2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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本企画、「キャリアをピボットした人の哲学」では、インタビュイーにこれまでの人生を折れ線グラフで振り返っていただき、その人の仕事観や人生観を深掘りしていきます。 今回は、公益財団法人 山田進太郎D&I財団COOで、無職〜社長まで経験された石倉秀明氏に、今までの人生を振り返っていただきました。本記事では、やりたいことがない人のためのキャリア形成のヒントを語ります。
——前回、石倉さんのキャリアの転換点についておうかがいしました。リブセンスでの上場経験がおありですが、DeNA時代は新規事業で失敗してきたとのこと。この対照的な経験で、どういったことを学ばれましたか。
石倉秀明氏(以下、石倉):うーん。直属の上司とその上の役員と一緒に考えてきて「これでいこう」となったのに、取締役に何かを言われたら、急にはしごを外されるような体験をしました。だから事業の失敗というよりも「こういう人っているんだなぁ。くだらないな」「自分でやるほうが早いかな」と思ったんですね。
——新規事業の担当者にアドバイスはありますか?
石倉:新規事業は当てるほうが難しいし、「うまくいくってどういうことか」って話もあるんですが。そもそも仕事には、うまくいくことと、ほとんどうまくいかないことがあって。事業を当てるのは、その中でも確率が低いものだと考えるしかないですかね。
——例えば社内での調整力とか、当時身につけておけばよかったと思われるスキルはありますか?
石倉:どうなんですかね。でも、やっぱり新規事業をやるんだったら、「絶対これをやりたい」って思えるものじゃないと(うまくいかないと思います)。途中で頓挫しそうになることもあるので、それをはねのけるぐらいの、自分の熱量があったらいいなと思うんですよ。
僕の場合は、会社からお題を与えられて、その中で事業を考えていた。自分で調べていくうちに、「これをやりたいなぁ」って思えるようになってきたんですけど。めっちゃ(熱い思いが)湧き出てたかっていうと……。その時は夢中になってたけど、さっき話したことがあった時に「ふざけんなよ」って思うぐらいで、僕もしゅんってなっちゃったので。
自分で考えてきた事業だからかわいくなってただけで、もしかしたら僕自身が本当にやりたかったわけじゃないのかなって気もします。
——新規事業では「本当にやりたいことかどうか」が大事とのことですが、営業や人事などの仕事内容は「やりたいかどうか」で選んでいたわけではなかったとおっしゃっていましたね。
石倉:そうですね。この事業がやりたくて起業したというよりは、場所を問わず働けるようになりたかった。当時はリモートワークがなかったから、「自分でやるか」みたいなノリです。「じゃあ何の仕事だったら生きられるかなぁ」と考えた時に、採用系や人事系のお仕事とかの依頼はたくさんいただいたので、それをまずやるかと。
——石倉さんにとって本当にやりたいことの軸は、場所を選ばない働き方の実現だったんですね。そういった経緯で、キャスターでリモートワークの推進をされたと。
石倉:実は、自分の会社を個人で1回立ち上げていて、その中のお手伝い先の1つがキャスターでした。その後、キャスターに合流したんですね。
——34歳でキャスターの取締役に就任されましたが、上場のタイミングで退社されたのはなぜですか?
石倉:取締役の任期って2年とかなんですが、もともと、次の任期が来たら退任しようと思ってたんですよ。
というのも、キャスターでリモートワークをやってるわけですけど、毎月数千名とか応募が来るなかで、9割以上が女性なんです。なぜ女性がこんなにリモートワークを求めるのかって考えると、例えば子どもができて時短になったら、キャリアが限られてしまうこともある。
旦那さんの転勤によって、仕事を転々とするのは女性だったりするし。今ある社会的な働き方に関する構造とか人事制度の仕組みによって、そこから外れてしまう率が高いのは女性です。それによって差が生まれていたり、男性に比べて働く選択肢がめちゃくちゃ減ってたりすると気づきました。
僕も男性だし、会社経営や人事をしていたこともあるので、仕組みを作ってる側なんですね。つまりその構造を生み出してる側なんだなぁと気づいたからには、これを変えたいなと思いました。それでジェンダーギャップの解消とか構造改革みたいなことをテーマに起業しようかなと思ってたので、このタイミングで辞めたんです。
それで、そのテーマをやるなら非営利というやり方もありそうだなとか。いろいろ考えている中でご縁があって、今は山田進太郎D&I財団でやらせていただいている感じですかね。
——ご自身が苦労されてきた経験がおありだからこそ、働き方や働く場所を自由に選べるような社会にしていきたいと思われたんでしょうか?
