Willから入る発想のズレ
豊間根:だから「Will・Can・Must」という、「Will」は自分がやりたいことですよね。「Can」は自分ができること。「Must」は自分がするべきこと。
これは裏返すと、誰かにそれをしてほしいと思われていることなわけですよね。「Must」からやらないとそもそも仕事が成立しないんですよ。それをね、「Will」から考えるから変なことになる。
岩本:(笑)。
豊間根:「Will」から入るっていうのはそもそも大前提がずれているの。
岩本:そうですね、そう言われてみれば。
豊間根:「Must」からやれっていう話なんですよ。これは別に、だから、「お前、黙ってやれ!」みたいな話じゃないんです。これは当たり前なんですよ。誰かが喜んでくれるからお返しをもらうのが仕事なんだから、「じゃあ、喜ばせようぜ。そのために何するの?」っていう話なわけですよ。
やりたいことは見つからなくてあたりまえ
岩本:でも、なんかキャリアの話になると、どうしても「自分探し」とか「やりたいこと探し」とかになっちゃうことが多いですよね。
豊間根:そうそう、そうそう。どうでもいい!
岩本:(笑)。
豊間根:あっ、どうでもいいは言い過ぎ(笑)。どうでもよくはない。やりたいことは大事。
あと、もう1個言いたいのはですね、やりたいことって、誰しもあるとみんな思っているの。なんでか知らないけど、普通、ないから。
岩本:まぁ、そうですね(笑)。
豊間根:俺も独立して、起業して、いろんなお客さんと関わっていく中で、仕事をおもしろくするっていうのが自分や会社の使命だなっていう思いをより強くしていったわけだけども、 別に、会社を辞める時に、「仕事をおもしろくしたい!」って辞めたわけじゃないから。
岩本:そうですよね(笑)。
豊間根:「あっ、なんかこれ、いけるな。辞めるか」みたいな感じで辞めているから。ないんですよ、普通。
行動と対話でWillは育つ
豊間根:いろんな人との関わり合いとか、喜ばせて価値提供したり、アクションとか対話をしている中で、徐々におぼろげながら見えてくるものだし、今の自分が思っているやりたいことも、たぶん3年後、5年後には変わっているんですよ。
だから、普通はないし、人との対話とか動いた中で見えてくるものだし、ぜんぜん変わり得るものっていう認識を持ったほうがいいんですよ。
岩本:でも今の時代って、けっこうSNSとかでキラキラしたものが見えたり、「趣味を仕事に」って言う人たちのメッセージを見ちゃったりとか、そういうのでちょっと、「あっ、やりたいことがない自分って、あまり良くないのかな」とか思っちゃう人もいるんじゃないかなと。
豊間根:間違いない。だから、上司なんですよね。信頼できる上司が「あなたに必要なのはこれだ。その先にこういう世界があるから、今はこれをやり切ってほしい。それがあなたにとってもいい」と言われて、「確かに」って思えてがんばれるかどうかがすごく大事なんですよ。
僕は今、どっちかっていうと部下の人向けに話しているので、上司がイケていなくても、「今の俺がやり切るのはこれだ」っていうことを1個、腹を決めてやり切ることが大事なわけです。
岩本:うん、大事ですね。
豊間根:まず大前提として「Must」をちゃんとやるのってムズいんですよ。「Will・Can・Must」のベン図がよくあるじゃないですか。
岩本:はい。
豊間根:そもそも、仕事をし始めたばかりの時は「Can」と「Will」が小さいんですよ。「Must」のほうが大きくて、被っている領域が小さいんですよね。
この「Must」をちゃんとがんばっていくと、だんだん経験や工夫が、自分の実績になって、できることが増えて「Can」が大きくなるんですよ。「Can」が大きくなると、小さかった「Will」に被る領域が出てくるんだよね。
成果にフォーカスするとWillが見える
豊間根:めっちゃがんばって、とりあえずテレアポしまくっていたら、「あれ? なんか俺、初めましての人の懐に入るの、意外とうまくね?」とか、「あれ? こういう数字とかをすごく細かく見て分析するのがけっこう得意じゃね?」みたいなことが、成果を出すっていうことにフォーカスして、創意工夫している中で徐々に見えてくることがあるんですよ。
それが「Will」になる。でもその創意工夫をしてがんばらないと見えない。
岩本:(笑)。なるほど。
豊間根:1回やれっていう話なんですよ、というのをね、もう声を大にして言いたい。
岩本:だから最初が「Must」っていうことなんですね。
環境が悪ければ場を変える
豊間根:そう、「Must」から。キャリアはね、自分軸で考えたら絶対にうまくいかないです。他人軸。自分に誰がどういう期待をしているか。それに自分がどういう創意工夫をすれば出せる成果が大きくなるかっていう、他人軸で考えるのがキャリアは超大事なんですよ。
岩本:逆に、今見てくださっている方で、20代後半から30代前半の方、まだやりたいことが見つかっていない方もたくさんいると思うので、すごく勇気を与える動画(笑)。
豊間根:なくていい、なくていい(笑)。
岩本:なくて大丈夫だよっていう。
豊間根:だから、1回成果を出す。圧倒的に目の前の人を喜ばす成果を出した先に見える。ただ問題点で言うと、前提として、人が喜んでくれるってうれしいじゃないですか?
