりがちになります。もちろん面接した時に、「本当は自社サイトから応募しようと思ったけども、転職サイトからのほうが、相手の会社の処理や管理が楽かなと思って、転職サイトから応募してきたんです」みたいなことまで言っていたら、「君はすごいね」となるけど。
一方、転職エージェントを通しての転職になってくると、逆に難易度は上がるんですよね。転職エージェントを通して就職する時って、「この人を採用します」となった時に、転職エージェントに対して、採用する企業は年収の何十パーセントかという報酬を払うんですよ。
ということは、例えばこの企業が、「あなたはこの給与で採用しますよ」と。「この給与だったらちょっと嫌だな」とか、もしくは「十分です」とかっていう条件の部分があるんですけども、転職エージェントを通した時って、その条件が悪化するんですね。給与だけじゃなくて、転職エージェントの支払いの手数料が加味されるわけですよ。
直接だったら、単純に「年収500万円」とか「年収800万円ですよ」というので判断するんですけども、転職エージェントを通していたら、「年収800万円」と「手数料200万円」で同じ人を判断するんですよ。「年収800万円だけだったら採用したいな。でも、年収800万円と転職(エージェント)で200万円。まぁまぁ痛いな」というふうにはちょっとは思います。最終的にはやはり本人の部分にはなるんですけども。
転職サイトを通じてもそうなんですね。転職エージェントを通じて応募に来た人も、うちをピンポイントで狙っているのではなくて、「どこかいいところはないですか?」と紹介されて来ている可能性があります。
こっち(自社サイト)の人は、うちにピンポイントで「入りたいんです」と言って来ています。でも、こっち(転職サイトやエージェント)は紹介されたから来ていますし、手数料もかかる。「どっちが意欲が高いかな? こっちはお金はかかるし」と考えると、やはり自社サイトから直接応募する。これがやはりいちばん成功確率は上がりますね。
転職回数が多くても悪いわけではない
——そんな裏話があったとは、びっくりしました(笑)。転職回数が多い人を、どう見ていますか?
木下:人によるって感じですね。経歴と、「なんで転職したのか」という理由を聞いた時に、単純なるジョブホッパーなのか、ちゃんとスキルアップをしようとしているのかという部分で見ていて。複数の会社を知っているというのは、いい面も正直あります。

例えば異性と付き合う時に、「初めて異性と付き合うんです」という人と、何人か付き合ったことがある人だったとすると、異性との付き合い方がわかっている・わかっていないって正直ありますよね。
何社か経験していて、ある程度「会社ってこういうものだよね」ということがわかっているのと、まったくわかっていない人とでいくと、新卒者は転職者に比べると、教育がけっこう大変な部分があったりするとか。例えば40歳ぐらいで初めて転職する人って、うちだったら、まず採用しないと思うんです。「会社とはこういうものだ」というのが凝り固まっちゃっているんですよ。
これが40歳でも2~3社経験していたら、「会社って、こういう会社もあれば、こういう会社もあって、こうだよね」みたいな感じなんですけど、初めての人って、「前の会社ではこうだったのに!」みたいなのがけっこう出てくるので。多いこと自体が必ずしも駄目なわけではなくて、ただ、やはり2~3社以内ぐらいかな。4社を超えると、「ちょっと定着性の悪い人だな」というふうには見るかな。
前職の悪口を言う人を採用した理由
——「1社につき、最低何年勤めたらいい」という基準はありますか?
木下:本来3年というところですけれども、やはり、実際にとんでもない会社とか、まったく意味のない会社は存在するよね。なので、なんだかんだいって、うちの幹部は前の会社を1年以内で辞めた人とかもけっこういたりするので、一概には言えないかなとは思います。
——その会社の状況に依るというところですね。なので、在籍期間が短いとか転職回数が多いということで、必ずしもマイナス評価を受けるという(ことではない)。
木下:だからやはり理由とかを聞いた上で、どう判断するかなと。1つおもしろいエピソードがあって、うちの面接をした時に、前職の悪口をめっちゃ言う人がいたんですよね。普通、これはNGなんですよ。なんですけど、僕はその人を採用したんですね。(その後に)めっちゃ活躍したんですよ。それは正直に言うとわかっていたんですけど。
うちの会社って各職種ごとに、向いたセンスとか才能を見抜くためのテストとかを作っていたんですね。彼はそのテストがめちゃくちゃ良かったんです。彼の前職は、そのセンスが活かせる職種ではぜんぜんなかったんですね。なかったから、たぶんあまり活躍できなくて文句を言っていたんですけど。
文句を言う人間では、ぜったい良くはないんだけども。ただ、この人はたぶん、うちに来たら絶対活躍できると。「活躍すると、文句を言わないやろうな」と思いました。そうしたら、やはり活躍して、ぜんぜん文句を言わなかったですね。

今日はキャリアに関する質問にお答えしてきました。少しでも気づきやヒントがあったという方は、ぜひコメントで教えてください。みなさんからのコメントが、私たちの大きな励みになります。あと、「こんなテーマも取り上げてほしい」というリクエストも、気軽に書いてもらえるととてもうれしいです。