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西原亮氏インタビュー(全4記事)

売上は前年比200パーセントアップもキャッシュ枯渇でリストラへ… メンバーのモチベ低下を打破できたきっかけ

本企画、「キャリアをピボットした人の哲学」では、インタビュイーにこれまでの人生を折れ線グラフで振り返っていただき、その人の仕事観や人生観を深掘りしていきます。

今回は、『コンサル時代に教わった 仕事ができる人の当たり前』著者の西原亮氏に、今までの人生を振り返っていただきました。本記事では、売上は前年比200パーセントアップするも、リストラが避けられない状況になった経緯や、起死回生のきっかけについてお伝えします。

コストが膨らみキャッシュ枯渇、リストラが避けられない状態に…

——3年目にはキャッシュ枯渇につきリストラをしなければいけない状況になったとあります。リストラを決断する際にどんな葛藤がありましたか?

西原亮氏(以下、西原):基本的には絶対にしたくないという思いがありました。もともとのきっかけが、赤字からなんとか黒字にしようと言って新卒を4人入れたので、損益分岐点を超えるためには、1年半ぐらいで(売上を)2倍にしなきゃいけなかったんです。これは僕のマネジメントの設計ミスなんですよね。

実際に売上は前年比200パーセントアップができましたが、利益と売上は別だったんですよね。お客さんの件数は倍になって売上はあったけど、そのぶん営業の費用や人件費が多いので。

営業中ってどんどんコストがかかるんですけど、利益は営業活動をピタッと止めて初めて利益が出るんですよ。それを僕が完全に見間違えていたというか。売上が月に1,000万円になったら、赤字と黒字がトントンになるんだけど、そこまでにチラシの費用や広告費用とか、いろんな費用をかけていたんですよね。

だから売上が1,000万円になったから「黒字だ、バンザイ」じゃなくて、そこまでに人件費以外にもどんどん投資をしてしまっていました。自分の設計ミスに目を向けず、ただ売上と件数だけに終始しちゃっていたのが、まず反省の1つです。

それを踏まえてリストラをする時には、もう本当に「ごめんなさい」という心情で、一番つらかったのは誰を切るかですよね。

新卒メンバーで誰を切るか…苦渋の決断

——先代の時からの従業員の方もいらっしゃったと思うのですが、やはり悩まれましたか?

西原:実は先代の社長の時にいた社員は、新卒を入れてから1年後ぐらいに、問答無用で辞めていただいているんです。そこはある種リストラに近いんですけど、この3年目の時は、新卒メンバーで誰を選定するかがやはり一番きつくて。

彼ら彼女たちが納得するように、どう伝えるかが一番苦しかったですね。例えば「営業の能力」という定量的に測れるところと、定性的に「指示したことをちゃんと守っているか」とかの事実をちゃんと集めて共有して、「よってあなたは基準に満たないので……」みたいなことを伝えなきゃいけない。

リストラをするにあたっては、経営状況がめちゃくちゃ困難であることや、なんとか経営状況を復活させるためにいろんな手立てを打ったか、とかいろんな厳しい要件があるんですね。「そういうのもやってみたけど、どうにもならなかった」というロジックを作るのが厳しかった。

その代わり、通告したメンバーには次の転職先が決まるまで、全部面倒を見ました。履歴書の作り方からエントリーシートから、一緒にどの企業を受けるかまで決めて、全部伴走しましたね。

目標を見失い、ひたすら現状維持の2年間

——当時のリアルなお話しまでお聞かせいただき、ありがとうございます。このリストラのあとからはモチベーションもかなり下がって、目標を見失いひたすら現状維持の状況が2年くらい続いたとあります。どんな出来事や気づきがあって、再び動き出すきっかけになったのでしょうか。

西原:それは採用が大きなきっかけだったと思います。僕自身がちょっと普通の経営者と違うのは、だいたいみなさんビジョンを掲げて「こういうふうに社会貢献するぞ」とか「こういうふうに売上をつくるぞ」って言いますよね。

僕も会社を継いだ時はあったんですけど、「本当にそれを実現したかったか」というとそうじゃない。もともと牛乳配達が好きなわけでもない中で、「父親が亡くなってしまったし、自分しかいないし、何とかやれそうだしやってみよう」っていうノリで、ミッションを掲げて始めてしまったところがありました。

