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Project MINT Luminary Talk!「定年後のキャリア 〜“その日”は突然やってくる―後悔しないために、今からできること」(全3記事)

60代以降の人生の豊かさは“越境体験“によって左右される 40〜50代から始めるセカンドキャリアに向けた準備 [1/2]

【3行要約】
・企業内でのキャリア形成が主流だった世代が、定年後の自分らしい生き方を模索するのは容易ではありません。
・キャリア専門家の池口氏によると、60代前半は仕事・人生満足度が著しく低下する「満足度の崖」の時期になっていると指摘しています。
・「満足度の崖」を避けるには、50代から積極的に新環境に飛び込み、履歴書の延長線上にない第二の人生を模索することが重要です。

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60代に向けて40〜50代はどのように動けば良いのか

植山智恵氏(以下、植山):じゃあ2番目の質問にいきたいと思います。

日本の会社だと65歳で定年退職で、まずは「再雇用するかどうか決めなさい」とか、70歳までの雇用は努力義務と一律で決められるじゃないですか。

本人はまだやりたかったり続けたかったり、現場を離れたくないとか、いろいろな思いはあると思うんですけども、いずれはやってくる。いずれは60歳になったら通知が来たり、早期退職勧奨があったりとか。

まだ50歳の方とか40代の方だったら、(その時に向けて)何から始めたらいいですかっていうことで、いかがでしょうか。


池口武志氏(以下、池口):申し遅れましたけど私もまだ63歳で、給料だけは元の保険会社からいただいている、サラリーマンの一員です。人に研究とかして偉そうなことしゃべってますけれども、自分事でもあって。自分だって2年後~3年後どうするのか、何からしとけばもっと良かったのかなとか、後悔とか反省とかが日々胸中で渦巻いている1人でございます。

そういう中では、同じ会社で65歳まで仕事をするにしても、あるいは少し前倒しで会社を離れてご自身で別のキャリアチェンジをなさっていくにしても、自分の強みみたいなものをしっかりと自分でも理解して、そのことをしっかりと語れるふうになっていないといけない。

私もそうですが、大企業にいると、3年に1度転勤をさせられて、嫌なところでも「ありがとうございます」と言いながら面従腹背で転勤に付き合ってきたわけです。なので、自分がやりたいこととか、自分の付加価値といったものを言語化する機会が少ないと思います。

もし会社でキャリア研修なんかがあればぜひ参加して、自分の強み・持ち味みたいなものを少し言葉にして、他人からもアドバイスを受けてみる機会を意図的に作っていくことが必要だと思います。

越境体験を通してキャリアの可能性の広がりを感じる

池口:先ほどから私は企業人事部とも付き合いがたくさんあると言いましたけれども、企業人事部の方の悩みは、「せっかく50代の方向けにキャリア研修を今年から始めたのに、手挙げ制でやったら誰も手を挙げなかった」と。

「本当に肩透かしを食らった。どうやったらモヤモヤしている自社の中高年社員が、積極的にこういったキャリア研修の機会を自ら主体的に使っていけるのか。その打ち出し方から、池口さんが相談に乗ってください」みたいな企業さんも多いので。

みなさまの勤務先でキャリア開発プログラムみたいなものがあれば、そういったものに行かないのは本当にもったいないなと思います。MINTさん(Project MINT)のパーパスの学校とか、私の早稲田(での取り組み)とか、そういった機会は他にもいっぱいいっぱいあるんだろうなと思いますので。

まずはそういったところに越境体験してみて、自分がいかに自分の可能性を過小評価していたのかみたいな、他人から自分を評価してもらうことでキャリアの可能性の広がりみたいなものを感じていただくところから始められたらいいかなって思います。

植山:わー、すごいです。ありがとうございます。本当にごもっともというか、おっしゃるとおりですよね。まずは強みというか、「自分はこういうことが役に立つんじゃないか」とか……。

自分の強みがわからない人への対処法

植山:これは私のパターンなんですが、私は30歳まで大企業のサラリーマンだったんですよね。その当時、私がやっていた仕事って、間接部門にいたので、大きい組織の中の調整みたいな。社内調整とかはめっちゃやるけれども、ビジネスの実体をバリバリ回すみたいなことはしなくて。

社内調整はできるけど、これといって強みがないジェネラリストだったんですよ。今日の参加者の方は、みなさん専門職とか何かしら専門スキルとか強みがわかってるって方もいらっしゃるかもしれないんですけど。

例えばこういうジェネラリストみたいな方で、強みがわからないという方は、どう発掘したらいいでしょうか。

池口:おすすめはあります。私も管理職がずっと長くて、(お客様の声は)生命保険を買ってくださる方、生命保険金を受け取っていただく方のある「お客さまの声アンケート」みたいな文字面だけで理解していたわけで、直接エンドユーザーとの接点は、本社にいる時はものすごく少なかったです。

