【3行要約】
・株式会社北の達人コーポレーション 代表取締役社長の木下勝寿氏が、キャリアに関するさまざまな疑問に答えます。
・本記事では「早く成功するためにしておくべきだったこと」「就職と学歴について」「自分に向いている仕事」について紹介します。
・木下氏はキャリア選択において「自分の強みを活かすより、世の中で必要とされることをする」べきだと提言します。
仕事に関する疑問に木下勝寿氏が回答
——木下社長! 今日は質問企画を持ってきました。今日のテーマは「キャリア」です。
「就職するならどんな業界がいいのか」「転職を成功させるためには」などなど、多くの人が悩み、そして気になるテーマに、木下社長の視点でズバッと答えていただければと思います。木下社長が20代だった頃、早く成功するために、「これをやっておけばよかったな」と後悔していることはありますか?
木下勝寿氏(以下、木下):社会に出たばかりの時に、接客業の経験をしていたほうがよかったなとはすごく思いましたね。事業というのは結局、お客さんに商品やサービスを提供してお金をいただくということで、それは会社組織でやっているとしても、会社自体は絶対にそうなわけですよね。

そうなってきた時に、やはり「お金をいただく」ところの部分で、人からお金をいただく現場を知ろうとすると、大きな組織でBtoBだったら、たぶんなかなか経験できないんです。飲食店とかだったら、本当に毎日いろいろなお客さんと接するじゃないですか。
お客さんと売る側の立場の観点とか、買う側の心理とか、そういったことをある程度は経験しているほうがすごく良かったなと思っていて。
私は営業だったんですけど、買う側の観点がぜんぜんわからないんですよね。自分が物を買う時の気持ちはわかりますけど、世の中にはいろいろな人がいるわけで。
いろいろな価値観で物を買おうとしているんだけど、そこがぜんぜんわからない。やはり飲食店でもいいので、とにかく人が物を買うところの現場を経験しておくのは、絶対にやっていたほうがよかったなとすごく感じましたね。
「お金をいただくこと」への解像度で差が生まれる
——木下社長は学生の時、学生企業にいらっしゃったと思うんですけど、そこでの経験よりも飲食店とかのほうが、購買の気持ちにつながったとお考えですか?
木下:私は両方やっていたほうがいいかなと思います。
——そうなんですね。
木下:でも、ビジネスをやっていこうと思ったら、お客さんにお金をいただくということがどういうことかをわかっている人とわかっていない人で、正直ものすごく差がついて。お客さん(からだけ)でもないんですけども、例えば「人からお金をいただく」ことに対しての解像度が高い・低いというのはあるんですね。
例えば、お客さんに接している部署の営業の人とかは、すごく解像度が高いんですよ。一方で、お客さんとまったく接していなくて、お金がどうやって自分のところに来ているかをあまり理解していない人って、結局は自分の勤めている会社からお金をいただいている。ということは、実は自分を起点に考えると、会社がお客さんなんですよね。
ビジネスにおいては、お客さんの要望に応えるのが仕事ですよね。なんだけど、勤めている時は、なぜかは知らないけども、「会社の要望に応える」じゃなくて、「僕のやっていることを会社が認めるべきだ」みたいな感じになってしまう人がいるんです。だけど営業とかをやっていると、あまりそういう感性にならないんですよ。
クレームは学びの宝庫
木下:「お金を払う側に合わせていくべきだよね」という感覚があるんですけども、そういう部分でいくと、お金をいただくということを体感的にわかっていない人って、ある意味ではわがままなかたちになりやすかったりするんですね。全部が全部じゃないですけども。
というところで、お客さまからは「こうやったらお金をいただける」「こうだったらいただけない」という経験をしておくことはすごく大事なので、一番手っ取り早いのは、学生の時は接客業とか、社会人なら営業をするとか、物を販売するところに対して関わるほうが絶対にいいなと思います。
——今は「タイミー」とかでやりやすいから、今からやってみたいなという方は、ぜひチャレンジしてほしいですね。
木下:クレームが多いところのほうがいいと思うんですよ。
——そうなんですね。
木下:お客さんからすると、「満足できない」と言われるわけじゃないですか。(サービスや製品を)売って、お客さんに「ありがとう」ばかり言われたら結局は何の学びもないわけで。
「なんで満足していただけないんだろう?」とか、「でも、満足する人もいるのに、何が違うんだろう?」ってわかると思うんです。なので、お客さんから評判がいいところより、評判が悪いところのほうが勉強にはなると思います。
なぜ“学歴フィルター”が存在するのか
——ぶっちゃけ、学歴って大事ですか?
木下:ないよりはあったほうがいいよねという感じですよね。選択肢の問題というのがあって。まず、「学歴」と「学校歴」ってまた別だと思いますけど、学歴は中卒・高卒・専門学校卒・大卒ぐらいの感じですし、学校歴は○○大学っていうのがあるとした時に、就職をするんだったら、絶対にフィルターには入ってきます。
人気企業には大量の応募が来るので、全員を面接するわけにはいかないんですよね。なので、書類である程度は区切らないといけない時に、「いい大学を出ている人は優秀な人が多い」というのは確率論として存在するので。もちろん一人ひとりは違うにしても、全員には会えないので、わかりやすくいったん学歴で切るということは、やはりします。
就職という観点においては、あったほうが絶対、得は得。ただ、実際に仕事をしている中で、「君はどこどこ大学?」とか「中卒? 高卒?」とかを問われることは基本的にないので、そこでは別に関係はないというのはあります。
「仕事に自分の強みを活そう」と思う必要はない
——自分に向いている仕事をどうやって見つけたらいいですか?
木下:見つけなくていいです。
——え?
木下:向いているとか向いていないとかどちらでもよくて、仕事というのはやるべきことをやる。やろうとした時に、難しければ努力すればいい話です。例えば僕は、めっちゃしりとりが得意なんですよ。しりとりが活かせる仕事を探したところで、絶対に稼げないと思うんですよね。それよりは、世の中に必要とされている仕事ができるスキルを身に付けたほうが絶対にいいよね。
「自分の強みを活かそう」なんて、ぜんぜん思う必要はないと思っていて。僕は意識もしていなかったですし、自分の強みとかを意識し始めたのは、50歳を超えたぐらいからかな。

