
2025.03.19
ドバイ不動産投資の最前線 専門家が語る、3つの投資モデルと市場の展望
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働く人と会社のつながりや、生きることと働くことのつながりについて考えるイベント「Lifestance EXPO」。本セッションは「"仕事" に何を求めますか?―ポスト資本主義の仕事論」と題し、影山知明氏、ナカムラケンタ氏、幅允孝氏の3名がトークセッションを行いました。本記事では、自身の働き方を振り返りながら、「休み」と「仕事」の捉え方について語ります。
幅允孝氏(以下、幅):「働く」と「生きる」ことが人にとってどうあるべきなのかというよりは、お二人の「私にとってこうです」ということをお聞きしたくて。
それで、まずはあえて「休みは月に何日ありますか?」という質問をぶつけてみたいと思います。休みの定義などはお二人にそれぞれお任せしますが、じゃあナカムラさん。休みは月に何日ありますか?
ナカムラケンタ氏(以下、ナカムラ):会社は土日休みで、みんな有給的なものを取ったりしているんです。僕個人としては、休みの日はけっこう家族と一緒にいるけど、なんかずっと仕事のことを考えているので、「それが休みなのかな?」というのはあります(笑)。
幅:(笑)。
ナカムラ:でも、それは楽しくポジティブに捉えていて、やらされている感じではないので。むしろ、休みの日に何の連絡もない、集中して今やりたいことが自由にやれるという意味では休みなのかもしれない。ふだんの月曜から金曜も休みが多いような気もするし、あんまりどっちがどっちという感覚がなくて、常に自分の時間だなという感じはします。
幅:なるほど。境界が曖昧というか、グラデーションみたいな感じなんですかね?
ナカムラ:そうですね。刻一刻と変わっていくというか。
幅:子どもと一緒に遊んでいる時も、はっと(仕事のアイデアを)思いついたりもするし。
ナカムラ:そうですね。昨日も飲んでいた時に、妻と子どもも一緒だったのですけど。(子どもが)走り回っていることを気にかけながら、「あの人は今度うちで1日店長をやられる方なのに、ちょっと寂しそうにしている。話しかけたりつなげなきゃな」ということも思ったりする。もちろん、楽しく飲んだりもしていたので、いろんなことが重なっていますよね。仕事と休みは切り分けられない。
幅:そうですよね。休みだったり仕事だったり、レイヤーが重なり合っているというイメージ。
ナカムラ:はい。
幅:なるほど、わかりました。ありがとうございます。
幅:じゃあ、影山さんにも同じ質問を。休みは月に何日ありますか?
影山知明氏(以下、影山):今日のトークライブの1つの難しさは、3人がけっこう似ていると思うんですよ。
ナカムラ:そう!
影山:だから懸念としては、あんまり議論にならずに終わっちゃう感じはあるなということで、事前に事務局にもお伝えしてました。
幅:そうですね。だって本を読んでも、お二人には「わかるわかる」しかないです。
影山:だから、むしろ「そんなことない」というツッコミを会場からいただくとか。
幅:すみません。せめて僕がスーツを着てバリキャリ風を演ずればよかったんですが、残念ながら無理なので。
影山:だからこれも同じで、僕も休みがないんですよ。だけど、ネガティブにはまったく思っていないというんですかね。言い方を変えて、今回のテーマの「働く」で言うと、僕の仕事は「カフェ店主」という言い方をします。
いろんな思いを込めて「カフェ店主」ではあるんですけど、これが職業かと言われると、あんまり僕の中ではピンときていなくて、僕なりには「生き方」というニュアンスがある。
まさに日本仕事百貨に通じるところだと思うんですけど、職業に関しては休みがあって当然だと思います。だけど「生き方」と言っちゃった瞬間に、休みはないというわけです。ぜんぜん後ろ向きな意味でもなくそう感じているので(休日は)0日です。
ナカムラ:僕は(質問に答えるのが)先だったので、なんか良かったなと思います(笑)。「逆だったらどうしよう」みたいな感じでした。
影山:日本仕事百貨でも「生きるように働く」という言葉遣いをしますよね。まさにそういうことだなと思っています。
幅:なるほど。
幅:でも、それこそ影山さんの『ゆっくり、いそげ』の1冊目のほうを拝読していて、実はお店も一度伺わせていただいた時に……。
