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得意で人に貢献する 自分の才能を見つけるには?(ゲスト:佐野貴氏)(全3記事)

自分の人生にプラスに働く「イライラ」は才能 自分の強みや才能につながる“良いイライラ”を見分けるポイント

本の学びを深めるオンライン講座「flier book camp」を運営する株式会社フライヤーが主催したイベントに、株式会社TALENT代表として才能研究を軸に活動し、Podcast『TALENT TALK』でも活躍中の佐野貴氏が登壇。診断ツールの結果に一貫性を出すための工夫や、メンテナンス型リーダーシップの重要性などを語りました。

前回の記事はこちら

逆境が才能を見つけるきっかけになる

久保彩氏(以下、久保):ややこしいことを言うかもしれませんが、逆に、(才能を)発揮できていない経験があるからこそ、良い環境に移った時に自分の才能に気づくこともありますよね?


私も過去にブランクがあった時期があって、何でこんなにモヤモヤするんだろうと思っていたのですが、「私は人と一緒に働くのが好きなんだ」と気づいたんです。その時に「ああ、あれが苦しかったのはこういう理由だったんだ」と振り返ることで分かったように、逆境がないと、良い状態に気づきにくいのかなとも思ったりします。

佐野貴氏(以下、佐野):まさにそうですね。逆境があるほうが才能を見つけやすいことは間違いありません。

久保:あぁ、やっぱりそうなんですね。

佐野:はい、先ほども触れましたが、30歳くらいや、社会人5年目から10年目の自己分析の少ない時期でも、経験を重ねることで才能に気づきやすくなります。例えば、学生時代は楽しかったのに社会人になって辛く感じたり、1社目は楽しかったのに2社目で辛く、また3社目で楽しいと感じたりすると、その違いから気づきやすいものです。

経験が増えるほど、久保さんのおっしゃる通り、こういった問いかけに対しての気づきも増しますね。

久保:でも、そう考えると長い目で見れば、辛い経験や逆境と感じる場面も、数年後には才能を見つけるきっかけになるかもしれませんね。そう思うと、少しポジティブに向き合えるようになるかもしれません。

佐野:そうですね。人生経験には無駄がないと思います。自己分析のデータが蓄積されていくんですよね。

僕は、自分の人生には自分の中にしか答えがないと思っていて。他人からのアドバイスも勉強になりますが、成功体験や失敗体験を見つめ直して「どういう人生を楽しみたいか」「どういう自分が一番自分らしく才能を発揮できるか」を見つけていくことが大切だと思います。苦労をした人ほど、才能を見つけることに大きな価値があると思います。

才能と得意の違い

久保:それでは、質問にもお答えしていきたいと思います。

佐野:はい、そうしましょう。

久保:まず、「得意はイメージできるが、才能は『何だろう?』と思っています」という質問がありました。先ほど、才能=得意という話もありましたが、あえて才能と得意を分けるとどう違うのでしょうか?

佐野:そうですね、質問された方は「得意なスキル」についてイメージされているのかもしれません。例えばエンジニアのスキルや、デザインが得意だというのも得意なことではありますが、才能は「ついついやってしまうこと」や「自然に出てくる思考や行動」に焦点を当てる点が違います。

エンジニア力やデザイン力、プレゼン力といったスキルも才能の一部になり得ますが、ついついやってしまうことかどうかを基準にして「ついついプレゼンしてしまう」と思えば、それも才能として考えてもらって大丈夫です。

久保:少し具体的な例として、たかちんさんが講座内で最後に作成する「トリセツ」を見せていただけますか?



その才能の部分をちょっと眺めたいのですが、「根幹を考える」と書かれているんですね。

佐野:僕の才能の一番上にあるのは「根幹を考える」ですね。それから「アイデアを出す」とか「相談する」といった項目もあります。「相談するのが才能なんですか」とよく聞かれますが、僕はこれがすごく自分の才能だと自覚しています。

久保:うん(笑)。おもしろいですね。

佐野:僕はつまずくとすぐに、得意な人に相談します。3人ぐらいにチャットで「相談にのってもらえない?」と必ず言うんです。それをすると一気に前に進みます。ネクストアクションを決めて、アイデアを実行し、仲間を集めるところまで持っていく。これが僕にとって成果を出すための重要な行動習慣であり、才能なんです。

久保:なるほど、確かにわかりやすいですね。ありがとうございます。

自分の行動と思考を言語化する意義

久保:別の方からの質問で「ストレングス・ファインダーやMBTI診断のようなツールとの違いは?」というものもあります。たかちんさんの考える才能の見出し方と、これらのツールの違いについてどう思われますか?

