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金谷元気氏インタビュー(全3記事)

新規事業で大事な「先行指標」の見極め akippa創業者が語る「ブレさせてはいけない」ポイント

本企画、「キャリアをピボットした人の哲学」では、インタビュイーにこれまでの人生を折れ線グラフで振り返っていただき、その人の仕事観や人生観を深掘りしていきます。

今回は、akippa株式会社 創業者兼代表取締役社長CEOで、『番狂わせの起業法』著者の金谷元気氏に、今までの人生を振り返っていただきました。本記事では、アキッパの駐車場シェアサービスが生まれた背景や新規事業の成功の秘訣を語ります。

「営業数字」しか見なくなりクレームが大量発生…

——前回、資本金5万円で営業代行会社を設立されてから、資金難の連続だったと伺いました。会社設立から3年目の27歳の頃に初めて資金調達に成功され、その後アキッパの事業を開始されます。これまでの営業代行の事業から方向転換をされたきっかけを教えてください。

金谷元気氏(以下、金谷):そうですね。ジャフコさんから出資を受けた後は、あらためてお金を減らさないようにしようということになりました。それまでいくつか求人サイトとかも運営していたんですけど、まずはみんなで営業代行の事業に注力しました。

そうしたら、会社全体が営業数字しか見ないようになっていったんですね。そうすると何が起こるかというと、クレームが大量に発生します。無理な営業をさせてしまっていて、「結局自分たちのやってることが世の中のためになってないな」と思いました。ただ会社としてはお金を減らさないように売り上げを立て続けないといけないので、そんなことに薄々気づきながらもやり過ごしてたんです。

「生活していて困ること」を200個書き出す

金谷:そんな時、共同創業者というか、株式会社になった時から役員になってもらった松井(建吾)という高校の後輩が、「会社のミッションがないと、自分はもうやっていけないです」と。「理念やミッションがない」と言われた時に、やっぱり辞められると困るので、「ゆっくり考える」と伝えました。

そんな中、ミッションを考えている時に出張に行って帰ったら電気が使えなくなる経験をして、やっぱり電気ってすごいなと思ったんです。電気がないとテレビも見れない、スマホも充電できないので、電気のように世界中の人々にとって必要不可欠なサービスを作りたいなと。そこで2013年に「“なくてはならぬ”をつくる」というミッションを制定したんですね。

「“なくてはならぬ”をつくる」というのは、イコール世の中の困りごとを解決することだと考えて、当時のメンバーで「生活していて困ること」を200個書いていったんです。その中で、「困りごとを解決するインターネットサービスを作る」と決めました。

「駐車場」に目をつけた理由

——ミッションを決めた中で、アキッパの駐車場の事業が出てきたんですね。

金谷:そうなんですよ。藤野(佳那子)さんという社員が(困りごととして)書いてくれたのが「コインパーキングは現地に行ってから満車と知る」というものだったんですよ。

これを見た時に、「いや、実家の駐車場なら空いてるけどね」とか「そういえばスタジアムの周りのマンションの駐車場とか空いてるから、あそこに停められないかって思うよね」みたいな話があって。

「じゃあ、ああいうところをスマホで予約できるようにすればいいんじゃない?」という考えが生まれて、アキッパがスタートしました。

「わけのわからない事業にお金を使うのか」社内で反発の声

——新たな事業を始めるという時に、社内での反対の声や抵抗はありましたか?

金谷:アキッパを始める際は、営業代行の事業でもクレームはないように、そして赤字にはならないラインでしっかり受注を取ろうとがんばっていました。

そんな中で僕と共同創業者の松井を含めた6人だけがakippa、残り二十数名は営業代行をやっていたので。営業代行を見ている役員やマネージャーからは「わけのわからない事業にお金を使うのか」という声はありましたね。

社内の目が「一気に変わった」きっかけ

——どんなふうに社内での団結力を高めていったのでしょうか。

金谷:まぁ、結果を見せるしかないと言いますか、将来性があることを伝えるしかないですよね。一つはやっぱり資金調達。資金調達ができるとモメンタムも上がりますし、営業代行の事業で出た利益を使うわけではなく、別途資金調達した、ファイナンスで獲得したものを新規事業に使うということを伝える。

それでもやっぱり将来性はないと思われていたので、外部評価を獲得しにいきました。それが「IVS LAUNCHPAD」(IVSで行われるスタートアップのピッチイベント)ですね。当時、「LAUNCHPAD」をけっこうみんな見てたんですよ。2014年の春には、スペースマーケットさんが出ていて、「アキッパも出たらいいとこいくんじゃないか」みたいな話をしていました。

「いや、アキッパなんて本選にも出れないでしょ」みたいな感じだったんですけど(笑)、けっこうIVSって価値のある大会だと思われてるなと。なので優勝するとちょっと雰囲気が変わるんじゃないかなと思って出場して、結果優勝したんですよ。そしたらやっぱり「アキッパって将来性があるんじゃないか」と、社内の見る目は一気に変わりましたね。

新規事業のポイントは「大事な先行指標」をブレさせないこと

——「LAUNCHPAD」で優勝されたことで大きく風向きが変わったんですね。この後、社名もakippaに変更され、本格的にアキッパの事業に乗り出していくということですね。新規事業を成功させるための秘訣はありますか?

