2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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村上静香氏(以下、村上):進行を務めるローンディールの村上と申します。たぶん初めましての方も多いと思うんですが、どうぞよろしくお願いいたします。
「キャリアの可能性を広げるのはWillかCanか?」というテーマで、新刊を出された著者お二人の方の対談企画を進めてまいります。今日は170名ぐらいの方が申し込んでくださってますね。みなさん、本当にお忙しいところありがとうございます。
今日の流れなんですが、最初は登壇者の自己紹介を少しずつお話しさせていただいて、後半はお二人の対談ということで、30分ほど時間を取って進めてまいりたいと思います。みなさんも本を読まれていらっしゃるかと思うんですが、こちらの内容も踏まえて進めてまいりますので、よろしくお願いします。
では、最初に登壇者の自己紹介ということで、高橋浩一さんにお願いしたいと思います。高橋さん、よろしくお願いします。
高橋浩一氏(以下、高橋):よろしくお願いいたします。みなさん、こんにちは。営業の研修・コンサルティングを提供しております、TORiX株式会社の代表を務めている高橋浩一と申します。
今回は「キャリアの可能性を広げるのはWillかCanか?」ということで、この後の対談パートでもお話をさせていただきたいと思います。今回は、いわゆるビジネス本というジャンルで本を書かせていただきました。
高橋:最初に簡単な自己紹介をさせていただくと、最初のキャリアは外資系のコンサルティング会社で、2年半ぐらい働きました。言わばCanの筋力みたいなものを鍛えた後に、2003年、25歳の時に人材教育のベンチャー企業を3人のメンバーで創業しまして、6年間役員をやっていました。
立ち上げる時は本当に「Will100パーセント」「教育業界だ」という感じでやってましたが、だんだん会社が大きくなってくると、いろんなしがらみと言いますか、今日もいろいろ出てくると思いますが「Must」をすごく考えるようになって。
6年ほどやってから経営をバトンタッチをしまして、今度は新しく自分の会社を作りました。今は営業の方々をメインにご支援をさせていただいております。おかげさまで、『営業の科学』が出版から大変反響をいただいておりまして、もしかしたら読んでいただいている方もいらっしゃるかもしれません。
どんな趣旨で本を書いたのかについて、簡単にお話をさせていただくと、営業の界隈では「がんばる」という言葉が切り離せないキーワードとしてあります。
別に営業に関わっていなくとも、日本人というか日本企業全体的に、やっぱり「努力」とか「がんばる」ということに対してすごく価値が置かれている。実際に自分もガンバリズムでやってきた人間であります。
特に起業した時は、創業者自ら売るという感じでやっておりました。差別化できなかろうが、戦略がなかろうが、営業のやり方を人から教わらなくても、最初はなかなか結果が出なくても「なんとか売るんだ」と。ただ、私自身の体験のみならず多くの会社さんでも、もう壁を乗り越え続けた人が組織のトップになるケースが多いんですよね。
そうすると、乗り越えた人は努力をすれば成果が出る。お恥ずかしながら、自分も本当にこういうメッセージで組織をマネジメントしていた時代がありました。
高橋:今から20年近く前なんですが、ガンバリズム100パーセントでやっていたんですね。そうすると、成果が出ない人を見ると「努力が足りないんじゃないの?」と思って、つい言葉や表情から出てしまう。今現在、営業組織のご支援をするようになって、この構図は意外と多く見かけるなと思います。
トップの方が「いやいや、営業なんて簡単でしょ」「当たり前の基本をやるだけだから楽勝でしょう」ということをおっしゃると、部門長の方は「いや、うん。そうですね……」みたいな。
だから、「営業支援の予算はありません。お金をかけなくても大丈夫。なぜなら営業は当たり前の基本をやれば成果が出るからです」というふうにすると、管理職の方も「目標達成を意識し、大量行動し、お客さんと関係構築したら成果が出ますよ」というふうになります。
「特別なことはしなくていいんだよ。ただがんばればいいじゃないか」ってなると、現場のメンバーの人が「がんばってはいるんですが、なかなか成果が出ません。どうしたらよいでしょうか?」って苦しんで相談したとしても、「大丈夫! 目標達成を意識して大量行動して、お客さんと関係構築をしたら成果が出るよ」というのがエンドレスに繰り返される。
僕は新卒の300人の方々をご支援するお仕事をしたことがあるんですが、その300人の人たちに対する上司の指導場面の動画を300本分析したことがあるんですね。業績とどう関係してるのかを興味深くもって見てみると、業績が厳しい人ほど(指導場面における)上司の武勇伝の割合が多かったんですね。
どういうことかと言うと、みんな苦しんで相談するわけですよ。「がんばってるんですが結果が出ないんです」と言ったら、「わかるよ。自分もそうだった」みたいな感じで苦労の話が始まって、「いかに苦しい時を耐えしのんだか」というお話が指導の中でどんどん大きくなってくる。