佐野:弊社でもストレングス・ファインダーを使った研修を行っています。ストレングス・ファインダーでは、34の資質が出てきて、その中で自分のトップファイブがわかります。その説明文に共感するポイントを見つけていくことで、自分の得意なことを内省していくやり方ですね。

今回の「トリセツワークショップ」では、自分の人生から具体的なエピソードを掘り出し、その中で見えてくる欲求ややりたいこと、そして才能やその才能を活かす条件などを明確にしていきます。

また、どうやって成果を出すか、どのようなステップで進めると成果が出るかという部分も見つけます。例えば、僕の場合は「相談する」というプロセスが成果につながりますが、久保さんにも別の成果の出し方があると思います。

久保:私も相談は得意かもしれません(笑)。

佐野:そうかもしれませんね。人によっては、相談せずにまずリサーチをして進めてから、完成してから相談するという方もいます。このように、成果の出し方は人によってぜんぜん違いますね。

この「トリセツ」では、自分の行動や考え方を深く掘り下げて言語化することが重要です。診断系のツールでは抽象的なワードや説明が多いので、そこからさらに深掘りする必要がありますが、「トリセツ」では最初から徹底的に掘り下げることで、非常に高い解像度で自分を見つめることができます。

久保:なるほど。



(講座カリキュラムのスライドが表示され)ワークが多いですね。ここで言うと、最初の深掘りはDay1やDay2の環境や条件についてですか?

佐野:そうですね。最初に自分の環境や条件を見つけていただき、それから「こういうことがやりたい」という原動力を言語化していきます。次に、才能を見つけ、それをもとに発表します。グループワークもあるので、他者からのフィードバックを受けながら、自分がどう見られているのか、思っていた印象とどう違うのかに気づける場を作っています。

厳しいフィードバックは基本的に禁止しています。なぜかというと、厳しいフィードバックは時に役立つこともありますが、良くない結果を招くことも多いからです。そこで、相手に対して感じたポジティブな感情を伝えてもらい、自分が伝えた意図と相手が受け取った印象とのズレを確認することで、自分らしさを言語化するワークになっています。

才能発見に向けたフィードバックのあり方

久保:フィードバックは本当に大事ですよね。自分が気づいていない面や表現を言葉にしてもらえると気づきが得られるし、それこそたかちんさんもよく言われる「ジョハリの窓」(自己分析で自分と他人の認識のズレを理解する心理学モデル)のように、自分が気づいていない特性を他人からフィードバックもらうことで、新しい発見につながります。

ただ、企業や組織の中では、組織の必要な能力や立ち位置に照らし合わせて「できている」「できていない」という評価フィードバックを受ける場面も多いですが、それとは異なる才能発見に集中したフィードバックモードが重要ですね。このモードチェンジは、たかちんさんがうまくサポートしてくださるおかげで実現できると思います。

佐野:まさにその通りです。ムード作りには特に力を入れているんですが、それ以上に、フラットであることを大切にするコミュニティかどうかがとても重要です。

実は、僕がフライヤーさんとご一緒させていただきたいと思ったのも、フライヤーさんの場づくりがとてもフラットで、一人ひとりの個性を尊重しているからなんです。他の場所ではこうした講座を基本的に作らないのも、フライヤーさんのような価値観が共有できる場が少ないからなんです。

久保:お、それは光栄です。ありがとうございます。

佐野:フラットでないと、変なバイアスがかかりがちなんです。「自分のほうが偉いから」とか、「○○会社の××です」といった肩書きによるマウントが発生することもあります。そんな時に、「この人の前では話しづらいな」といった感覚が生まれてしまうと、もったいないと感じます。才能が活かされることに立場や肩書きは関係なく、みんなに可能性があるはずです。

ここで成功体験を積むことで、バイアスに打ち勝つ力や自分で環境を整える力も身につけていってほしいと願っています。そのためのコミュニティ設計を大切にしているんです。

久保:なるほど、すごいですね。順番や質問、ワークがしっかりと設計されていて、他では経験できない内容が詰まっている。そしてこのフラットなコミュニティの設計が特徴的で、たかちんさん自身も「先生」ではなく、同じ立場で参加されるんですね。

佐野:そうなんです。「絶対に先生って呼ばないでください」とよく言っています(笑)。同じ立場で、みなさんの話を聞きながら学ばせてもらうことも多いです。今日はこういうかたちでお話しさせていただきましたが、一緒にこの才能を見つける「トリセツワークショップ」に挑んでいければと思っています。

自分の人生にプラスになるなら「イライラ」も才能

佐野:今日いただいた質問、本当はすべてにきちんとお答えしたいと思っています。大事な問いがたくさんあったのですが、全員分にはお答えできませんでした。こういう場に来ていただければ、どんどん質問してもらえたらうれしいです。

久保:ありがとうございます。でも、あと数問はお答えできそうですね。

佐野:ぜひぜひ。

久保:では、次の質問です。「私は違和感を感じたり、それを表に出してイライラすることが多いのですが、それも才能と捉えていいのでしょうか?」というご質問です。イライラする感情が出る背景には、大事にしている価値観が関係する可能性もあると思いますが、この感情を表に出すことと才能の関係について、たかちんさんはどうお考えですか?

