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『地方副業リスキリング』発刊記念!第3回「地域越境ビジネス実践×地方副業リスキリング」オンライン対談セミナー(全3記事)

大手は緩やかな衰退に直面している 『地方副業リスキリング』著者と語る、企業人が地域課題に取り組む意義

『オンリーワンのキャリアを手に入れる 地方副業リスキリング』の刊行を記念して開催された本イベント。株式会社ドコモgacco EduWork事業開発室長の山田崇氏と、『地方副業リスキリング』著者の杉山直隆氏、監修者の南田修司が登壇。本記事では、企業人が地域課題に取り組む意義についてお伝えします。

大企業は1つの村である

山田崇氏(以下、山田):でも第1期生が終って半年後に第2期生が行くとなると、今度は第1期生との戦いが始まる。NTTドコモの2人目が来るんですね。これは大学生でもあると思うんですけど……。

南田修司氏(以下、南田):比べられますよね。

山田:ただ私は「後出しじゃんけんができるんだよ」と言うんです。もうすでに起こったことに関しては変えられないけど、先人のやったことをちゃんとリサーチできる。いいこともあるし悪いこともあるんですけど、それをしっかりと捉えて、自分は同じことをやってポジションを上回っていくのか、違った領域で新しい価値を出すのか。

これが私がよく言う「後出しじゃんけん」です。そこは先輩がやったことをちゃんと自分の糧にすればいい。

「巨人の肩の上に立って見る」という言葉にも通ずるなと思うんです。先人が4ヶ月ないしは6ヶ月でやったことは、1ヶ月でも1週間でもいいんですが、しっかりとリレーしてたすきをつないでいく。それは企業が継続して送り出していくことの価値でもあると思います。ただ最初は比べられますよね。

南田:比べられますよね。今の話を聞きながら思い出したことがあって。今、旭化成の人事部人財・組織開発室で室長をされている三木(祐史)さんが越境で地域に飛び込む時にお話されていたのが……。

「大手企業は1つの村なんです」と。人数も多いし、そういう意味では地域も1つの村で、村の中で1つの文化が形成されている。ある種蓄積した文化が時に変革を阻害もするし、時にその下支えもする。

その村の中で新しいものを生み出していく過程は、実は大企業も同じ。大企業を1つの村に見立てたら、同じ状況が大企業に起きているとおっしゃっていました。積み上げた文化や歴史が変革を阻害しているところもあるし、それがあるから武器として戦えるところもある。

同じ村なんですよね。だからこそ地域の村に飛び込んでいくことには、すごくヒントが溢れているんだと。今、そんな三木さんの言葉を思い出しました。

大手は緩やかな衰退に直面している

杉山直隆氏(以下、杉山):規模は違えど越境先でやってきたことで、応用できるところもあるわけですよね。

南田:本当におっしゃるとおりです。実は(三木さんは)自分たちは緩やかな衰退に直面しているとおっしゃっていて。三木さんは本の中にも書いていますけど、どっちかというとぐーっと伸びていくLoanDEALさんのようなスタートアップベンチャーにも人を出すし。

逆に緩やかな衰退を迎えている地域にも人を出す。それぞれに学べる価値や魅力、特性があるとおっしゃっていました。大手は緩やかな衰退に直面していて、それをどう跳ね返すのか。それが今、議論として上がってきているんですね。

まさに緩やかどころか急激な衰退も含めてですけど。さっき山田さんがお話されたように、世界最先端の複雑な課題先進地だから、必ず持ち帰ったことがつながっていくと、その時(三木さんも)力説されていました。

杉山:そうですよね。先ほどの代表性の話もあったように企業にとっては(越境は)いいと思うんですけど。越境体験のプログラムなどに参加した人、個人が得られるものは、あらためてどういうものかを、ちょっとお聞きしたいんですが……。

