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得意で人に貢献する 自分の才能を見つけるには?(ゲスト:佐野貴氏)(全3記事)

仕事の成果につながる「自分の才能」を言語化するヒント 今は「自分らしさ」を求められるけど、誰からも教わっていない…

本の学びを深めるオンライン講座「flier book camp」を運営する株式会社フライヤーが主催したイベントに、株式会社TALENT代表として才能研究を軸に活動し、Podcast『TALENT TALK』でも活躍中の佐野貴氏が登壇。「才能研究」に至るきっかけや、「自分」を言語化することの重要性などを語りました。

「才能研究」に至るきっかけ

久保彩氏(以下、久保):佐野貴さんあらため、たかちんさん、どうぞよろしくお願いします。

佐野貴氏(以下、佐野):よろしくお願いいたします。

久保:たかちんさんは、かなり前から、特にポッドキャストを通じて、お名前を拝見しており、いつかご一緒できればと思っていた方なんです。こうして実現できて、本当にうれしいです。

佐野:ありがとうございます。ご縁をいただいて、出会ってからもう2、3年ほど経ちますね。そんな中で「いつかご一緒に」という話が、今日こうして実現できて光栄です。

久保:まずは、お互い簡単に自己紹介をしたいと思います。私は、株式会社フライヤーのCCOを務めています、久保彩です。この「ランチタイムセミナー」は月に2~3回開催しており、日々の小さな学びがみなさんにとってエネルギーになるようにと思って運営しています。たかちんさんにも、ぜひ自己紹介をお願いできればと思います。よろしくお願いします。

佐野:あらためまして、佐野貴と申します。「たかちん」というのはネット上でもよく使われているあだ名で、知り合いの方はだいたい「たかちん」と呼んでくださっています。

私は現在、株式会社TALENTの代表取締役を務めています。もともとはIT系の企業に勤めていましたが、そこから独立し、起業家のマーケティングや組織設計に関わるようになり、起業家のブランディングを手掛ける中で、「その方がどのようにして最も輝けるのか」ということを考え始めました。それが、僕の「才能研究」の出発点となりました。



そこから、組織設計や人事、採用といった領域にも広がり、さらに「どうすればチームメンバー一人ひとりの才能を最大限に活かせるのか?」という問いに対して、心理学者のメンバーたちとともに研究を続けています。そして、そこで得られた知見や概念をメソッド化して、企業や個人のみなさまに提供しています。あらためて、どうぞよろしくお願いいたします。

人が才能を発揮するのは「誰かといる時」

久保:今のお話で思い出したんですが、もともとたかちんさんはマーケティングのご専門で、そこから「人の才能」に焦点を移されたとのことでしたね。

マーケティングといえば「サービスや事業の魅力をどう伝えるか」が重要だと思うのですが、そこから「人の才能や魅力を発掘し、それが最大限に活かされる環境を作る」という方向へ進まれたのは、何か共通する部分があったのでしょうか? それとも、たかちんさんから見ると、違いがあると感じているのでしょうか?

佐野:僕がマーケティングで特に力を入れていたのは、例えば起業家の方々がまだあまり知られていない時期からサポートをして、メディア露出の支援を一貫して行うことでした。こうした支援を通じて、その人の魅力を最大限に引き出す必要があって、その人が楽しみながら才能を発揮できる状態に焦点を当ててきました。

それで、どうやってその人の才能を引き出すか、というところが僕の勉強のテーマになったんです。

久保:なるほど、たかちんさんが「人」に注目される理由が少し見えてきた気がします。よく「社会構造や事業を見るのが得意な人」と、「目の前の個人や集団を見るのが得意な人」といった違いがありますけど、たかちんさんは完全に「人」ですね。

佐野:そうですね、人です。ただ、1人の人が才能を輝かせるのは、必ず「誰かといる時」だと思っています。チームや組織の組み合わせ、環境が、その人の才能や得意なところを引き出すのに重要な役割を果たすんです。ですので、環境や人間関係の組み合わせにも着目して、研究を進めています。