石倉:どうなんですかね。途中からは、そういうことを考えてなかったんですけど。やっぱり生まれた環境とか、今ある仕組みによって不利になっている人が、そこから抜け出せないのが嫌なんだと思うんですよ。
僕自身も、貧乏な生活から抜け出すには大学で早稲田か慶應か東大に行けば(人生が)変わるんじゃないかと思って、早稲田を選んだところもあるので。僕はたまたま、それができたからよかったけど、もしかしたら昔よりも今のほうがそういう逆転ができにくくなってるかもしれないし。
自分がいる状況から抜けにくい構造は、もっといろんなところにあると思っていて。今ある仕組みとか、今ある何かによって不利になってしまう人がいる。それを変えられないとか、そこから抜け出すのが大変であることが、すごく嫌なんだと思うんですよね。
その解決策は、リモートワークかもしれないし、今で言うとジェンダーギャップ、STEM領域(科学技術開発に重要な分野)のジェンダーギャップというかたちかもしれないなと思っています。ここに来て、すごく僕の根幹みたいなところに戻ってきたのかなぁって、すごく思いますね。
——先々のキャリアを描いて転職をされてきたわけではないとおっしゃっていましたが、こうした課題感は持ち続けていらっしゃったんですね。
石倉:自分も当時は言語化できてなかったけど、「なんでこれに惹かれたのか?」を考えると、もしかするとそういうことがあったのではないかと、後付けで説明できる感じです。やっぱり幼少期から思ってたことがあって、ここに来て、「それをテーマにして仕事をしよう」と。これはキャスターの途中ぐらいから気づき始めた感じですね。
——転職や起業をしたいけれど、自分のやりたいことがわからないという人に向けて、アドバイスをいただけますか。
石倉:好きにやりなよと思うんですけど(笑)。あんまり世の中でどう言われてるかとか、気にしてもしょうがないと思うんですよ。自分が信じていたり、興味があったり、自分が「こうではないか」と思うものを信じてやってみる。
それを正解にできるようにがんばるのが重要かなぁと思います。違ったら違ったで軌道修正すればいいので。自分なりの興味とかキャリアを、自分でちゃんと考えていくのは、すごく重要なのかなぁと思います。
僕は大学を辞めている時点で、もうレールから外れちゃってるかもしれないですけど、ベンチャーに行きたいから行く。次は天下一武道会みたいなところに行きたい。でもなんか出勤したくないとかって、根底にある「(お金に)困りたくない」みたいなこととは、けっこう外れてると思うんですよ。
でも衝動によって、興味が出てきちゃったからしょうがないし。その仕事を一生懸命やったことで得られたことはたくさんあるので。結果、やっていく中で自信がついたり、少しずつ仕事に慣れてスキルが身についてきた結果、自分の根底のところにたどり着いた気がします。それでいいんじゃないかなって気もするんですよね。
——なるほど。2024年5月には『CAREER FIT 仕事のモヤモヤが晴れる適職の思考法』も上梓されていますが、やりたいことが見つからない人がキャリアを考える一歩としては、やりたくないことを決めるのも大事なんですかね。
石倉:そうですね。嫌なことをリストにして並べてみたらいいんじゃないですか。例えば、僕だったら実力がないのに年功序列で上司になってる人がいるとか。理不尽な理由で昇格されないとか。
——キャリアの一貫性を考えるんじゃなくて、もう直感的に自分が嫌だと思っていることを書き出すと。
石倉:そうそう。よく「やりがいか年収か」みたいな議論があるじゃないですか。こういう間違ったトレードオフに惑わされないほうがいいと、僕は思っています。やりがいもあって年収も高い仕事は、世の中にはたくさんあるわけですよね。
だから、世の中で言われていることを変に真に受けないで、自分でちゃんと考えるのは、すごく重要だと思います。やりたいことが見つかればもちろんいいけど、やりたいことも変わるんですよ。僕だったら、結婚したり子どもができたりして変わったと思いますし。その時に興味があることは変わるわけです。
だから別に変わったら変わったでいいし、やりたいことがなかったらなくてもいい。でも嫌なことは避けるとか、「やりたいことはないけど小さい会社がいいなぁ」とか。「大きい会社で落ち着いて働きたいなぁ」とか、それぐらいの選択でいいと僕は思います。「こうあるべき」みたいな話ではなく、もっと素直に考えたらいいと思うんですよね。
——石倉さんのモチベーショングラフは、起伏がすごく少なくて、「仕事を淡々とする」という姿勢が印象的でした。これは意識的にされていたんですか?
石倉:最初から、「仕事は仕事」みたいな感じなんですよ。だから僕は「仕事が好き」というよりは、「好きだけど困りたくない」ほうがやっぱり大きい。(お金に)困らないんだったら、仕事じゃなくてもいいっていうのは、もしかしたら根底にあるのかもしれない。ただその中でも、ありがたいことに最近はいろんな選択を取れるようになってきて。
例えば、生活する上で「このぐらいの収入が欲しいね」みたいなものの中でも、いくつか選択ができるようになってきています。その中で初めて、自分が「このテーマがいいな」と思ってることをやっている感じです。だからこそ、もし年収がすごく安くても、「もう絶対この領域をやりたいからやるんだ」というのではなく、やっぱり違う方法を考えてると思うんですよ。
——先ほどおっしゃったように、やりがいもあって、お金も稼げる仕事を考えるということですね。石倉さんは、かねてからリモートワークの推進もされていらっしゃいます。今、コロナ禍でのフルリモートから、徐々に出社の比率を上げている企業も多いですが、今後はハイブリッドワークが進んでいくのでしょうか?
石倉:ハイブリッドの中でも、ほぼフルリモートの会社もあれば、ほぼ出社のところもある。そのグラデーションはありますけど、その会社ならではの働き方で定着していくかなと思います。
ただ、会社は新しくできては潰れていくわけですよね。これから新しい会社が、出社率100パーセントでできるかと言われると……おそらくリモートとかハイブリッドの会社がどんどん増えてくる。やっぱり(経営者としても)普通に(リモートワークやハイブリッドワークの)選択肢があり得るわけですよね。
なので長い目で見ると、やっぱりリモートワークとかハイブリッドをする会社の比率はどんどん増えていくんじゃないかと思います。
確かに今、経営学のいろんな文献とか最先端の研究で見ると、わりとハイブリッドワーク最強説があって。要はリモートワークのメリットと、たまに出社をした時のメリットが、両方享受できると言われていますが、これもまだ道半ばです。
僕は今ちょうど大学院で経済学の勉強をしていまして。リモートワークなどのいろんな経済学系の研究を見ても、どっちのほうが生産性が高いとか、どっちのほうがいいのかは、実はけっこう賛否が分かれてるんですよね。なので経営者の判断も分かれてる感じだと思いますね。
——石倉さん、ありがとうございました。
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