「早期退職」を悪い意味で捉える日本人
田中:ありがとうございます。コメントも来ています。オオタニさん、ありがとうございます。オオタニさんはトヨタにいらっしゃって、もう今はバリバリやられているんです。このご質問はすごく重要で、要は米国ではアーリーリタイアメントでまだまだ自分で自分の目標を持って早期に退職している方もおられると。
その後どうなっているかというと……これは米国のすべてを私自身が語り得ないんですけど、やはり日本社会と1つ違うのは、最初から自分のキャリアを築くと(ころだと)思っているんですよね。
だから例えばバークレーにいた私の友人もすごく自分のキャリアに対する意識が高かったから、「3年でこれをして、5年でこれをして」って設計しているんだよね。なかなか日本人ってそんなに(自分の人生設計を)考えていないんですけど、やはり我々も人生を設計できるという意識をちゃんと持ったほうがよくて。
そりゃ、日本の今の語り草としての早期退職をどこかのメディアが取り上げると、「会社側が早期退職を勧告して(社員が)辞めさせられた」みたいな(報道になります)。そうじゃないよねと。会社の論理もわかりましょうよと。自ら手を挙げて、ちゃんと自分のキャリアステージを作っていくことを増やさないと。
山口:そうですね。
田中:そのうちの選択肢の中の1つにアーリーリタイアメントもあるよという文化を作らないと、会社にとっても個人にとっても良い関係にならないと思うんですよね。少なくともこの10年、早期退職に関しては、例えば「2万人、3万人が早期退職です」と、すごく悪い文脈で語られているんだよ。
山口・野澤:うん。
早期退職の在り方が変わってきている
田中:いやいや、(その会社における自分の目標を)やり遂げたからアーリーリタイアメントする、つまり会社から卒業するという良い文脈でも捉えられるよねと。特に電通さんのLSPというのは、新しいチャレンジをいち早くトレーニングプログラムで動かそうとしています。だから社会実装実験でもあるんですよね。
だから、みんながみんなそういうふうにできないとしても、例えば一番良くないのは、早期退職の選択肢に手を挙げないで(会社に)しがみついて、岩盤層のように凝り固まって逃げきろうという人と、がんばろうと思っている若者との組織内での軋轢だよね。
このあたりはどうですか? 早期退職(について)は、ある種社会実装のプログラムをLSPとしてニューホライズンコレクティブでやってきたわけじゃないですか。お二人は、ここから3年とか、どういうことをどこまで見据えられているんですか? この本もそうだけど、お二人は共同代表としてこの本の先の物語についてどういう会話をされるんですか?
山口:今僕らもいろんな企業に選択肢として「我々のところに一緒に参加しませんか?」という話をしているんです。まさに昨今の早期退職を見ても、ちょっとコロナ前と様子が変わってきたなと思っています。企業のみなさんも、単純に1つの区切りとして早期退職を募集しているケースもなくはないんです。
けれども、辞めた後も関係をどう築いていくのか。それはアルムナイ的なものとか、働き方が変わって今度は業務委託でつながっているとか、いろんなことを今は検討されています。ある種、先生がおっしゃっているような「背中を押すんだ」と(いうことです)。
「辞めた社員」にリソースを割く企業も
山口:あと、これから本当に労働力が減ってくる中において、「まだまだ戦力として自社のため、社会のためにも働いてほしい」というメッセージとともに施策が添えられているケースがけっこうあります。実は僕はそのことを検討するステージに入らせてもらったりもしているんですね。
なので、やはり企業が今までは少し考える余地がなかった状況だったのが、今は少し背中を押すイメージに来ているなと思っています。そこで我々の知見をどんどん提供していきたいなとは思っていますね。
田中:ありがとうございます。
野澤:まさに立ち上げた当初、「ライフシフトプラットフォームはおもしろいね」と言ってくださる記者さんやメディアの方がいて、いろいろヒアリングをしたんですね。
「これは何がおもしろいと思っているんですか?」と言った時に、「当たり前だけど会社は自社の社員に対してけっこういろんなリソースを割くことはする。でも、この取り組みは会社を辞めた人に対して会社がリソースを割いている。それは非常におもしろい」と言われたことがあったんですね。
なので、最近いろんな企業さんに「早期退職でバーンと切るんじゃなくて、むしろ人材は社会からの預かりものなので、自社よりも大きなフィールドで活躍してもらうためにどうすればいいかを考え、そして会社を辞めた後もサポートしていく。むしろ人材に対する新しい社会的責任の一環じゃないですか」とお話しすることが増えてまいりました。
偉い人は「過去の流れ」で動いたほうが得
田中:ありがとうございます。我々は今のお話や、先ほどの「越境キャリアドック」などで今チャレンジしています。
ちょっとお話をお聞きしたいなと思う方がお一人います。浅川(正建)さん、お久しぶりです! 浅川さんはこちらに今映っている『企業内キャリアコンサルティング入門』(の著者です)。伊藤忠にいらっしゃって、どこよりも先駆けでセルフキャリアドックを実践されてきています。今は浅川キャリア研究所の所長をされています。浅川さん、お久しぶりです。
浅川正健氏(以下、浅川):はい、どうも。ありがとうございます。
田中:ライフプレナーという我々の提案とか、浅川さんがこれまでやってきたこととか(については)どうです?
