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書籍出版記念イベント:「これからのキャリア開拓」(全2記事)

「早期退職」を悪く捉えがちな日本企業の問題点 会社にしがみついて逃げ切ろうとする古株社員 [1/2]

【3行要約】
・キャリアの成功が幸福をもたらすという従来の考え方は知られているが、実際には順序が逆であるという問題が注目されています。
・田中研之輔氏らは、最新の研究では心理的幸福感を持って行動する人がキャリア成功を手に入れると指摘。
・ビジネスパーソンは目の前の仕事に没入し、当事者意識を持ってチャレンジすることで真のキャリア成功を実現できます。

前回の記事はこちら

“キャリアの成功”の考え方が変わってきている

田中研之輔氏(以下、田中):今ちょっとお話を聞きながら私も思ったことを言います。今、私も(最先端の知見となる)英文を読み続けているんですね。それで、おもしろいなと思ってこの前野澤さんと山口さんにお伝えしたことが1つあります。誰が「(自分の)キャリアは(本当に)成功した」と言えるか。これは「キャリア・サクセス」(の話)ですね?

山口裕二氏(以下、山口):うん。

田中:心理的幸福感とキャリア・サクセスの関係だと、従来はキャリア・サクセスをした人が幸せになる(と考えられていました)。だから誰がキャリア・サクセスをするかというと(優れたキャリアを歩むことに)成功した人で、その人が心理的幸福感を手に入れるということを前提にキャリア開発が行われてきたんです。だけど、そんなことはないですよね。

実は(このことについて書かれた)英文がちょっとおもしろいんです。今日はせっかくみなさんが来てくださっているので、チャットに「こういうのを読んでいるんです」というのをお伝えしておくね。

そうすると、キャリア・ウェルビーイングとキャリア・サクセスの関係性について何が言えるかというと、目の前の行動をライフプレナー的にやる人、つまり心理的幸福感を高く(持って)やる人たちがキャリア・サクセスを手に入れていくんだと。

野澤友宏氏(以下、野澤):新しいですね。

キャリアの悩みを解消するには

田中:これはめちゃくちゃ重要です。我々のキャリア教育というのは、例えば「〇〇大学に入って、〇〇企業に入って、〇〇をして、幸せな人生を手に入れましょう!」と教えてきたのかもしれないけど、違うよねと。

今いる高校や大学、職場、地域において目の前のことを一生懸命に自分なりに心理的幸福感を感じながら(やってみることです)。この本(『これからのキャリア開拓』)にも『プロティアン』にも入れた「没入状態」(のこと)です。

今、この現場のこの時間もそうなんだけど、みなさんなりに当事者意識を持って「よし! 自分なりにライフプレナーをやってみるよ」「プロティアン的にチャレンジしてみるよ」という人たちがやはりキャリア・サクセスを手に入れていくんだと最先端の知見では言われています。これはウェルビーイングの(研究者である)前野(隆司)先生(の考え)ともすごく親和性が高いです。

だから、いよいよキャリア開発も2.0に来ています。私自身はもう「何がキャリアの悩みなのか? キャリアに悩んでいる人を救えないのか?」というフェーズではまったくないと(考えています)。キャリアの悩みはほぼ内科的アプローチで解決できる。つまり、処方箋があり、体の部分を抜本的に変えなくても、内科的に全部変えることで解決できるわけです。

山口:なるほど。

ミドルシニアの停滞はだれでも経験するもの

田中:それで、悩みというのは風邪だからみんなひくと。そうしたら、その状態が何なのか。つまりミドルシニアの停滞は個人の問題じゃないということですね。ミドルシニアのキャリア停滞は風邪ですと。ミドルシニアのキャリア停滞は自分だって(するし)、みんなするんだから、その都度、解決していったらいいよ(ということです)。

例えば越境キャリアドックやキャリア開拓、プロティアンの理論でやっていけばいいのかなと思います。今回はいわゆるコラボレーション・ライティングで、こうやってパートナーシップを組んで、3人でトライアングルを組んでいます。同時に、私もこれは企業現場で伝え始めていますし、山口さんや野澤さんがそれぞれの現場で伝えていっていることにすごく意味があるかなと思っています。

せっかくなので……ちょっと内田先生! 今ご参加いただいている方が2万人ぐらいいらっしゃるけど、発話できる?

山口・野澤:(笑)。

田中:(笑)。

山口:よろしくお願いします。

田中:内田先生は民間でリクルートにいらっしゃいながら、私のところで論文を書いています。今画面に映っている、この『プロティアン教育(:三田国際学園のキャリアエスノグラフィー)』を書いて、今は(三田国際学園中学校の)教頭先生をやっています。内田先生! この『これからのキャリア開拓』をもう200冊ぐらい買っていただいたって聞いているけど、近況をお話ししていただけますか?

内田雅和氏(以下、内田):(笑)。ちょっとチャットにも書いたんですけど「ライフプレナー」という言葉がいいなと思いました。あと今の最後の「悩みは風邪なので、悩むのは大事」という部分も(いいなと思います)。日本の教育って、若者の悩みを先生や親が「その悩みを解決してあげるよ」と言っちゃうことがどこかある。

野澤:はいはい。

キャリアの悩みは「風邪」のようなもの

内田:まぁ、そうじゃないよねって。うまく悩ませてあげて、今この場で自分はどうしたいのかをちゃんと考えていくことがすごく大事だなと思います。

近況の部分でいくと、この「越境」のところですね。越境の部分では、自分の学校では、宿泊研修の中で多くの保護者が実際に生徒と触れ合うというか、実際にどんな悩みを40代、50代の大人が考えているのかを一緒に考えていく時間を4年ぐらい前から取っているんですよ。

参加してくれた保護者が言うのが、「生徒のために参加したんだけど、最終的にはやはり自分のためになった。生徒に何かを伝えている時に、やはり自分の今の課題や自分が将来やりたいことに向き合う時間につながっていく部分もあって、『あっ、これってやはり越境だな』と(感じた)」ということです。

それで越境をして、キラキラしている。「世の中を良くしていこう」と自分のことで悩んでいるミドルシニアと若年層が触れ合うことってやはりすごく意味があるなと思います。

そこを学んでおくと、何のために勉強をするのかといったら、別に大学に行くためじゃなくて、将来どう社会に貢献できるのかを自分なりに考えていける人になっていけるんだろうなというところがあります。「悩みは風邪みたいなものだ」というのはいい言葉だなと思いました。

田中:(笑)。ありがとうございます。例えば内田先生の高校と、野澤さんと山口さんのLSPのパートナーシップのコラボレーションも絶対にあり得ると思うので。

野澤:ぜひぜひ。

山口:よろしくお願いします。

田中:後ほどつなぎますので、つながっておいてください。

内田:はい!

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