今日お話しする内容も、「才能がどう活きるのか」というテーマで、特に「誰と関わるか」「どんな環境か」「自分の心理状態はどうか」といった要素に関して触れられたらと思っています。

才能発揮の度合いを数値化する

久保:先ほど、自己紹介の中で「研究する」という表現や、たかちんさんのTALENTには「心理学者がいて、それをメソッド化する」とおっしゃっていましたが、アカデミックなバックグラウンドを含めたメソッド化を重視されているアプローチなのだなと思いました。その点について、どのようなお考えや思いがあるのでしょうか?


佐野:もともと僕自身はアカデミックなバックグラウンドではなく、経験ベースで人の支援をしてきたのですが、やはり「確率を上げたい」という思いが強いんです。マーケティングと似ている部分もありますが、支援の成果を上げるために、先行研究のデータを活用することも意識しています。

現在、僕たちは「才能を発揮している」という状態を尺度化し、数値で測れるようにしています。例えば、どんな研修を受けたり、どのような施策を講じたりすると、才能発揮の度合いが上がるのか、実験を重ねています。アカデミックなメンバーがいることで、統計解析や相関分析が可能になり、確実に精度を上げることができています。

久保:確かに。

佐野:これまで多くの企業や個人の方々にご協力いただき、データを積み重ねながら、現在のメソッドにたどり着きました。少し話が長くなりましたが、答えとしては「才能発揮の確率を1パーセントでも上げたい」という強い思いがあるからなんです。

久保:なるほど。裏付けとして、大量のデータや多くの人々の状態の分析があって信頼性のあるメソッドなのだと理解しました。

今日の前半では、ぜひそのメソッドの考え方について少しご共有いただきたいと思っています。具体的な方法論は、もちろんflier book campや講座で共有されると思いますが、その考え方をみなさんに伝えていただけると嬉しいです。

久保:チャットでは「自分の才能の見つけ方に興味がある」といったコメントもいただいていますし、例えば「強みを使いすぎて人に嫌がられてしまうことがある」など、強みを活かすバランスについての質問もいただいています。

他にも、「才能の活かし方」について興味がある方や、「メンバーの才能を発揮させるための方法」を知りたい方もいらっしゃるようです。この辺りは後半でおうかがいしたいと思います。

現代においてなぜ才能が重要なのか

久保:では、たかちんさんに、まず「なぜ才能に着目するのか」、特に現代においてなぜそれが重要なのかについてお話をうかがいたいと思います。また、たかちんさんが考える「才能」の定義についてもぜひお聞きしたいです。何か資料があれば、適宜ご紹介いただけると助かります。

佐野:ありがとうございます。なぜ才能に着目するのかというと、これは時代の流れに伴って変わってきているからです。自分らしく生きられる時代が、今ほど可能な時代はこれまでなかったんです。

歴史的に見ても、これまでは社会構造的に「この家系に生まれたからこの仕事をする」など、ある程度生きる道が決まっていましたし、就職も企業勤めが一般的だった時代が続いていました。しかし、今は副業解禁も進み、自分らしさが求められるようになっています。加えて、YouTuberやインスタグラマーといったインフルエンサーの登場も大きな変化でした。

近くの友だちがインフルエンサーとして活躍し、発信を通じて生計を立てる姿を身近に見られる時代です。ツールの発展により、誰もが簡単に自己表現や発信ができるようになったのも要因だと思います。

そのような環境の中で、「自分らしく生きる方法」についてはこれまで誰も教えてくれず、先輩や前の世代から学ぶこともなかったと思います。

久保:確かに教えてもらってないですね。

佐野:だからこそ、迷いが生じるんです。そして、選択肢が多すぎることで、逆に自由が不自由を生むといいますか、「選択肢が多すぎると人は少し不幸になる」という研究結果もあるほどです。

