2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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倉貫義人氏(以下、倉貫):倉貫です。
仲山進也氏(以下、仲山):仲山です。
倉貫:『ザッソウラジオ』は倉貫と、「がくちょ」こと仲山さんで、僕たちの知り合いをゲストにお呼びして、「雑談と相談」の「ザッソウ」をしながら、ゆるくおしゃべりしていくポッドキャストです。今月のゲストは稲垣栄洋さんです。「雑草」の専門家です。よろしくお願いします。
稲垣栄洋氏(以下、稲垣):よろしくお願いします。
倉貫:前回は「雑草」の「雑」の部分にフォーカスをして「何でもアリだ」と。ビジネスでもイノベーションを起こす新規事業は「雑」なところからだし。なんと、がくちょの職業は「雑職」だったという。
仲山、稲垣:(笑)。
倉貫:そこまでの話をして、「草」に至らずに「雑」だけで盛り上がった回でしたけど。途中で話していた「カテゴリーする」とは人工的なもので、人工物によって人類や人間が規定されるのは、すごくもったいないなという話でした。
あと、境界も人間が勝手に決めているだけなので、現物主義、リアルありきというか、自然ありきで考えていくという。
ついついカテゴリーや分類などの境界の中で生きていると、「確かに富士山のどこまでが富士山か? そもそも『富士山』という名前をつけたのも人間だな」と感じましたけどね。がくちょは前回の話はどうでしたか?
仲山:前回は「雑草の『雑』の話で『草』の話をまだしてないね」で終わりましたね。「分類」の意味を「外側の線をはっきりさせる」と捉えると、木の表皮は硬いけど草は柔らかいじゃないですか。それとなんとなく通じるところがあるのではないかと思いながら聞いていました。
前回倉貫さんが「雑草魂じゃないけど」と言って、事業が立ち上がった話をしていましたけど、稲垣さんの本を読んで一番おもしろいと思ったことの1つが、「雑草は踏まれたら立ち上がると思っているかもしれませんが…」(のところ)。
倉貫:そうね。
仲山:「雑草は踏まれても立ち上がりません」と書いてあるのが、けっこう衝撃(笑)。
倉貫:弱いままで(笑)。なんか「雑草魂」と言うと「ど根性」というイメージがあるけど、ぜんぜんど根性じゃないよと。
仲山:「雑草はそんなムダなことはしないんです」という話が。
稲垣:そうですね。「雑草は踏まれたら立ち上がる」「踏まれても踏まれても立ち上がれ」と思っているかもしれませんけど、実際に雑草を見てもらうとそんなに立ち上がってなくて。
倉貫、仲山:(笑)。
稲垣:これには、かなりの方ががっかりされるんですけど。でもそこがやはり雑草のすごいところで。(雑草からすると)「いや、なんでそもそも立ち上がらなきゃいけないんですか?」という話なんです。
倉貫:めちゃくちゃおもしろいじゃないですか。
稲垣:そうですね。だって植物にとって大事なことは何かと言ったら、花を咲かせて種を残すこと。
倉貫:繁栄、繁殖することですね。
稲垣:そう、植物の目的はわりとシンプルで、繁栄するためです。踏まれても踏まれても立ち上がるのは、けっこうムダなエネルギーを使うので。
倉貫:それだわ。
稲垣:ええ。だから雑草は踏まれたら、「じゃあ踏まれながら、どうやって花を咲かそうか」「踏まれながら、どうやって種を残そうか」にエネルギーを使うんですね。本当に大事なことを見失っていない、ブレていない。そこがやはり雑草のすごさだと思うんです。
倉貫:逆らってないというかね。
稲垣:そうですよね。踏まれたら「なにくそ」と思って、絶対にちょっと立ち上がりたくなるじゃないですか。そういうことを思わないのはすごいなと。「いやいや、大事なのは種を残すことだから」と(目的を)絶対に見失わないんですよね。
倉貫:めちゃくちゃ本質的なんだよな。
仲山:それこそ、まさに「パーパス」の話ですよね。
稲垣:そうですね。「結局の目的は何なの?」ということです。それ以外は雑草にとってはどうでもいいというか。種さえ残せればどうでもいい。だから雑草はすごく変化をするんですよね。図鑑通りじゃないのが、雑草のすごくおもしろいところです。
