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「世界標準の採用」の著者が語る ~人を選ぶ技術から人に選ばれる技術へ~ 【meetALIVE vol.59】(全4記事)

「なぜGoogleからうちに?」は採用側の赤信号 理想の経歴が一致しても噛み合わない時の視点

【3行要約】
・大手企業出身者や高スキル人材の採用で失敗する「中小企業あるある」――経歴に惹かれた採用判断が裏目に出るケースが後を絶ちません。
・エグゼクティブサーチの第一人者・小野壮彦氏は、AI採用ツールの普及で採用がハイタッチとロータッチに二極化すると予測。
・企業は候補者の「なぜ転職するのか」という動機を言語化して見極め、タレントアクイジション専門人材の確保と育成を急ぐべきだと提言します。

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肩書に惹かれる採用が外れる理由

吉田善幸氏(以下、吉田):小野さんはコンサルタントとして、トップエグゼクティブ層のサーチも多く経験されてきたと思います。新卒とは違って、経験やナレッジを武器にしている人たちが対象になりますよね。我々も採用で失敗する時は、履歴書上は理想的に見える人材に飛びついてしまうことがあります。

ですが今おっしゃった(これからの時代に特に重要になる)勇気や独立性のような「真髄」を、エグゼクティブレベルの候補者を相手にどのように見極められていたのか、非常に興味があります。

小野壮彦氏(以下、小野):抽象的な話になるかもしれませんが、候補者について、もちろん「何をやってきたか」「どんな能力があるか」を理解することは大切です。でも、それだけで止まってしまうと表面的なマッチングになってしまう。

僕が大事にしていたのは、さらに深掘りして、その人の人生や価値観、もっと言えば魂レベルで「この人は本当は何を求めているのか」というところを見極めることでした。

一方で採用企業側に対しても踏み込んでいきます。「今こういう人が必要で困っている」という表面的な要望をそのまま受け取るのではなく、「本当にそれだけなのか」「背後に別の課題があるのではないか」と考える。

つまり、候補者に対しても「この人はどんな人間で、何を本当に欲しているのか」を掘り下げる。企業に対しても「この会社が本当に求めている機能や価値は何なのか」を掘り下げる。その両方を突き合わせた時に浮かび上がる深い部分でのマッチングを意識していました。

採用はアートではなくサイエンス

吉田:そのレベルになると、もうアートの世界ですよね。サイエンスというよりも……。

小野:いや、僕はむしろサイエンスだと思っています。アートにしてしまうと曖昧になる。やはり言語化できなければ意味がない。以前書いた『人を選ぶ技術』でも人物の構造をモデル化したんですが、一階部分にあたる知識・経験・スキルだけを見てマッチングすると、けっこう間違いが起きるんですよ。

典型的なのは、自社より格上の企業で活躍してきた人が応募してきた時です。いわゆる「経歴もスキルもピッタリだ、これはすごい人が来てくれた」と盛り上がって、口説きにいく。例えばGoogleのエンジニアが応募してきて、技術スタックも言語経験もすべて揃っている。だから採る。でも、よく考えたら「なぜGoogleからうちに?」という疑問が湧いてくるわけです。

吉田:確かに(笑)。Googleにいたほうが順風満帆な人生を歩めるはずですからね。

小野:そうなんですよ(笑)。もちろん例えば「Googleでやりたいことが実現できなかった。だからウイングアークで挑戦したい」というような、「人物の価値観レベル」での納得感があれば問題ありません。

でも「Googleにいた」「この技術をやっていた」という表面的な理由だけで採用すると、たいていおかしなことになる。これは本当に“中小企業あるある”で、「大手から来た。採ろう!」となりがちなんですよね。

大量応募の一次選考はAI、優秀層は応募外にいる

吉田:少し質問を変えますね。小野さんが言う「人物の構造」の漏斗モデルで考えると、経験を積んだ人ほど1階部分の情報ばかりが増えて、地下のレイヤーにある本質的な部分を見ないまま採用してしまう。その結果ハレーションが起こることがある。

一方で新卒採用では、1階部分がそもそもほとんどない。だからこそ地下のB1、B2、B3の部分を見る必要がありますよね。

ただ最近はAIを使ったソーシングツールが普及していて、特に何万人も応募がある大手企業では一次スクリーニングをAIで回すのが当たり前になってきています。こうした動きを小野さんはどう見ていますか?