役職定年になったり、60歳再雇用になったりすると、管理職から外れて、現場でお客さま担当とかそういったプレイヤーに戻るケースが多いと思います。

「俺は今まずっと管理職だったのに、なんでこんな現場の末端のプレイヤー業務に変わらないといけないのか」と不平不満を言う方もいますが、逆にそういったエンドユーザーと直接接する仕事になって、「うちの会社の商品って、こういうようなことで役立っていたのか」と、むしろ喜々として、プレイヤーとして仕事をされる方もいます。

65歳まで管理職で、いろいろな人の顔色ばかりうかがって、ホッチキスだけ止めて「企画書できました」みたいな仕事をしてるよりは、やはりエンドユーザーの声みたいな……。

先ほどの私の話の、知的障害者から「お兄さんのおかげでありがとう」と言ってもらえた喜びなんかもそれに近いかもしれません。

いずれ管理業務から離れてプレイヤー業務に戻るのあれば、直接自社の商品が実際どう評価されてるのかを、文字面ではなくて肌身で感じるようなプレイヤー職に早いうちに戻られたほうが、結果的には会社を卒業した後も、その時の肌触り感覚といったものが、別の仕事でも生かしていけるんじゃないのかなと思います。

植山:わー、ありがとうございます。エンドユーザーと接するっていうこと、本当に大切だなと思いました。ありがとうございます。

会社員勤めのマインドセットから脱却するための考え方

植山:じゃあ次の質問。まさに今のご回答にも関連するんですけども、会社でエンドユーザーと接するとか、知的障害者施設に行ってみて心をまっさらにして接するとか、今までの会社員勤めのマインドセットでのままでいると、そういう一歩踏み出す勇気を出すのはなかなか難しいのかなと思います。

こういう会社員勤めのマインドセットから脱却するにあたって必要な考え方はありますでしょうか。

池口:そうですね。組織の一員で長くいると、先ほどの話じゃないですが、空気を読むみたいなことにどうしても長けちゃったりするわけです。

くどいですが、いずれは一個人に遅かれ早かれ戻っていくわけです。ただ個人として自分が何がしたいのか、あるいは何が付加価値として世の中に提供できるのか。そういったことを早く、頭の中だけでもいいので思考訓練を始めるとか。

その延長線で、先ほどお話ししたサードプレイスみたいなところに一歩を踏み出して、会社でもない、家でもない、今まで会わなかった人たちと接することで、自分といったものを客観視する。そういったことを機会として自ら足を運んでいくことが非常に大切じゃないのかなと思います。

企業さんでキャリア研修をして、そういう話をすると、頷いて「自分もこういったことをしてみたい」とおっしゃる社員さんも何分の一かはいらっしゃいます。

ただ、そういったことから目を背けて「そういったことは関わりたくないし、見たくもない」「65歳になればなるようになるんじゃないのか」みたいに思われてる方もいらっしゃいますので、みんながみんな、自らそういったサードプレイスにいかれるわけじゃないんですけど。

60代前半の仕事満足度と人生満足度が圧倒的に低い

池口:話が少し飛んじゃうかもしれませんけど、今年(2025年)、私たちの調査で60代と70代のお仕事をされている人の仕事満足度調査を今やっていて、やっと結果がまとまりつつあります。

ちょっとショッキングだったのは、60代前半の方の仕事満足度と人生満足度が男女問わず圧倒的に低くて。先ほど「60代前半に会社で立場が変わって現場業務になったら、むしろ喜んだらいいのに」と申しましたけど、会社の処遇に不満が高まったとか何かで、60代前半はやはり満足度の崖になっていまして。それが65歳から79歳にかけて、また上がっていきます。

仕事満足度だけではなくて、知らない人と交流をする意欲みたいなことも、60代前半の方が一番低くて。お年を召されれば召されるほど、知らない人と交流することが苦にならないようになっていくみたいですが、そういう意味では、50代のうちに知らないところで交流していくような思考回路とか、フットワークの軽さを持っておけば、60代前半で崖のように落ちていくことは避けられるんじゃないのかなというふうに感じます。

植山:わあ、ありがとうございます。本当にすごく大切なお考えを共有いただきました。ありがとうございます。

コメントにも書いていただきました。65歳まで働く人もいるし、55歳で辞める人もいるし、多様になってきて、(仕事を辞めるタイミングは)必ずしも一律ではないんだけれども。

でもやはり自分に任せてもらえるというところで、まさに池口さんがおっしゃったように、まずは自分が個人としてどうありたいかを意識して、客観視していく場に行くというところですよね。

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