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「世界標準の採用」の著者が語る ~人を選ぶ技術から人に選ばれる技術へ~ 【meetALIVE vol.59】(全4記事)

「いい人が来ますように」と祈る“御祈禱型”採用は終わり 人事任せから経営の直接コミットへ [2/2]


GAFAMとの採用・育成の比較で見える日本企業の特徴

司会者2:(笑)。あ、今のタイミングで質問が来ました。

吉田:すてきすぎる(笑)。

質問者1:今の議論に関連するんですけれども。新卒の一括採用を人事が持ち、任用や評価、さらにはローテーションの権限までを持ちすぎている。そのせいで「日本の人事部が日本の会社をダメにした」と僕はずっと言っています。そういった権限をはく奪して事業側に移したいと考えていますが、小野さんはどうお感じでしょうか?

小野:コメントしづらいんですけど(笑)。僕は人事部が悪いのではなく、人事部に任せきりにしている経営側が悪いと思います。ケンカはどちらか一方だけが悪いのではなく両方に責任があるのと同じで、日本の人事部が強くなってしまったのは、経営が手を動かさず楽をしてきたからという面も大きいんです。

実は一番大事な「人の採用・育成」に、日本企業の経営層はあまり向き合ってこなかった。偉い方々は、そこを社内アウトソースしてきたと思います。外資系、例えばGAFAMのような会社の本社の方々とやり取りしてきましたが、上に行けば行くほど採用と育成にものすごくコミットしていますし、そのために経営層の一人ひとりがかける時間は日本企業より圧倒的に多いです。

つまり本質は、会社の上層部の「人事以外の人たち」が人事を人任せにし過ぎている。他人ごとにしているのが最大の問題だと僕は思っています。

質問者1:なるほど。IT部門に任せっきりにしている構造と似ていますね。

小野:どこかで見たことのある景色ですよね。

質問者1:構図は一緒か(笑)。

小野:ありますね。ただ、それはこれまで効率的だったのかもしれません。経験者採用が多くなかったので、年齢レンジごとのタレントマネジメントをしておけば回っていたからです。でも今は優秀な人から順番にガンガン外に引き抜かれている。才能を補充しなければならないのに「昔のままでいいんですか?」というのは強く感じますね。

質問者1:ありがとうございます。

タレントアクイジション(TA)を任せる人材の見つけ方

司会者1:会場からご質問をXのほうでいただいております。読み上げますね。

「ロータッチ採用がKPIとして設定されることも多い中で、採用人事がハイタッチに移行すること(人員は潤沢でない)が、構図的に難しい側面があると思っています。特に移行期に現場レベルで働きかける具体的なアクションのおすすめはありますでしょうか?」という質問です。

小野:はい。ハイタッチの部分で「やる人がいません」「頭数が足りません」という話は、いろんなところで起こっています。僕はこれはコンバートしかないと思っています。採用経験のない人、採用を職種としてやっていない人を会社の中で見つけてきて「しばらく採用をやってください」「TAをやってください」とお願いすることです。

これをやらないと、国全体で見ても今TA人材はほとんど存在しません。だから内部の配置転換による専門家育成を進める必要がある。外部からの採用だけでは追いつきません。

では「どんな人が向いているか?」というと、法人営業やマーケティングをやっている方です。1年でも2年でもいいからタレントアクイジション、ハイタッチ採用の部門を経験してほしい。

「これは会社として極めて重要で、戦略的な役割なんだ」と経営側が伝えるべきです。単に「やれ」と命じるのではなく、このハイタッチ採用がどれだけ重要かを理解してもらい、会社の中に仕組みを落とし込んでいく。そういう経営の意思で推進すべきだと思います。あとはこの本を読んでいただき、実践してもらえれば(笑)。

司会者2:なるほど、わかりましたね。

TA担当者のモチベーションを上げる一言

吉田:今の話で、マーケティングや法人営業から人を引き抜く場合、フルタイムでやるんですか?

小野:やり方はいろいろあると思います。まずはハーフタイムやプロジェクトベースでもないよりはいい。ただリーダー不在のケースが多いんですよ。TAを本気でコミットして推進できる人、リーダーシップを取れる人は絶対必要で、そこはやはりハーフだと厳しいと思います。

吉田:なるほどね。

小野:もう1つ重要なのは、TAは単なる業務を回せばいい仕事ではなく、会社全体を巻き込む全社運動にしなければいけないという点です。そのためには社内で信用があり、「この人がリーダーとして推進するなら大丈夫だ」と周囲や上層部が認める人が担わないと、運動化できません。

吉田:要するに現場のエース級を投入してやれと。

小野:そうです。痛みは当然伴います。

吉田:そうですね。

小野:個別最適でやってしまうと、営業部長から「ふざけるな!」となりますから(笑)。

吉田:あるあるですよね。「いいけど、今年の売上、コミットできなくなるよ?」とか。そういう反応が出ますよね。

小野:そうですね。ただ会社として「戦略的にやるべきだ」と位置付ければ、実現できると思います。

吉田:そういう人たちが、採用というフロントの仕事とはちょっと違う仕事をやるにあたって、どういうことが一番動機付けになるんですかね?

小野:一番わかりやすく言うと「労働力採用じゃないんだよ」と明確に伝えることだと思っています。ハイタッチの対象は、言ってみれば希少資源を獲得することなんです。つまり年収500万円層から1,500万円層まで、それぞれのセグメントのトップクラスを採らなければいけない。トップクラスの人を採る活動は、希少資源を集める仕事なんだと。ここにまずプライドを持ってもらうことが重要です。

「トップタレントを1人採るだけで、業績がどれだけ変わると思いますか?」。しかもその方が在籍している間は、その効果が毎年積み上がっていく。営業換算すれば、会社に億単位のインパクトを与えるケースもある。そういう話を数式に直して伝えることは有効だと思います。

吉田:なるほど。

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