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Project MINT Luminary Talk!「定年後のキャリア 〜“その日”は突然やってくる―後悔しないために、今からできること」(全3記事)

若い世代より50〜60代の方が実はキャリア自律志向は高い 定年後研究所・所長が語るセカンドキャリアの実態

【3行要約】
・定年後も生き生きと働きたいという声が増えるなか、多くの中高年は自分らしいキャリア構築に悩みを抱えています。
・定年後研究所の池口武志氏は「60代以降も自律志向が強い人が多く、世代より個人差が大きい」と指摘しました。
・年齢に関わらずキャリア自律を目指し、多様なロールモデルに触れることで人生100年時代の新たな可能性を見出せると提言しています。

定年後研究所の池口武志氏

植山智恵氏(以下、植山):さっそく今日の対談イベントのメインである池口さんにバトンタッチをしたいと思います。池口さんに簡単に自己紹介をしていただきたいと思います。お願いします。

池口武志氏(以下、池口):みなさんこんにちは、こんばんは。池口と申します。植山さんから縁あって今日のような出番をちょうだいしています。簡単に5分以内で自己紹介をさせていただきます。「定年後研究所」については聞いたことある方のほうが圧倒的に少ないと思うんですけれども、定年後のキャリア人生の充実を目的に、7年ほど前に設立された小さな小さな研究所で、実質私ほぼ1人で研究活動などをしている研究所です。

企業の人事部の人と関係を作って雇う側の話なども積極的に聞いていますし、調査レポートということで、毎年1つ、どちらかといえば40・50・60代の働く人たちの意識調査みたいなことも真面目にしています。

また、調査するだけではなくて、そういったものをキャリア研修のプログラム化していくこともしていますし、自分自身もキャリア研修の講師役をさせていただいています。

2つの会社員人生

池口:(スライドを示して)こちらが私の経歴で、今年(2025年)63歳になります。保険会社に入社して、53歳までは普通の管理職として、中間管理職のしんどさ、会社と現場の板挟みみたいなことで悩み苦しみながらずーっと続けてきました。

縁あってキャリア研修などを企業さんに提供している関連会社に出向して、7年前に定年後研究所といったものを作り、21年から所長というかたちになっています。

前半は普通の会社員で、管理職を本社と現場と半々ぐらいで行き来をしていた人間です。それが急に53歳になって、しばらくして研究所長ということで。

研究手法も何も知りませんでしたので、日本で(定年後のキャリアについての)修士課程・博士課程が唯一ある東京の桜美林大学に恥ずかしながら58歳で入学をしまして。60歳、ほぼ最年長で卒業をしたというふうなところから、管理職みたいなものは、アンラーンして。

それからは研究所長として、どちらかといえば管理職じゃなくてプレイヤーとして仕事をしてきているかたちで、会社員人生を2つ味わっているような感じです。

調査レポート例

池口:2021年、コロナの真っ最中に大手企業の人事部の人の交流会みたいなものを作りたいと思いまして。途中からコロナが下火になってきたので、2022~2023年からは対面オンリー、東京と大阪で同じプログラムでずーっと続けてきています。

分科会が売りでして、企業の人事部の方が横のネットワークを築いていただく場としてもご利用いただいています。今では100社を超える企業さんにご参加をいただいています。

また調査研究としては、企業人事部、とりわけ70歳の雇用とか年功序列みたいなものを……。著名な伝統企業でも「もう年功序列やめました」みたいな話なんかも時折聞きますので、「本当にやめたんですか?」みたいな話を、昨年(2024年)大手企業に10社ほどヒアリングに行き、レポートにまとめています。

また、企業の話だけではなくて、先ほどお話ししたとおり、個人のキャリアのヒストリー、変遷みたいなものをヒアリングすることにも力を入れています。自分もどちらかといえば、そちらのほうが好きですので。

30人ぐらい、自分から見て「生き生きと輝いていらっしゃるなぁ」と思うような人生の先輩、中には50代の方もいらっしゃいます。60~70代の方もいらっしゃって。会社員を始めてから、転身なさってる方も多いので。

(スライドを示して)どういう浮き沈みがあって今の境地に達せられたのかみたいなことを徹底的にヒアリングして、何か概念化ができないかなぁとチャレンジしたものがこちらの冊子でございまして。

2年ほど前には中高年の女性社員の意識調査ということで、これはヒアリングではなくて何千人の中高年女性社員の意識調査をさせてもらいました。50~60代の女性社員の6割ぐらいの方は学び直しといったものにものすごく関心があるということです。

