2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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一般社団法人プロティアン・キャリア協会が主催したプロティアン・フォーラム2024。本セッションにはおじさん未来研究所 理事長の金澤美冬氏が登壇し、「50代60代の自律的なライフキャリア開拓」についての講演を行いました。本記事では、ミドルシニアが活躍し続けるためのポイントについて解説します。
金澤美冬氏(以下、金澤):プロティアン・キャリアでも、自分のことをわかっていて、社会や環境に合わせて適用していくことが大事だと言われているんですが、意固地になって「自分はこうしたい」と(なってしまう)。どうしても社会の需要が見えていなかったり、社会の需要が見えていても見えないふりをしちゃったりとか。
そうするとライフキャリア開拓がなかなかうまくいかないんですが、軌道修正していく=ちゃんと融和点を見つけられるという意味で、キャリア開拓がうまくいくなと感じています。
もう1つが「準備」ですね。これは、とことん時間をかける人がいいのか、それともとりあえず始める人がいいのかどっちか? というところなんですが、みなさん予想しているかな。どうだろう。
例えば、とことん何かをやろうと思ったら、資格を10個も20個も取って準備をするのがいいのか。「いやいや、資格はいいから始めちゃおう」という人がいいのかという感じです。予想どおりかもしれないですが、とりあえず始める人がいいよということです。
また事例なんですが、カーネルさんという67歳の方です。サラリーマンを卒業したあとに故郷の伊賀でセカンドキャリアを始めて、奥さまは茨城に行って円満別居をしながら、シェアハウスを運営しているんですね。そのシェアハウスがすごく楽しくて、そこでご縁を紡げることが本当に生きがいというか、楽しいとおっしゃっています。
そのカーネルさんが先月、シェアハウスをやっていてもなかなか人が集まらなかったりすることもあって、「海外の方向けに需要がありそうなので、海外の方向けにゲストハウスをやりたい」ってなったんですよね。
普通だと、「よし、英語がぜんぜんわかんないから、まずはTOEIC受験準備だ!」みたいに資格に走っちゃったりしそうなところ、(カーネルさんは)そうじゃなくて。シェアハウスのWebサイトをゲスト用に修正したり、予約サイトに登録していたり、さっそく行動から始めた。
「伊賀の良さをPRするために材料集めをとことんしておこう」ではなくて、シェアハウスで出会ったご縁の中から、海外の知ってる方に来てもらって、さっそくレビューをしてもらうことからやろうと。
金澤:ここで重要なことは、伊賀の良さって、自分で思ってる良さと海外の方に来てもらって感じる良さがぜんぜん違うと思うんですよね。自分で集めるとどうしても1人よがりになってしまうんですが、海外の人のフィードバックを貰って10月オープンに向けて活動をしている。7月に思いついて、10月に向けて活動してるというところがポイントです。
セカンドキャリアやライフキャリアとか、準備に2年、3年かけちゃうとなると、もしそれが違った場合また後に遅れちゃうんです。そうじゃなくて、「とりあえずちょっとやってみる」というところがポイントなんですよね。なので、準備は最低限にとりあえず始める人は、1人よがりのムダな時間がすごくなくなるなと感じています。
準備も、自分1人だけで「こうなんじゃないか」「ああなんじゃないか」という予想で動いていても、実際にやってみると社会の需要はぜんぜん違ったりするんですよね。そのムダな時間がなくなるという意味でも、とりあえず始めちゃってからフィードバック貰ってやっていくのが、うまくいくんじゃないかなというところです。
最後のところでおまけです。よく話題になるテーマとして、「定年後のために有効な資格ってありますか?」って、すごくよく聞かれるんですよ。
「これが有効です」って答えたいんですが、やっぱり万人に共通の有効な資格はないです。エンジニアの経験なのか、営業の経験なのかでも違ってきますし、同じ営業だったとしても、「今までの経験を活かしてコンサルをやっていきたいんだったら、こういう資格が大事だし」とか。
営業もぜんぜん違うことをやっていきたいんだったら、また別の資格が有効になったり、むしろ資格が要らなかったりもするんですよね。なので、やっぱり万人に共通なものはないなということが、実例を見ていて思うところです。
金澤:逆に、自分の経験を元に資格で補強するのがすごく良いなと思っていて。コミュニティにいる「じぃ」という方は銀行にずっと勤めていて、システム開発を担ってたんですよね。
でも、これからシステム開発をやっていくのは体力的にも厳しいなと。65歳までしか働けないけれども、70歳ぐらいまで働きたいなと思った時に、中小企業に行けば70歳ぐらいまで働けるかもと思って、とりあえずサイバーセキュリティやシステム監査関連の資格を取ったんですよね。