影山:本当ですか? ありがとうございます。
幅:テーブルの上のくるみを自分で手に取って食べていいよ、という。要は、それをサービスとしてどうするのかをずっと考えつつ、お客さんが消費者としてそこにいると、限られた対価を払って多くをゲインしようということで、いっぱい食べちゃう人が出るんじゃないかと。でも、そうではなくて。
自分がそこの場所を作る、つまり消費者的な人格ではない受贈者的な人格を持ってそこに来ていると、自分がその場を成している1人だとして「自分はクルミドコーヒーに何を与えられるであろうか?」と考えて、「じゃあ、1個だけ(クルミを)いただきましょうか」とか「でも、子どもがどうしてもというからもう1個だけ」となる。
単純に「与えるもの」「与えられるもの」とか、それこそ「働いている時」「休んでいる時」みたいな振り分けがプチッとついてしまったら、きっと「今はもう休んでいる」とか「今は消費側だから、とりあえず貪欲にどんどん得ていこう」みたいな気持ちになる。ところがそうじゃないんだというのが、このくるみのエピソードですごくわかる。
今、世の中で「カスハラ(カスタマーハラスメント)」と呼ばれるように、「どんなわがままでも許されるんじゃないか」みたいにお客さんが消費者側をとことん追求するのって、結局は自分が消費者という立場を追求しすぎた結果、そうなっているのではないかと(本に)書かれていたところは、すごく印象に残ったんです。
「働いている」と「休んでいる」のレイヤーというか、その差をすごく感じることができました。だから、何をもって働いているのか、休んでいるのかというお話は、たぶんみなさんそれぞれで作っていくものだと思うんです。
影山:次の話題にもつながるかなと思うので少しだけ付け加えさせていただくと、まさにおっしゃっていただいたとおりで、僕らが店頭にいて、通常は「お店のスタッフ」と「お客さん」という出会い方をするわけですね。
多くの人が多くの時間を、何かしら社会的に定義された肩書きや役割のもとで自分を生きていることって多い気がしていて。
だから、本当はお店に来る方々も「ナカムラケンタさん」とか「幅允孝さん」という1人の人のはずなんだけど、「お客さん」という仮面を被って入ってきちゃうことが多いんですよね。通常、他のお店ではそうだから。
そうすると、「こっちは客で、お金を払っているんだから何をしてもらってもいい。何かしてもらうことが当然だ」というモードになっちゃう。そうするとこっちも下手に出すぎないように、お店のスタッフの顔で接することになるので、それはお互いにあんまり良い関係を生まないと思っているんです。
だからお客さんとの出会いの中で大事だと思っているのは、「私」と「あなた」という1人の人同士で会うような出会い方をお店としてできるかどうか。くるみを割ってもらうこともその1つと思っているわけなんですが、まさにこれも当てはまっていて。
だから休日の話題は、「あなたが、社会的なシステムの中の何かしらの肩書きから外れられる日がどれだけありますか?」という質問をされているとも受け取れるわけですね。
幅:なるほど。
影山:そういう意味で言うと、たぶん中村さんも僕もあんまり社会的なシステムの中には埋め込まれていない感覚があるから、逆に言うと「毎日が休みです」という言い方もできる。
幅:パーマネントバケーションのような。
影山:ええ。
幅:先ほどナカムラさんがおっしゃったリトルトーキョーのプロジェクトをさらに深掘りしていくなら、お昼に持っている名刺とは違う自分のペルソナと言いますか、肩書きを自分の中で付け替えるというよりは「アドオンする」と言うんですかね。
さらに自分で階層を重ねていって、また次の肩書きみたいなものを手に入れる……じゃないな。「なりたい自分に一瞬なってみる」みたいな側面があると思うんです。
この3人はなんとなく「チーム・パーマネントバケーション」でスタンスが合っちゃっているんですが、一方で「そうしたいけれどできない」という方は、この会場にもいろんな場所にもたくさんいらっしゃると思っていて。
そういう人たちが、リトルトーキョーで違った肩書きを自分に足して演じるというよりは、「リアルに生きてみる」ということをやっていると思うんですよね。そういう人たちを見ていて、ナカムラさんはどう感じますかね?
