『オンリーワンのキャリアを手に入れる 地方副業リスキリング』の刊行を記念して開催された本イベント。株式会社ドコモgacco EduWork事業開発室長の山田崇氏と、『地方副業リスキリング』著者の杉山直隆氏、監修者の南田修司が登壇。本記事では、企業人材が紡ぐ地方創生と次世代キャリア形成の可能性について語ります。
『地方副業リスキリング』著者が登壇
杉山直隆氏(以下、杉山):それでは簡単な自己紹介をさせていただきます。南田さんからお願いします。
南田修司氏(以下、南田):どうもみなさん、こんばんは。G-netの南田と申します。すでによくご存じの方もお見えになっていて、大変お世話になっております。初めましての方もいらっしゃいますよね。
ふだん岐阜でG-netというNPOの代表をしております。今回、杉山さんとのご縁で、この『オンリーワンのキャリアを手に入れる 地方副業リスキリング』の監修に関わらせていただきました。G-netでは、越境する機会を通じて、いろいろな人たちが学びながら自分自身のキャリアを考える取り組みをしています。また地域で副業や兼業をしたい人たちのために、「ふるさと兼業」というプラットフォームの運営もしております。
ふるさと兼業の取り組み事例や、大手企業さまが地域に飛び込まれる研修事例などを踏まえて、どうやったらうまく活かせるのかを書籍にまとめるお手伝いをさせていただきました。今日はどうぞよろしくお願いします。
杉山:南田さん、ありがとうございます。それでは私の自己紹介をさせていただきます。あらためて
『オンリーワンのキャリアを手に入れる 地方副業リスキリング』著者の杉山と申します。ライター、編集者、キャリアコンサルタントなどを行っております。
ふだんはビジネス誌などに記事を書いているんですが、取材をしていく中で30歳以上のキャリアにすごく興味を持ったと言いますか。私自身、この先のキャリアは大丈夫なのかという悩みがありまして。
今、49歳なんですけれども、30歳を超えたあたりから、どうチャレンジしていけばいいのかを考えて、自分でメディアを立ち上げたり、いろいろな取材活動をしたりしておりました。そういった結晶と言いますか、今回の本につながった次第でございます。本の内容に関しては、後ほどご紹介させていただきます。
今日ご参加いただいている方がどんな方々なのかをちょっと知りたいなと思いまして。もし差し支えなければ、チャットで「地方副業やプロボノの経験はございますか?」「どんな目的で参加されましたか?」、この2つにお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。
35歳から悩み始めたキャリアの不安
杉山:それでは『オンリーワンのキャリアを手に入れる 地方副業リスキリング』の紹介をさせていただきます。すでにご購入いただいた方もいるとは思うんですが、あらためてご説明させていただきます。こちらの本は2024年8月2日に発売されました。
地方副業や兼業、またボランティアのプロボノを含んでいるんですが、首都圏などで働いているビジネスパーソンが地方企業で副業をすることで、リスキリングにつながるんじゃないかということを提案する本なんですね。
先ほど軽く申し上げましたが、私自身が35歳を超えてキャリアに不安や不透明感を持ち始めたのが、そもそものきっかけでして。
家を買って住宅ローンを組んで小さな子どもを育てながら「どうチャレンジしていけばいいんだろう」と考えるようになったんですね。それで見つけたのが地方副業だったんです。リモートで3ヶ月や6ヶ月といった期間限定でできる。すごくいい試みだなと思ったんですよね。
実際にまずは南田さんの「ふるさと兼業」でやってみたんですけど。これからご紹介する山田崇さんのいた塩尻市でもプロボノや副業など、いろいろなことをさせていただきました。
(地方副業は)いいとは思っていたけど、やってみると「あらためていいな」と思ったんです。でもその半面私も慣れていませんし、受け入れ企業も慣れていないので、ちょっとすれ違いと言いますか、ボタンの掛け違いが起こりやすいなと実感していました。
どちらもやる気はあるし、いいことをやろうと思っているけれど、なぜかうまく合わないということがけっこう起こるんだなと気づきまして。地方副業やプロボノはすごくいいものなのに、すれ違いで「もうやらないよ」になっちゃうと、もったいないなと思って。
そこで本で注意点やうまくやっていくためのポイントをお伝えして、企業の方や副業者の方にも読んでいただければ、すれ違いは少なくなるんじゃないかと思ったんですね。それで今回いろいろな出版社に掛け合って、ようやく出版できた次第でございます。
私一人ではどうにもならないなと思ったので、いろいろな知見をお持ちの南田さんにご協力を依頼したところご快諾いただき、より充実した本になったなと感じております。
地方副業は成功も失敗も共通点がある
杉山:南田さんにもうかがいたいんですが、この本で、あらためて感じたこと、伝えたいことをお話しいただいてもいいですか?