その資格を取ったことによって、監査部門へ移動させてもらえることになった。監査部門で1年ぐらい経験を積んだことによって、ちょっと転職がしやすくなったというパターンもあったりします。自分の経験にプラスして、「どんな資格があると有利になるんだろう?」ということを、自分をちゃんと中心に考えて、社会でどんな需要があるかを考えてやったパターンです。
ゆーたんという方は、通信業界で経営管理をしてきた方です。中小企業診断士って、50代、60代にはすごく人気の資格なんですが、この方の場合はそれを取ったことによって、スタートアップ企業で監査役として活躍されています。「若い経営者の方を伴走支援するのがすごく生き甲斐でライフワークだ」とおっしゃっていて、生き生きと活動されています。
なので、やっぱり「とにかく資格に頼ろう、すがろう」とかじゃなくて、自分の経験やこれからやってみたいことを軸に考えていくほうが、ライフキャリア開拓がうまくいくのかなというのを実例で見ていてすごく思います。
「資格さえあればなんとかなるだろう」じゃなくて、どんな資格があれば補強されるのか、資格って本当にないといけないのかな? とか、そこから考えてみるのもいいんじゃないかなと思っています。以上、ライフキャリア開拓がうまくいく人・いかない人ということでお話しさせていただきました。ありがとうございます。
西村信男氏(以下、西村):金澤さん、ありがとうございました。具体的な事例を交えてお話しいただいたので、とてもわかりやすかったと思います。チャットもすごく盛り上がってる感じですね。いろんなコメントをいただきました。
西村:では、ここから残りの時間は金澤さんへの質問やお話の内容の感想、コメントなどを交えて4人でトークを進めていきたいと思います。まずは棚倉さん、コメントか質問があればお願いできればと思いますが、どうですか?
棚倉進氏(以下、棚倉):今日は楽しいお話ありがとうございます。自分自身の経験のことでおうかがいしたかったんですが、60歳で早期退職して、ご縁があって新しい環境をいただいたという経験もあって、いわゆる社会関係資本を蓄積していくことがとっても大切だなと思っています。
そういう意味では、どのように社会関係資本を蓄積して、それをキャリア開拓につなげていくのか。特に金澤さんの場合はシニアコミュニティの支援もされてるかと思うんですが、具体的なお話や方法論で教えていただける部分がありましたら、お聞かせいただければ幸いです。
金澤:ありがとうございます。そうですね。やっぱり社会関係資本が本当に重要だなと思ってるんですが、いくつかポイントがあって。まず1つ目は、専門分野とそれ以外でネットワークを作ることが大事かなと思います。
例えばキャリアコンサルタントの資格を持っていて、キャリアコンサルタントとしてやっていきたいとなった場合に、キャリアコンサルタントのコミュニティに入ることも重要なんですが、それ以外にキャリアコンサルタントがぜんぜんいないコミュニティに行くこともすごく大事です。
どうしてかと言うと、そういうところに行くとキャリアコンサルタントがいないので、キャリアコンサルタントの仕事が求められたりします。
「キャリアコンサルタントっていう仕事は何をしてるんですか? そのことについて話してください」「ちょっとお仕事してもらえませんか?」というきっかけがけっこうできるので、ぜんぜん関係ないネットワークにも行くことは重要だなと思うのが1つ。
金澤:2つ目が、やっぱり発信していくことですね。自分が何をやりたいのかとか、どんな経験があるのかを発信していく。しかも、ここに参加されてる方は品の良い方ばっかりなので、たぶん1回ぐらいしか言わない人もいると思うんですよ。
でもそうじゃなくて、ポイントは何回も何回も同じことを言っていくこと。「私はおじさんの人だ」「私はおじさんの人だ」「とにかく定年後を応援したいんだ」ということを何回も言っていく。
1回言われただけじゃ印象に残らないし忘れちゃうんですが、何をやっているか、何をやりたいかをしつこく言う。品の良さとかはいったん置いておいて、(何度も)言っていくことが伝わるうえでは大事なことかなと思います。
最後に、社会関係資本を作るのには時間がかかるという前提を受け入れることも大事かなと。すぐに仕事に結びつけたいとか、すぐに結果を出したいというのは私もあって、独立した時はめちゃめちゃ怪しい異業種交流会にいっぱい顔を出してたんです。
ただ、やっぱり1回だけじゃ「この人が信用できて一緒に仕事をしたい人なのか」はわからないし、(社会関係資本は)できないんですよ。だから1年、2年、3年かけて、やっと「この人だったら一緒に仕事したら楽しそう」とか、1軸でも仕事ができたりするので、その3つのポイントが重要なのかなと思っております。
棚倉:ありがとうございます。今後、遠慮せずにどんどん情報発信していきたいなと思います(笑)。
金澤:はい(笑)。
西村:ありがとうございます。私も控えめなので、情報発信をしていきたいなと思います(笑)。
西村:では岡本さん、いかがですか?