小野:これはもう避けられない流れだと思います。労働力を大量に採用するための方法として、まずAIによる効率化が進むのは当然です。一方で、新卒の中でも本当にトップクラスのタレントがそのような経路で集められるかというと、僕はそうは思っていません。

むしろ「インターンを経てそのまま入社する」とか、「就職活動そのものをしていない学生」の中に金脈がある。つまりAIの応募処理システムにデータを送らない層に、真に優秀な人材が潜むことになると予想しています。

なので一般層の採用にAIを使うこと自体は正しいし、使う側・使われる側ともにそれでいい。でも企業として本当に必要なのは、その世代の優秀層をどう採るか。これができなければ、AIで社内を効率化しても結局は競争に勝てない。特定の優秀な人材を引き寄せられる会社しか生き残れない時代が来ていると感じます。

だからこそ「AI任せで本当にいいのか?」という問いは常に残り続けるはずです。

吉田:なるほど。そうすると、いわゆるオペレーショナルな、ベーシックな仕事をしてもらう人材はAIを使った選抜で。

小野:そうですね。効率的に。

吉田:それ以外の、例えばキャリア採用とか、公務員的に選抜された層については、このモデルをしっかり使っていくと。

小野:そうです。ハイタッチなものは、特定の優秀層を採るために、これまで以上に必要になってくる気がしますね。

採用はハイタッチとロータッチへ二極化、鍵はTA

司会者2:今回、2冊目の『世界標準の採用』を書かれた経緯についても教えていただけますか。

小野:実は書く気はなかったんですよ。本を書くのって本当に大変で(笑)、気が重い部分もあったんです。ただ「やらなければいけないんだろうな」と思った理由は、やはりAIの進展が背景にありました。

AIが進むと、採用はハイタッチとロータッチに二極化していく。その中で企業がハイタッチの採用を実現するには、タレントアクイジション(TA)を日本企業も当たり前に導入していかなければならないと強く感じたんです。

司会者2:この『世界標準の採用』でも、その点に触れられていますね。

小野:はい。TA業務に取り組む人材は、日本ではまだ多くはいませんが、今後は有望職種として確実に立ち上がってくると思います。「私はTAのキャリアです」と胸を張って言える人が増えていくべきですし、そうした人たちが高い報酬を得て、優秀な層が担う仕事になっていくはずです。

マーケティングの世界でもかつて、データに強いマーケターや、ソーシャルやITに強いマーケターが台頭しましたよね。それと同じ流れになると思います。

吉田:なるほど。

小野:心理学的な素養を持ち、コーチング的な要素もあって、営業力にも優れていて、数字に強い……そんな人材がこれから求められてきます。正直、すごいムリゲーなんですけど(笑)。

司会者2:まぁ、確かにハードルは高いですね(笑)。

小野:でも、そういう人たちが確実に必要とされてくる。その重要性を伝えなければと思ったことが、執筆の背景なんです。

吉田:ちなみに、執筆にはどれくらいかかったんですか?

小野:丸1年ですね。書き始めてから1年かかりました。

司会者2:それだけのボリュームですもんね。

吉田:まだ手に取られていない方は、ぜひ読んでみてください。

小野:「夫婦仲の悪い方には家に置いてはいけない」と、よく言われます。(本が厚く重いので)「鈍器」と呼ばれるんですよ(笑)。

司会者2:鈍器(笑)。確かに殺傷能力がありそうですよね(笑)。

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