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金谷元気氏インタビュー(全3記事)

採用では「いかに自分たちがイケていないか」を話す 優秀な人を採用するための口説き方 [1/2]

本企画、「キャリアをピボットした人の哲学」では、インタビュイーにこれまでの人生を折れ線グラフで振り返っていただき、その人の仕事観や人生観を深掘りしていきます。

今回は、akippa株式会社 創業者兼代表取締役社長CEOで、『番狂わせの起業法』著者の金谷元気氏に、今までの人生を振り返っていただきました。本記事では、大手企業の参入に打ち勝った経営戦略や、PMFを達成した瞬間についてお話しします。

楽天やリクルート、大手が競合として参入

——この後、33歳の頃にアキッパの会員数が累計100万人を突破します。当時楽天グループやリクルートグループなどの大手のテックカンパニーが競合として参入されてきたと拝見しました。この大手の参入に負けずに業績を伸ばせた秘訣はありますか?

金谷元気氏(以下、金谷):そうですね。まずはやっぱりマインドセットからですね。僕は正直、(大手の参入に)めちゃくちゃ興奮しました。もともとサイバーエージェントの藤田さんの本とかを読んでから始めたので、インターネットサービスへの憧れがすごくあったんです。

初期はソフトバンクさんの携帯を売っていた営業代行の会社で、求人広告もリクルートさんの真似をしてがんばっていたわけなんですけど。このリクルートさん、ソフトバンクさん、楽天さんという、リスペクトしていた会社さんが、自分たちが作った市場に入ってくると。

こんなエキサイティングなことはないという話をよくしていました。ソフトバンクさんが参入した日は、当時のnoteにもそのことを書いています。

「ジャイアントキリングを起こせる」

——大手の参入に焦りは感じなかったのでしょうか?

金谷:まさにジャイアントキリングを起こせるという思いが強かったので。ただそのマインドだけではどうしようもないので、そこからまた「(大手に)勝つ」と決めて、逆算で何ができるかを考えていったわけです。

まずやったことの1つ目は、人材(を確保すること)ですね。ほぼ、僕の友人と新卒のメンバーしかいなかったので、それではやっぱり戦えないんですよね。なので「社長より優秀な人を採用する」と掲げてやっていました。

そして駐車場開拓営業のチームも、CSもマーケティングもコーポレートも広報も、基本すべてのチームでマネージャーが入れ替わることになりました。

「社長よりも優秀な人を採用する」ための戦略

——社長よりも優秀な人を採用するということで、優秀な人を集めるためにどのような工夫をされましたか?

金谷:これはまず、DeNAさんに株主として入っていただいたことがあります。私たちはそういうノウハウがなかったんですが、「優秀な人を採りたい」と思ったきっかけもDeNAさんでした。それまで、正直優秀という定義が自分たちの中になかった。「営業で受注が取れるかどうか」しかなかったんです。でもDeNAさんから出資が入った時に、出向で何名か来ていただいたんですね。

2015年ぐらいの時に、私たちは事業企画もエンジニアもほとんどいなかったので、事業企画、エンプラセールス、エンジニアの3名に来ていただいたんです。その時に初めて「あ、世の中にはこんなに優秀な人がいるんだ」と思ったんですね。そのうちの1人で、事業企画で入ってもらったのがベースフードの創業者の橋本舜さんなんですよ。「こういう人材を採りたいな」と思いました。

じゃあどうやって採るかがわからないので、DeNAでもともと人事の役員をされていて、今、タクシーアプリGOの社長をされている中島(宏)さんに「どうやって優秀な人を採るんですか」と相談に行きました。「面接で見極められないんですけど」と言ったら、最終面接も最初のほうは全部中島さんが同席してくださいました。それでなんとか覚えていって、人材紹介から採っていくことができました。

採用では「いかに自分たちがイケていないか」を話す

——最終面接で優秀な人かどうかを見極めるポイントはありますか?

