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START CAMP 2025 女性の社会参加における構造的問題を捉え、これからどうしていくべきか?(全4記事)

昇進を喜べない、“女性初”への違和感… 働く女性の“モヤモヤ”が生まれがちなシーン [2/2]

「女性初」の看板に潜む違和感

篠田真貴子氏(以下、篠田):「あの中」っていうのは、どういう景色なのかを、ちょっと。

栢原:(味の素は)ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニーでオリエンテッド・イン・ジャパンなんです。女性はすごくがんばらないと認めてもらえない。

私はこの間まで、女性初の営業責任者である支社長として福岡にいたんです。でもそれも、「女性の支社長をアサインするなんて味の素ってすごいよね」なんですよ。

それで女性である私が滞りなく仕事すると、後からポンポーンって女性の支社長が輩出されるわけですよ。そこに栢原という個人はなく、「私、何なん?」ってちょっと思っています。これはしょうがないんだろうけれども、「誰得なんだろう。会社はどうしたいんだろうな?」って思うんですよね(笑)。自分の実力を正しく測れないです。根っこは一緒ですよね。

篠田:一緒です。

白木夏子氏(以下、白木):私は27歳の時に起業しました。今は少ないながらだいぶ増えてきてはいるんだけど、当時はまだまだ女性の起業家って本当に少なくて。だからいろんなメディアに取材してもらえたし、沢山の賞をいただきました。

そのたびに私は「小さいジュエリーの会社を立ち上げて、インドとかへ買い付けに行って、自分でブランドを作ってがんばっているけど、まだ年商だってそんなにすごくもないし、上場したわけでもないし、雇用できている人数もそこまででもないのに」と思っていたんです。

同じ立場の女性の背中を押すことにつながる

白木:男性が同じことをやっていたとしたら同じ賞をもらえたかというと、もらっていないと思うわけで、すごく気持ち悪くて。この気持ち悪さとずっと付き合ってきているというか。だから授賞式で心の底からうれしいと思ったことは1度もないんです。ただ、何年後かに「そこに立たせてもらうと私に続く人がいるんだ」と気づきました。「その時の白木さんの記事を読んで、私も起業しようと思いました」という声があったんです。

がんばるって言い方は良くないかもしれません。けれども、「自分にも違う生き方があるんだ」と思って一歩を踏み出す女性たちが後からいっぱい出てきていたのは、ちょっと良かったことなのかもしれないなと思って今までやっています。

これをどこかで私がお話ししたら、「確かに白木さんは下駄を履かせてもらったかもしれない。でも、それまでは男性たちが下駄を履かせてもらっていた状態で活躍してきていた。男性社会の中で男性にフィットした会社のあり方で、男性ばっかりの役員の中で指名された男性だったから下駄を履かせてもらえていたところが、イコールになっただけなんじゃない?」と言われたんですよ。どう思われます?

栢原:似たようなことで「女性活躍」って普通の言葉になりましたけど、「女性活躍ってあんまり言い過ぎるから男がデモチベートしているじゃないか」ってわりと言われるんですよ。もちろんそれを言うのは全員男性で、私はそれに対して「正直に言ってくれてありがとう」と思うんだけども、それに対する有効な返しが見つからないんですよ(笑)。まず「デモチしているのはあなたよね」と思うところはあるんだけど。

(会場笑)

なぜ社会に出ると女性が目立たなくなってしまうのか

栢原:別にそれを言っても何も生まないので、「そうか、そうなんだ……」みたいな(笑)。なのでこれ、わりと難しい問いだなって思っています。

佐藤:なるほど。今は男性と女性の日々の積み上げの話なんだけど、僕はもうちょっとすっ飛ばして、小学校や中学校の時(の話をします)。

(小学校や中学校は)公立の普通の学校で、高校は男子校。みんなバカばっかりやっていました(笑)。僕の感覚は、大学も含めて周りにいる女性のほうが優秀だなという感じを持っていました。それが社会に出て何十年経ったら、女性が目立たなくなっている。その間に何かが起きているんじゃないかなと。自分の素に帰った時に「なんでこんなことになっているんだろう?」と思うことはありますね。

ただ、先ほどお二人がおっしゃったような考えはあんまり想像できなかったから、想像力の欠如みたいなのはある。先ほどの(「あー」の)ハーモニーも「そこでそうなるんだ」っていう。やはり(自分の想像力の欠如みたいなもの)なんだなって思いましたね。

悪気はないのに男性優位の組織になっていないか

篠田:今の明さんの発言に加えさせてもらうと、(佐藤氏が)ご自身の感覚としておっしゃったように、多くの方が、お勉強については平均すると女の子のほうができるとよくおっしゃるんですよね。実際に客観的なデータもあると思うんですけど。

特にこの問題は、それが仕事になる時に、多くの仕事は個人1人の能力でなせるものじゃないのに、個々の女性に向き合った時に「あなたの能力」っていうフィードバックがある(ことだ)と思うんですよ。

実はここの段差の扱いが難しいところで、「男性が作ってきた組織で」と言ってくださったように、これが当事者には非常にわかりにくい。要は仕事ってチームや関係性でするものじゃないですか。新しい組織でもない限り、その関係性の作り方のプロトコルは、多くの組織で過去にいろいろやった中で「おおよそこのチームではこうやってやるのだ」っていうやり方が踏襲されているんですよね。

それは悪気があるということではありませんが、やはり結果的に多くの男性にやりやすいものになっているんです。まだ数が少ない女性がそこで同じ関係性を作ろうと試みても、お互い生き物として違うということではなく、社会的な役割のイメージが違うから、同じような関係を作るのはちょっと難しいことが多い。だから仕事がうまくいかない気がしちゃう。やる前から心配しちゃうんですよ。

それで「選択肢があるんだったら慣れている人とやるほうが成功確率は高いよね」と思うのは、これはナチュラルな判断です。そういうことがもう無意識に起こっている。

“良かれの配慮”が女性から挑戦の機会を奪うことも

篠田:パソコンに入っているので今お見せできるものではないんですが、データって取れるんですよね。どうしても傾向として、「男性は仕事、女性は家庭」という無意識の思い込みが強い人のほうが過半数。

管理職に「小さいお子さんがいる社員に海外出張を指示しますか?」と聞くと、男性社員でも2割ぐらいの上司の方はちょっと迷う。「奥さんは大丈夫かな?」って思うから。

それが、相手が女性社員だと「そもそも言わない」が2割で、「迷う」が半分。このとおりのことが実際に起きたら、差分の約半分の女性は「海外出張に行く?」っていう打診すらされない。しかも上司は本当に無意識のうちに良かれと思ってやっている。

これは象徴的で、やはり1人で若い方が海外出張に行くって、すごく成長する機会じゃないですか。こういう日常のちょっとした判断の差が積み重なって、10年後に「管理職になれますか、なれませんか?」とか「自分は起業したいと思うけど、その経験を十分に積めているんだろうか?」となった時に差が出てくる。

繰り返しますけど、私の解釈は、それを個人に帰するのはちょっと無理があるということです。なぜならやはり、仕事はお互いの関係の中でするものだから、「この関係をどうしますか?」という範囲でとらえないと、なかなか難しいよなって思っている。

初めの「どうしたら」のところにつながるんですけど、今までは個人の価値観ばかりに光が当たっていた。そこも大事なんですけど、これからは「仕事の関係をどう作るか」という課題設定がいいんじゃないかと。

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