南田:そうですね。この本は杉山さんと1年以上ディスカッションして、まとめてきたものです。G-netでは、5年くらい前から大手企業の方が地域に飛び込むための研修を導入させていただいています。バックグラウンドがぜんぜん違う人たちが地域に飛び込んでくるので、やはりいろいろなことが起きるのは、側で見て感じていました。
うまくいけば地域側も飛び込んでいく人も、どんどん相乗効果を生み出していく。でも、ときどき変なすれ違いが起き、ぶつかっちゃって、お互いがお互いをちょっと嫌いになっちゃうことも起きたりする。今までいろいろなチーム、人、地域を見てきて、そこにはかなり共通するポイントがあるぞと思っていました。
うまくいっているところはうまくいくポイントがあるし、トラブルが大きくなっちゃうところには、トラブルが大きくなるだけのポイントがあるなと思っていたんです。これがより多くの人に届けられれば、幸せな越境、幸せな副業が増えていくんじゃないかなと。
僕らはふだん地域にいますけど、地域にとっても飛び込んでくる人にとっても、やった価値が増えてほしいと思って、杉山さんと一緒にまとめさせていただきました。
ダメになるポイントといいポイントを、ぜひみなさんに知っていただけるといいなと思います。それを片手に地域に飛び込んで行けば、よりスピード感を持っていい経験やいい機会が生まれるんじゃないかと期待しております。
杉山:南田さん、ありがとうございます。そうですね。(本を)片手に飛び込んでいただくことで、うまくいけばいいなと本当に思っています。もし(本を)お持ちじゃないのであれば、今日終わったあとに、ぜひご一読いただければなと思っております。
あとチャットもありがとうございます。副業6社、山田さんです(笑)。(本日ゲストの)山田崇さんもそうですけど、副業をしている方、ご経験がある方もいらっしゃいますね。ありがとうございます。なるべく(みなさんの期待に)お応えできるように、対談していけたらと思っております。
『日本一おかしな公務員』著者の山田崇氏
杉山:それでは山田さんのコメントも出てきたので、今日のゲストスピーカーである山田崇さんをご紹介させていただきます。
あらためて山田崇さんです。山田さんは、今、ドコモgaccoという会社でCLOを務めていらっしゃいます。その前は塩尻市役所の職員として働かれていて、『日本一おかしな公務員』という本ですごく知られている方です。
今日ご参加されている方の中には、山田さんとつながりがある方もいるかと思うんですが…。あらためて知りたい方もいらっしゃると思いますので、山田さんに、直接お話いただければと思います。では山田さん、よろしくお願いいたします。
山田崇氏(以下、山田):ありがとうございます。山田崇です。株式会社ドコモgacco、EduWork事業開発室長、Chief Learning Officerをしております。エデュケーションとワーク、まさに今日のリスキリングと副業という文脈を融合させた市場を作っていく、そういった事業の開発をこの4月から担当しております。
準備を含めますと、今年(2024年)の1月、2月が転機になりまして。その前から少し構想はあったんですが、今、地域では企業だけじゃなく、自治体や住民の方が課題を抱えている。そこに企業の人材が関わることで、学びや新たな働き方の文化につながるだろうと。そういったことから株式会社ドコモgaccoで、今、企業のリスキリングのプログラムの導入を担当しております。
NTTドコモの社員でありながら6社で副業
山田:先ほどチャットに書き込んだとおり、私はNTTドコモの社員なんですが、会社に申請を出して今、6社の副業を行っています。実はNTTグループ自体が副業を推進しておりまして。
また(NTTグループでは)リモートスタンダードとして、自分に縁のある場所や生まれ故郷など、いろいろなところで働く取り組みを推奨しています。朝5時から夜の10時まで、自分で勤務時間が選べるスーパーフレックスという取り組みもあるんですね。それで今、私は6社で副業しています。
地域という観点では、信州大学でキャリア教育・サポートセンターの特任教授。松本市にキャンパスがあるので、だいたい金曜日に地域活性化システム論の授業や、アントレプレナー実践ゼミ、あとは夏休みやスポットで短期集中で行うローカル・イノベーター養成コースという、全学部横断のゼミなんかを担当しております。
実は2022年の3月、4月が私の転機でして、塩尻市役所側で副業、地域の課題を解決する取り組みをしていたのが2022年の3月。そこから民間企業に転職をして、私自身が東京と長野県の二拠点生活。
さらに副業もしつつ、本業では社員が新しいスキルを学び、(地域でダブルワーク型フィールド研修を実施し)自社に戻った時にそれをどう活かしていくかというリスキングプログラム(地域越境ビジネス実践プログラム)を作っています。これが現在の私です。
今日は塩尻市の取り組みから、今までの3年間でどんな変化があったのかを中心に話していければなと思います。
あと直近では2024年7月30日に、地域越境ビジネス実践プログラムというサービスをリリースさせていただきました。ニュースリリースなどチャットにも貼っておきますので、気になる方はご覧いただければうれしいです。