金谷:私の場合は、今はカルチャー(にフィットするかどうか)しか見ていないので、どちらかというとそれは現場が見ているところなのですが。まずは採用要件をしっかり作って、それに合うかだと思うんですよ。自分たちが今、どういう人材が必要かというのをしっかり作る。その上で、その要件に合っている人かどうかが、最も重要だと思いますね。

——初期のスタートアップでエンジニアを採りたいとなった時に、競合もたくさんいる中でなかなか優秀な人を採りづらいのではないかと思うのですが、どんな口説き方をされていましたか?

金谷:そこはもうミッション・ビジョンですね。とにかく本気で世界ナンバーワンを目指していくというところ。なくてはならぬものを作る、困りごと解決企業として世界ナンバーワンになる。困りごと解決企業が世界一になれば世の中がより良くなる。でも僕らは本当にできることが限られているので、力を貸してください、とお願いしていました。

よく入社いただいた方のインタビューで言われていたのは、多くのスタートアップは「いかに自分たちがイケてるか」を話すけれど、akippaだけは「いかに自分たちがイケていないか」を話していたと。「助けてやろうか」という思いで入社いただいたところがあると思います。

「大手の参入」はピンチではなくチャンス

——採用でのスタンスが他のスタートアップと違っていたんですね。参入してきた大手テックカンパニーは現在までにすべてサービスを終了されているとのことですが、採用以外では、大手の参入に対してどんな策をとられましたか?

金谷:もう徹底的などぶ板営業ですね。楽天さんは、例えば「駐車場を貸すと楽天ポイントを贈呈します」とか、リクルートさんは、SUUMOのオーナーさんに「駐車場を貸しませんか」とDMを打ったりされていました。

そんな中僕たちは1軒1軒、徹底して訪問営業をしました。当時は駐車場をシェアする体験は新しいものだったので、オンラインとかで理解して貸し出すという人はやっぱりいなかったんですよ。

なので1軒1軒個人宅のインターホンを鳴らして「すみません、こういうサービスが始まったんですけど、ご自宅の駐車場を貸していただけませんか」とお願いして回ったことで、アキッパは駐車場数が圧倒的に多くなりました。

やっぱりこういうサービスってすごくネットワークエフェクトが重要です。駐車場があるからユーザーが集まり、ユーザーが増えるからまたオーナーが増えるというサイクルなんですね。起点は、駐車場があるかどうかなんです。

なので、楽天ブランドであれリクルートブランドであれ、駐車場がなかったらやっぱり使ってもらえない。そこで「なんかアキッパっていうのはめっちゃ(駐車場が)あるらしいよ」となる。

大企業の参入は、この駐車場シェアというカテゴリーの認知をすごく高めていただいたのもあるんですよ。

経営者としての反省点

——大手の参入はピンチではなく、逆にアキッパの知名度が上がる大きなチャンスになったんですね。2021年頃に、ご自身のnoteで「プロダクトに力を入れて真のテックカンパニーになる」という宣言をされたとうかがいました。どのような課題感があって、この宣言をされたのでしょうか。

金谷:そうですね。それまではすごく営業で伸ばしていたんですよ。いい意味でも悪い意味でも営業が得意なんで、駐車場を増やせば増やすほど売上が高まって成長できたんですけど、直線的な成長しかしていなかった。非線形に伸びていなかったんです。

メルカリさんとかって、やっぱり初期にグイっと伸びるタイミングがあったと思うんですけど、そういうのがなかった。そうした課題を持っている中で、原田明典さんという、もともとMIXI、DeNAなどで役員をされていた方から、「akippaはプロダクトによるユーザーの行動変容を促せていないですよね」という話をお聞きして、自分はそれまでそういう視点を持っていなかったと気づきました。

例えばメルカリを使っている人って、勝手に自宅の物を売ってくれるじゃないですか。でもアキッパは営業しないと(駐車場を)貸してくれる人がいなかった。(一定、駐車場シェアの認知が拡大したため)アキッパをもっと簡単に貸し出せる仕組みを作ったら、駐車場も増えるしいいんじゃないかと。

やっぱりテックカンパニーにして、営業だけじゃなくてテックの力でも伸ばしていかないといけないなと。その非線形に伸びてないのは自分の責任だなと反省して宣言したという経緯です。

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