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第230回 自分の法則性を見つけ出せ!「最愛の仕事の見つけ方」(全2記事)

スタートアップ取締役から非営利団体COOへ転身した、元キャスター石倉秀明氏 男女の賃金格差問題の根本に着目した事業で目指すもの

さまざまな社会課題や未来予想に対して「イノベーション」をキーワードに経営学者・入山章栄氏が多様なジャンルのトップランナーとディスカッションする番組・文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」。今回は公益財団法人の山田進太郎D&I財団COO 石倉秀明氏と、マネックスグループ取締役兼執行役の山田尚史氏をゲストに迎え、両氏の異色のキャリアについて語ります。 ■動画コンテンツはこちら

キャスター取締役を退任、山田進太郎D&I財団のCOOに就任した石倉秀明氏

入山章栄氏(以下、入山):『浜松町Innovation Culture Cafe』、今週はお客さまに公益財団法人山田進太郎D&I財団COO、石倉秀明さん。そしてマネックスグループ取締役兼執行役、山田尚史さんをお迎えしました。石倉さん、山田さん、どうぞよろしくお願いします。

石倉秀明氏(以下、石倉):よろしくお願いします。

山田尚史氏(以下、山田):よろしくお願いいたします。

田ケ原恵美氏(以下、田ケ原):石倉さんのプロフィールです。早稲田大学3年時に体調を崩し中退。フリーターを経て、株式会社リクルートHRマーケティングに3年限定の契約社員として入社。そこでMVPを獲得し、正社員になられます。

そこから当時5名の株式会社リブセンスへ転職し、上場を経験。さらにDeNA(株式会社ディー・エヌ・エー)で営業責任者や人事責任者を務め、2016年より株式会社キャスター取締役に就任されました。創業時より全員がフルリモートワークで働いており、現在では1,500名以上の規模となっています。また、2024年2月より山田進太郎D&I財団のCOO(最高執行責任者)に就任されています。

入山:というわけで石倉さん、どうぞよろしくお願いします。

石倉:よろしくお願いします。

入山:今、タガエミちゃんが石倉さんのプロフィールを読んでくださったんですけど、キャリアがとっ散らかりすぎで……。

石倉:一貫性がないんです。

入山:ちょっとびっくりなんですが。転職して上場してDeNAに行って、人事や営業の責任者をやって。みんながフルリモートで仕事をしているキャスターも、すごく注目されていますよね?

石倉:そうですね。コロナになってからですよね。

入山:今もキャスターにいらっしゃるんですか。

石倉:2023年11月で取締役は退任していて、(今は)業務委託で残っているんですけど。2月からはもう完全に(離れます)。

入山:じゃあ、メインの仕事は山田進太郎D&I財団に。

石倉:完全にそうです。

2035年までに、理系に進む女性の比率を28%に

入山:山田進太郎D&I財団は、当然メルカリの創業者の山田進太郎さんの財団?

石倉:そうです、そうです。D&I、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンで多様性を推進するというのはそのままなんですけど。その中でも今はSTEM領域で、2035年までに理系領域に進む女性の比率を28パーセントにしたいと。

入山:理系の大学に進む女性の比率を? それはどういう思いからなんですか。

石倉:はい。もともとは山田進太郎さんがメルカリの事業をやっている時に、ダイバーシティやインクルージョンに取り組もうという中で、女性のエンジニアを増やしていこうとしたんですね。でも、そもそも市場にいないと。

なんでいないのかを考えると、実は文理選択の段階でけっこうわかれてしまっている。男女の賃金格差の1つに職種もあるじゃないですか。これから注目される職種、年収が高くて働き方が柔軟な職種に女性がついていないことがあるんです。そこを増やすことからやらなきゃいけないんじゃないかと。

これを「メルカリ1社でやるのはけっこう厳しいよね。非営利でやろう」というので立ち上がったのが3年前。実際に非営利でCOOというのは珍しいんですけど。

入山:そうですよね。COOとは、つまりチーフ・オペレーティング・オフィサー。要するに会社の執行全体をやっている責任者ですよね。

石倉:代表は山田進太郎なので、メルカリと兼任していますから。実質は僕が実務の部分や運営に関する責任者をやらせていただいています。

入山:そして、この石倉さんが、実はタガエミちゃんと友だちなんですか?

石倉:はい。お友だちです。

田ケ原:友だちなんて、恐縮すぎますけど(笑)。前職が採用スタートアップで、拡大しようという時に、キャスターさんの採用事業でご一緒したことがありまして。

入山:タガエミちゃん、いろいろなスタートアップの広報をやっているから。じゃあ、キャスターでそういう仕事もやったわけですね。

田ケ原:キャスターさんにお願いしてやっていただいたというか、並走していただいた感じでした。

入山:そうなんだ。タガエミちゃんから見て、石倉さんはどんな方ですか。

田ケ原:そうですね。ご自身のキャリアも多様なので、いろいろな方を受け入れてくださる方だなと思いますし。あと質問に対しての切れ味がよくて、常に「本質的なことってなんだろう」というのを返してくださって……。

入山:すごくハードルを上げていますよ。

石倉:なんか変なことを言えなくなっちゃう(笑)。

(一同笑)

田ケ原:当時はすごく助かりました。

入山:今日はどうぞよろしくお願いします。

石倉:お願いします!

