8度の転職で年収を240万円から1,500万円へと上げた「転職のプロ」ことmoto氏(戸塚俊介氏)が、ZaPASS JAPANの足立愛樹氏と「納得できるキャリアの築き方」を語ります。市場価値だけを軸にした転職で失敗した経験など、moto氏の実体験に基づく「年収を上げても幸せを感じられない」キャリア選択の落とし穴と、その解決策を紹介します。
年収が上がってもハッピーになれない転職
足立愛樹氏(以下、足立):ちなみにmotoさんの経験で、「自己内省がすごく高まっているけど市場価値的にはちょっとなぁ」となることってありました? 今の話を聞いていると、都度、ご自身を俯瞰しながら特徴や強みを大事にされてきたのかなと勝手ながら受け取っているんですけど、「逆ってありましたか?」という質問です。
moto(戸塚俊介)氏(以下、moto):逆はあんまりなかったかもしれないですね。やはり僕は市場価値の部分を強く意識していたので、そこが下がることはなかったです。常に年収を上げていくためにどういうことをすべきかという持論を持っていたので、そこは大丈夫だったんです。
けれども、働く上での心の満足度を上げる部分においては、自己内省の欠如は失敗としては大きかったですね。
足立:当時のお気持ちをもうちょっと聞けるといいかなと思っています。その時って、市場価値は狙いどおり上がっていっているし、なんなら営業から人事で、今後の選択肢も少し幅が広がり得る掛け算にもなりそうですし、傍から見ると「いいじゃん」という話でもあると思っています。
つまり、いわゆる一般的な正解や目的としての市場価値は上がっているけれども、その当時ってご自身の感情、感覚的にはどうだったんですか?
moto:この話は、リクルートからエス・エム・エスという会社に転職した時の話だったんですけど。
事業会社に人事として転職できたし、外から見たらとってもハッピーに見える、なかなかいい選択をしたと思えました。「年収も高いし、上場企業だし、伸びてる市場だし」と、データで見てもいいキャリアだったんです。
しかしながら働くとなると、やはりそこには自分の感情が伴うわけです。「周囲にはいいキャリアって言われるけど、これが本当に自分がやりたいことだったのか? これを毎日楽しくやれるのか?」ということに対しては、答えはNOで、かなりネガティブでした。
転職に失敗して気づいた、自己内省の重要性
足立:ちなみに、これまでの営業のキャリアは、「自分は楽しめるのか?」を事前に内省した上で選んでいたのか、たまたま営業という職がすごく合っていて、市場価値にこだわって転職していたら自然と「楽しい」が続いていた、みたいな。
聞きたいなと思ったことは、人事に転職するタイミングで初めて「楽しくないことがあるのか」ということに気づいた感じなのか、このタイミングだけなぜか自己内省をやめちゃったのか、どんな感じだったんですか?
moto:完全に前者ですね。営業はトントンと「すごい楽しいな。普通に売れるし、いけるな」みたいな感じで。やはり買ってくれる側になり、事業者側になりたい欲が出てきました。そこから、「じゃあ、人事のポジションに行きましょう」というところで、内省がちゃんとできていなかったんだと思います(笑)。
足立:なるほど。
moto:「僕は外に出て営業するほうが好きなんだ」「人のために数字を追うほうが好きなんだな」ということに、ここで初めて気がついた感じですね。
足立:なるほど、それまではある意味「運良く」というか、自己内省の中で「何が好きで何が楽しいか?」をあまり自覚していなくても、その「楽しい」に乗っていた感じだったんですね?
moto:まさにそうです。
足立:今までの自分のやり方ではうまくいかない経験をされて、「どうやら自分のことをちゃんと内省しないといけないようだ」みたいなところから、自己内省が身についた感じですか?