今までも出てきてはいるんですけど、個人が越境をして、企業課題の解決などに取り組む意義はどういったものだとお感じになりますか。

山田:私はわりとロジックというか。手順書どおりにやったらこれが出てくるという、料理のレシピではないんじゃないかなと思っていて。

なぜなら手順書どおりにやってうまくいくのなら、すでに困ってないなというのが1個あるんですよね。VUCAという言い方もしますが、今、前例のないことが起き始めている。

先ほどの人口構成などに変化がある中で、前例がないことに向き合うこと。その時に今までやった過去の実績を持ち込んで当てはめようとすると、やっぱりうまくいかないんですよ。いや、仮にうまくいくこともあるかもしれないんだけど、多くの場合はうまくいかないんです。なぜなら、すでに世の中にある情報でやろうとしているから。その時に1度しっかりと観察をしたりヒアリングをしたりする必要がある。

個人にとっての「越境する意義」

山田:あとはヒアリング・観察だけじゃなくて、自分でやってみて反応を見てみたり。(周りから)「何をやってんだ」「そんなことはうまくいくわけないじゃないか。だって前回もやったからな」という状況の時に、前例がなく答えもない問いに対してちゃんと向き合うことから始める。

その中で自分ができることをやるけれど(越境の場合)期間が決まっているのだから、できないことは助けてもらう。新たなステークホルダーを見つけてくるとか、共創をしていかなきゃいけないんですよね。コ・クリエーションというね。

その経験から私には大きな学びがあって。自社に帰って「これは去年やったから」と言われた時、前例踏襲や上司に言われたからじゃなくて、自分で見て感じて主体的に提案をしていくことにつながるなと思ったんです。これが持ち帰ることができる意義ではないかなと思っています。

今日のお昼も(越境対談で)鉄道会社勤務の西宮竜也さんが言っていたんですけど、「要は会社という枠がある」と。その枠を自分の中で決めてしまっていたんだけど、地域に行って「その枠を越境することにすごく可能性がある」と言っていました。

大企業だと自分の役割が縦割りであるけれど、地域に行くとなんでも自分たちでやっている経営者がいて、やらなきゃいけない役割が与えられる。「そっか、ここまでやっていいんだ」という。まさに前例がないことに挑戦をするという枠を外す経験、このフレームというか態度、アティテュードは持ち帰れるんじゃないかなと、ちょっと思いましたね。

地域に飛び込むと、企業の課題が自分ごとになっていく

南田:この前、ある会社の部長さんが部下を越境に連れていくのに、引率で行かれたんですけど。「それは俺がやるんだ」とおっしゃっていたんです。

山田:うわぁ~。

南田:この課題があるから変えなきゃいけない、乗り越えなきゃいけないと思っていたけど、そうじゃない。地域に飛び込んで、地域の挑戦者たちと一緒に触れることは「俺がやることなんだ」と自分の中で腹落ちしたらしくて。

さっそく自分で提案書を作って役員の方に提案して「すぐにやったんだよね」と話されていました。「俺が」となるのはすごく大きいし、大事なことだなと思うんですよね。

この前、山田さんと対談させていただいた時に「自分ごとに出会う」というキーワードがあったんですけど。越境する、地域に飛び込んでいくと、みなさん、自分ごとになっていくのをすごく感じます。「あの課題は私の課題なんだ」「あの解決は私がやりたいことだと思う」という。

自分ごと化していく、オーナーシップという言葉かもしれないですね。結果的に日常に戻っても仕事を自分ごとで考え始められる。つながっているのを感じますね。

山田:私はここ2年でNTTドコモの中国エリアの支社長と対談をしたり、(関信越支社エリアの)執行役員とも講演していますが、そのお二人に共通していたのを思い出しました。

リンクに貼ったのがTEDxの動画で見ていただかなくてもいいですけど、タイトルが「ひとりじゃ円陣組めない」という。まず3人で集まったらやってみようということですね。私はちょっと1人だと怖いから声を出してみたり、自分が2人目になってフォロワーになっていったりするんですけど。