高橋:ただ、これをもう少し冷静に、実際にファクトで見たらどうなのか。全体5,000人のサンプルの真ん中を引っこ抜いて、目標達成上位集団と目標達成下位集団を比較したんですね。平たく言うとブルーがハイパフォーマンスチームで、ピンクがローパフォーマンスチームです。
そうすると、「効果を実感している取り組みは特にない」というところだけすごく差が開いてるんです。要するに、「会社が支援している取り組みについて効果を感じていません」という答えが、ローパフォーマンスチームになると非常に多いということだったんです。
これをさっきの話とつなげて想像すると、「いやいや。そんなのは会社が支援しなくてもやれるでしょ」と言われていると、やっぱりこうなってしまうんじゃないかということです。
実際、営業の方々は日々現場でいろんな壁にぶつかられています。よくあるのは、営業の方々は絶対に言われたことのあるセリフだと思うんですが、「検討しますのでお待ちください」。もう、これを言われるとけっこう困っちゃいますよね。実際にお客さま1万人に聞くと、「そういうことを言ったことがあります」という人たちが7割以上います。
営業の人たちに「この状況から受注ってできると思いますか?」と聞くと、ほとんどの人が「いや、もう難しいでしょう」っておっしゃるんです。ただ、お客さま1万人に「ぶっちゃけどうなんですか?」と聞いてみると、実は「まだ追加で話を聞いてもいいよ」という人は意外と多い。
もうちょっと具体的に言いますと、「もうダメですよ。NGですよ」という人は13.7パーセントで、他のお客さまは本当はなんらかのチャンスがあるんですよね。だけど言わない。
86.3パーセントは条件付きで巻き返しが可能ということがわかっていると、もっともっとできることが増えるんじゃないかと思います。
高橋:これを僕は、『営業の科学』という本の中で「購買者の仮面」という言葉を使って解説をしました。「とりあえず社内で検討しますのでお待ちください」というのは、本音で心からそう思って言ってるわけじゃなくて、めんどくさいからとりあえず言っておこうということですよね。この購買者の仮面を何種類かまとめてみたのがこちらです。
例えば「はぐらかしの仮面」というのは、お客さまに提案しようとする営業の人が「今回、ご予算はいくらぐらいでお考えですか?」と言うと、「いやぁ~、予算は決まってないんですよ。逆に御社がいくらでできるか教えてください」。これ、よくありますよね。
なんですが、実は予算について知らないから答えてないという方は15人に1人です。15人のうち14人は、本当は予算の情報を教えられるんだけど教えていない。「ここは教えたほうが得だ」ということをしっかり示して質問できれば、聞き出せるということですね。
あるいは「忙しさの仮面」も、新規のアポイント獲得をやってる人はよく言われると思います。電話でお客さんに「アポイントいただけませんか?」と聞くと、「ちょっと今は忙しいので、資料だけ送ってくれませんか」と言われる。
言われたとおり資料だけ送っても、やっぱり返事は来ないわけですよね。ただ資料を送るだけじゃなくて、時間を使う価値があるという根拠をちゃんと忍ばせておかなくてはいけない。
また、いざお客さまと関係が作れたとしても、いきなり依頼が来る。「すみません。ちょっと急なんですが、すぐに見積もりをください」と言われて、一生懸命納期に間に合わせようと思って見積もりを出すだけだと、やっぱり失注してしまいます。ここでは、スピード勝負の高速ラリーにどうやって持ち込むかが非常にポイントだったりします。
高橋:そして「とにかく安くの仮面」。「とりあえず、もっと安くなりませんか?」と、何はともあれ価格交渉をしてくるお客さまっていらっしゃるんですが、実はこれは「判断基準がよくわからない」というのが心の声ですので、価格以外の判断基準を作ったら高くても売れる。
実際に1万人のお客さまに「予算より高くても買ったことがありますか?」と聞くと、7割以上のお客さまが「あります」と答えられています。
それは何が要因だったのかと聞いたら、「価格交渉して安くしてもらったから」という答えは上から3番目で、トップ2は「判断基準が明確になったから、あえて高いほうを選んだ」という答えだったんですね。
そして最後の「検討しますの仮面」。「とりあえず、もう少し社内で検討してみます」というのもよくある話ですが、助け船を出しましょう。ローパフォーマーの方々は、どうしてもお客さまの表面上のセリフに対して反応してしまうんですが、ハイパフォーマーの方々はその裏側にある素顔や本音にしっかりとアプローチをしてくる。
ということで、今回の『営業の科学』の中では、購買者の仮面の裏側にある素顔が本音であり、ここが急所ですとお伝えしております。
この急所を外してしまうと、どんなにがんばっても報われにくい。逆に急所を捉えられると、努力の効率が大きく上がります。いったん私からは以上で、大川さんにバトンタッチさせていただきます。
村上:高橋さん、ありがとうございます。
大川陽介氏(以下、大川):ありがとうございます。
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