ナカムラ:1日店長さんは、ふだんはいろんな自分の仕事を持っていらっしゃる方が多いです。昼にコーヒーを出しているアキくんなんかは週5日入っていて、そういうケースもあるんですが、先ほどのシュンスケくんは小学2年生なので基本は学校があります。
そういう中でここに来る人たちは、先ほどの影山さんの話じゃないんですが「お客さん対お店」という関係性を崩す構造にはなっていて。1日店長さんが、またお客さんとしてたくさん来るんですよ。
何が起きているかというと、お店とお客さんの間を埋める効果がすごくあって、この人たち(1日店長同士)が知り合いになるわけですね。だから、ある意味常連になるというか、常連のさらに進化型が1日店長みたいな感じです。それでみんなすごくハマっていくんですよね。
幅:1日店長に?
ナカムラ:はい、「楽しい」ということで(1日店長にハマる)。
ナカムラ:ただ単にあるお酒を販売するか、自分で持ってくるものを販売するかというだけなんですが、それで仲良くなってまた他の日にも行ってみたりとか。「じゃあ今度は卓球大会をやろう」とか言って、うるさかったのでこの前は警察が来て怒られたんですが。
幅:盛り上がりすぎ(笑)。
ナカムラ:「いいんだけどな」みたいな。卓球大会を始めたりとか、いろんなことがどんどん起きていく。それで結果として、また自分の収まるところが見つかっていく。
それでまたいろんな関係性が生まれていくというのは、単純な「お店とお客さん」という関係性を崩して、最終的にそれぞれが「なんか自分はここが心地良いんじゃないか」というところを見つけるきっかけにはなっているんじゃないかなと思います。
幅:なるほど。それを試してみることができる場や機会があるというのも、すごく大事なことですよね。1日店長をやったら、逆に(他の)店長をやっている人が「あっ、今は洗いもの大変そうだ。手伝ってあげよう」という慮りも発生するし。
一方で、他者の視点の数だけ自分はできてくるというラカン的な観点から言えば、「いくつもの自分がそこに存在して良いんだよ」と言われるのって、本当につらい時に逃げ場がたくさんあるということにもなるかもしれませんしね。
幅:質問もいくつか準備しているのでこんな調子で進めさせていただきますが、(次の質問は)「人を大切にする経営って何ですか?」。経営という言い方がちょっと硬いんだとしたら、お二人ともチームというか会社ではあるんですが、人と関わりながら日々の営みをやっていらっしゃる。ここでは、それをあくまでも経営という言葉にしています。
「人を大切にする経営」って、よく標語としては出てきがちなんですが、果たしてそれがどういうものなのかって、なかなか考えるのは難しい部分です。
幅:人を大切にする経営って何ですか?
ナカムラ:難しいな(笑)。
幅:(笑)。
ナカムラ:人を大切にする経営。最近、日本仕事百貨でも反響とかを見ていると、やはり「ケアする」ことがすごく大切になってきているなと日々実感します。
幅:ケアですか?
ナカムラ:会社として、ちゃんとケアする時間や機会を作るのがすごく大切。例えば最近だと、元チームラボの方が無料で学生の1on1をやっている「Otonatachi」というプロジェクトがあります。
「自分がやりたいことが明確じゃない」という学生さんたちが多いことに気づいたことがきっかけで、1on1をしながら、それぞれの中にある思いを引き出していくことをやっていらっしゃって。オートクライン(自分が話した言葉を自分で聞くことによって、自分の潜在的な考えに気づくこと)ですよね。こちらの求人、すごく応募が多かったんですよ。
幅:なるほど。
ナカムラ:コーチングするというか、1on1でいう話を聞く側になる募集なんですが、おそらく裏表でそういうものが求められていることを象徴するものだったと思います。
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