「小さくアクションしてみよう。仲間ができるよ。よい問いは仲間をつくる、よい問いはコミュニティになる」という。こんなプレゼンをした後、別々の場所のお二人が共通して「俺は1人でもやる」と言ったんですよ。めちゃめちゃかっこよくて。

要は新しいことをやる時は、やっぱり一瞬孤独な時がある。でもその背中を見てやる人もいる。(そのお二人は)魅力的だから、今、そのポジションにいるんですよね。その時のお二人がめちゃめちゃかっこよくて。今の話を聞いてちょっと思い出しました。

南田:いいですね。すごいな。

肩書きが掛け合わされることの可能性

杉山:かなり盛り上がってきたんですが、あと5分になってしまいました(笑)。ちょっとクロージングということで。最後にメッセージをいただければと思うんですが、山田さん、お願いしてもいいですか。

山田:ありがとうございます。今、新しい事業で主体的に前例がないことに挑戦させていただいています。私は日本一おかしな公務員、元ナンパ師というように「株式会社山田崇」として、ある分野では知られていたんです。90万人の地方公務員、1741の地方自治体の中では……。

ただ転職したら、4万7,000人のドコモの社員からの認知度は0.1パーセント以下でした。なんなら一番名刺交換したのは社内(やグループ)の人だったかもしれない。

でも自分のキャラクターとドコモが掛け合わさることによって、いろいろな方にお会いできる。まさに今回の越境対談も、もし「山田崇が塩尻市でやるんだよ」と言ったら、こんなにやってくれなかったんじゃないかなと思っているんですよ。

ここに新たな組織というか肩書きが掛け合わされることによって、すごく可能性を感じています。「塩尻だから」「山田さんがいたからできた」ではないことができるなと。企業と地域、都市部と地域、大きな企業と中小企業、こういった越境での掛け合わせにすごく可能性を感じます。

今は企業の立場にいるので、企業のみなさんにも社内でこういった取り組みがあったら、まずはやってみようと思っていただけたら……。あとは自分たちで事業が作れるのであれば「よし、自分の会社でもやってみよう」と、まずは自分がやってみる、トライアルからでいいからやってみようというね。

先ほどの「まずは俺がやって背中を見せる」という取り組みがちょっとでも生まれてくるといいなと思っています。そこに私もお役立ちしたいですし、一緒に作っていきたいなというのが、今日の私のメッセージです。

越境で得られる「当事者意識」が大企業に必要

山田:当事者意識とは現場で起きていること(に向き合うこと)。これはもう小さく始まっている。地域の課題先進地に行ってみたり、異なる背景を持つ人と共創していったりすることは、M&Aや海外と仕事をやっていく大企業にとっても絶対に必要になってくるわけですよね。日本でも公務員と民間企業とか言葉が通じないんですよ。

あとは今、生成AIを使わない手はないんですよね。無料でできる部分もかなりある。生成AIを掛け合わせたプログラムを含め、しっかりとお役立ちできることをやっていきたいなと思っております。今日は良い機会をいただきました。ありがとうございました。

杉山:ありがとうございます。そうですね、山田さんがおっしゃったように、まず会社で手を挙げることが第一歩なのかなと思いますね。

南田さん、いかがでしょうか。

南田:山田さん、今日はありがとうございました。

山田:ありがとうございました。

南田:非常におもしろく聞かせていただきました。今日お聞きの方の中には、これから(越境を)検討されている方もいらっしゃるので、まずは飛び込んでいただくといいのかなと思います。

遠くから見ていた町や企業だったのに、ある瞬間から「うちの……」と言い始めるんですよ。その瞬間はすごくすてきだなと思うし。僕自身も今、いくつかの地域に関わらせてもらってるんですけど、台風が近づいてきたら本当に心配で、なにかできることないかと行きたくなるんですね。

こうやって多様になっていくことで気持ちもすごく豊かになると思うし。ぜひとも挑戦していただきたいなと思っております。今日はありがとうございました。

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