“どちらにもなりきれない”生きづらさ
工藤:本当はこんな簡単にまとめるような話ではぜんぜんなくて。そこに至るまでに「なぜそもそも弱さなのか」とか、そういう話も含めて、今日は対話をさせていただければと思っています。僕、事前に拝読させていただいていまして。
井上:ありがとうございます。
工藤:これは、もう本当にすっごいすっごい雑な言い方すると、めちゃくちゃ狂った良い本だなっていう。
井上:思ったより雑やったな(笑)。ありがとうございます。
工藤:(笑)。もうめちゃくちゃ。
井上:狂ってますか。
工藤:狂ってますよね。もう狂ってる。注釈に愛を込めすぎでしょというのとかも含めて。
井上:そうですね、注釈が非常に言い訳がましい本という自覚は。
工藤:(笑)。話の補助線として、先ほどちらっと言ったんですけれども、僕に1回「本、書いてみませんか」みたいに言っていただいて。本のこととかをちょっと考えていた時とかに、井上さんともよく話してたことがあります。
それは、今の語り手の2人が共通意識として持てるかもなという接点探しでの話なんですが、当時から、いわゆる「ザ・経済」「ザ・数字を作る」とかだけだと、ちょっとおかしくなっちゃうところがあるんじゃないかなぁという気持ちがいろいろな文脈でありました。先ほどのスタートアップならではのスピードみたいなこととか、僕の業界もやはりスピードでいうと速いので、そういうところ。
だけど一方で「そういうんじゃなくてさぁ」と言って、「そういう経済とかスピードとかは見下ろして、ぜんぜん違うところで生きてくのもいいよね」。キラン……みたいなのもちょっと違うかもなという、どっちにも違和感持っていたり。
もっと愚直に言えば、どちらにも生きづらさを感じるというか、どちらも「うーん」ってなるっていう。
井上:なりきれないですよね。何かを切り捨てて「これからはこっちだ!」みたいな潔い論調にも乗り切れない。
工藤:そうですよね。
井上:かといって、数字だけを追いかけるマシンにもなれないという。
工藤:それこそ井上さんの実績で言えば、手掛けられたベストセラーの数々があるので、そこは着実なものとしてあるし、そこの強さはあります。
だけど「それだけじゃないんじゃないかな」という模索だったりがたぶんもともと問題意識としてもおありで。そういう文脈で僕もいろいろお話とかさせていただいてた矢先、お休みに入られるようなこともあったりして。
そんな中で生み出された『弱さ考』なので。本書の中でも「いわゆるケア文脈ど真ん中で、その話だけして終えるつもりはねえぜ」的な話が書かれていらっしゃるんですけど。
ふだん「気持ちがついていかなくなっちゃってどうしよう」とかいう本はあまり手に取らないというか、「そういうのは自分とは関係ない」と思ってるみたいな方であっても、読んでいくうちにだんだん自分の中との共通項とか、しんどいなと思っていたこととかとの接点とかも見出せそうだなということで、ぜひご紹介したいということで「今日お話できないっすかね」と無理を言って井上さんにお声がけさせていただいた次第でございます。
井上:こんなにもあらたまって紹介していただけるんだって、今感激してるんですけど。
工藤:(笑)。
ケア後から元のパフォーマンスに戻るための架け橋が必要
井上:でも、出会いのところからそうでしたよね。数字だけではないですが、ある種の「ビジネスパーソンはこうあるべき」みたいな、“弱さ“と僕が呼んでいる部分、そこには染まりきれない。
かといって「もうこのままでいいよね」と開き直ったり「そっから脱出しようぜ」と叫びかけたりみたいなことができないモヤモヤ感みたいなものを、初対面でお互いに感じ取ってから、なんとなく関係が続いて今に至る感じですね。
工藤:そうですね。なので、勝手に今までの歴史というかやり取りだったりとかも重ねて読み込んじゃって。途中「うっ」てなるようなこととかも。
先ほど狂ったとか、良いとか言ったんですが、ちょっと複雑な気持ちです。「ぜひ読んでくださいね」ではあるんですが、あまり安心できる、リラックスして読める本ではないような気もしていて(笑)。
井上:そうっすよね。なんかたぶん、“弱さ考“って聞くと「あぁ、なんか私の弱い部分を受け止めて、優しく背中をさすさすしてくれんのかな」と聞こえるし、実際そういう側面も込めたつもりです。
でも、先ほどの工藤さんの“ケア“という言葉がかなり鍵だなと思っていて。人間、本当にきつくなったら、僕で言うと鬱でどん底までいったら、ケアがまず必要じゃないですか。ケアしたらちょっと回復しますよね。
そのケアについては今めっちゃくちゃ語られてるんですけど、ケアが終わった後、具体的に言うと、元の職場、元の役職、期待される元のパフォーマンスに状況自体は何も変わらないまま戻っていく。そこの架け橋的なものが必要だなと一番感じてました。ケアの後ですよね。
工藤:そう。今「それよそれよ!」「その言葉よ!」と思ってパッと引き出そうとしたんですけど……。見つからなかったので諦めるんですけど(笑)。
井上:付箋とか貼っといてくださいよ。
工藤:付箋とか(笑)。ドッグイヤーが多すぎてどこかわからないんだけど、まさにそこで「そうなのよ」と膝打ちした部分があって。
「そのままでいい」かもしれないけれど、働かなければいけない現実もある
工藤:僕らって、今30代、たまたま僕と井上さんは1988年生まれで一緒なんですけど。そういうケアの本とかを、僕もちょっと心が弱っちゃった時とかに読むこともありました。
「そのままでいいのよ」っていう文脈……。いや、まず大前提、そのアプローチもすごくすばらしいし、学びはたくさんあるんですよ。なので、そういう本も引き続き大好きなんです。ただやっぱり、とはいえ「この後のミーティングはどうすんのよ」とか「とはいえ保育園の迎えに行くのよ」みたいな気持ちはあって。
「この後言うて、おまんま食わせないとなぁ」みたいなこととかが中流市民生まれとしては切実なものとしてありまして。休んでても何かでチャリンチャリンとかがあるようなことだったり、「父ちゃん母ちゃん助けて」(でなんとかなる状態)だったらいいんですけど。
それがない都会のジャングルの中で生きている中流家庭で言うと、「やっぱり働かなあかんな」と思っていた気持ちを『弱さ考』では触れていたので、「お、さすが井上しゃん」と思って。
井上:(笑)。もうそれしか書いていないですね。
工藤:なので、ぜひみなさんにも聞いていただきたいなと、読んでいただきたいなと思っているわけなんですよ。
井上:プロモーショナルに、ありがとうございます。
工藤:プロモーションもこのあたりで終わりで大丈夫ですか。
井上:早いなぁ~(笑)。ここまでか。わかりました。
工藤:いやいやいや、冗談ですけど(笑)。後半はここの話も深掘りしつつ、一方で光の当て方をいろいろ変えていきながら、井上さんにお話をうかがいたいなと思っています
一方で、僕は単純に井上さんの編集作品のファンであって。なので、編集者の仕事としてという側面でも、ぜひリスナーの方にも……。今回の『弱さ考』は著者としての関わりではありますが、本との向き合いみたいなことも学びとして教えてもらえればなと思っています。
井上:ぜひぜひ。
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