
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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売り手市場の採用環境、働き手の多様化が進む今、ミドルマネジメントの変容が組織成長の要となっています。本イベントでは、個々を尊重しながら適切な指導を行い、部下を育成していくための職場コミュニケーションについて語られました。本記事では、エール株式会社 代表の櫻井将氏が、「聴く」と「伝える」の両立の仕方やコミュニケーションがうまくいく「聴く」コツについてお話しします。
櫻井将氏(以下、櫻井):最後に、じゃあ「フィードバック」と「聴く」ことをどうやって両立するんだっけ、ということを話します。「フィードバック」だけでも「聴く」だけでもダメだと思うので、ここの両立について。
私も「聴く」ことや1on1について散々伝えているので、「1on1の正解を教えてください」とよく言われるんですけど、最初にお断りしておくと、これにはちょっと答えられないなと。
やはり関係性や相手の状態によっても違うし、自分側のスキルや得意や好きなものによっても異なるので、唯一無二の正解はないなと思っていて。ただ「こんな感じでやったらうまくいくよ」という定石のようなものはあると思うんです。
料理でもそうなんですけど、「肉じゃがの正解を教えてください」って言われても、唯一無二の正解はたぶんないと思うんです。ただ、「こうやったらだいたいうまくいくよ」みたいなものがあって、「そこからはあなたがアレンジしてください」という話だと思うので。そういったものを今日はお伝えできればなとという感じです。
櫻井:「個人として何ができるか」と「組織として何ができるか」という2つでお話ししようと思います。個人としてできることは、「聴く」と「伝える」の両立ですね。どうやってこのバランスをとるかということで、私の話で一番「なるほど」と言っていただけるものを1つ、お伝えします。
Positive Intention Matrixというものを作らせてもらったんですけど、要は1on1もふだんの会話もそうです。今話している会話がどこの領域の話をしているかによって、それを「伝えたほうがいいのか」「聴くほうがいいのか」を分類したものになっています。
まず軸の説明からするんですけど、縦軸は、下のものが上のものに影響を与えるという軸になっています。逆に言うと、上のものが下のものに影響を受けるということですね。なので例えば、最近太りすぎてダイエットをしたいと思ったから、今ランニングをしていますと。
要は「ダイエットをしたい」と思考したので、「ランニングをする」という行動をしています。「お客さんにとってこれがいいと思ったので、こういう提案書を作りました」というふうに、思考が行動を作っていきます。
自分がうれしいとか楽しいとか、悲しいという感情が思考を作り出していきますし、自分の価値観やバイアス、信念、思い込みみたいなものが自分の感情を作り出します。
例えば阪神ファンで「阪神が好き」という価値観を持っている方であれば、阪神が日本一になったら「うれしい」となりますし、根っからの巨人ファンで「巨人が好き」という価値観を持っていたら、阪神が日本一になったら、「むかつく」「悔しい」って思うわけですよ。
まったく同じ事実に対しても、人の価値観によって生まれる感情・思考が異なるので、行動が変わってくるということです。なので下のものが上に影響を与えるということです。
櫻井:横軸は、「人生がキャリアに影響を与える」「キャリアは役職に影響を与える」「役職はタスクに影響を与える」と、左のものが右のものに影響を与えるという順番で並んでいます。
人生で大切にしているものがあるからキャリアのチョイスをしますし、マネージャーになるのか、専門職になるのかを選んだりします。やはり部長とメンバーでは同じ事象に対峙した時にアクションや考え方が変わりますよね。
部長としての判断と、メンバーとしての判断は変わりますし、同じ事象でも、会社の部長として判断するのか、1人の子どものお父さんとして判断するのか、お母さんとして判断するのかは、ぜんぜん違う意思決定が起きる可能性があります。
なので、「役職が目の前のことに対して影響を与えることがある」という意味で、左のものが右のものに影響を与えるというように並んでいます。
例外はもちろんあるんですけど、先ほど言ったwith Judgementとwithout Judgement、「聞く」と「聴く」ということ、「伝える」ということも、こんな役割分担でできるといいんじゃないかなというのがこの表になっています。
よく傾聴の研修なんかをすると、「とにかく聴きなさい」と言われるんですけど、仕事の行動レベルの話はジャッジメントなく聞いていると、ものすごくスピードが遅くなりますし、効率が悪いと思うんですよ。
