【3行要約】 ・「女性活躍」が叫ばれる一方で、多くの女性が無意識の能力主義バイアスと構造的な課題に直面し、キャリア形成に葛藤を抱えています。
・株式会社COTENの杉山氏や味の素株式会社の栢原氏らは、昇進や評価が「女性」というカテゴリーに紐づけられる違和感を指摘します。
・エール株式会社の篠田氏は、この問題を個人の能力ではなく「仕事の関係性をどう構築するか」という社会構造の問題として捉え直すべきだと提言しています。
前回の記事はこちら 能力主義というバイアスに気づけるか
杉山サーシャ氏(以下、杉山):先ほどの篠田さんの「自分の能力不足なのか」という点で。私は初め、戦略コンサルタントという、俗に言う男性社会にいて。特にロンドンにいたのでゴリゴリの成果主義なんですよ。仕事量が多いので、時間内にこなさないといけない。だから常に「(業務)時間を減らすのはあなたの能力次第です」って言われて叩き上げられたんですけど、「わぁー」ってなっちゃいました。
自分も取締役をやっているんですけど、仕事量が多いわけです。スタートアップなのでいろんなことをやります。その時に「これを減らすのは自分の能力次第だ」みたいな、無意識に成果主義スイッチが入っていたなって、今気づきました(笑)。自分も産休に入らないといけないんですけど、どうしても産休に入れないのは、ある種、「自分の能力不足だ」って思っているところがあったなって感じながら。
もちろん頼ればいいんですけど、やはり取締役をやっていると数字も見られますし、自分が抜けることによるコストもわかる。そういう時に自分の無意識なバイアスってなかなか気づけない。ちょっと自分に対しての反省ですね(笑)。
佐藤明氏(以下、佐藤):なるほど。(女性でも、現在の状況が構造的な不利益なのか自分の責任なのかがわからないという話題で反応が)ハモった栢原さん。
昇進しても素直に喜べない自分がいる
栢原紫野氏(以下、栢原):私は逆の話なんですけど、「根っこは一緒だな」って、すごく思ったことがあります。
本当にこれは聞きようによっては感じの悪い話で、言ったとおりに聞いてほしいんですけど、私は(女性)総合職1期生で味の素に入っているんですよ。(同期の)みんなはもうとっくに辞めちゃいました。1人だけ残っちゃったんですよ。それで、ある時からすごい勢いで昇進しているんです。
そのことにものすごく違和感がありました。新しい仕事や難しい仕事をさせてもらった時に「おもしろいな」って思えて、私の中ではある程度、整理できているんです。けれども「これは実力じゃないよね」って思い続けているんですよ。
うちの会社の人たちはお行儀がいいからいろんなことを(直接は)言わないけど、たぶん周りから陰で「女は得だよな」とか言われているんだろうなと思うと、素直に喜べないんですね。
だから常に「勘違いするなよ。これは私が女だからだ」ってずっと言い聞かせていて……今もです。そういうふうに思っていないと自分が壊れるんじゃないかなって。そこまで責める必要もないのかもしれませんが。あの中ではつらい。