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なぜキャリアを問い直すのに、哲学と物語が必要なのか 〜ポジティブでない自分との付き合い方〜(全8記事)

タイパ、コスパ…今の若者は効率を求めて“予習”をしたがる? 「失敗したくない」「うまくやりたい」と考える人が増えた理由 [2/2]


話すことでしか気づけないことがある

三宅:谷川さんはありましたか、発見。

谷川:YouTubeをやっていないからっていうのもありますけど、そこまで思ってはいなかったですね。

三宅:最近はポッドキャストをやっていたりとか、いろんなところでしゃべる場も谷川さんは増えているじゃないですか。そういう時に、何か気づいたこととかありますか?

谷川:YouTubeとかで呼ばれて話す時は、できるだけ「YouTubeであること」を忘れるようにしていて。例えば、今日のこの会場くらいのサイズだと、みなさんの表情を見ながら、「伝わっているかな」とか「この話題は反応があるな」とか、フィードバックを受けながら話せるのがすごく大きいんですよね。

やっぱりフィードバックのスピードが速いのが、対面や映像の良さだと思っていて。対話している時も、少なくとも相手か撮っている人が目の前にいるから、その反応を見ながら、「もう少し例え話を入れようかな」とか、しゃべりながら調整しやすいんです。そこは、書くよりもしゃべるほうがすごく楽だなと思います。

活字だと、書いて発表して、やっと「あ、反応きた」みたいな。最悪、誰も感想をつぶやかなかったりして、まったく反応がわからないこともありますし。

三宅:試行錯誤しにくいのは、あるかもですね。

谷川:そう。だから例え話なんかも、しゃべっているほうが出しやすいなとは思います。

三宅:なるほど、おもしろい。

「自分が何に耐えられないか」を知っておく

林:では、こちらを最後の質問とさせていただきます。「好きなことは趣味でやればいいとしても、収入は得なければならず、苦しみ過ぎずに就活して、就職して、仕事をするにはどうしたらいいでしょうか?」と。

三宅:えっ? 苦しみ過ぎない方法みたいなことですか?

林:そうですね。「苦しみ過ぎずに就活して、就職して、仕事をしたい」と。

谷川:めっちゃ難しい問いですね。

三宅:大学生かな。

谷川:最近のビジネス書を見ても、感情やビジョンを重視した「心を巻き込む」系のフレーズが多いですよね。全人格を投入して働くみたいな価値観が強い会社に入ると、苦しみが心配な人はしんどくなりやすいと思います。

だからこそ、そういうことをあまり求めない場所や、あまり語られていないけれど組織としてスケールが大きくて、リソースにある程度余裕があるようなところを選ぶのも、1つの戦略としてあるかなと。いわゆる「でかいところに行く」っていう選択ですね。

三宅:確かに。

谷川:それって、心を守るために、けっこう大事な判断なんじゃないかと思います。

三宅:うん、心を守ることを重視するのはほんと大事ですよね。私は、「嫌なことを1個だけ決めておく」のがいいんじゃないかと思っていて。

例えば、「絶対に宴会芸をやらされる飲み会だけは嫌だ」とか、「週5出社だけは避けたい」とか、「この商材には関わりたくない」とか、なんでもいいんですけど、自分がどうしても避けたいものを1つだけ明確にしておく。

谷川:それ、いいですね。

三宅:それをやらなくて済む会社を選べたら、たとえ他に多少しんどいことがあっても、「まぁ、でもあれよりマシか」とか、「一番嫌なことは避けられているしな」とか思える。ちょっとネガティブかもしれないけど、そういうふうに選んでもいいと思うんですよね。

谷川:なるほど。それって、「自分が何に耐えられないか」を知っておくっていう、1つの自己理解でもありますね。いや、めちゃくちゃ具体的でいいですね。

三宅:質問してくださって、ありがとうございました。

林:オンラインのみなさんも、ありがとうございました。

谷川:ありがとうございました。

振り返り「自分らしいキャリアの見つけ方」

林:質疑応答はこちらで終了とさせていただきます。ご質問をお寄せいただいたみなさん、ありがとうございました。

最後に少しだけお時間をいただき、今回の主催である「シルバーライニングカレッジ」についてご紹介させてください。シルバーライニングカレッジは、谷川さんがお話しくださったような「ビジョンをコミュニティの中で育てていく」ことを目指す、ラーニングコミュニティです。

キャリアの選択は人それぞれですが、自分なりの軸。羅針盤やコンパスのようなものを持って歩んでいってほしい、という思いで運営しています。

これまでにもいくつかの特徴を掲げて活動しており、第1期では山口周さんとご一緒しました。今日も卒業生の方に何名かお越しいただいていて、ありがとうございます。

少人数でじっくり学び合いながら、それぞれが自分のコンパスを見つけ、晴れやかな表情で卒業されていくような場を、今後も継続していく予定です。ご興味のある方は、今後ご案内するメールなどをご覧いただけたらうれしいです。よろしくお願いします。

それでは最後に、お二人から今日のセッション全体を振り返っての感想をうかがって、クロージングとさせていただきたいと思います。

三宅:谷川さんはやっぱり、衝動の人だなと思いました。

谷川:(笑)。

三宅:無意識を大事にするっていうのは、谷川さんにとっての大きなテーマなんだなと感じて、すごくおもしろかったです。

谷川:(笑)。そうですね。今日は「これを話そう」とあらかじめ決め込まずに臨んだんですけど、それでもキャリアの話って、本来なら「目標を立てよう」とか「価値観を大切にしよう」といった方向になりがちなところを、自然と「自分の性質を知るのが大事だよね」みたいなところに落ち着けたのが良かったなと感じています。

その中で、自分たちが実際にやってきたことも具体的に話せたので、何か1つでも持ち帰ってもらえることがあればうれしいなと思いながらお話ししていました。楽しんでいただけていたら幸いです。

三宅:うん、いい時間でした。

谷川:ありがとうございました。

三宅:ありがとうございました。

林:お二人、ありがとうございました。

(会場拍手)

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