だって知識や経験があって、(正しい)判断はわかっているわけなので、「これはこうやったほうがいいよ」と伝えたほうがいいと思いますし。「それは間違っている」ということだって、ちゃんと伝えるほうがいいと思うんですよね。
この時に怖がってジャッジせずに、「いや、それも正しいのかもしれないな」とかやっていると遅くなったりするので、右上はジャッジメントをしてもいいことが多い領域だと思います。一方で、左下はジャッジメントなく聴けるといい領域かなと思っていて、その人の価値観ですよね。
「私はこういうことを大切にしています」と言った時に「いや、それは違うと思います」と言われたらけっこう困るというか、人間性を否定されたなと感じると思うんですよね。
一番最初のスライドにあった「行動とか結果に対してフィードバックをしましょう」っていうのはたぶんそこの話で、行動や結果のレベルに対してフィードバックをかけていくものですよ、というお話をしていたのかなと思います。
櫻井:これが難しくなってきている理由は、日本企業のほとんど、特に大企業は終身雇用・年功序列という仕組みで昔は成り立っていたんですよね。
「自分の人生やキャリアの価値観は、この会社にいれば満たされる」というのが前提だったと思うんです。なので20〜30年前ぐらいまでは、上司がちゃんと聴かなくても、終身雇用や年功序列という仕組みがこの左下の(個人のハード面・ソフト面)を満たしてくれている状態だったと思うんですね。
すると、ここが満たされているので、多少右上のところできつい言葉や理不尽な言葉を言われたとしても、「まぁでも、歯を食いしばって言うことを聞いていれば自分の人生は安泰だ」と。この前提で成り立っていたので、厳しく言っても関係が崩れなかったり、ハラスメントにならなかったと思うんです。
これにはソフト面も影響していて、もっと飲み会やランチが多かったし、喫煙所で「いや実はさ」みたいな話をしたりしたと思うんです。ソフト面・ハード面でやはり左下が担保されていたんだと思うんですけど、今は終身雇用が崩れていますよね。
今みなさんの会社にいる25歳以下の方とかに聞いてもらえばわかると思いますけど、たぶん60歳までその会社にいようと思っている人って本当にほぼわずかだと思っています。
なので左下がものすごく多様化していますし、自分の中でもフワッとしている状態で厳しいことを言われたら、それはハラスメントというか、「もうここにいたくないです」となっていくと思うんです。なので厳しくフィードバックをきちんと伝えるためにも、左下側ですね。
「相手が今何を感じているのか」「何を大切にしているのか」を意図的にコミュニケーションを取って聴いていくことができると、厳しく言ったとしても「あっ、自分のことを思って言ってくれているんだな」となるので。1on1でこういう話をしましょうと言っているのは、心理的安全性が高まるからだろうなと思うんですけど。
この左下の領域において、終身雇用・年功序列というハード面の制度を除いて、できるだけ聴くということを組織として担保していかないと、仕事がうまく進まないということを言っているのかなと思います。
櫻井:あと1on1とかマネジメントにおいて部下と話す時に「どこを聴いてどこを伝えたらいいのかな」というところは、こんな領域で分けたりとか。先ほどから言っているように、ほとんどの会話ってめちゃくちゃジャッジしているんですよ。
私も意識していないと99パーセントジャッジして聞いているんですよね。「それは違うんじゃない」とか「それはなんかおかしいと思うな」とか「それはめっちゃ賛成」とかって、口には出さないんですけど、基本的には情報を常にジャッジしているんですよね。
テレビを見ていても、人と会話していてもジャッジしているんですよね。without Judgementで評価・判断せずに聴くことが大事だからって、ずっとやれるかと言うと、やはりそうじゃないというか。ずっとやっていて心地いいかと言うとそうじゃない。
例えばコーチングとかカウンセリングみたいな特殊な環境であればこれでいいと思うんですけど、事業を進めていく上でずっと聴いているってやっぱりおかしいし、うまくいかないと思うんです。
このバランスを取るということが大事だと思うので、その前提で、傾聴研修とかで「聴かなきゃ」と思っている方も(考えるといいと思います)。最適なバランスは関係性や相手の状態によって違うし、いろんなことによってこのバランスが変わってくると理解しておくといいのかなと。
最初の5秒聴くだけでもけっこう印象が変わります。Tips的には「いやでも」という言葉を使わないほうがいいよ、とよく言われると思うんですけど。最初の5秒で「あっ、なるほどですね」「あなたはそういうふうに思っているんですね」とwithout Judgementができると、コミュニケーションはうまくいきますよ、とお伝えしているところです。
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