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「世界標準の採用」の著者が語る ~人を選ぶ技術から人に選ばれる技術へ~ 【meetALIVE vol.59】(全4記事)

「いい人が来ますように」と祈る“御祈禱型”採用は終わり 人事任せから経営の直接コミットへ [1/2]

【3行要約】
・人事部門の採用業務は若手の通過点とされがちで、専門性を高める前に他部署へ異動するケースが日本企業では一般的です。
・人材獲得競争の激化を受け、『世界標準の採用』の著者の小野壮彦氏は採用を独立した専門職として確立し、人事部から分離する組織改革を提唱。
・企業は「TA本部長」ポジションを新設し、営業・マーケティング経験者を登用して希少人材獲得の戦略的取り組みを強化すべきと語っています。

前回の記事はこちら

エージェント頼みの“御祈祷型”採用からの転換

吉田善幸氏(以下、吉田):人事っていろんな仕事がありますけれど、その中で採用業務は比較的若手が最初に担当するポジションになることが多いですよね。

採用を経験した後、「能力開発をやりたい」とか「労務をやりたい」とか、すぐに別の領域に移ってしまうケースが日本ではとても多いと感じています。小野さんがおっしゃったように、TA(タレントアクイジション)の専門家や精鋭化というのがまだ十分に進んでいないので、次のポジションに行かないと「成長した感がない」という意識が広がっているのではないかと。

インハウスでHRを担当している方もこの場に一定数いらっしゃると思います。そこでお聞きしたいのですが、TAという仕事を独立した価値ある専門職に尖らせていくために、人事担当者は最初に何に取り組めばいいのでしょうか?

小野壮彦氏(以下、小野):そうですね。まず大前提として、採用とそれ以外の人事業務って、職種としての性質がまったく違うと思うんです。

吉田:ええ、そうですね。

小野:その実感、ありますか?

吉田:はい。営業とハイブリッドに近いというか、極めて外向的な仕事ですよね。

小野:そうなんです。従来から採用はそういう要素が強かったんですが、今の時代はさらに変わってきている。これまでは、採用をエージェントにお願いして「いい人が来ますように」というケースが多かったですよね。僕はこれを「御祈禱型」と呼んでいます。

吉田:御祈禱型(笑)。

小野:パンパンと手を叩いて、「いい人が来ますように」と。

司会者2:「あとはお任せします」という感じで。

小野:そうそう。「あとはエージェントさんがいい人を連れてきてくれますように。よろしくお願いします」と。そういう御祈禱型の受動的な採用が多かったんです。でも、それでも採用は他の人事業務より営業に近い要素があったと思います。

今は、ダイレクトリクルーティングがありますし、YOUTRUSTのような、日本型LinkedInともいえるサービスが大きく伸びています。それを活用して、エージェントを使わずにダイレクトスカウトだけで採用している企業も徐々に増えてきました。

採用部門を人事から独立させる動きが広がる

小野:1つ大きな変化としては、ダイレクトリクルーティングを進めていく時に、TAのメンバーは、自分の名前でスカウトを送ることになるわけです。

吉田:そうですね。

小野:これってけっこう大きな一歩で、かなり営業っぽいんです。まさに法人営業のど真ん中に近いんですよね。だから「ぜんぜん人事じゃないじゃん」と思うくらいの変化が採用という業務におきているわけです。なので本にも書かせていただいたんですが、日本企業はここから世界最先端をキャッチアップしてゆく流れになっていくと思っています。

終身雇用の仕組みが崩れてきている今、「TAは当たり前にやるべき」だと思うんです。AIが社会に浸透してゆくと、これまでにも増して希少な優秀人材を採らなければならない。だからこそTAをやりましょうと。

吉田:具体的には、日本企業はこれから、どうすればいいと思われますか。

小野:僕の提案は、TAを人事部から切り離してしまうことです。

吉田:おぉー。

司会者2:そうなんですね。

小野:もう「TA部」を作ってほしいです。実際、そういう会社が現れてきています。

司会者2:トップ直轄組織として?

小野:はい。大きく2つのパターンがあります。1つは社長直轄。間に経営企画が入る場合もあります。もう1つは、事業本部制を持っている会社なら、その本部直轄のかたちです。最近は僕が関わっているスタートアップの投資先企業で、こうした動きが進んでいますね。

司会者2:やはりスタートアップのほうが早く進めやすい?

小野:そうですね。やりやすいです。もちろん大企業からも「この体制にしたい」というご相談をうかがうことが増えてきています。

日本企業における人事部の権限の強さ

吉田:我々人事屋からすると、採用部門が自分たちの手元から離れてしまうのは、なんとも言えない喪失感が(笑)。

小野:(笑)。

司会者2:(笑)。

吉田:やっぱりありますよね。

小野:そうですよね。

司会者2:前の書籍でも、涙なしには読めないところがありましたが(笑)。

小野:でも吉田さんみたいな人事ヘッドがTAのヘッドをやっていただいても、ぜんぜんいいと思うんです。

吉田:いやいや(笑)。でも、人事部門から切り離すことで、具体的にどんなメリットがあるんですか?

小野:まず、ポストが増えますよね。今のままだと、採用だけをやっていても人事部長にはなかなかなれないじゃないですか。

吉田:なるほど。

小野:だから「どこかでHRパートナー業務をやらないと人事部長になれないな」と思ってしまう。そうすると評価担当になったり人事制度の仕事にローテーションしたりするんですよね。でも、評価・制度が得意な人と、採用が得意な人ってまったく違いますよね。

吉田:確かに違いますね。

小野:そこでTAという柱を立てて、キャリアの上に「TA本部長」のようなポジションが出てくれば、その人が経営会議に入るのも自然です。なので「それをやりませんか?」という提案なんです。

吉田:なるほどね。そっか。

小野:寂しいですか(笑)?

吉田:まぁ寂しいですけど、理にかなっている部分はありますよね。

小野:日本企業がやりやすいと僕は思っているのが、人事部の権限が世界的に比較しても強いということです。THE JTCの話をしていますが、人事部ってすごく強いですよね。

吉田:強いですね。

小野:人材配置や転勤など、全部を采配しているじゃないですか。

吉田:本当に日本のセクターは強いですよね。

小野:そうなんです。その強い人事部の中で分割しても、まだ相当の力は残ります。相対的には、いわゆる異動やタレントマネジメントの部分は本流の人事が担い、タレントリクルーティングの部分はタレントクリエーション側がやる。そういう分け方はぜんぜんできるはずですし、むしろそのほうがスッキリして「いいね」という話になるはずです。

司会者2:その中から分けるという話ですから、ポジションを新たに作るという話。それは明るい話ですね。

吉田:そんな慰めはいらないですよ(笑)。

司会者2:(笑)。

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