新刊『仕事の「整理ができる人」と「できない人」の習慣』の著者・大村信夫氏が旬なテーマでゲストと語り合う対談シリーズ。今回は、大村氏と同時期に新刊『ポートフォリオ型キャリアの作り方』を出版した染谷昌利氏が登場。安請け合いすることの価値や、ライスワークとライフワークの考え方などが語られました。
飲み屋で偶然話した人から仕事をもらえる人の特徴
染谷昌利(以下、染谷):今日のテーマの複業の話、ちょっとします?
大村信夫(以下、大村):複業って、いわゆるパラレルキャリアですからね。キャリアって、別に「働くこと」だけじゃない。
染谷:そうですよね。
大村:人生の軌跡そのもの、ですよね。キャリアの語源も「轍(わだち)」ですし。いろんな経験を重ねることで、人生に幅や奥行きが出ると思うんです。
染谷:これも多少ずれるんですが、僕、一番おもしろい仕事の得方をしたのが、飲み屋で飲んでいた時で。マスターと話していたら、隣の人から「Webサイト作って」と言われたことがあって。「何だそれ?」って(笑)。
なぜかというと、その飲み屋のマスターが知り合いだったんです。で、僕は「Googleマップ」の話ができるので、「どうやって集客と結びつけましょうか」みたいな話をしていたら、隣に座っていたご夫婦が「今うちも自営業やっていて、その話ちょっと混ぜてもらっていいですか?」と。
名刺交換をして、「後日いろいろ話を聞かせてください」と言われて、結果的にWebサイト制作の仕事につながったんです。
つまり、どこにチャンスが転がっているかなんてわからない。自分のノウハウを出すのを恐れる人もいますけど、「出したら仕事にならない」「全部持っていかれる」って思うんですよね。
でも、
さっきの先輩の話じゃないですけど、できる人は勝手にやるんですよ。できない人が相談に来るから、どんどん出していいと思うし、出せば「もっとこの人、いろいろ持っているんじゃないか」と思ってもらえる。実際はもうカサカサでも(笑)、意外と頼られるんです。
あと、僕が会社員時代に一番よかったと思うのは、めちゃくちゃ怖い上司がいたんですけど、「どうせ人はお前の話なんか覚えてないから、同じことを何回でも言え」って言われたこと。
だから僕、たぶん同じことを来週もしゃべります(笑)。
大村:みんな覚えてないから。
染谷:そう、覚えてない(笑)。どんどん出していって、足りなくなったらまた新しいことをがんばって覚えればいいし。
頼まれたら「はい」か「イエス」か「喜んで」
大村:さっきおっしゃっていた、「頼まれたらまず“はい”って言う」っていうのも、それですよね。できるかどうかはあとで考える。
染谷:そう。「わかりました」で(笑)。なんとかなるんじゃないですかね。なんともならないかもしれないけど(笑)。
(一同笑)
大村:でも、なんとかしてきてるんですよね。
染谷:本当、直近で一番困ったのが、出版社から「染谷さん、海外のクラウドソーシングの本を出したいんですけど、誰か詳しい人いますか?」って言われて、「いねぇよ」と思いながら(笑)。
でも、1人ドイツに住んでいるイラストレーターの友人がいて、その人に「誰かいる?」って聞いたら、「あっ、1人いるよ」って。そこで「つながるもんなんだな」って思って、なんとかマッチングできた、ということがあったんです。
とりあえず請けてみる。もちろん保険はかけますよ。「いたら紹介します」って前提で。でも結果的にいたから、やっぱり請けておいてよかった。そういう時って、自分も勉強になるんです。「へぇ、海外のクラウドソーシングってこうなってるんだ」って学べるから。そうするとまた、こういう場で話せるネタになるんですよ。
大村:ハブになるというか、つながり役としてね。
染谷:ハブ、すごく重要だと思います。
大村:大事ですよね。
染谷:はい、できなくてもとりあえず動く。
大村:僕も一応、何か言われたら「はい」か「イエス」か「喜んで」しか言っちゃダメって言われて、それで本を出すことにもつながったんですよ(笑)。でも、それくらい軽く、楽しくやっていて。
染谷:「わかりました」って言って、もしできなかったら「ごめんなさい」って言えばいい。「やっぱり駄目でした」「頑張ったけど無理でした」って言えばいいんです。
大村:でも、やるってなると、それなりに自分でも努力しますよね。
「安請け合い」をしたほうがいい
染谷:あと、アンテナが立つんですよ。それまで気づかなかった情報とか、本屋で目に入らなかったワードが飛び込んでくる。
大村:カラーバス効果みたいなやつですね。
染谷:まさにそれ。だから、ネットのニュースとか見ていても、必要な情報がちょうど入ってくるんです。「運がいいな」って思うんじゃなくて、アンテナが立ってるから気づく。だから、安請け合いって、むしろしておいたほうがいいと思ってます。
大村:「安請け合いしておいたほうがいい」。これ、今日のキーワードにしましょう。安請け合いしようと。
染谷:安いんだから、駄目だったら謝ればいい。
大村:何かあったら謝ればいい(笑)。
染谷:そう。素直に「ごめんなさい」って言う。それで怒られるような関係だったら、まあ、それまでの人間関係だし。逆に「しょうがないね」って許してくれて、続いていくなら、それはいい関係なんだと思います。
大村:なるほど。ある意味で、達観してますね。
染谷:そうですか? 僕、人を信用してないんですよ(笑)。
大村:そうなんですか?