「昔は断ったけれども、子育てが一段落した60代の今だったら管理職になっていいですよ」みたいな方が意外と多くて。保険会社時代には自分もなかなか女性活躍(推進)ができなかったので「今だったら管理職になってくれるのか。もっと早くなってよ」みたいに思ったりもしたところです。

また、多くの会社がキャリア自律と言っていますし、我々一人ひとりがキャリア自律というようなことをパーパス含めて志向してるわけですけど、自律志向の方とそうじゃない方と、どこが決定的な差なんだろうというようなことも、3年~4年前に大規模な調査をしました。

一言で言うと、年齢は関係ない。(調査を)やる前は、若い人がキャリア自律志向が強くて、50~60代の方は自律志向が弱いのかなと思ったら、むしろ50~60代の方がキャリア自律志向が強かったという結果も出ました。

ただ全員ではなくて、強い人と弱い人とで当然二極化していました。じゃあ何がその分岐点なんだろうという調査もしました。

キャリアのブラッシュアップ講座

池口:あと2年間、早稲田大学さんと一緒に40歳以上64歳までの方、中心は50代の大手企業の管理職、あるいは役職定年になった方が多いんですが、半年間コースということで、キャリアをブラッシュアップする講座を2回開いて、2025年10月から3期目を迎えるところです。

自腹で来てもらいますので、企業がやるキャリア研修のように、人事部の人に「どんなトーンでやったらいいですか」みたいにおもねる必要は一切ありません。

定員は40人で、それぞれ生まれ育ちも勤務先もキャリア志向もバラバラではあるんですけれども、モヤモヤしていることだけは共通点で。

自分の将来のキャリア選択肢を知ってる人が多いけれども、いろいろな人に早稲田大学の教室に来ていただいて、ロールモデル・キャリアの多様性溢れた人の話をシャワーのように浴びて聞いていただいて、自分の可能性を広げてもらうような学校を開いています。

2年とも男女半々ぐらいの感じで、特に女性の方は先ほどの話じゃないですが、「子育てが一段落したので、これからは自分のために投資したい」みたいなことが、入学動機で(持っている方が多く)いらっしゃいます。

地域住民向けセカンドキャリアセミナー

池口:また、企業のキャリア研修だけではなくて、自治体から地域おこしのようなことを(やらないかと)声かけいただきました。土曜日の昼下がり、自治体の市役所、区役所の会議室となると自分で行くことができるので、ものすごくキャリア自律志向の強い方に講座に来ていただいて。

初対面ながら、それなりのワークショップ形式が成り立って、2~3時間後にはわりといい表情で会場を後にされるので、こういった地域の講座なんかも楽しみにしているところです。

大企業・中小企業向けセミナーも実施

池口:また、経営者さま向けにも「中高年社員をもっともっと活用されたらどうですか」という、お節介焼き的なセミナーなんかもします。来られる方は中小企業の社長さんが多いので、大企業向けに話をするのとは正直真反対な反応が返ってきまして。

地方の中小企業の経営者さま向けにお節介焼きセミナーをすると、「君みたいなやつに言われなくても、人手不足で、うちの会社では70代の社員が生き生きといーっぱい働いている」「一番気にしてるのは労災事故の防止だ」みたいな反応、返り血を浴びるようなかたちも、何回か経験しています。

70代以上のお仕事マッチング

池口:また、2024年は神戸市さんと一緒になって70代以上のお仕事マッチングみたいなことも何回かさせてもらいました。70代になっても仕事がしたいと思われる方が男性女性問わず多くて。

アンケート調査したら、もはやお金目当てではなくて生きがい探しみたいなこと……。どんなエッセンシャルワーカー的なお仕事であっても、掃除の仕事が楽しくて楽しくて仕方がないと。「どれだけ短い時間でこのビルの掃除ができるのか、工夫しながらしてるんです」というふうなことをおっしゃる70代の男性・女性の方もいらっしゃって。

私はまだエッセンシャルワークに対しての抵抗感を心の底には持ってるんですけれども、70~80代でエッセンシャルワークされてる方は「そのこと自体が喜びだ」みたいにおっしゃるので。人生の先輩というのはすごい方がいらっしゃるんだなと感じているところです。


以上、長くなってすみません。終わらせていただきます。

植山:ありがとうございます。本当にすばらしい活動をされていまして。大企業のミドルシニア社員の方たちのキャリア支援や、あとはいろいろな研究ですよね。セカンドキャリアを実績に作り上げている方の成功要因はなんなのかを研究されていたりとか。

あとは大企業にとどまらず、中小企業の方や地方自治体と連携をされて。多様な面で定年後のキャリアというか、60歳~70歳以降のキャリアにすごくどっぷり浸かっていらっしゃる。まさに最前線にいらっしゃる方なんだなと思っております。

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