moto:そうです、そうです。
20代の経験から「夢中になれるもの」を探す
足立:なるほど。とっても伝わりました、ありがとうございます。ちょっとごめんなさい。その感じってすごく話が自然に流れているかなと思ったので、ちょっと(スライド)左下にいきます。
まさに年収やポジションがモチベーションや選択軸にもなるのが20代、30代前半です。特に20代ってけっこう、まだ何が好きかもわからなかったり、「自分の強みって言われても」みたいなところもあると思います。なので年収やポジションがわかりやすい1つのモチベーションにも、選択軸にもなるかなと思います。
けれども30代以降になってくると変わってくるな、みたいなところを、弊社もたくさんのお客さまのキャリアやお悩みのコーチングをさせていただく中で思っています。
30代以降のキャリア戦略となった時に、「年収やポジション以外で大事になりそうなことって何ですかね?」と聞かれると、どうですか? 特にテーマに誘導する気はないですが。
moto:やりがいが一番ある仕事を見つけられているかどうかがけっこう大事かなと思います。メジャーリーグじゃないですけど、20代のうちにどれだけ打席に立っていろんなことを経験して、それで初めて大舞台に立てるのが30代かなと思います。
なので、30代以降で何かをやり始めるというよりは、「20代で積み上げたものを30代でどう活かすか?」を考えて行動できるというのが、いわゆる30代以降のキャリア戦略ではとても大事になるのかなと思います。
20代で得た経験の中から、自分がやりがいを感じられるとか楽しいと思えるもの、「夢中になれるものって何だろうな?」というところを見つけていくことがすごく大事です。
足立:ありがとうございます。経験から夢中になれるもの、楽しいものを見つけていくということですね?
moto:そうですね。30代から新しく「あれをやろうかな? これをやろうかな?」も、別にできなくはないんです。だけど、やはり20代を過ごした時間の中で得た土地勘や経験則を活かしたほうがよりレバレッジが効くし、スピードも上がるんじゃないかなと思います。
自分がどんなことが得意なのか、どんなことをやりたいのか、どんなことにやりがいを感じるのか、あるいはどんな成果を出せるのかをちゃんとわかるようにしてキャリアを考えていくことがとても大切かなと思います。
キャリアアップのために磨くべきスキル
足立:ありがとうございます。テーマとして出させていただいているものに関して、本当にストレートに端的に、とはいえすごくしっかりとお答えいただいていて、なんだかとんでもないなと思っているんですけど(笑)。
moto:いえいえ(笑)。
足立:質問もちらほらいただいてそうなので。
moto:本当ですね!
足立:ちょっと1周した後に取り扱っていこうかなと思っています。あっ、めっちゃすばらしいご質問をいただいているので、ありがたいですね。どうしよう?
moto:(笑)。
足立:ということで、せっかくなのでここで扱っちゃいましょうか? あと、チャット欄にいただいた方のも読み上げておくと、「『市場の声』と『自分の本音』の重なる部分の見つけ方や考え方をぜひ、知りたいと思っていました!」ということで、ありがとうございます。
あと、「産休育休を控え、仕事をしたい気持ちとの悩み中。納得できるキャリア選択の助けの1つとしたい」という、とても前向きな気持ちで参加いただいていて、ありがとうございます。
質問にもちょっと答えていきます。せっかくなので一番上からいきましょうか?
moto:はい。
足立:motoさんに読み上げますと、「いわゆるポータブルスキルと社内でしか通用しないスキルの観点はどのように考えていますか? 市場価値の観点だとポータブルスキルをメインで磨いていったほうがいいという考え方になりますか?」という、けっこう具体的な質問ですね。motoさん、どうですか?
moto:おっしゃるとおり、ポータブルスキルをメインで磨いていくほうが意味があります。社内でしかあんまり通用しないスキルとは、いわゆる政治的なものとか、本当に社内でしか通用しない何かだと思います。同じ業界内で転職するんだったらこれが活きる可能性はありますけど。
でも、基本的には、ほかの業界に出たり、今いる会社よりももうちょっと上流の会社に行く時にはポータブルスキルを磨いていくほうが、どこに行っても役立つし、ちゃんと評価されると思います。なのでポータブルスキルをメインで磨いていくほうがよいかなと思います。