岩本:はい。うれしい。
豊間根:だからやりたいことかどうかを考えずに、「この人が喜んでくれたら俺はうれしいし、いろんな人を喜ばせられたらうれしい」っていうところをいったんモチベーションにしてやり切ったらいいんだけど、上司が本当に終わっているとか……。
岩本:(笑)。「喜ばせたくないな、この人」みたいな。
豊間根:そうそう。たぶんね、俺とかヒロカって、言うても恵まれているから。
岩本:いや、そうなんですよ。私もそう思います。
豊間根:我々の想像を絶するヤバい職場環境って世の中に存在するので。
岩本:うんうん、ありますね。
豊間根:そういう場合は、確かに場所を変えたほうがいい場合もあると思う。そこはあるんですけども、基本的なスタンスとしては、やはり「目の前の人を喜ばす成果を出す」「他人軸で考える」っていうのが最初のアプローチとして重要です。
強いWillを自己満で終わらせない
豊間根:逆にね、たまに、やりたいことがめっちゃある人もいるんですよ。
岩本:ほぉ。
豊間根:いるじゃん、たまに。「私は農業のビジネスがやりたいんです!」。
岩本:とか、なんか「絶対こういう人になりたい」みたいな……。
豊間根:そうそう、あるじゃないですか。それね、めっちゃいいです(笑)。
岩本:(笑)。めっちゃいいんだ。
豊間根:やりたいことは普通ないから、やりたいことがあるのはすごくいいんですよ。ただ、こういう「私はこれがやりたいです」がめっちゃあるのっていいんだけど、時々注意が必要なのは、さっきも言ったとおり、「Will」って他者からしたらどうでもいい場合があるんですよね。
岩本:まぁ、確かに。
豊間根:別に「私は農業ビジネスがやりたいです」って言ったとしても、「ふーん」になっちゃって、そこで誰も喜ばない。誰も価値を感じないんだったら、それってただの自己満足であり、独りよがりなんですよ。
小さく形にしてフィードバックを得る
豊間根:それをめちゃくちゃ突き詰めて、なにかの作品を作る。で、だんだんそれが一種の世界観とか、ブランドを形作るというのがアーティストなわけで、それだといいんですよ。でもアーティストって最初は金にならないんですよね。
岩本:まぁ、そうですよね。
豊間根:食っていくんだったら「Will」だけじゃダメなんですよ。「Must」。それによって誰が喜ぶかを考えなければいけなくて。
なので、自分が「これをやりたいんだ」って自己満で突き進むんじゃなくて、やはり考えていることを形にして、いろんな人にぶつけて、フィードバックを得ていかないと、自分の強い「Will」だけがただの自己満足に突き進むかたちで、誰も喜んでくれない状態になっちゃうので。
やはり「形にして、当てて、フィードバックをもらう」ことをしていかないといけないんですね。
豊間根:あと、「自分は絶対、これをやりたい!」みたいな人って、けっこう、興味の範囲がコロコロと変わっていくタイプの、多動っぽい人が多い傾向があるので。やはりどこかで「自分はここをやり切るんだ」っていうタグを1つ決めて、深く腰を据えてやり切っていかないと、何も残らないことがあるので、そこは注意ですよね。
岩本:はい。
仕事は他者視点で考える
豊間根:ということで、「Will-Can-Must」じゃなくて「Must-Can-Will」だという話をしましたけども。どうですか、ヒロカさんは「Must」していますか?
岩本:そうですね。それで言うと、私はどちらかというと、そもそも「Must-Can-Will」の考え方だったのかもしれない。
豊間根:確かにね。ヒロカはけっこう脳筋なところがあるからね(笑)。トレーニーだしね。
岩本:(笑)。でも確かに、周りの同期とかでも、キャリアがうまくいっているというか、仕事が楽しそうな人の特徴は、やはり上司との関係がうまくいっている人。
豊間根:そうね。
岩本:上司を喜ばせるマインドで仕事をしている人。そう思っていないかもしれないんですけど、結果的にそうなっている人が、仕事を楽しそうにやっている印象があるので。
豊間根:間違いない。
岩本:まずはそこから始めてみるっていうのは、ありかもなと思いました。
豊間根:間違いない。上司が大事なんですよね。上司はね、大事MANブラザーズなんですけども。
岩本:(笑)。
豊間根:とはいえね、上司もたぶん、いろいろ抱えているので。
岩本:まぁ、そうですね。
豊間根:「上司がクソだな」みたいな人はね、もちろん本当にクソな場合もあると思うんだけど、あんまり他責にしないで、「じゃあ、自分が何ができるのか?」って考えたほうが、やはり人生はおもしろくなりますね。
ということで、やりたいことがなくて困っている方は、「Will」から考えるのではなくて、いったん「Must」にフォーカスをして、自分が今何を求められているのか。
どういう成果や状態を作ればめっちゃうれしいのか。それによって誰が喜んでくれるのか。上司なのか、さらにその上司なのか、あるいはお客さまなのか、あるいは社内の別の部署の人なのか。
誰がすごく喜ぶのかを想像しながら、他者視点で考えると、キャリアとか仕事はうまくいくんじゃないかなと思います。