2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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スタートアップ業界におけるダイバーシティとインクルージョンを推進することを目的として開催された本イベント。第一線で活躍するスタートアップ起業家が登壇し、多様なバックグラウンドを持つ起業家たちが直面する課題に光を当て、解決策を模索しました。本記事では、RECEPTIONIST代表の橋本真里子氏が、子どもの手術と資金調達の投資委員会が重なった経験から、経営者として子どもを育てる覚悟について語りました。
高阪のぞみ氏(以下、高阪):ありがとうございます。家庭とビジネス、それぞれの壁の乗り越え方という次の質問にいきたいと思います。これはちょっと前の話なので、今はもうなくなったと信じたいんですけれども、私が「Business Insider Japan」の取材をしている中で、スタートアップの経営をされていると、「妊娠のタイミングをいろいろ言われた」とか。子育て中ならではの大変なことがあったかと思うんですが。
今ももしかしたら続いてるかもしれないんですけども、それをどう乗り越えてこられたかを具体的にうかがえればなと思います。では松村さんからお願いします。
松村映子氏(以下、松村):そうですね。私は子どもを産む前は、本当にめちゃめちゃ働いていました。土日も休んだことなかったですし、朝は6時に起きて家に帰ってくるのは12時。その後1時間ぐらい走ってから寝る生活をしてたので「子どもが産まれたらどうなるんだろう」って思ってたんですけど。
パートナーがとにかく子どもが好きな人で、「俺が育てるから産んでくれ」と言ってくるので、「1人ぐらい産んでみるか」という気になって産みました。やっぱり(出産して)すぐには、身体的にも同じ生活にはなれないので。早く帰るようにして子どもと触れ合う時間を作ってみたら、ある時「働きすぎだったかな?」って気づいたんですよね。
働きすぎて、今まであんまりちゃんと物事が見えてなかったなと気がついて、今は逆に、働ける状況にあっても働かないようにしています。子どもだけじゃなくて、友人や家族との時間を作って、自分とは違う人や、自分が今まで触れてなかった環境に触れるようにしています。
今更なんですけど、もっと自分の知見とか、人間としての豊かさをちゃんと育もうと考え方が変わりました。私は34で最初に子どもを産んだんですけど、「34年間まったく物事が見えてなかったんだな」って反省が本当にありました。それに気づかせてくれた子どもってすばらしいなと思うようになりましたね。
高阪:そんなにワーカホリックでいらっしゃったっていうのもすごくびっくりしていて、バイタリティがすごいですね。それで生き方というか、仕事との付き合い方を変えて豊かになったということで、たぶん働く時間も減ったと思うんですけど、実際仕事はどうですか?
松村:そうですね、やっぱり時間としては、子どもを産む前の半分ぐらいしか稼働できてないと思っています。ただ、「その猛烈な働き方を60歳、70歳、80歳ぐらいまでできるのか」って問われた時に、やっぱり身体的にできないと思うんですね。
なので、考え方や生き方を変えるいいきっかけだったなと思っています。今は「いかに短い時間で同じぐらいの成果を出せるか」にチャレンジする時だなと思っています。
高阪:橋本さんは「妊娠をして周りからびっくりされた」とうちのメディアでもお話しされてましたね。
橋本真里子氏(以下、橋本):そうですね。私も起業してプロダクトを出すタイミングまで、「よし、今年も働くぞ」としか考えてなかったんですけど、縁があって授かったので。「仕事も出産も育児もしていこう」と思いました。仕事しかしていないと、けっこう自分が触れてた世界や視点が偏るなと、すごく感じていました。
保育園に預け出したら、やっぱりまだ教育がアナログなところもすごくある(と気づく)。自分の子どもだけじゃなくて、「こんなにたくさんいる園児の子たちのために何ができるんだろう」みたいな視点が生まれるので、(育児をする中で)いろいろ得られるもの、与えてもらうものはすごくあるなと思いました。
橋本:あとはやっぱり起業していると、時間という概念だけじゃなくて瞬間・瞬間の責任がすごく発生するなと思っています。例えばうちは子どもが0歳の時に手術をする機会がありました。命に関わるような病気ではなかったんですけど、0歳で全身麻酔をして10日間ぐらい入院したので、付き添うことになりました。
ちょうどその時に資金調達もしていて、手術の当日が投資委員会でした。しかもコロナ前だったのでリアル開催で千葉の奥地のほうまで行くんですね。自分は手術の時に病院にはいられず、投資委員会に行かなきゃいけない。
体は1つしかないので、「どっちを選ぶの?」ってなった時に、(手術が)命に関わらないことと、私以外に母や旦那さんが行けたので仕事を選びました。このように瞬間瞬間で、すごく悩む選択はいろいろ起きてくるかなとは思います。
高阪:そうですよね。子どもの手術と資金調達っていうのは、それ以上にないくらい、究極の選択ですよね。ミーティングと運動会ぐらいだったら「うーん」みたいな感じなんですけど。
橋本:そうですね(笑)。
高阪:本当に瞬間瞬間で何を優先するか、時間の使い方を意識せざるを得ない。
橋本:そうですね。起業や経営をしながら子どもを産む・育てるのは、やっぱり相当覚悟が必要だと、自分でやりながらも感じるところです。
高阪:では上原さんにうかがいましょうかね。上原さんは育児もかなりなさっていて、例えば子どもの行事とパートナーの予定とお仕事とが重なって調整が必要だったことはありますか。
上原達也氏(以下、上原):もちろん日々の調整やいろんな試行錯誤はあるんですけど、自分は子どもが生まれたのがけっこう早くて、26の時に上の子が生まれたんですよね。
その時はまだ新卒で入ったベンチャーにいたので、働き盛りだし、「もっと何かをなせるようになりたい」ってもがいている時だったので。自分の仕事やキャリアに対する思いと、一方で自分の家庭に対する思いの葛藤があり、一番苦しい時期でした。
「その時のような葛藤を感じなくていい状態や働き方ができないのか」っていうのが、今の事業につながっています。なので、それに比べると今は、自分の仕事で成し遂げたいことにも挑戦できてるし、その上で自分の家庭、自分のメンバーに対しても、半数以上が子育て中なので。
みんなが自分の家庭もキャリアもどっちにも挑戦できてると思うと、作りたかった世界がまさに今作れてるなって思います。「壁も含めて楽しんでやれてるかな」という感覚はありますね。
高阪:ありがとうございます。まさにそうですよね。男性の方が育児と仕事との狭間で悩まれる時代になってきたのは、悩みがあるので進歩とは言えないのかもしれないですけれども。6年前でも男性の育休って珍しかったというお話でしたね。今そういう声って、上原さんの周りで聞きますか?
