
2025.02.18
「売上をスケールする」AIの使い道とは アルペンが挑む、kintone×生成AIの接客データ活用法
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グロービス経営大学院の教育理念である「能力開発」「志」「人的ネットワーク」を育てる場を継続的に提供するために開催されるカンファレンス「あすか会議」。今回は「あすか会議2023」から、ワーク・ライフバランスの代表・小室淑恵氏、フォースタートアップスの代表・志水雄一郎氏、衆議院議員・平将明 氏、そしてNPO法人ETIC.創業者の宮城治男氏が登壇したセッションの模様をお届けします。2回目は、今の時代に必要なマインドセットなどが語られました。
各務茂夫氏(以下、各務):昔は「お忙しくしていますね」と言われると「貧乏暇なしで」と答えて、ちょっと謙遜した言葉だったんですが、(今は)実態として「貧乏暇なし」になっているというお話であって。さっきの志水さんの話とも相通ずるものなのかもしれませんけど、実際そうかもしれませんね。
ある種の器用貧乏もそうかもしれませんし、自分の価値をそれなりのしかるべき価値として作っていくという意識を、国全体として持たないといけないってことなのかもしれません。転職を含めた一人ひとりのキャリアもそうだけど、ビジネススクールにあってマネジメントをしていくという上長の立場として、AIをどう活かせるかという視点も提起していただきました。
それでは最後になりますが、宮城さん、お願いします。
宮城治男氏(以下、宮城):よく昔話をするんですが、私が「起業を志すという生き方がある」と伝える活動を始めたのが、ちょうど30年前、20歳の時でした。当時は、同世代の大学生とかが将来自分で自分の会社を作ってチャレンジするという選択肢を学ぶ環境は皆無でした。当時、仲間に「起業家の人が来て大学で話してくれるよ」と伝える手段は、家の電話に電話するしかなかったんですね。
携帯もまだ普及していなくて、一人ひとりの家に電話した。女子学生の家に電話して、お父さんに本人に代わってもらうというめちゃめちゃ緊張することを一軒一軒かけて、やっと10人とか20人の人が来るような勉強会をしていたのがその頃なんですね。
何が言いたいかというと、当時を思えば、インターネットが登場してからどれだけ1人の人が社会に与えられる影響力が大きくなっているかということなんですよ。100年前くらいまで遡ったら、我々が考えるイーロン・マスクくらいのパワーを、今は持っているんですよ。
王さまみたいな生活をしていると言えるかもしれない。例えばみなさんがつぶやくメッセージに価値があったら、1人から発信されたものでも、それが何億人に一瞬にして伝わるような時代じゃないですか。一人ひとりがメディアにもなりうる。発信源にもなりうる。
当時の「一人ひとりに電話して」みたいなこととは比べようがないくらい、エンパワーメントされていると私は思うんですね。
AIはさらにそれをエンパワーメントしてくれるツールでもあると私は思う。その進化を考えれば、我々一人ひとりが持っている力はとてつもないという時代にいるんですよね。まさに志水さんが言ってくれた「知らない悪」ということで言えば、耳を塞いで目を閉じている感じもするんですよ。
それだけの力があることを知ってしまうと、怖いというか、やらざるを得なくなるかもしれない。まず私としてはそれを最初に伝えたかった。
宮城:一方で、みなさんに期待したいことで言えば、キャリアという概念そのものが、従来の意味では不要になるというか、もう「世の中に受け入れられるためにキャリアを積んでいく」みたいな、殊勝なことを言う時代じゃないと思うんですよね。
何が言いたいかというと、私はみなさんに、ただ単に社会に受け入れられるためだけに努力をするというステージではなく、もっとラジカルに、みなさんが描く理想の社会や人生の新しい軸みたいなものを社会に打ち出していっていい時だと思うんです。
世の中が期待していることや、今の成功という物差しの中で評価されることに対して合わせようとがんばっていると、気がついたらその努力は意味なかったというくらいの進化が起きている時代なんですよね。
という意味では、やはり作り出したほうが早いわけですよ。私はみなさんなりの新しい生き方や社会の向き合い方を作り出していく側として、チャレンジしていただくようなきっかけにつながっていけばなと思います。
(会場拍手)
各務:今の宮城さんの話、それから各パネリストの方々のお話を聞いてみますと、今日一番最初の全体セッションで東芝の島田太郎さんがおっしゃっていた、古代ローマのジュリアス・シーザーの話がありましたよね。
塩野七生さんの本を読みますと、一番印象に残るのが、「人間はすべてのものを事実として見ているのではなく、自分の見たいものしか見ない」という名言をシーザーが言っているということです。
かつて、アル・ゴアさんというアメリカの副大統領が「不都合な真実」と言いましたが、おそらく不都合な真実を直視する能力がますます重要になってくるというお話があったかと思います。
私は、最近特に1年生によく言うんですが、これまではある種の標準に従って会社がランキングされて、そこに就職偏差値のようなものがあるがごとく捉えて、その中でもしかすると「あの会社いいな」「この会社ちょっとどうかな」という思考を持つかもしれません。
これは私から見ると「受験マインド」というもので、私がいる大学で言いますと、高校生が大学に来る入試はそれでいいよねと。一般解、標準解という回答が必ず1つあって、その回答は学ぶことによってつく。