染谷:はい。僕、お酒しか信用してないです(笑)。
大村:お酒はね、もう間違いない(笑)。
染谷:間違いないです。いろんな夢を見させてくれますから(笑)。
大村:なるほどね(笑)。悪夢にならないといいですね、それがね。
染谷:だいたい悪夢になるんですけどね。「もうお酒やめよう」って、毎回思ってます(笑)。
大村:(笑)。
やる気が出ない時はChatGPTに頼る
大村:ということで、あっという間にもう1時間近く経ちました。で、いま話してきたような内容が、実はこの本(
『ポートフォリオ型キャリアの作り方』)にギュッと濃縮されていて。
染谷:……書いてあるのかな(笑)?
大村:いやいや、ちゃんと書いてありますって(笑)。むしろ情報が詰め込みすぎなくらい入っていて。
染谷:無駄に書いています。編集さんにも「詰めすぎ」って怒られました(笑)。
大村:発売は2024年11月、ちょうど僕の本(
『仕事の「整理ができる人」と「できない人」の習慣』)と同じタイミングで出たんですよね。
染谷:そうなんです。
大村:けっこう近い場所に並べていただいていて、本当にありがたいなと思っていました。まさに『ポートフォリオ型キャリア』。ポートフォリオって、株の世界とかでも使いますけどね。
染谷:そうそう。自分のスキルとか得意分野……あと実は「嫌いなこと」とかも含めて、ちゃんとパッケージ化しておく必要があるんです。そういったことも含めて、一応この本に書いてあります(笑)。
大村:しっかりご自身で書かれたんですよね。
染谷:僕の本は全部自分で書いてます。最近はChatGPT先生に相談もしてますけど(笑)。
大村:そういうの、うまく活用しながら進めているんですね。
染谷:この本の中にも「面倒くさいを乗り越えるChatGPTの使い方」っていう項目があって。やっぱりみんな0→1って面倒なんですよ。
大村:そうですよね。
染谷:だから、本を書く時もやる気が出ない時は、「こういう内容を書きたいんだけど」ってプロンプトだけ投げておく。そうすると4割ぐらいの内容が出てくるので、調子が良い時に自分の言葉で書き直していく。これでだいぶ早く書けました。基本、やる気ない人間なので(笑)。
大村:なるほど(笑)。
染谷:なので、そういう種明かし的な話も、遊び感覚で本に入れてあります。
大村:楽しそうですね。なんか、仕事を楽しんでやってる感じが伝わります。
染谷:たぶん、楽しくないとやる気出ないと思うんですよね。
大村:ですよね。やっぱり楽しいことをやりたい。
染谷:「複業」であればあるほど、楽しいほうがいいと思うんです。
大村:うん、間違いないです。
ライスワークとライフワークという考え方
染谷:ちょっと話が戻りますけど、会社員だった頃の僕もそうでしたが、本業ってやっぱり嫌なことも多いんですよね。
大村:わかります。本業の会社員ってそういう面もありますよね。
染谷:会社員時代、「こんな仕事やってて意味あるのかな?」って思いながらやる場面もあって。でも、それは本業だから、ある程度仕方ない。だけど、複業、パラレルにやる別の活動って、自分で選んで始めたんですよね。だったら、好きなことをやればいいじゃないかと。嫌なことまでしてお金を稼ぐって、それはもう本業で十分じゃない? って思うんです。
大村:まさに、ライスワークとライフワークっていう考え方ですよね。
染谷:そうそう。
大村:ライスワークは、ある程度我慢も必要だけど。
染谷:会社員には会社員の役割があるし、好きなことだけできるわけじゃない。それはある意味、大人として当然のこと。でも、だからこそ複業では、嫌なことをあえてやらなくていい。
大村:割り切ってライスワークと向き合って、ライフワークには自由に取り組む。
染谷:そうです。全部がライスじゃない。本業の中にも楽しいこともあるし、つらいこともある。そのバランスも含めて組織に属するっていうことですけど、自分で選んでやることなら、嫌なことまでやらなくていいって思います。だったら、やらない。抜けちゃえばいい。
大村:ですよね。……ということで、お時間になってしまいましたが、今日お話しいただいたような内容がこちらの本に詰まっていますので、ぜひお読みいただければと思います。本日は染谷さんにお越しいただきました。
染谷:ありがとうございました。
大村:どうもありがとうございました。