図鑑には「こうですよ」「20センチぐらいの草丈で春に咲きます」と書いてあるんですけど、ぜんぜんそんなことは関係なく1メートルになったり、5センチになってみたり。春に咲くと書いてあるのに秋に咲いてみたり、自由自在なんですよ。
それはなぜかと言うと、やはり「種を残すためにはどうしたらいいか」を考えているから、「そんな人間が決めた図鑑に書かれている通りにやってられないよ」ということだと思うんです。そこが雑草のおもしろさですよね。他の植物は意外とそういうことができなかったりするので。
倉貫:雑草じゃない他の植物は、わりと決まった自分なりの勝ちパターンで生きている感じですね。
稲垣:そうですね。「私たちの身の回りに生えている植物」と考えると、雑草は強い植物だと誤解されているんですけど。でもそうじゃなくて、実は弱い植物なんです。
自然界は生存競争で強いものが生き残り、弱いものが滅びていく。そういう点で雑草はすごく競争に弱いんです。だから他の植物と競争するとけっこう負けてしまうので、森で……。
仲山:太陽の光をゲットする競争。
稲垣:そうそう、太陽の光もそうですね。(雑草は)森の中には生えることができなくて、強い植物が生えないところに生えるんです。「じゃあ強い植物が生えないところはどこ?」と言うと、人が草取りするところや人が踏むところなんですよね。
雑草は競争に弱いんですけど、予測不能な変化には強い。人間のいる社会は、植物にとってすごく予測不能な変化が多い。踏まれたり、草取りされたり、除草剤を撒かれたり。そういうものを乗り越えることによって進化を遂げてきたのが、雑草なんです。
倉貫:わざわざ人間がいて刈られるかもしれない、草抜きされるかもしれない危ないところに行き、そここそが自分の生きる場所という。
稲垣:そうですね。でも、強いライバルがいないという点では、変化さえ乗り越えれば、そこはいい場所ですよねと。
倉貫:楽園になるという。でも普通に考えたら、ビジネスでみんなが「儲かる」と言っているレッドオーシャンに行くと、けっこう戦わなきゃいけないじゃないですか。そこで生き抜く、事業をやり抜くには、それこそ踏まれても立ち上がらなくちゃいけない。むしろそっちのほうがめちゃくちゃ根性がいる世界だったりする。
稲垣:そうですね。
倉貫:「いや、そんなビジネスはやれないわ」「これなら誰もやらないんじゃない?」というビジネスをささやかにやっていくと、「あ、ぜんぜん誰も入ってこない」という。大変だけど誰も入ってこないところで細々とビジネスをやって、そこで繁栄していく。そういう会社はけっこうたくさんあると思います。
稲垣:(笑)。でもただ逃げているわけじゃない。倉貫さんも「大変だけど」と言ったけど、雑草には雑草の大変さがあるので、「ここさえ乗り越えれば」ということですね。そこがブルーオーシャンになってくるんですよね。
倉貫:本当にね。僕らの会社もそうだし、もしかしたら社外取締役をやっているクラシコムもそうかもしれないけど、「戦いたくない」「平和でいたい」というのがあって。あまり密集していないところに行ったほうがいいねと。
でもあまり人が行っていないところへ行くのもけっこう大変で。それでも「密集してないところで生き抜くほうが自分たちには合っている」というビジネスをずっとやってきました。逆に雑草にリスペクトというかね(笑)。(自分は)「雑草だったのかもしれない」と思ってきていますね。
稲垣:競争がない場所は、自分たちの強みが活かせるんですよね。雑草はどこでも生えていると思われるかもしれないんですけど、それぞれやはり自分の強みがあって、踏まれるのに強いやつは踏まれるところに生える、草取りされるのに強いやつは草取りされるところに生える。
だからいろいろなポジションが出てくるんですよね。競争のあるところでは、シンプルに強いかどうかじゃないですか。強いほうが勝つ。でもそうじゃない場所は、自分の得意技がいろいろと活かせる。それが雑草の世界のおもしろいところですよね。
仲山:おもしろいな。
倉貫:僕はそんなポジショニングで会社をやっているけど、がくちょ的にはそれはイヌというよりネコ的な生き方?