金谷:やっぱり、最初は新規事業って絶対にうまくいかないですよね。なので、とにかくそれを前提として始める。その中で、売上って遅行指数(過去の取り組みや活動の結果として現れる指標)なので。結局どの先行指標を取るかですよね。例えばアキッパの場合は、駐車場をたくさんとっていれば、あとは集客すれば売上につながる。「じゃあ大事な先行指標は何か」というのをブレさせないことが大事です。

売上を取りに行くと、後々ぜんぜん伸びないので。社内にも事前にそれを説明して、「最初は売上は立たないけど、駐車場を取っていれば後々稼働するから、駐車場数を追います」ということを言うわけですね。まず社内の他の事業部の期待値とかを含めコントロールできるので、その前提の上で始めるのがとても重要なところです。

チームメンバーの選び方

金谷:その上でチームも少人数で、しかも拡散的思考ができる人を集めることですね。初期は「これ、無理でしょう」「できないでしょう」という、収束的思考を持ってる人がいると、ダイナミックなチャレンジができないので。「いいね、いいね」「やってみよう!」みたいに言ってくれるメンバーを意識して集めていました。

——アキッパの事業は最初は6人で始められたということで、やはり小さい規模のほうがよりコミュニケーションも密にとれたりして、利点があるのでしょうか。

金谷:そうですね。よく(新規事業の立ち上げメンバーは)MAX6人が一番やりやすいと言われていますが、ちょうど目が行き届きますし、毎日コミュニケーションをとれるので、少人数をおすすめしますね。

利益数千万円の事業を売却、アキッパ一本に絞る

——またこの後32歳の時にアキッパ以外の事業を終了または売却されます。他の事業もうまくいっていたと拝見しましたが、アキッパの事業1本に絞る決断をされたのはなぜですか?

金谷:はい、「ギャラクシーブックス」という出版事業をしていたのですが、正直アキッパよりもうまくいってました。売上数億円、利益数千万円あったので、けっこういい事業ではあったんですよ。それ以外はそんなにうまくいってなかったので終了させました。

やっぱり現状よりも見るべきなのはミッションの実現なので「“なくてはならぬ”をつくる」という会社のミッションを実現するためには、アキッパという事業はポテンシャルが高く、必要不可欠なものになれると思っているので、それに注力したいと考えたんです。

(アキッパとそれ以外の事業を並行して行っていると)僕もどっちにも時間を使っていたので、リソースを集中したいという思いで決断しました。

世界ナンバーワンを目指すために

——うまくいっている事業を手放すということで、社内でどのようにコンセンサスをとっていったのでしょうか?

金谷:基本はその事業を見ている役員と話してその事業を終了させるか、もしくは外に持っていってでもやりたいかというコミュニケーションを真摯に取るということですね。

やっぱり出版事業をしているメンバーたちは事業への愛がすごくあって、外に持っていってでもやりたいということだったので。だったらちょっと切り離してやっていこうという話になりました。

売却が近づいてきたらマネージャーに伝えて、発表前にメンバーに伝える。順番にコミュニケーションをとるというところですね。その事業を見ている役員が社長になるので、そのM&Aの仲介の会社さんといろんな会社に一緒に提案に行って上場企業に売却して、その子会社として出版事業も存続しました。(※現在は親会社から独立)

——スタートアップで2つの事業を並行してやっていくのは難しいのでしょうか。

金谷:まぁできると言えばできるんですけど、やっぱり時間は有限なので。半分の工数でアキッパを伸ばすのか、すべてそこに集中するのかでその後の伸びがやっぱり変わってくると思うんですよ。なので、事業を複数同時にやってもうまくできるかもしれないですけど、やっぱり世界ナンバーワンを目指す上では、そんなにいくつも見てると難しいという判断ですね。

——世界ナンバーワンを目指すという目標から逆算して考えた結果、事業を取捨選択されたんですね。ありがとうございます。

関連リンク:『番狂わせの起業法』金谷元気/akippa 著(かんき出版)

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