「読者が選ぶビジネス書グランプリ2025」にて、ビジネス実務部門賞受賞『いつも幸せな人は、2時間の使い方の天才』(すばる舎)の著者である今井孝氏を招いた特別セミナーが開催されました。本記事では、定時で仕事を終わらせるためのポイントや、コツコツ続けられる人・続けられない人の違いについて明かします。
定時で仕事を終わらせるためのポイント

米良克美氏(以下、米良):そして2章、3章でムダを取り、幸せを明確にしたら、それを幸せスケジュールに落とし込んでいくのが第4章です。
このあたりは、やはり時間術の醍醐味といいますか。我々は「忙しい」が口癖になっているところもありますから、スケジュールの立て方みたいなところで聞いてみたいんですけれども。スケジュールを立てる時、早く仕事を終わらせないといけない時に、「何が完成したらその仕事が終わったことになるのか?」、この問いがまた出てくるわけですよね。
やはりこれは考え方として、終わりを見据えてやる必要があるのでしょうか?
今井孝氏(以下、今井):おっしゃるとおりで、ゴールを明確にしていたらやることはめちゃくちゃ減るんですよね。今会社にお勤めの方は、残業できなくて困っているという人がすごく多くて、17時とか18時に仕事を終わらせないといけない。「夜まで働けたらアレができたのに、どうしよう」みたいな、毎日仕事が進まないという方はけっこう多いんですけど。
でも、成果物が何かを明確にしていたら、ギリギリかもしれないんですけど17時とか18時に間に合うと、僕は経験上思うんですよね。
米良:なるほど。
今井:会社員時代に、夜からセミナーに通ってコーチングとかを学び出した時がありまして、その時はやはり間に合いましたからね。定時に仕事を終わらせていたので、「あっ、やればできる」って僕、思ったんですよね。
米良:へぇ。
出張に行く前に「報告書」を書いておく
今井:なので、成果物を明確にするって大事なんですけど。それで、会社員時代のすごく印象的なエピソードがあって。ちょっと大きな会社だったので、海外出張とかあるんですよ。僕は若干研究開発寄りの仕事をしていたので、出張に行って出張報告、レポートを書かないといけない。それに僕はめっちゃ時間がかかったんですよ。
(出張に)行って、「出張報告に何を書いたらいいんだろう?」と思いながら帰ってきて、(出張報告を出すのに)ダラダラダラダラ1週間とか2週間とかかかって、(上司に)「お前、何やっているんだ」と言われた。
でも、先輩でめちゃめちゃ(出張報告を書くのが)早い人がいて。出張から帰ってきたらその足でというか、帰ってくる前に、当時Wi-Fiみたいなものはなかったんですけど、何かにつないで、飛行機を降りたらすぐメールで出張報告を上げていた。
すごいなと思って聞きに行ったんですよね。「どうやっているんですか?」と聞いたら、「あぁ、簡単、簡単。出張に行く前に報告書を書いたらいいねん」と言われて。
米良:えっ?
今井:「どういうことですか?」って(聞いたら)、「いや、出張って行くのが目的じゃなくて報告するのが目的でしょう?」と言われて、「あっ、確かに」と。「だからそれを先に書いたらいいねん」と。
ほんで、当時はWordファイルだったんですけど、「テンプレートがあるから、この前回の誰々さんの報告書をコピーして、日付とかはもう書けるでしょう?」「確かに。何月何日から行くのか決まっていますから」「で、訪問する会社とかは決まっているでしょう?」「1日目ここで、2日目ここで」、「で、何を聞くかはわかっている?」「そういえばこれ聞いて、これ聞いて」。
「意思決定がそれでできたらいいんでしょう? その情報で上司が『じゃあ、こっちにする』とか『あっちにする』とかが決まったらそれでいいんでしょう?」「あっ、確かに」「じゃあ、お前はどう思うねん?」「たぶんこうじゃないですか」「それ、書いといたらいいねん、最初は仮説でいいから」「あっ、確かに」と。
仕事ができる人は“何が終わっていればいいか”が明確

