【3行要約】 ・「35歳転職限界説」という言葉を耳にすることは多いですが、実際には女性の転職者数は男性より多く、40代以降も積極的に転職していることがわかっています。
・総務省の統計データでは中途採用率が過去最高の46.8%に達し、女性活躍推進やD&Iの取り組みが社会の主要テーマとなっていることが、ミドル女性の転職に追い風となっています。
・ミドル女性は柔軟性やキャリアの分断経験を強みに変え、新たな可能性を広げられます。
前回の記事はこちら ミドル世代は実は男性より女性の方が転職者数が多い
田中美和氏:では、事前質問でもいただいておりました、ミドル女性の転職市場がどうなっているのかをデータで読み解いてまいりたいと思います。まずご覧いただきたいんですけれども、こちらですね。
(スライドを示して)こちらは総務省の統計データになるんですけれども、転職者とか転職希望者の数の推移になります。画面上が男性です。画面下半分が女性のデータになっております。具体的な転職者数が青の折れ線グラフになっているんですけれども、赤く囲ったところをご覧いただきたいです。
画面上の男性の赤く囲ったところですと、転職者数は148万人で、下の女性の赤く囲ったところは178万人ということで、実は女性は男性よりも転職者数が多いというデータが出ています。

それから、ミドル女性が積極的に転職しているデータもございます。これも同じく総務省のデータになるんですけれども、これは働いている方に占める、転職される方の比率になります。転職者の比率で見ますと、画面左が男性、画面右が女性になります。
35歳~44歳がグレーの折れ線、それから45歳~54歳がイエローの折れ線になってくるんですけれども、30代後半とか40代を表すグレーとかイエローの部分をご覧いただきたいです。
画面左の男性の転職者比率に比べて、画面右の、例えばグレーの部分をご覧いただくと、女性の転職者比率が高いというところが見て取れますよね。ということで、ミドルの女性、30代後半ですとか40代の方とかは非常に積極的に、男性以上にご転職なさっているというところが見て取れます。
女性は転職で報酬アップする方の比率が非常に堅調
そして、これも非常に興味深いデータです。こちらはニッセイ基礎研究所のシンクタンクの坊さん(坊美生子氏)という研究員の方が書かれているレポートからの引用なんですけれども、女性はご年齢を重ねても、転職で報酬アップする方の割合、比率が非常に堅調に推移していらっしゃるというところがございます。
(スライドを示して)これは年齢別に見た、転職で賃金アップした人の割合の推移なんですけれども、画面上が男性、画面下が女性になります。男性をご覧いただくと、紫とか赤の折れ線グラフがご年齢層が上の方、40代とか50代とかになります。
そうすると、男性の方は40代、50代とご年齢を重ねると、賃金アップされる方の比率がかなり抑え気味になってくるところが見て取れます。
対して、画面下の女性の折れ線グラフの推移を見ていただきますと、30代、40代、50代とご年齢を重ねても、賃金アップされる方の比率が、わりとぎゅっと3割から4割ぐらいのところに固まっているかたちで、比較的に堅調に推移されているというところが見て取れます。

ですので、結論として今日ぜひお伝えしたいポイントとしては、「30代後半・40代の転職ってどうなんでしょう? できるんでしょうか?」というご質問をよくいただくんですけれども、「35歳転職限界説」というのは本当に過去の話で、40代でも十分転職は可能ですし、さらにキャリアを拡大していくところにつなげていらっしゃるケースは多くございますので、それはぜひご安心いただきたいなと考えております。
女性のキャリア採用は追い風になっている
そして、後押しするような要素もございます。(スライドを示して)ご覧いただいているのは、日経新聞の今年(2025年)4月の記事の見出しなんですけれども、中途採用の比率が過去最高の46.8パーセントになりましたよという記事になっています。
ここ近年、中途採用の比率が増えているんですよね。日本ってどうしても新卒一括採用のカルチャーが長年根強かったわけなんですけれども、ここへ来て中途の割合が増えているということですね。
私が昨日お話しした大手のメーカーさまだと、「来年度から新卒は採らない」「基本的には中途のみでいく」とおっしゃっていました。
中途採用がなぜ増えているのかといいますと、少子高齢化ですので、そもそも新卒採用の数が減っているとか、あとは事業環境が非常にドラマチックに変化してきておりますので。最近ですと、AIの登場で事業環境がどう変化していくのかというところもあります。
そういったさまざまな事業環境の変化によって、即戦力人材へのニーズが高まっておりますので、そういったところも背景にはございます。そして働く期間自体も長くなってきておりますので、各社の終身雇用制度自体が見直されてきているといったところもございます。