マネックスグループ取締役で小説家の山田尚史氏

田ケ原:続いて山田さんのプロフィールです。開成中学校・高等学校を経て東京大学理科一類に進学し、工学部松尾研究室に所属。その後、2011年にソシデア知的財産事務所に入所されました。2012年には株式会社AppReSearch、現在の株式会社PKSHA Technologyを設立し、代表取締役に就任。

2021年よりマネックスグループ取締役、さらに2022年よりマネックスグループ取締役兼執行役に就任されています。

ビジネスに邁進される一方で、白川尚史のペンネームで執筆活動も行い、宝島社が運営する「第22回『このミステリーがすごい!』大賞」の大賞を受賞し、2024年1月に古代エジプトを舞台にミイラ消失事件の真相に挑むミステリー作品、『ファラオの密室』を刊行しました。

入山:はい。というわけで、山田さん、どうぞよろしくお願いします。

山田:よろしくお願いいたします。

入山:僕も当然名前を存じ上げている、あのAIのPKSHA Technologyの創設者であり代表取締役でいらっしゃったのに、今度はマネックスグループの取締役になられて。その後で推理小説家にもなられて「『このミステリーがすごい!』大賞」の大賞を受賞したと。まずはおめでとうございます。

山田:ありがとうございます。

入山:(経歴が)散らかりすぎていますね。

山田:そうですね(笑)。PKSHAは、上野山(勝也)という研究室の先輩に当たるんですが、彼と2人で立ち上げまして。退任してから少しの間、執筆活動に専念していました。いろいろなご縁があって、今はマネックスグループ取締役兼執行役として活動しております。

入山:ちなみに実はマネックスグループの松本大会長には、近日別の回で『浜カフェ』にご登壇いただく予定なんですよね。取締役と会長に出てもらうという。

山田:楽しみにしています。

「このミステリーがすごい!」の大賞を受賞

入山:いやぁ、でも山田さんにも聞きたいことがいっぱいあるんですけど。2024年1月に宝島社から発売された『ファラオの密室』という推理小説はどういう作品なんですか。

山田:簡単にあらすじを申し上げますと、舞台は紀元前の古代エジプトです。死んでミイラにされた主人公、セティの小説なんですね。「死んでるじゃん」という話なんですが、古代エジプトは死後の世界のために現世を生きるような……。

入山:そのためにミイラにするわけですもんね。

山田:おっしゃるとおりです。体をちゃんと保存するためにミイラにするという世界観なので、死んだ後、死者の心臓が罪に汚れていないかを審判する、死者の審判と呼ばれる儀式があるんです。

主人公のセティは、そこで自分の心臓に欠けがあることに気づき、限られた期間で現世に戻って自分の死の真相を探る。その途中で生前自らが犯してきた罪と向き合うお話です。

入山:すごいですね。いきなり「このミステリーがすごい!」の大賞を取るわけですが、大賞に選ばれていかがでしたか?

山田:すごく驚きましたね。「こんなことが自分の人生に起きるんだ」と思いましたし。本当に運も味方したり、自分の中でいろいろなひらめきもあったりしたので。

入山:僕は本当に推理小説、特に本格派推理小説を書ける人を心から尊敬するんですよ。どうやって思いつくんですか。

山田:けっこう発明に近いと思っています。

入山:だって、ありとあらゆる密室はやり尽くされているじゃないですかね。

山田:そうですね。おっしゃるとおりで、やり尽くされてきたからこそ、同じ条件で戦うのは本当に難しくて。その中でちょっと特殊設定と言われるものだったり。

入山:あ、だからファラオとか、ピラミッドなわけですね。

山田:そうですね。ハウダニット(どのように犯行を行ったか)だけではなくて、ホワイダニット(なぜ犯行を行ったか)で魅力づけをしたり。

入山:つまり、ハウ(どうやって)じゃなくて、なぜこういう密室を作ったのかということですか?

山田:そうです。「犯人の動機は?」というのも、あくまで現代の日本だったら出てこない発想だったり。そういったところで魅力づけをして戦っていくのが、今、1つの分野としてあるのかなと思います。

入山:なるほど、密室は深いな。このままいくと密室の話だけで終わりそうなんですが、今日もどうぞよろしくお願いします。

山田:よろしくお願いいたします。

上場企業の取締役から非営利団体にキャリアチェンジ

田ケ原:そして、こちらのお二人が3月25日発売のビジネス誌『Forbes JAPAN』2024年5月号の特集「『最愛の仕事』の見つけ方」に登場されます。

入山:お二人が『Forbes JAPAN』の5月号に登場されるんですね。取材はどうでしたか。

石倉:僕の場合、前職でスタートアップや上場企業の取締役をやっていたので「なんで(今)非営利なんですか。このキャリアはすごく珍しいよね」というのがあって。キャリアを選ぶ時の基準や考え方、背景に何があったのかという話がすごく多かったかなと思いますね。

入山:なるほど。山田さんはいかがでしたか?

山田:そうですね、私も「なんで作家になったの?」というのは、すごく聞かれました。

田ケ原:本当に気になりますよね。

山田:はい。ただ起業家仲間、経営者仲間からも、受賞した時に「おめでとうの前に意味がわからない」とよく言われて。だからその理由はちゃんと言語化してお答えしたほうがいいんじゃないかなぁと思いました。

田ケ原:『Forbes JAPAN』5月号はlinkties(リンクタイズ)から発売中です。書店やネット通販にてお買い求めください。

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