浅川:もう感動していますよ。ですから、これ(『グロースマネジャー:新任管理職のキャリア開発』)とこれ(『これからのキャリア開拓』)で今勉強中です。
田中:(笑)。
浅川:正直、本来はもう20年、30年前にできていたんじゃないかなと。
田中:やろうと思えばね。
浅川:みんなの思いは(そうだったと思います)。人事の方とお話ししたら、20年、30年前に同じような「こうありたい!」「こうなるはずだ!」と言いながら動いてこなかった(という)苛立ち(を感じました)。自分でも反省しながら(そう)思っています。
田中:何が一番の原因だったんですかね? 時代なの?
浅川:だって、偉くなった人たちは、やはり過去の流れで動いたほうが得だからです。要するに先ほどから言われる、「気づいて動いた人が得しない流れ」があったと思うんです。
でも、(今は)明らかに変わってきているけど、まだ(流れの変化に)気づかない人が今までの大きい流れで政治も社会全体も作っています。だからこうやって刺激を受けた人たちが「田中さんのあの本を読もうよ!」とか「こんな会があったよ」ってみんなに言いふらしていく。僕もそうするつもりです。それしかできないと思う。
明らかに時代が変わってきている
田中:あー。今のは染みる言葉でございます。だから、同じ先輩たちや人事の人はやろうとしていたけれども、ただ時代が追い付いていなかったと。今はひょっとしたら「時代のタイミング」「会社の組織の変革」「キャリア開発の組織の知識の民主化」が揃ってきたと。なので、みんなでやれるタイミングなのかもしれないです。
だから、うちの最高顧問の伊藤邦雄先生がやっている人的資本経営。そして今回のニューホライズン(コレクティブ)さんのライフシフトプラットフォームという取り組み。そして、ここで出てきた『これからのキャリア開拓』。(これらはまさにその新しい流れを作るための動きだと思います。)
僕は本を書いているんですけど、「本ってやはり時代が書かせるな」と思っています。本は(自分だけで)勝手に書いているんじゃないんですよ。
どういうことかというと、2023年に(私たち3人が)出会って(この本を出版しようという)プロジェクトが動くのね。それで本が出たんですけど、やはりこうやってそれぞれの思いを持って行動している人たちが出会って、そこで化学反応が起きる。
だからそれが(あったので)「本当に時代が書かせるんだな」と思っています。まだこれからも書いていきたいと思っていますけどね。これ(『これからのキャリア開拓』)をちゃんと届けながらね。
それでお時間がそろそろ来ていますので、お一言ずつメッセージをいただいて、そして森(隆剛)さんに、(主催であるプロティアン・キャリア)協会としてのクロージングをしていただいて、もう12時着地で締めたいと思います。梅雨時にみなさん、お集まりいただいて(ありがとうございます)。それでは、どちらからいきましょうか。もう山口さんと野澤さんは2トップのコンビになってきてね。
山口:漫才コンビみたいになっていますよね(笑)。
野澤:(笑)。
田中:(笑)。タッキー&翼みたいになっちゃっているよ(笑)。
「50代が元気であること」が鍵になる
野澤:じゃあ、私から。今日はこのような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。憧れだったタナケン先生と本が出せるのは、もう本当にうれしいんですけれども(笑)
田中:とんでもございません。
野澤:我々の取り組みが、こういう機会をいただきながらたくさんの人に広まっていくことが本当にうれしいです。冒頭に申し上げましたが、もう50代が元気であること(笑)、活き活きとしていることが本当に日本の未来を占うキーになっていくと思います。今後ともみなさん、よろしくお願いいたします。
田中:ありがとうございます。じゃあ、山口さんからもお願いします。
山口:はい。山口です。今日はありがとうございます。途中にもありましたが、やはり健康長寿な日本においては「健康なうちは働きたい」という人が80パーセント(いる)というデータもあります。明るくやれるといいなと本当に思っていて、もうタナケン先生のエネルギーをいつももらっているんですけど(笑)。
田中:(笑)。明るいでしょ(笑)。ネアカなの。
山口:本当にこの話を深刻にならずに、もう少し軽やかにチャレンジできるような事例をどんどん作っていきたいなと本当に思っています。引き続きみなさんからご指導・ご鞭撻いただければ助かります。よろしくお願いします。
野澤:よろしくお願いいたします。
田中:野澤さん、山口さん、本当にお忙しい中、貴重なお時間を(いただき)ありがとうございました。
山口・野澤:ありがとうございます。