実は「この記事はすごくうれしかったな」というのがありまして。長野県民だと知っている約39万部発行の『信濃毎日新聞』のデジタル版に、私が責任者として担当しているプログラムのニュースリリースが転載されたんですね。地元に「がんばっています!」(笑)とご報告できたなと感じています。
私自身は地域の企業や自治体、受け入れ先の発掘・コーディネート、また地域に行く時のマインド形成のプログラム監修をしています。またドコモgaccoは今、生成AIの研修を提供していて。そもそも「生成AIはどうなのか」という導入の研修(基礎)から、AIプロンプト思考のプログラムの研修(応用)も提供しています。
越境体験者に話を聞く「越境対談」も行う
山田:実際に「どういったプロンプトを入力すると、どういったことが返ってくるか」ということを、自分たちで生成AIを活用して自分の仕事に活かしていくものです。こういったグループ型のアウトプット研修も行っています。これはeラーニングとワークショップを掛け合わせたものになります。
それから4ヶ月間、ダブルワーク型フィールド研修(実践)。生成AIを使って作り、さらに使ってもらうというサイクルを実現する実践型のプログラムです。ワークショッププラス地域企業での実践なので、まさに地域越境になります。
こういった生成AIの文脈から3つのプログラムをご用意させていただいております。私が担当しているのが、3つ目の実践のところですね。また越境対談ウェビナーは7月から20人連続でやっていて、今日もお昼に西宮竜也さんと越境対談させていただいたところです。私自身が塩尻市役所でやっていた越境は、まさにG-netが老舗中の老舗、いろいろな企業が参加しております。
今日みなさんは教科書(『地方副業リスキリング』)をお持ちだと思うので、118ページをご覧いただくと、企業向けの越境研修プログラムが5つあるんですね。ふるさと兼業、シェアプロ、レンタル移籍、ローンディール、副業、留学、エンファクトリー、クロスフィールド、他社留学などがあります。
私自身は尊敬している先輩方や、越境された方たちに根掘り葉掘り(お話を)聞かせていただく越境対談というのを行っていて。「地域越境や地方副業、リスキリングを広めていきたい」という思いから、私自身が最初の1人として学ぶかたちでやっています。
明日もCo-InnovationUniversity(仮称)副学長候補の高木(朗義)先生(と対談する予定です)。高木先生は今、岐阜大学の教授なんですが、「いや、60歳を超えて、その挑戦しますか?」という、もうすごいですね。「資料はほとんど作らないから、どんどん突っ込んでください」と。
20人も(対談して)いるといろいろな方がいるんですね。そんなことを、今やっているところです。
人口減少する地域のを課題をAIで補完していく
山田:さらに『日本一おかしな公務員』は私の著書でして。この本は日経BPから出しているんですが、「『日本一おかしな公務員』AI化プロジェクト」という記事が出まして。ちょうど日経BPが取材をしてくれたんですよね。
地域の人口が減ることは決して悪いことではなくて、私は事象だと思っているんです。減った分、社員ではない方に副業で関わっていただいたり、DX、デジタルというテクノロジーを活用していったり。あとは人が減っていくことを生成AIでしっかりと補完しつつ、さらにクリエイティブや創造性を発揮していく。
そんなことを地域越境ビジネス実践プログラムやドコモgaccoが提供する生成AIの研修でやっていくと。「じゃあ、私もまずやってみましょう」ということで、この山田崇AIを自分で作ったんですよね。実は自分で作ったものと会社で作っているもの、2つあるんです。
「いや、私でも作れるんですよ」と見せることによって、「えー! 山田さん、どのくらいでできたんです?」「いや、実は15分ぐらいで作れるんですよ」と話すと、「え、だったら私はこんなふうに使いたいな」となりますよね。
後ほどちょっとデモンストレーションできるように用意してきております。直近ではこんなことも行っています。まずはちょっと私の自己紹介と活動紹介をさせていただきました。
杉山:ありがとうございます。さすがのまとめ方です。生成AI研修は、基礎、応用、実践と3種類があって、それは1つずつやってもいい感じなんですか。
山田:プログラム自体は1つずつサービスとして独立しているものです。実は企業では(生成AIは)かなり進んできているんですよね。
ただ海外に比べると「生成AIをまだ使ってません」「個人では利用しているけど、仕事では使っていません」という方々もいるので、企業の導入の広がり方によって「うちはもう応用編からいきたいですよ」ということもできます。
あとは職層ですよね。今、経産省で「デジタルスキル標準」を定めているんですが、2023年8月から生成AIに関しての記載も追加されています。リーダーにとってのスキルセットや会社に必要なものは企業によって違ってくる。企業によって「あ、私たちは今、ここが必要なんだ」という段階に合わせた研修をご用意させていただいています。
杉山:ありがとうございます。