本日のテーマは女性のキャリア、そして女性の転職というところですが、女性のキャリア採用という文脈ですと、追い風になっていることがいくつもございます。私が『日経ウーマン』で記者をしていた頃に比べますと、かなり「女性活躍」とか「D&I」というところが、社会の主要なテーマの1つになってきております。
(スライドを示して)例えば象徴的なのは画面左になりますが、2023年3月期決算から、上場企業を対象に、女性管理職比率などの人的資本情報の開示が義務化されていたりとか。画面右側は、約7割の機関投資家が、投資判断や業務で女性活躍の情報、例えば女性管理職の比率とか、女性従業員の比率とか、そういった女性活躍に関する情報を活用しながら投資判断をしているなんていう項目も見られます。こういった、女性の転職、女性の中途採用というところに非常に追い風が吹いている要素もございます。
キャリアの課題感は資産になり得る
本日こういったテーマでウェビナーをやらせていただいているんですけれども、今後のキャリア選択の1つとして、転職といったところにご興味があるという方にご参加いただけているのかなと思います。
そんな中で女性のみなさまから、よく「これまでの経験をどう強みに変えていったらいいんでしょうか?」というご質問をいただきます。ここからはこの観点で大切な視点をお伝えしたいと思います。
キャリアでさまざまな課題感をみなさまは感じられているところがあると思うんですけれども、私たちとしては、それはキャリア資産になり得ると思っていて。その観点をしっかり押さえながら、ご自身の棚卸しをしていただくとか、企業にアピールしていただくのがとても大事だなと思っております。
意欲と柔軟性は最大の強みになる
これから視点を3つご紹介してまいりますね。「意欲と柔軟性はみなさんの最大の強みになる」ということです。よく我々がお聞きする課題感としては、「コアキャリアがないんです」とか「何でも屋になってしまった気がします」というようなお話がよくございます。
解決の視点として、「何でもできますよ」という意欲とか柔軟性というのは、中小・スタートアップ企業では、むしろ高く評価されるというところですね。私どものこれまでのご支援実績ですと、中小・スタートアップ企業でのご支援実績が本当に数多くございます。
中小・スタートアップ企業でのご経験の活かし方としては、やはり少人数で幅広い業務を担いますので、適応力とか行動力が求められるんですよね。一方で企業側は、「自分で考えて動ける人」を探していますので、そういう意味で、ご自身の柔軟性を強みとして打ち出せるような、職務経歴書作りとか面接対策が必要なカギになってきます。
キャリアの分断を資産として捉え直す
そして視点の2つ目ですね。「キャリアの分断を資産として捉え直す」ということです。これはもちろん女性だけの課題ではないんですけれども、現実問題として、やはりご出産とか育児のさまざまなこと、それから介護、転勤帯同などで、キャリアが少し途切れている期間があるとか、短時間勤務などを選択することで、ご担当される業務領域が絞られていた期間があったとか、そういったことは女性のキャリアにあっては本当に切っても切り離せない観点なんですよね。
そこの解決の視点としては、ライフイベントに対応してきた経験、高い問題解決能力とか変化に柔軟に対応してきたということで、アピールしていただきたいということなんです。
中小・スタートアップ企業での活かし方としては、多様な状況に臨機応変に対応できる人材は重宝されますし、やはり豊かな人生経験を持っているということに対して、実際スタートアップさんで「20代、30代、これからライフイベントを迎える社員の方が多いからこそ、そういったさまざまなライフイベントをご経験されつつも、キャリアを継続されているような方に、ぜひロールモデルとしても入ってきていただきたい」なんていうお声もあります。
ですので、こういったキャリアの空白を、課題ではなく資産として伝えるというポイントを、ぜひ大事にしていただきたいなと思っております。
制約を「強み」に言語化する
そして3点目ですね。最後のポイントです。「制約を『強み』に言語化する」ということです。例えば課題感としては、「家庭の事情で毎日の出社が難しい」というようなお声があります。ここの伝え方としては、「制約があるからこそ、限られた時間で成果を出す工夫ができる」と捉え直していただきたいんですね。
スタートアップは比較的、リモートワークへの理解が深い企業さまが多いです。フルリモートの案件となりますとそれこそ限られてしまうんですけれども、逆に言うとフル出社、「絶対毎日出社してくださいね」という案件は、2025年4月以降に私どもがお取り扱いしている限りでは、5パーセントあるかどうかというところです。
ですので、逆に言うとリモートワークを一部ないし多少は採り入れながら、ハイブリッドで業務を実行していただきたいというようなカルチャーがございます。スタートアップ企業ですと、特に成果を重視するカルチャーも強いですので、時間あるいは場所の制約がある中で、成果にコミットするかたちで働きたいという意向をしっかり伝えるということが、ポイントになってくるなと感じております。