岡本比呂志氏(以下、岡本):金澤さん、ありがとうございます。本当に心に刺さるようなお話ばっかりで、私が体験してきたこともいっぱいあって、お腹いっぱいになりました。僕は金澤さんのお話を聞いているほうがいいのかな? って思いながら聞いてたんですが。僕はぜんぜん控えめじゃなくて、ちょっと下品なとこもいっぱいあるんですが。
サラリーマンとして長くやってきたのなら、自分の軸を大切にすれば何をやっても次のことにつながるというのはよく感じています。金澤さんは今まで大手物流現場や営業として、ないしは人材派遣の営業として働かれて、かつキャリアコンサルタントも取得されて、いろんな仕事をやってこられた。
私は自分自身がシニアなのでおじさんも応援するんですが、就職前の学生にも興味があります。ただ、金澤さんがおじさんをとことん応援したいという、そこの熱い情熱を聞きたいなと思って。お願いします。
金澤:ありがとうございます。そうなんですね。もともと20代、30代向けの転職エージェントとしてやって、その後おじさん(のキャリア支援)にいこうと思ったんですが、コロナになってしまって。オンラインでやっていくと思うと、50代や60代ってZoomを使うのかな? と思って、ちょっと日和っちゃって。
自分が40代の女性なので、30代、40代向けのキャリア支援をやろうとしたんですよ。でも、集客が本当にゼロだったりして、どうせゼロなんだったら、本当にやりたいと思っているおじさん向けにやりたいなということで。やってみて、ダメだったらやめようと思ってたんですが、やってみたらすっごい楽しくって。
おじさんLCCのコミュニティの活動も最初はめちゃめちゃ緊張してたんですが、みんな「今の50代、60代が開拓していくぞ」みたいにすごく前向きな方ばっかりなので、いつも自分がすごく力をいただいていて。だからこそ継続ができるのかなというのはいつも思っています。
岡本:ありがとうございます。本当にやってみてわかるというか、食わず嫌いを食ってみたらうまかった、というのはすごくあるので。今日見ていただいてるみなさんも、私も含めてなんですが、ぜひぜひ挑戦していただけたらと思います。ありがとうございました。
金澤:ありがとうございます。
西村:ありがとうございます。
西村:私の勤めていた会社も「やってみなはれ」が標語になっていまして。創業者がよく言ってたのが、「やってみなわかりまへんで」。逆に言うと、やってみてわかることがたくさんあるということなんですよね。では、私から質問を1ついいですか?