上原:もちろん、求職者の方の声としてもたくさん聞きます。昨日もちょうど上場したばかりのベンチャー企業の取締役の方と話していました。お子さんがまだ小さくて、パートナーの方が海外出張に行くと、「自分はワンオペを1週間やってて、マジできついんす」と言っていました。
やっぱり夫婦のあり方が変わってきてるなと思うんですよね。5年から10年ぐらい前までは、男性は長時間働いて、女性は家庭中心というのがスタンダードだったと思うんですけど。今は男女フェアにやっていく考えがすごく当たり前になりつつある。
その時に、やっぱり男性側も大変になってきているとは思うんですけど、これが当たり前になって、社会として受け入れられるという変化が、必要なタイミングなんだろうなぁとは思いますね。本当に経営者も変わってきてるなって感じます。
高阪:そうですよね。まさにみなさんの会社でも、育児をされている方がいらっしゃるという話ですが、スタートアップにおける多様性と包括性ということで、「育児中のメンバーの方をどう活かしていくのか」。どういう仕組み化をされているか。
あともう1つは、だいぶ意識が変わってきたとはいえ、「制度や仕組みがあってもなかなか堂々と休めないんだよね」とか、「18時から21時って(カレンダーに)ブロックを入れづらいんだよね」「会食を断りづらいよね」とか。こういったところの工夫で、もし何かされてることがあれば。では橋本さん、お願いします。
橋本:うちはまさに去年末からこの春までけっこう出産ラッシュでした。育休を取る男性社員がすごく多い時期で、みなさんぜんぜん取っているので、とてもいいことだなって思っています。たぶん私やうちの役員が子どもを育てているので、あんまり育休を取るハードルとか、「こんなふうに言われるかな」みたいにネガティブに考えることがない。
「奥さんが妊娠したので、ゆくゆくこういうふうに育休取りたいです」って自然とみなさん事前に言ってくれるので、それまでどうチームの中で役割分担してもらうかとか、採用が必要なのかっていう準備ができます。
やっぱり事前に言ってもらうところはルール化したほうが、もしかしたらいいのかなとは思いますが。そういった育休をとりやすい文化が大事だと思います。
高阪:ありがとうございます。お二人はどうですか。
松村:そうですね。弊社では、まだ家庭を持ってない20代若手と子育て真っ盛りの30代後半組みたいな感じでわりと二極化されています。
もちろん強要しているわけじゃなくて、休みたい時は休んでいいんですけれども、「もっと実力をつけたいです」って相談される場合は、「子育てに入ったら自分の稼働時間が削られるから、今働ける時に好きなだけ働いたほうがいいよ」って私は言っています。
逆に、子育て世代組はやっぱり葛藤があるんですよね。「もっと成果を出せると思ってるけど、どうしても子どものお迎えがあって」とか「夜出られなくて」みたいな人たちが多いかなと思うんですけども。
その人たちには「20代組がいずれ結婚して家庭を持つ瞬間が来た時に、そういう思いをしないように、今、私たちがレールを作るんだよ」と言って制度作りとかを一緒にやっているところですね。弊社はまだまだ小さい会社なので、フルフレックス以外にあんまり制度が整ってなくて。
ただフルフレックスなんで、時間に制約があんまりない。私は5時半にお迎えがあるので、5時ぐらいまでしか会社にいないんですけど。そこの時間もけっこう自由にはやってはいるものの、育休はどれぐらいとか手当てはどうとかって、ぜんぜん整ってないので。そういうところを、今後、結婚・出産するメンバーのためにカルチャー作りをしているところです。
高阪:昔はいっぱい働いてたのに、今は働けない罪悪感というか焦りをうまくマネジメントしたり、「今は焦らなくてもいいんだよ」っていう働きかけは、けっこうされていると。
松村:そうですね。今特に注目されてるのが育児だと思うんですけれども、これからきっと介護とかになってくると思うんですよね。幸い、私の親もパートナーのほうもまだ元気なんですけれども、あと10年ぐらいしてくると、おそらく介護に入ってくるかなと思っています。
子育ても介護も、やっぱりどうしても人手がかかって、さっきの橋本さんの話みたいに、「重大な時に重大な仕事が重なって」みたいなのが絶対来ると思っています。なので、自分が思うように働けないことを想定した組織作りやカルチャー作りが、今から必要なのかなと思っています。
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