——最近の話なんですね。
木下:まぁまぁ最近。「俺、けっこう文章がうまいんちゃうか?」と気づいたのが5~6年前。それまでは別に何も思っていなかった。「文章がうまいから何なん?」「セールスレターはいちばんうまいんちゃうかな」ぐらいの感じなんですけど。やるべきことをやるのが大事であって、自分に向いている・向いてへんとかはどうでもよくて、「向いていなかったら、がんばればいいやん」というだけの話です。
自分の強みを発見したのは50歳を超えてから
——木下社長の「文章が得意」というのも、もともとあったというより、やらないといけないからとにかくやって積み上げて、50歳になって「得意かも?」と気づいたということじゃないですか?
木下:違う違う。きっかけは、50歳を超えてからX(旧Twitter)をやり出した時にすごく反響があって、その反響を見ていると、「言語化がうまい」とやたら言われるようになって。最初はどうしてみんな「すごい、すごい」と言ってくるのかあまりわからなかった。他の人に比べて「すごい」と言われているのか、単にこういうものを出せばみんな「すごい」と言うのかもわからないという。
でも、どうも「言語化がわかりやすい」とわかってきて、「よく考えると昔から、文章で笑いを取るのがけっこううまかったな」とか、「文章でトラブルを防ぐことができていたな」っていうのを思い出して。「思い返せば、文章でけっこういろいろやっていたわ」というのに気づいたという感じです。

——そうだったんですね。セールスレターで気づいたとか、そういったところではなく。
木下:セールスレターは書かないといけないから書いただけだし、Xでのみんなの反響を見て、「俺、文章がうまいな」と気づいちゃった。
——そうなんですね。じゃあ、今目の前にあることに、まずは真剣に取り組むと。
木下:そうそう。まず、自分を活かすじゃなくて、世の中で必要とされることをする。