オトナタチ×特定非営利活動法人エティック(全2記事)
「仕事で社会貢献したい」という転職で失敗する人の共通点 ソーシャルセクター転職のプロが語る落とし穴 [2/2]
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NPOに関する、よくある誤解
長谷川:収益というキーワードが出たなって思ったんですけども、よくソーシャルセクターとかNPO、非営利団体みたいなものを語る際に、世の中の誤解として、「そもそもNPOって給料をもらえるんですか?」とか(笑)。
腰塚:そうなんですよね(笑)。
長谷川:「利益を出しちゃいけないんですよね?」とか、こういうのをよく聞きませんか?
腰塚:あります、あります。最近は……まぁ、最近でもありますけど、私が入社した15年前とかは、もっと明確に(ありました)。「転職します。退社届を出したい」って上司に言った時に、「それはボランティア休暇じゃダメなのか?」みたいな(笑)。転職だと認知してもらえないこともありましたし。
長谷川:あぁ。
腰塚:今も、「一緒に共創しましょう」って言った時に、「えっ、お金取るんですか?」って言われるようなこともなくはないので、認識としてはまだそうなんだろうなと思いつつ、普通に必要な費用はいただいて仕事としてやるのはNPOも変わらないと。
タスクは一緒でもOSが違う
長谷川:そうですよね。いや、さっき雇用とか事業の継続・発展みたいな話もあった時に、もちろん法人格に限らずどこもそれは大事にしているんだろうなとは思ったので(笑)。
腰塚:そうです、もちろん。
長谷川:そうすると本当に、(事業として優先する)順番は違うのかもしれないですけど、実はあんまり変わらないような気もしちゃったんですよね。
腰塚:そうですね。どちらも経験して、しかもキャリアのお手伝いもしていてしみじみ感じるのは、やっているタスクは一緒だけど、OSが違うっていう感じで。
営業だったら企業の人と交渉することは普通にあるし、サービスを提供しているのでカスタマーサクセスやカスタマーサポートみたいなことももちろんやっているけれど、それのOSのセットアップが違うという感覚ですね。
ソーシャルセクターへ転職する際の失敗例
長谷川:へぇ。いやぁ、おもしろいですね。抽象論を避けて、ちょっと具体的な話ができればと思います。あらためて実例というか、もちろん人の名前とかは出さないにしても。
腰塚:(笑)。
長谷川:あえて分けますけど、ビジネス界からソーシャル界に(笑)、いろんな方が転職をしたり、キャリアチェンジしていると思うんですが、やはりそこにはいろんな成功や、もしかしたら失敗例もあったかもしれないなと想像していまして。
腰塚:そうですね。
長谷川:僕も聞く機会はあるんですけれども、あらためてどんな成功例や共通点があるのか、そのあたりから聞ければと思うんですけど、いかがですか?
腰塚:そうですね。たぶん失敗、成功の順で話したほうがクリアかもしれないんですけど。
長谷川:なるほど。じゃあ、失敗の話を最初にしましょう。
腰塚:失敗からいくと、私たちもそうかもしれないんですけど、ビジネスからソーシャルにいこうって思った時に、やはり社会課題にすごく引っ張られるんですよね。今まではビジネスをしていました。でも、もっと社会貢献がしたいから、私は何の役に立ちたいんだろうって思って転職を考え始めるので。
子どもの貧困問題なのか、性の多様性の話なのか、キャリア教育とか教育変革みたいな話なのか、高齢者福祉なのかっていう、私は誰の困り事に貢献したいかを一生懸命に、真剣に内省をしながらテーマを考えるんです。
社会課題を優先しすぎてしまうと起こること
腰塚:そこに引っ張られ過ぎて、普通のBusiness to Businessの転職だったら業界と同じく職種も企業文化も、同僚がどんな人かも大事だって思うけど、業界だけが優先順位として突出しちゃうみたいな。
長谷川:へぇ。
腰塚:だから社会課題に対する団体の問題意識とか着眼点、提供しているソリューションが共感できるかどうかをすごく優先すると、入った後に「こんなはずじゃなかった」「期待値とギャップがあった」って定着できなくて離職しちゃうケースが一番多いと思うんですよね。
長谷川:つまり、実は求職者にとっては、仕事をする上でもっと大事なことがほかにあったっていう話なんですか?
腰塚:そういう話でもあるし、ちょっと冷静さを欠いた判断になっている。(テーマと)同じぐらい大事に見なきゃいけない優先順位が見えない状態で選んじゃっている感覚ですかね。
長谷川:結果的に、いわゆるミスマッチが起きた。
腰塚:そうです、そうです。その(団体が取り組む)テーマ自体は確かに共感していたかもしれないけど、業務の解像度が低くて、実際にやり始めてみたら自分の得意分野とはギャップがあったとか。
長谷川:あぁ、なるほど、なるほど。
普通の転職では当たり前の視点が欠けてしまう
腰塚:社会課題、ソーシャルインパクトにすごくストイックな団体に魅力を感じて入ったけど、そこまで長い時間働くっていうことは自分は志向していなかったのに(笑)すごくハードワークだったとか。スタートアップだからけっこうハードだったとか。
そういう、その人にとって大事なものがたくさんあるんだけど、社会課題だけにすごく引っ張られちゃう。
長谷川:興味深いですね。いわゆる一般的なBusiness to Businessの転職だったら、当たり前のように考慮することを飛ばしちゃうんですね。
腰塚:そうそう。盲目的になっちゃうんですよね。普通のビジネスで言うと、「私、製造業にいきたいです!」なんてことはあまりないと思うんですけど、ソーシャル業界だと起きちゃうんですよね。
長谷川:確かに、ビジネスの世界だとそういう方はごくごく一部ですよね。中にはいらっしゃいますけど。
腰塚:いらっしゃるけど、たぶんその人も、製造業の中でもちゃんと目利きしていると思うんですよね。
長谷川:そうですね。はいはい。
腰塚:でもその目利き(の過程)が飛んじゃうし、カルチャーがちょっと違うから、飛び込むしかないねっていう思い切りの良さもあると思うんですけど。
求められる役割を認識できているか
長谷川:確かに。それこそちょうど先日、某日本のグローバルNGOの事務局長が、そもそもその社会課題に興味なかったっていう話があったぐらい。
腰塚:ありましたね(笑)。
長谷川:すごく社会的にインパクトを残している、老舗のNGOの事務局長として長年活躍されている方が……ある種、まさかの発言でしたけど、そういうこともありますよね。
腰塚:そうそう。それはやはりその人の価値観とか能力も含めて、果たしていきたい役割が組織とフィットしているから、別にテーマに関心がなくても、役割を十分に発揮できるんですよね。
長谷川:そうですよね。
腰塚:だから、もちろん社会課題とかテーマは大事なんですけど、あんまりとらわれ過ぎないっていうことが大事だと思います。
なので逆に、成功例としては、ちゃんと説明会とか面接とか、入職前にコミュニケーションしている中で、自分の役割とか、日常的に何を担っていくかみたいなものが、解像度を高くイメージしていると、入ってからもギャップなくいけるんですよね。
長谷川:すごい、なんだか普通の転職と一緒ですね。
腰塚:いや、そうなんです、そうなんです。それがなんだか、(ソーシャルセクターだと)マジックがかかっちゃうんですよね(笑)。
長谷川:いやぁ、興味深いな。
腰塚:「今までは社会貢献に力を発揮し切れなかったから、次こそは」という、ある種のトラウマ的思考もあると思うんですけど。 続きを読むには会員登録
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