主として学習によって学べるものだと思うんですが、大学生になったら、お一人おひとり、みなさんが個別の問題を見つけて個別の問題を解くという個別解のマインドセットに立たないといけないよと思っているんですね。
したがって、一人ひとりの思いがどういった立場として問題解決を図りたいか、自らの問題に対する解像度をいかに上げるかというゲームになっているんじゃないかなと、今の時代では思うんです。
各務:たぶん志水さんがそのあたりに一番詳しい。一人ひとりがいかに自分の志を貫けるようなものを持てるかどうかのゲームがより強くなるんじゃないかと感じるんです。
スタートアップをご支援されていて、スタートアップをキャリアとして持っている方にある意味でアドバイスされたり、人のマッチングもされたりという立場から言うと、いかがでしょうか、志水さん。
志水雄一郎氏(以下、志水):私は、スタートアップにCXOから昇格したり、さらに言えば一番優秀なリーダーだなと思える人には、起業する気がなくても背中を押すんですよね。アルムナイ・アワードを取られた星野貴之さんはユアマイスターという会社を作られましたが、彼の背中を押してみたということなんです。
何が言いたいかというと、人はそれぞれの過去の経験とか、インプットに基づいたいろんなペインを感じていると思っています。そのペインの課題解決は、自らがリーダーとなって人を集わせて作るのか。すでに誰かがリーダーとなっていて、「自分が思っているペインは、あの人が一番大きく課題解決できるかも」と思ったらその人のもとに集えばいい。
僕はそういう純粋なものだと思っていますが、私たちのキャリア観がリーダーのもとに集うことが前提になっていることが、課題だと思っているんですよ。
さらに言えば、日本では「スタートアップは若い人たちのもの」と言っているんですよね。だから「年を取ると挑戦できない」とよく言うわけですよ。絶対に違う。
だって米ハーバード・ビジネス・レビュー誌の記事によると、米国の成功する起業家って、起業時の平均年齢は45歳ですよ。40代、50代の成功確率が高くて、60代から勝負して結果的に成功する人だって、全体の6パーセントから7パーセントくらいいる。
同記事では、20代から勝負して成功する人が全体のだいたい10パーセントと言われます。ということは、20代と60代、言うほど結果的に成功する人の数は変わんないですよ。日本って平均年齢が48.6歳くらいで、たぶん最高齢国家です。50歳に近いんですよ。
てことは、人生1回も2回も3回も挑戦したっていいんですよね。人生は二毛作か三毛作ですよ。老け込む理由はない。これもよく言うんですけど、挑戦こそが最大のアンチエイジングだと思っています。やはり社会を変えなければいけない。仲間とともに未来を変えなければいけないという責任感。
もちろんストレスはかかるかもしれないけど、生きる理由にはなるはず。だから僕は生きる理由をペインに基づいて作れる人たちが、もしかすると課題解決のリーダーじゃないかなと思っていて、それはスタートアップから現れると思っています。
各務:「挑戦こそアンチエイジング」ってすごく名言のような感じがしますね。さっき志水さんが堀江さん、孫泰蔵さんの話をされましたよね。私はキャリアを積むとか、さまざまな技術的なものがあったとしても、やはり人のご縁みたいなものがけっこう重要だと思っています。
2013年にMIT(マサチューセッツ工科大学)の卒業式で、ドリュー・ヒューストンさんというDropboxの創業者がスピーチをして、2018年に東大にお見えになって対談したことがあるんですけど、彼は「みなさん一人ひとりの価値は、ふだん最も会っている上位から5番目の平均値で決まる」と言っています。
さっきの小室さんの話をうかがっても、ご妊娠なさった時の大塚万紀子氏とのご縁とか、そういったものがあると何かことを成す時のパワーになる。もっと自分を高めたいのであれば、さらにいろんな人に会ってみる。
たぶんこのあすか会議もそういった機会なんだと思います。みなさんがちょっとストレッチするというか、気後れするけれども会ってみることは、たぶん堀江さんも奨励されているんじゃないかと思うんです。
その部分があって、宮城さんは、いわゆる社会起業家と言われる人たち、おそらく何千社近くをこれまでずっとご覧になられていかがでしょうか。いろんな技術の進展はありますが、キャリアを考える時のチームや人との出会いをどんなふうにご覧になっていますか?
宮城:今、起業の準備をしていて、「あとは人だけなんです」という話を相談されることもよくあるんですが、ある意味で、集ってくる仲間は今の自分の状態を表した1つの結果なんですよね。「あとは人だけ」ということはありえないんですよ。
今の自分の「志」とか、挑戦しているプロセスの水準に合った人がつながっていくので、そこを飛ばしてコントロールできるものじゃないんですよね。なので、もっと気楽な角度で言えば人はついてくるわけです。
みなさん、我々がそれぞれ挑戦していくステージやその本気度、その歩みに合った人が必ずつながるというのは、私が30年見ていてすごく思うことです。頭で考えて、「お金もあるし、計画もあるし、あとは人だけなんだ」と言っている人は、けっこう同じところをぐるぐる回っている人が多い。
人が集まらないということはまだその段階じゃない。集まってくるようなところに行きたければ、その突き抜け方をどうするかという、自分との向き合いでしょうし。
一方で然るべきプロセスを経れば、本当に出会うべき人と出会えるというのは、私は実感として持っています。
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