【3行要約】・定年後のキャリアに不安を感じる50代が増加する中、多くの人が「次の1歩」をどう踏み出すべきか模索しています。
・池口武志氏の研究では、定年後に充実した生活を送る人たちは、会社以外の場所で「越境体験」をし、自分の価値を再発見していると語りました。
・自分の興味関心に基づいた活動や学び直し、ボランティアなど、まずは小さな1歩を踏み出すことで、予想外の場所で自分の新たな可能性が開花するかもしれません。
前回の記事はこちら 定年後のキャリアにロールモデルがいない
植山智恵氏(以下、植山):今日は池口さんにぜひ聞きたいトークテーマに移っていきたいと思います。(スライドを示して)こちらが事務局で用意させていただいた問いになります。
まずは事務局で用意した問いで、みなさんの疑問がちょっと解消されるかなと思っております。
まず1番目からいきたいと思います。これは等身大の……。例えば今50歳で、大企業で働いてる方がいたとします。
(その方の悩みとして)「ロールモデルがいません。どんな定年後キャリアがある? 生き生きしてる人はどんな人?」と。先ほど30人以上の方たちのインタビューをされたっていうことでしたが、そういった方たちってどんなお仕事をされているんでしょうか。
池口武志氏(以下、池口):これは先ほど言った、大学院の修士論文でも概念化を図ったテーマです。やはり共通点はいくつかありました。
現役時代、一生懸命に仕事をされたというのは、ベーシックな共通点です。
今日のご参加者の中にもいらっしゃるかもしれませんけど、50代半ばになって役職定年とか、あるいは会社から早期退職勧奨を受けたとか、何かしらキャリアの転勤みたいなものにも遭遇もされています。モヤモヤが高じてきた方もけっこういらっしゃいました。
定年後に生き生きとしている方の特徴
池口:どういう方が生き生きされてるのかと言いますと、モヤモヤしっぱなしだけではなくて、何かしら新しい行動に出られた。悩みながらだし、最初から成功の確信を持って一歩を踏み出されてるわけでもな~んでもないんですけれども。
やはり越境体験みたいなもので、会社と家以外の世界に一歩を踏み出されて、そこで自分の付加価値みたいなものを客観的に感じることができた。
例えば私は保険会社(勤め)で、保険のことは一定わかっていますが、周りも全部同じ人間ばかりなので、世間広いですが、自分の希少価値・付加価値はわからないわけです。
(しかし)越境体験してみると、自分の培ってきたことが思わぬところで重宝がられるということは、(生き生きさえれている方は)業種バラバラでも異口同音におっしゃいました。
何かしらキャリアの転勤に遭遇してもそのまま埋没するのではなくて、サードプレイスに越境体験を自らなさった行動力(がある人が)、行き来されてる人の特徴かなと感じたところです。
先ほどのロールモデルの31人の方も、すんなりと踏み出された方は少数派ですが。悩んでいるんであれば、ぜひ一歩踏み出してみるということは大事かなって思います。
植山:ありがとうございます。
サードプレイスをどのように選ぶか
植山:自ら越境体験というか、これまでの会社とは違うサードプレイスみたいな場所に行って、そこで付加価値を作っていくということなんですけれども。
自分にとっていいサードプレイスというか、自分が「次ここに行って、ここで価値を出したい」と選ぶポイントというか。どう選べばいいんでしょうか。
池口:そうですね。自分の興味関心事項、好きなこと、やってみたいこと。会社の上司に聞くわけじゃありませんので、やはり自分の指向、オリエンテッドな指向みたいなことに合う場所に行ってみる。
そういう意味では、いきなり転職しましょうとか、そういったことを先ほどの早稲田大学(の講座)でも言ってるわけでもなんでもなくて。
「ご自身が子どもの頃から好きなことって何でしたか」とか「どういった空間が居心地がいいと感じられますか」とか。あるいは、自分のことだけじゃなくて、社会には困った人がいっぱいいっぱいいるわけですから、培ってきたことから「何か還元できることってないですか」というようなことも問いかけられます。
あと「仕事じゃないけれども学びたい」みたいなこと。私も50代、60代になって、20数歳の学生時代に勉強していたらよかったかなって反省はするんですが……。