金澤:はい。
西村:シニアの年代のライフキャリア開拓はロールモデルがあるような感じですが、みんな個々に事情が違うので、親の介護の問題があったり、いろんな状況があって、なかなかお手本どおりにできそうでできない。
そういった時に、今日のお話にあったように「アダプタビリティ」と言われる、臨機応変にやることも大事なんですが、もう1つ重要なのがコア・コンピタンスと言われています。アイデンティティですね。
自分をいつも見つめ直すことが大事かなと私自身は考えてるんですが、そのあたり金澤さんはどんなふうに考えられていて、アドバイスをするとしたらどんなふうにアドバイスされてるのか、お聞かせいただければと思います。
金澤:そうですね。自分と向き合うとか、アイデンティティがわかるのも、やっぱり行動して初めてだと思うんですよね。
私もおじさんLCCを始める前は、「こんな頼りないやつが50代、60代と一緒にやれるのか? やれないかもしれない」という自己認識があったんですが、やってみたらすごく楽しいということで、新たな自分の一面を知ったり。
先ほどコメントでも「食べてみたらまずかったというのも大事な体験になるかと」って書いていただいてる方がいらっしゃいましたが、もう本当にそれです。
実際に食べてみてまずかった。まずいと思う自分がいるというのは、食べてみないことには、行動してみないことにはわからないと思うので。頭の中で考えてじゃなくて、行動してみた結果を考えるほうが、すごく身になる自己理解になるのかなと考えております。
西村:なるほど、わかりました。そのへんも、ぜひ参考にしていきたいと思います。
西村:全部は拾えないと思うんですが、チャットに1つ(質問が来ています)。
「(ライフキャリアの開拓が)うまくいかない人に対して、どのような働きかけをすればうまくいく人に変えていくことができるでしょうか? 周囲にそういう人が多いなという実感があって、変わってほしいなと思っています」ということです。どうでしょうか。
金澤:すっごくわかります。私も転職エージェントとしてやっていた時、50代・60代の求人がなかなかないとか、やったほうがいいと言っても「お前が求人を隠してんじゃねえか」「お前に何を言われても動かねぇよ」みたいな人がすごくいっぱいいて、めちゃめちゃめこめこにされてたんです。
その人に「大事なんですよ」と言ってもやっぱり伝わらないなと。しかも自分もどんどん消耗していっちゃうんですよね。自分がフルの良い状態だったのに、どんどん「(自分は)ダメな人間なんだ」って責めることになっちゃうんで。
私のやり方なんですが、前向きな方の事例をどんどん作っていって、それを紹介して、「こういうふうにするとライフキャリア開拓がうまくいくんだな」というのを見てもらうしかないなと思います。
本当は説得してバーンと変わってもらえたら一番良いんですが、それってやっぱり難しいので、どんどん周りから攻めていく。活躍している人の事例をどんどん作っていくほうが、自分も消耗しないし、楽しいし、社会がジワジワと変わってくれたらいいのかなっていうのは考えております。
西村:なるほど、わかりました。ありがとうございます。
西村:あっという間に時間が過ぎてまいりました。あと5分ぐらいとなりましたので、このあたりで金澤さんにクロージングの質問を。
先ほどのようにスライドにはしてないんので、私から口頭で質問させていただきます。個人または組織の成長に向けて、どんな社会にしていきたいですか? これに対してはいかがでしょうか。
金澤:シニアが守られる存在とか、守っていかなければならない存在ではなくて、むしろこれからも背中を押したり、引っ張っていってくれる存在としていてほしいなと思います。
ただ、嫌な仕事を無理くりがんばってもらうとか、そういうのじゃなくて。ワクワク楽しみながら引っ張っていってもらえる社会にできたらいいなと。そのためにも、今、周りにいるめちゃめちゃ元気で活躍している60代の情報を紹介して、発信していけたらいいなと思っております。
西村:ありがとうございます。ご視聴のみなさまも、本当にたくさんのメッセージいただきましてありがとうございます。あと4分ほどですが、今のトークで感じたことを含めまして、棚倉さん、岡本さんにも一言ずつコメントいただきたいと思います。では、今度は順番は逆で、岡本さんからお願いできればと思います。
岡本:ありがとうございます。もう残り3分ということなので、一言だけなんですが。(人生)100年時代、金澤さんのコラムなんかでも、長く楽しく自律的なキャリア設計と、自分軸で人生をドライブするキャリアオーナーシップということがよく出てきています。
先ほどおっしゃられたように、シニアが大事にされたり、守られていたり、ちょっと背中を押さないとがんばらないよな。という時代じゃなくて。シニアも年代も関係なく、20歳やZ世代の方からシニアまで、社会でみんなでがんばる。貢献する。楽しく働き続ける100年時代であってほしいと思います。本日はどうもありがとうございました。
金澤:ありがとうございます。
西村:ありがとうございました。じゃあ棚倉さん、お願いします。
棚倉:はい。アイデアで止めるんじゃなくて、まずは「やってみなはれ」で行動を起こす。そして、柔軟に行動していくことが非常に大切だなと、今日のお話をうかがってあらためて思わせていただきました。
1人だとなかなか続かないので、まずはみなさんと共に、コミュニティで仲間と共に一緒に引き続きやっていければと思います。今日はありがとうございました。
金澤:ありがとうございました。
西村:では、最後に私からですね。今日は、あらためて金澤さんからポイントをお話しいただきまして、非常に参考になりましたし、ご視聴の方々にも参考になったと思います。ありがとうございました。
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