自由が多いからこそ、自分にとって最適な環境や、一番活き活きと輝ける才能や強みを明確にする必要が出てきていると感じています。その言語化が求められているというのが、最初のポイントになります。

「自分」を言語化することの重要性

佐野:もう1つ補足なんですが、2018年に発表された「アイデンティティの感覚が主観的ウェルビーイングに及ぼす影響」という心理学の論文があります。この研究では、「自分のアイデンティティが確立している」と感じる度合いが高いほど、幸福度が高くなるという相関が示されました。

フライヤーさんの「言語化が大事」という点もまさにここに通じていて、自分のアイデンティティを言語化することで、自信や主観的ウェルビーイング、そして人生の満足度が大きく変わるんです。だからこそ、今の時代には、「自分」を言語化することの重要性がさらに高まっていると感じています。今日はこの点も含めて、才能の定義についてお話しできればと思います。

久保:なるほど。「先輩に教わっていない」というお話は、本当にそうだと感じます。仕事のスキルや専門的な技術を学ぶ場や時間は豊富にありますが、アイデンティティの確立や自分の才能について深く考える機会やアプローチは、まだまだ少ないですよね。

佐野:そうですよね。特に新卒で入社する前には自己分析をされる方も多いと思いますが、いざ会社員になってから5年や10年が経過すると、自己分析や内省をする機会ってなかなか少なくなってしまうのではないかと思っています。だからこそ、その時期にあらためて自己分析をすることがとても効果的だと思っています。

「才能ある人」と「天才」の違い

久保:たかちんさんが注目されている「才能」というキーワードについて、もう少し詳しくお聞きしていきたいと思います。いったい「才能」とは何なのか、ぜひ教えてください。

佐野:まず、「才能とは何か」についてお話ししたいと思いますが、よく「才能がある人」と「天才」が混同されることがあると思います。そこで、みなさんが「才能ある人」と「天才」をどのように考えているかを少しイメージしていただけたらと思います。

僕はこの2つをこう分けています。



まず、「天才」は他者との比較によって認識されることが多いです。「あの人すごい」「あの人は天才だ」というふうに、周囲から一目置かれ、他人との比較で輝いて見える存在です。

一方で、「才能がある人」は他人との比較ではなく、自分の中に得意なことを持っている人です。これは誰にでも備わっているもので、他者との比較は関係なく、自分自身が得意で、それを活かしている人が「才能ある人」だと定義しています。

久保:なるほど。誰にでも才能はあるんですね。


佐野:はい、誰にでもあります。ただ、その才能をうまく使いこなせるかどうかが重要なんです。

才能とは「ついついやってしまい、やってよかったと感じられること」

佐野:才能とは一言で言えば「得意なこと」だと僕は思っています。得意なことは「ついついやってしまい、やってよかった」と感じられることに現れることが多いです。



ストレングスファインダーで知られるドン・クリフトン教授も才能を「自然に繰り返される思考、感情または行動のパターンである」と定義しています。

僕も最初にこれを聞いた時、「なぜ自然にできることが才能なのか?」と疑問に思いました。でも、自然にやってしまうことを言語化してみると、確かにそうだと思える部分が見えてきます。

例えば、久保さんが以前別の場所でお話しされていた時に、相手に合わせたパーソナライズされたコミュニケーションを大切にしていて、全員に同じスタイルを取らないと言っていたのが印象に残っています。

久保:たかちんさんにそう言われて「あ、そうかも」と思いました(笑)。うれしいです。

佐野:それは久保さんの得意なことであり、仕事の中で武器として活かされていると思います。それが仲間やクライアントから信頼を得たり、ファシリテーターとして成果を上げたりすることにつながっているのではないでしょうか。

久保:確かにそうですね。

佐野:ついついやってしまうことは、それが自分にとって必要だから毎回やってしまうこと。つまり、自分にとって得意なことなんです。「ついついやってしまうこと」を見つけることで、自分の得意なことや才能が見えてきます。今日はその活かし方についても少しお話しできればと思っています。

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