何かと引き換えに年収を下げる転職はおすすめしない
足立:ありがとうございます。ちょっとこのままQ&Aに入らせていただいて、だいたい7、8分ぐらい質問を扱えるかなと思っています。いただいているものでいくと……。
moto:けっこう来ていますね。前半の質問ですね。「市場価値といっても現在と未来における市場価値のバランシングを考える必要があると思います」。つまり時間軸を含めていますよね。
moto:はい。
足立:「直近の市場価値だけを上げることだけを考えると、先細りになったり危険な気がしますが、どのように考えればよいでしょうか? 未来のために年収ダウンを受け入れることはどう考えればよいでしょうか?」。ちょっと似た話をmotoさんはされていたかもしれないですけど、あらためてどうですか?
moto:「現在の市場価値と未来のバランシング」「直近の市場価値を上げること」については、僕の場合は転職する時、2社先まで考えて動いていたりしたんですよね。「次の会社に入ることで、その次にあの会社に行けるな」まで考えて転職活動をしていたので、直近の市場価値だけを上げるのは確かにあんまり意識したことはないです。
ただ、直近の市場価値を意識して先細りになるリスクは、要は先の先までちゃんと見ておけばないと思います。ここは未来をもうちょっとよく見たらいいんじゃないかなと思います。未来のために年収ダウンを受け入れるのは、個人的にはナシかなと思いますね。
「経験を取って年収を下げる」みたいな話はよくあるんですけど、それで成功した話ってあまり聞いたことがないんですよ。基本的に、市場からの評価がいったん下がることになるので。
僕は今までの経験値を活かしてちゃんと「維持またはアップ」という状態で転職をしていくほうがいいと思うし、下がるんだったら僕は転職しないほうがいいっていう。本当にこのへんは価値観によるところではあるんですが、僕個人としてはあまりおすすめしないですね。
面接で副業の話をしてスキルをアピール
足立:ありがとうございます。答えになっていますかね。もう1つ、motoさんの関係の部分でいくと……いい質問が多くてちょっと悩んじゃいますね。
moto:そうですね。
足立:さらっといけそうなやつで言うと、「転職内容で副業の話はしないですか?」。これってどういうことだろう? 「転職中に副業の話ってしますか?」という意味? ごめんなさい、ちょっとわからなかった。
moto:転職活動の中で副業の話をするのかと言われたら、個人的にはしたほうがいいとは思いますが。
足立:それはちょっと聞いてもいいですか? 「したほうがいい」なんですね?
moto:したほうがいいですね。要は個人でどれだけスキルがあるのかの証明になるというか、成績表になると思います。個人の実力をちゃんと誇示できるというか、表面化してお伝えできる1つのものだと思うので、そこはきちんと伝えておいたほうがよいかなと思いますね。マイナスになることは基本的にないので。
よほど変な副業をしていたらダメですけど(笑)、基本的には話はしたほうがよいかなと思っています。
“転職に失敗はない”
足立:ありがとうございます。僕がずっと選んじゃっているので、逆にちょっと後半に出た質問をmotoさんにピックしていただいて、「これとかどうですか?」みたいな、ちょっとむちゃ振りしてもいいですか?
moto:ぜんぜんいいですよ。「失敗したら怖いというところで考えが止まってしまい行動に移せません。転職される時の心境は野心が燃えている感じですか? 失敗が怖いという考えとの折り合いのつけ方、おすすめの戦略はありますか?」ということなんですけど。
失敗ってそもそも何ですかね。転職の失敗って別にないんですよ。自分が正解にしていけばいいだけの話です。目先で年収を上げたいと思っているのに年収が下がる転職をするんだったら、それをしなければいいだけの話だと思います。行った先の転職先がよほどブラックでどうしようもないみたいな話なのであれば、それはもう1回転職活動をしたらいいと思うし。
失敗を考えていては成功は得られないんですよね。自分がどうなりたいのかをかなえる手段の1つが転職活動だと思うので、そこに成功も失敗もないと僕は捉えています。なので、あんまりそこを軸に考えなくていいかなという気がします。
「何が怖いのか」が転職先選びのヒントに
足立:いいですね。この題材は僕とmotoさんですごく別々の視点で答えられそうだなと思いました。「自己内省」「本音を知っていく」というアプローチでこの質問をちょっと捉えます。
僕はどっちかというと「怖い」というキーワードに焦点を当てます。この質問をされた方は、本当に「怖い」と思われるんだと思うんですよ。これはすごく大事にされたほうがいいと思っていて、なぜなら事実、怖いからですよね。
その時に助けになる観点で言うと、怖いというのは、何かを失ったり何かがなくなってしまうと嫌だという。損失回避というか、失いたくないとか、何かがなくなることへの恐れと直結しています。
なので問いかけとしては、「何を失うことが怖いんですか?」が追加の問いになります。例えばそれは「今の安定」とか。わからないですけど。あとは「家族との生活」みたいな話が出てきた時に、「いくつか出る中でも特にこの怖いという感情を作り出している、失ったら怖いものって、今出てきた中で言うとどれが一番大きいですか?」と聞くんですけど。
そうすると「実はどっちかというと“家族との時間”が70パーセントです」みたいな話が出てきます。「じゃあ、家族との時間が転職を通じてどうなっちゃうように思っているんですか?」みたいな話をしていくと、「自分が成果を出せない場所に行って残業をたくさんして、となっていくと家族との時間が減っていくかもしれないです」「なるほど、なるほど」みたいな。
「じゃあ、自分の家族との時間を削ってまで働かなきゃいけなくなるような環境に怖さがあるんですね? じゃあ、逆にそうならない環境ってどういう環境ですか?」みたいな話から、自分の中で1つ、転職の軸を逆転させていくんですよね。
ネガティブな感情も転職に活かせる
足立:コーチングのプロって、ポジティブな感情とネガティブな感情の良し悪しってあんまりないんですね。
どの感情であっても願望やニーズにつながる、表出したサインだと捉えます。そのサインから、本当に求めている「働く」にセットで持っていったり価値観を引き出していくのがプロの仕事になるんです。
今回で言えば、怖いというところからたどって、このご質問者さまの中で「働く」ことにセットでくっついている大事な価値観があると思うので、それを見つけていけると転職の時でも企業と対話ができるようになる。
「自分の中ではこれをすごく大事にはしているんですけど、これを大事に働いている社員さんっていらっしゃいますか?」とかを聞いていくことで、より解像度を上げていけるみたいな。そういうアプローチをするために、この「怖い」というキーワードはとてもヒントになる入り口です。
なので、そこをもう少し自分でたどっていただくか、ちょっと後ほどアンケートでも言おうと思っていましたけど、無料のキャリアコーチング体験のチケットを特典でアンケート回答者にお渡しするので、そこで掘っていただいてもいいかなとも思ったので、お答えしておきます。以上です。
目の前の仕事に結果を出すことが、不安感を解消する
足立:残り5分。いけますね。ちょっとmotoさんとお互いの回答をさらに深めたい気持ちがめっちゃ出ちゃうんですけど、1回我慢して質問にいきましょうか?