先ほど女性の中高年の方のうち6割が「本格的に学び直したい」って(回答したという)アンケートが出てると言いましたが、何か興味・関心のあることの学び講座みたいなことを探すということも、越境体験としては非常に有効かなと思います。
人から言われたからというよりは、まずは自分がどんなことがしてみたいのか。どんなことに興味関心があるのかみたいなことから探されたらどうかなって思います。
私のよく知っている女性の方、脳トレの会社に勤めてる人ですが、手芸が好きだそうです。この手芸をベースに、あちこちにアンテナ、ネットワークを広げて、手芸の脳トレ講座みたいな仕事にもつなげられました。
手芸がきっかけでラオスまで行かれて、ラオスの手芸みたいなものに魅せられて、ラオスの少数民族の就学支援みたいなものをクラファンで立ち上げた強者もいらっしゃいます。何か好きなことであれば深掘りされていくんじゃないのかなと思います。
植山:ありがとうございます。
最初はボランティアぐらいの気持ちで始める
植山:越境体験っていうのは、必ずしもお金、収入をもたらすものだったり、キャリアアップにつながることだったりではなくて、自分の内発的な「こんなのやってみたいな」というものに従ったほうがうまくいくんでしょうかね。
池口:そうですね。副業なさっている方も何人かインタビューさせてもらいましたが、最初からお金稼ぎが目的で副業された方は、私がインタビューした人では少なかったです。
私もキャリコンの端くれなので、キャリアコンサルタントの方にインタビューすることも多かったんですけれども。会社ではマーケティングの仕事をずっとしていて活かせないので、何かに活かすためにということで、キャリアコンサルタント講座の、交通費しか出ないお世話係のアルバイトを始められたとか。
あるいは、どこかの教育研修会社と契約して、キャリア面談のアルバイトを非常に低い単価で始めた方もいらっしゃいます。
そうやって自分が興味・関心のあることで、時給がぜんぜん高くなくても、そのこと自体が自分の肥やしになって、65歳以降の展望が開けるという方もいらっしゃって。
最初からリターンみたいなもの、テイクアンドギブみたいな趣向で複業を始めるよりは、最初はボランティアから始めるぐらいのかたちで、好きなことにネットワーク、アンテナを広げられれば、結果的にはそのことが長続きしてうまくいくんじゃないのかなって、副業されたインタビューでも感じたことです。
植山:わあ、すばらしいです。ありがとうございます。
アンテナ張っていろいろな越境体験をしてみる
植山:セカンドキャリアを考えている方の懸念点として、やはりお金を心配されてる方が多いんですけれども。
最初はそんなことを心配せずに、例えば副業ベースだったら、お金は生み出さないけれども、心躍るような、自分の楽しみをまずはどんどん追求していくってことをやってみると、結果的にそれが相乗効果を生んで、長続きしてうまくいくということですよね。
池口:そうですね。蛇足ながら、私は知的障害者の支援施設でボランティア活動を始めまして。最初は仕事のきらいもあったんですけど、知的障害者の支援施設は会社以上に圧倒的に人手不足で、会社員が少しでもボランティアに来てほしいと願われています。
資格がなくても障害者支援施設でできることっていっぱいあるんですけれども、自分も人に言う手前、ボランティアぐらいしとかないとかっこ悪いと思って。羽田空港の近くの障害者支援施設に何回かボランティアに行ったんですけれども。やはり自分はそういったことが性に合うんじゃないのかなって思いました。
それまで私は知的障害者の人との接点って基本は持っていなかったんですけれども。行ってみると、ものすごく自分が活かされているというか。
会社で上司から「池口くん、よくやった」と言われるより、知的障害者の方から「お兄さんのおかげで今日は楽しかったです」と言ってもらえれた方が、言葉に表も裏もなくて。本当に自分の気持ちがすーっときれいになるような体験もしたりしました。
どこに自分の生きがいみたいなことを感じるかは、アンテナ張っていろいろなところに越境体験してみると、思わぬところから見つかるんじゃないのかなと思います。
植山:すばらしいお話をありがとうございます。自分の価値って、会社でのアウトプットだけじゃなくって、人としてこの社会の中で生きている中で、自分がすごく役に立てることがあるということですよね。本当にすばらしいお話、ありがとうございます。