思考の質を改善してパフォーマンスを高めていこうとするアプローチ
さらに3つ目の次元ですが、今度は物事の捉え方や、自分の認知的なプロセスに対して働きかけるというものです。これを「建設的思考パターン戦略」と呼びます。思考の質を改善するということですね。そのことによってパフォーマンスを高めていこうとする認知的なアプローチに当たるのが、この建設的思考パターン戦略ということです。
具体例を挙げるとわかりやすいと思うんですが、例えば目標をうまく達成できた姿を、自分の心の中に描いていく。目標を達成した時に、自分がどんな状態になるのかをシミュレーションする。これを「成功の視覚化」と呼ぶんですが、例えばそういったものが要素として含まれます。
他にも自分に対して前向きな言葉を投げかけていくような「肯定的な自己対話」も建設的思考パターン戦略の1つの要素です。「自分ならできる」というような声をかけたり、あるいは「この失敗は次への糧になる」というような言葉をかけていく。このような前向きな言葉を自分自身に対してきちんと声がけしていくということが、建設的思考パターン戦略の1つになっています。

セルフリーダーシップの中にセルフマネジメントが含まれている
人間っていろいろな思い込みを持っているんですが、そうした中で、あまり生産的ではない思い込みもあるわけです。「もう駄目だ」と思ってしまったり、あるいは「ここで失敗したら、すべてが水の泡になる」というような、さまざまな非生産的な思い込みってありますよね。
そういうものに囚われていると前に進めなくなってしまうので、より建設的な思考に修正していく必要があります。思考というのはなかなか無下にできない側面が強くて、例えば感情や行動の源泉になっていくわけですね。
自分自身の物事の捉え方をきちんと定めていく。そのことによって難しい状況や、あるいはつらい状況に陥っても、うまくそれを乗り越えていくことができるようになっていくということです。セルフリーダーシップというのは、実はこうした側面も含まれているということですね。
単純に自分をマネジメントするところだけではなくて、内発的にモチベーションを高めること。さらには、物事の捉え方をより建設的なものにしていくことも含まれている。そのような、肯定的なさまざまな働きかけというのを行っていくのが、セルフリーダーシップに当たるということです。
その意味では、セルフリーダーシップの中にセルフマネジメントが含まれていると考えると、両者の位置づけがわかりやすいかなと思います。つまり、セルフリーダーシップのほうが、よりさまざまな事柄が求められてくる。3つある要素のうちの1つが、セルフマネジメントということです。
3つの次元の連携を取りながら実践していく
これら3つの次元を挙げさせていただいたんですが、それぞれが独立しているというよりかは、相互に関連し合っています。1個だけ行っても、それはセルフリーダーシップとは言えないわけですね。
例えば、行動中心戦略を行うだけだと、自分で自分のマネージャーになるというだけなので、内発的には動機づけられていなくて、嫌々やっている可能性があり、持続しないわけですよね。3つの次元の連携を取りながら実践していくのが、セルフリーダーシップの基本的な考え方になります。

例えば難しい課題があった時に、小さなステップに分解しながら達成を企図していくこと。これは行動中心戦略に近いかと思うんですが、きちんと目標に対して進捗管理をしながら進めていく。そのことによって、成功体験が積み重なっていくわけです。
そして「自分はできる」という自己効力感が育まれて、その結果、「さらに挑戦していきたい」という自然報酬戦略が発揮しやすくなったり、あるいは前向きな思考(建設的思考パターン戦略)が発揮しやすくなるといった具合に、すべてが関連し合いながらセルフリーダーシップを作り出しているのがおわかりいただけるかと思います。
セルフリーダーシップは高めていくことができるもの
また、セルフリーダーシップってけっこう具体的ですよね。技術の集合体なんだということをご理解いただけたかと思います。
先ほど挙げた例というのは、どちらかというと1個1個アクションに落としていくことができる内容になっているので、その意味では意識的に訓練することによって誰もが高めていけます。
セルフリーダーシップというのは、生まれながらに決まっていて変えることができないものではないということなんですね。トレーニングによって高めていくこともできますし、経験による学習によって高めていくこともできます。

ここまで、「セルフリーダーシップとは何なのか?」ということを説明させていただきました。