moto:(笑)。何にしますか?足立:じゃあ、これを読みますね。「業界や業種、さらには会社に不満もないですが、なんとなくこのままでよいのかという気持ちが年々高まります。自分の社会人としての軸というか信念がないためにこのような悩みになっていると思うのですが、キャリアの方向性を定めることにもつながる社会人としての軸は、どのように設定・深掘りしていけばいいですか?」。
じゃあ、これを最初にmotoさんからご回答をお願いします。
moto:いわゆる今流行りのパープル企業みたいな感じで、会社に不満もないし、このままでも別にぜんぜんいいかなと思いつつも、「本当にこれでいいのか?」って不安になる働き方だと思うんですけど。
キャリアの方向性を定めることにもつながる社会人としての軸をどのように設定・深掘りすればいいかはすごく簡単なことです。「目の前にある仕事で成果を出しましょう」の1点に尽きると思っています。結局、何が正解かなんてわからないじゃないですか?
足立:はい。
moto:さっきの話じゃないですけど、世間的には「キャリアの方向性って、誰もが知ってる大手に入って年収が高かったら成功だよね」というものがある。だけど、「自分として本当にそれで幸せなんでしたっけ?」ってなったりします。先ほどの話にも出ましたけど、キャリアって腐るほど選択肢がある中で、「どれを選択していけばいいか」というのは、そもそも選択肢が多すぎるから無理なんですよ(笑)。
だからこそ、とりあえず今やっている仕事に打ち込んで成果を出す中で、「あっ、この仕事は好きかも。でもこの業務は嫌いかも」みたいなことを見極めていくと、だんだん見える景色があるというか、「やることでハマっていく」に近い感じですね。
これが好きというよりは、やっていく中で好きになっていくほうが、キャリアの歩み方としてはとてもいいかたちになっていくと思います。なので、僕はあんまりここは考え過ぎないほうがいいのかなと思います。足立さんはどうですか?
キャリアプランの軸は後から作られる
足立:ありがとうございます。でも、非常に重なっております。特に前半のほうに触れると、そこも拾えるのはさすがだなと思って聞いていたんですけど。
moto:(笑)。
足立:僕は後半の「社会人としてキャリアの方向性を定めることをどうしたらいいか」だけを捉えた時に、めちゃめちゃおすすめしているのはライフラインという考え方です。
僕がmotoさんと同じなのは、軸って後から表出すると思っているんですね。「これだ」と仮決めして走ることはできるんですけど、結局やっていった先で「あっ、こうか」となるし。
逆に言うと仮決めしなくても、走っていたら「この経験の中で自分はこういう気持ちで、こういう充実度で働いていたな」「でも、この時って年収もすごく高かったし部下の数も一番多かったけど苦しかったな」「でもそれを乗り越えた時、こうだったな」とか。
キャリアのステージに名前をつける
足立:という中でおすすめしているのは、例えばキャリアのステージに名前をつけていくことです。「種を植えて」「芽が出始めて」「今はちょっと太い茎を作っている時期だ」みたいな。
「じゃあ、この茎をあえて一言で面接官に伝えるとしたら○○さんの茎って何ですかね?」みたいな話から、自分の中でのキャリアステージ3における軸が過去の経験から見定まっていくみたいな。
moto:なるほど。
足立:そういうアプローチでわちゃわちゃとやっています。そういうことをあまり考えてこなかったなという人も、ライフラインチャートを描いてしっかり軸を問うてもらえればあります。ほぼ断言できますけど、みなさんにあります。そんな感覚です。
moto:なるほど。
足立:ただ、同感ですっていうのは、本当です。
moto:(笑)。
足立:がむしゃらにやった経験の中で、経験と感情がセットで紐づいていって初めて軸ができてくるのは、もう本当、それ以外に僕は聞いたことがないですね。
moto:ないですよね。そう思います。
足立:という感じで、ちょうど時間もいい感じですかね。
moto:そうですね。