今井:書いて、仮説を持って出張に行ったら、合っているかどうかは(先方に)それを聞いてイエスかノーじゃないですか。もしくは補足があって、それさえ聞いてきたら、もう出張は終わり。「だから、先に成果物を作っておいたらすぐ終わるよ」って。
僕は出張報告書を先に作っていなかったから、帰ってきて書きながら、「あれ? これ、どうなのかな?」とか疑問が浮かんでしまって、聞きそびれたことを聞きにもう1回行かないといけないんですよ。
「そうか、二度手間だな」と。だから先に出張報告書を書いて、その仮説が合っているかどうかだけを聞きに行くようにしたらすごく早い。これはふだんの仕事でも同じはずだと。先に成果物を作って、その成果物に必要な情報を取りに行く。これで、やることがかなり減るはずです。仕事を終わらせるコツは、そんな感じですね。
米良:いやぁ、大変大事なことですよね。「何が終わったら終わりなんだっけ?」みたいなところを明確にせずに走り出しているケースはけっこうありますよね。
今井:多いですよね。
米良:でもすごいですね。その(報告書を書くのが早い)先輩は幸せそうだったんですか?
今井:そんなに忙しそうじゃなかったです。
米良:それこそ、仕事を完了させるための必要最低限のことをやられている、という感じだったんですかね。
今井:そうですね。だから仕事ができている先輩はだいたい机がきれいだったんですね。
米良:よく言われますよね。
今井:何をやればいいかが明確だから、必要ないものはデスクに置いていないし、そういう人は本当に定時で帰っていましたね。
“何のためにやっているかわからないタスク”をやめてみる
米良:すごいですね。今井さん、出張報告書以外にも、やらなくなったことはありますか?
今井:いっぱいありますよ。しょうもないことを1個言っていいですか?
米良:お願いします。
今井:僕、クラリネットの音楽教室に通っているんですよ。会員証を受付に出して、それから小さな教室に行ってレッスンを受けるんですけど。ある時、「受付にカードを渡すのって必要なのかな?」とふと疑問に思ってそれをやめて、直接先生のいる部屋に入るようになったんです。そうしたらなんの問題もなくて。
米良:ほう(笑)。
今井:受付のスタッフの人から何も聞かれないという。やはり必要なかったんだなみたいな(笑)。
米良:それ、何のためにやっていたんでしょうね。
今井:だから、本当にやめられることはどんどんやめて、必要なことだけをやるという。
米良:そうか。今、今井さんがおっしゃってくださったように、やめてみて影響がなかったらそのままにして、何か問題が起こったらまた始めるみたいな考え方もできるということですよね。
今井:そうですね。
米良:なるほど。それこそ何が仕事の完了に必要なのかみたいな考え方ですよね。
今井:基本、仕事の完了に必要なのはだいたい上司が意思決定できるかとか、顧客が意思決定してゴーしてくれるかどうかだと思うので。社内の意思決定に必要な情報ってそんなにきれいに見せる必要はないと思うんですよね。
米良:確かに。
今井:数字も1の位まで正確に出す必要はなくて。1の位までと考えると、すべての書類を洗い出して全部足し算しないといけないけど、ざっくりでいいんだったら「A案よりB案のほうが絶対安いです」とかでいい。100万円違いますとか1,000万円違いますとか、このレベルで言えば上司も判断できると思うので。
こうしたら、2日かかる仕事が2時間ぐらいでできたりとか。「ゴールは何だろう?」から考えると、やることは本当に減ると思いますよ。
米良:いやぁ、今のはものすごく昔の自分に言ってあげたいですね。私もすごく細かい性格だったので、細かいところまで詰めないといけないとか、完璧主義だったんですけど。仕事のできる先輩とかによく言われていましたね。「社内報告の資料をお化粧してどうするんだ」みたいな。まさしくおっしゃるとおりだなと思って聞いていました。ありがとうございます。
コツコツ続けることの意味

米良:1章で全体のコンセプトを示し、2章でムダを取る。3章で幸せに気づき、4章でそれをスケジュールに落とし込んで時間の使い方を考えていく。
5章が「コツコツ継続することは幸せなんですよ」ということを今井さんはより長期的な観点でおっしゃっていたと思うんですけれども、もう少し言葉を足して解説していただけますか?
今井:ありがとうございます。例えば僕は、メールマガジンを2002年から23年やっております。あと、さっきも出ましたけど、クラリネットは36歳から始めて、15、6年続いております。この本が今10万部いっているんですけれども、僕は書くのが遅いので、やはり企画からすると1、2年かかるんですよね。
そういうのもやはりコツコツ毎日書いているから最終的に本になったわけです。その原型は何かというと、20年前からメルマガでコツコツ書き溜めてきたいろんなアイデアや積み上げてきた事例なんですよね。
コツコツすることによって最終的に本ができたり、クラリネットをコツコツ練習することによってライブができるようになったり。やはり日々の長期的なコツコツが、得たい未来を作り上げてくれるわけです。
その時の達成感はすごく大きいので、やはり幸せになるためにはコツコツしないといけないと思うんですけども、嫌だという人がけっこう多い。
米良:(手を挙げて)はい(笑)。
今井:(笑)。「なんか地味な気がする」とか、「むなしい」とか、「誰も褒めてくれない」とかいろいろとあると思うんですけども。僕が工夫しているのは、小さなタスクが終わった時に喜ぶということですね。
米良:あぁ、はいはい。