「とりあえず仕事しとけばいいや」メンバーのモチベも低下

——跡継ぎはもともと自分が興した事業ではないので、そういった思いを持つ方も少なくないのでしょうか。

西原:そういう人も多いですね。だから自分の軸はそこになかった(ので、モチベーションも下がってしまった)。しかもリストラで残ったメンバーは同期の新卒が切られてしまったということで、めちゃくちゃモチベーションが下がってしまったんですね。

それで、2年間はとりあえずなるべくお金をかけないように利益を出そうという方針になってしまったんです。あんまり営業活動も積極的にやらないから、そのぶん会社も伸びないんですよ。

「ずっと現状維持して利益だけは少しずつ貯めよう」となったら、「俺らは何のために働いてるんだろうね」と、だんだんなあなあになってきちゃったんです。

「とりあえず仕事しとけばいいや」みたいな雰囲気がまん延しちゃって、自分もやる気がなくなっちゃって。これをなんとかしたいなと思った時に「そうだ、人入れよう」と、中途採用を初めて行いました。

それで今のうちの現部長と、YouTubeのディレクターをやってくれているメンバーや最終的にDXを推進してくれるメンバーが入ってくれて、そこからだんだん気運が変わってきましたね。

起死回生のきっかけになった「中途採用」

——中途採用がきっかけになったとのことで、どんなところが変わりましたか?

西原:中途なので「社長、就業規則とかないんですか」「残業代どうなってますか?」とかを指摘してくれて、「ヤバい、襟正さないといけないな」と。

「夜この時間まで働いているとなると、固定残業代外なのでけっこうヤバいですよね」とか、「賞与の設計もしていったらみんなやる気が出ますよね」とか。普通の会社でやっているような普通のことを言ってくれたんですよね。

あとは「こういうことをやったらいけるんじゃないですか、もっとみなさんがんばりましょうよ」みたいな。同じ新卒で伸びてきたメンバーは仲が良いんだけど、まったくの異物が入ってきたので、新卒入社組にもすごく刺激になったんですね。

かつては週6日勤務、朝5時〜夜7時まで働いて手取り12万

——組織の足りない部分を補完してくれたんですね。先代の時代は、残業代や就業規則などはなかったのでしょうか。

西原:ないです。これはよく講演で言っているんですけど、僕が務める前の社員さんの給料は、週6日で朝の5時から夕方の6~7時ぐらいまで働いて、額面が148,000円です。社会保険を引かれたら118,000円とか12万円ぐらい。だから労働基準法外なんですよね。

これはぜんぜん公開してもらってもかまわないんですけど、そうでもしないと、牛乳屋さんって儲からなくて、利益が取れないんですね。だから僕らは、まず単価を上げるとかして利益を確保しました。でも結論から言うと、(うまくいったのは)やはり(中途の)人を採用したのが大きかったですね。

「ごく当たり前のサービス」を導入するだけで大きなインパクトが

——なるほど。リストラ後に目標を見失い低迷していた時期を脱出できた背景には、組織を一緒に運営してくれる人材を採用できたことが大きく関わっていたんですね。

先代から事業を引き継いで10年目の40歳の頃からは環境変化があり、宅配事業も売上が7倍になったとのことです。事業を拡大するにあたって競争環境や市場の変化はどう対応されましたか?

西原:まず競合に関しては、正直言うといなかったですね。もうみなさんネットショッピングも多くなってきて、「営業に時間を割くなんてとてもできない」みたいな感じでした。

それこそ雪印とか森永っていうほかの競合もそうだし、同じ明治でもエリアが被るので競合なんですけど。みなさんぜんぜんやる気を失っている感じがあったので。

市場環境の変化という意味で言うと、本当に当たり前のことなんですけど、例えばオートロックのマンションに向けて配達できる仕組みにしたり。

お客さんがご不在のことも多いので、冷蔵状態が保てるようにオペレーションを変えたり。あとはキャッシュレスも早めに導入したりして、例えば当時だとクレジットカードやLINE Payで払えるようにしました。

業界のほかの会社は「手数料取られてもったいないじゃん」みたいな感じで、みんなやらないんですよね。だけどもう、お客さん的にはキャッシュレスはごくごく当たり前のことなので、ほかのサービスで使うような仕組みをきちんと入れてあげる。これで十分差別化になるんですよね。

——アナログな業界だからこそ、ほかの業界で当たり前にやっていることを取り入れて、大きなインパクトが出せたということなんですね。西原さん、ありがとうございました。

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