佐野:ありがとうございます。この点は、先ほどの「やってよかったと思えること」という定義が大切です。質問もとても良い問いですね。イライラが自分の人生にとってプラスに働いているなら、それは才能と言えるかもしれません。

例えば、イライラすることで守れるものもありますよね。誰かを守るためだったり、リスク管理の一環としての感情であれば、それは才能と言えます。ただ、それが誰かを苦しめたり、自分にとっても嫌な行為であれば、それは才能とは言えないと思います。

久保:なるほど。

佐野:怒ること自体も悪いわけではありませんし、注意やリスク管理としてのイライラもあります。例えば、子どもが危険なことをしている時にイライラするのは、リスク管理ができているからこその反応かもしれません。

強みや才能につながる“良いイライラ”を見分けるポイント

久保:なるほど。確かに2つの側面がある気がします。イライラしたまま発言して「あ、やってしまった……」と後悔することがあります。誰かを傷つけたかもしれないとか、後でどう思われるか気になったりして。そういう自分に落ち込むこともあります。

でも、一方で、あの時言わなければまた同じことが起きたかもしれないと感じて、良かったと思えることもあります。こうした両面については、どうお考えですか?

佐野:ありがとうございます。単発で見たらマイナスかもしれませんが、長期的にチームにとってプラスになっているなら、それも「やってよかった」と解釈できると思います。才能って主観的な解釈でしかなく、誰かに評価されるものではなく自分で評価するものです。久保さんが後悔しつつも、長い目で見てやってよかったと感じられるなら、それは才能です。

才能には、短期的には損するけれど長期的には役立つものもあります。例えば、短期的には厳しいことを言って嫌われるかもしれませんが、後々「あの時、厳しく言ってくれて良かった」と感謝されることもありますよね。

久保:確かに。

佐野:スポーツの監督などでもそうですね。厳しい指導でチームが勝利することもありますが、優しさだけでは達成できないものもあります。それでも、結果的に自分が「やってよかった」と思えるなら、それが才能だと思います。回りくどいですが、この視点を大切にしていただければと思います。

久保:なるほど、微妙なバランスについても丁寧に答えていただき、ありがとうございます。

診断ツールの結果に一貫性を出すための工夫

久保:次の質問です。「いろんな測定ツールを使ってみると、特徴や才能が分散してしまって、これといった1つの強い特徴が特定できません。さまざまな社会経験で、第一の特性や才能が薄まったのか、また埋もれていた才能が出てきて変わったのかと感じています。本当の才能は1つに収れんさせるべきなのでしょうか?」というご質問です。

佐野:まず「本当の才能は1つだけ」というものは特になく、才能は複数あって良いと思います。ただ、1つに絞り込むと扱いやすくなることもあります。私も実験的に1つの才能に集中してみると、やはり自信にもつながり、活用しやすいと感じます。

例えば、私の場合「最後まで諦めない」という粘り強さが自分の強い才能だと自覚していて、ワークショップやゲームでも最後の1秒まで諦めたくないんです。この「諦めない力」に絞って活用することで、使いやすさも感じますし、どんな環境でどのように活かせるかが観測しやすくなります。

この方のご質問にある「分散してしまう」点については、たぶん場面が変わることによって才能が変わって見えるのではないでしょうか。

質問に答える際に、「今の職場において」などの前置きをつけてから答えてみると、分散が少なくなります。例えば「以前の職場において」や「学生時代」などと状況を限定することで、診断ツールでも一貫性が出やすくなります。

久保:納得感がすごく上がりますね。ありがとうございます。

メンテナンス型リーダーシップの重要性

久保:最後にもう1つだけ質問にお答えしたいと思います。「日本では長年リーダーの必要性が論じられてきましたが、日本の企業や組織において、たかちんさんがリーダーに必要だと考える補うべき点は何でしょうか?」というご質問です。

佐野:これは大きなテーマですね(笑)。日本全体で考えると難易度が高い質問ですが、よく言われるPM理論に基づいて、リーダーには「パフォーマンスリーダーシップ」と「メンテナンスリーダーシップ」の2つのタイプがあります。パフォーマンスリーダーは業績や成果を上げることに重点を置くリーダーで、日本には既にノウハウやメソッドが豊富にあります。

一方で、メンテナンスリーダーシップ、つまり人間関係を大切にするリーダーシップのノウハウはまだまだ不足していると感じます。どうやって人間関係を維持し、メンバーの才能を活かすかという点で、メンテナンス型リーダーの重要性は学術的にも指摘されていますし、私の経験でも実感するところです。

こういったメンテナンスの解像度を高めるためにも、才能を活かすためのコミュニケーションスタイルや環境づくりについて学ぶことが、リーダーにとって補うべき重要な要素だと思います。

久保:ありがとうございます。とても共感しました。冒頭でもおっしゃっていた通り、「自分がリーダーとなってメンバーの才能を発見し活かしたい」と考える方には、まずは自分を知るためにこの講座に参加いただけるといいですね。

では、お時間となりましたので、本日はこちらで終わらせていただきます。ありがとうございました。

佐野:ありがとうございました。

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