仲山:そうですね。
倉貫:イヌはけっこう決まった仕事だけど、ネコの人は「これがネコ」というのがなくて、いろいろなネコがいる、みんなの共通の強みじゃないですものね。
仲山:そうですね。目的がはっきりしていて、あとは周りの変化に合わせてやり方をチューニングしていく。その時に自分の強みを活かせるプレイスタイルをキープしつつ、ちょっとずつチューニングを変えていく感じかな。自分の働き方もそうだし。あとは今の稲垣さんの話を聞きながら、僕は楽天市場で商売しているネットショップの人たちは、本当にそういう感じだなと思って。
倉貫:ああ。
仲山:変化が激しいじゃないですか。
倉貫:激しいですね。
仲山:一つひとつの会社はあんまり大きくなくて。それこそEコマースの世界には、Amazonさんという巨木が1個生えているんですよね(笑)。
倉貫:Amazonという密林がね。
仲山:Amazonという密林、巨木があるから、中小企業だと競争で日光を取りにいくのは難しいですよね。
倉貫:いやあ、あの密林の中で商品を出してもね、価格競争で負けますからね。
仲山:そう、まさに密林のジャングルの中では雑草は生きにくい。(楽天市場のネットショップの人たちが)「いいお客さんを増やしていきたい」というのと雑草が種を残すところが通じている気がするんです。そこの目的をブラさずに、自分のプレイスタイルや強みを活かした状態で、ちょっとチューニングを変えていく。
僕の周りでは「Eコマースの正解はこれです」というのがなく、多様なお店の商売スタイルが生まれてきている。これが(雑草と)「めっちゃ同じだな」と思いました。
稲垣:仲山さんが言われたことが、本当の「雑草魂」ですよね。
仲山:まさに。
稲垣:「歯を食いしばって何かをやる」じゃなくて。
仲山:逆に、雑草も立ち上がったほうが仕事をしているように見えるんだろうなと。
稲垣:がんばっている感じには見えますよね。例えば踏まれた雑草の成長はどこで見るか。僕らは「この草、丈がでかくなってきた」とどうしても高さで見がちじゃないですか。高さでは踏まれた雑草は成長していないように見えるんだけど、踏まれている雑草は(横への)長さを稼ぐわけですよね。「別に上に伸びなくていいじゃん。横に伸びていけばいいじゃん」と。
仲山:(笑)。
倉貫:なるほど。
稲垣:本当は成長しているんですよ。もしかしたら見る人によっては「いや、ぜんぜん上に伸びてこないし、伸びてないよな」と言うかもしれない。でも実は横に伸びているかもしれないし、もしかしたら根っこを生やして下に伸びているかもしれない。意外に雑草は見えないところの成長がバカにできなくて、なんなら地面の下に茎を伸ばしたりもしていますので。
仲山:そして環境がよくなると、上にびよーんって伸びる。
稲垣:うん、もうなんなら上に伸びなくてもいいですよね。別に上に伸びなきゃいけないのも、人間が決めたルールですからね。
仲山:確かに。
稲垣:最終的に種さえ残せばいいんだから、「いや、もう地べたでもいいんじゃないの?」と。最初から踏まれることを前提にしている雑草の中には、アリに花粉を運んでもらう進化を遂げている雑草があるんですよ。アリが味方なら、もう上に伸びないほうがいいですよね。
仲山:確かに。
倉貫:そうですよね。
稲垣:結局、そういう雑草にとっては地べたに楽園があるということです。光も十分当たりますしね。踏まれるところだったら、他の雑草や植物はありませんからね。「上に伸びなきゃいけない」というのがすでに人間の思い込みという。
仲山:(笑)。売上を伸ばさなければ。
稲垣:そう。
倉貫:なんか「常識を疑ってかかる」という感じがすごくおもしろい。
稲垣:そうですね。地面の下に花を咲かせる雑草もあるんですよ。
倉貫:へえ。
仲山:地面の下って? 地下?
稲垣:土の中に花を咲かせるんです。人は「この雑草は花が咲いてないよね」と思うかもしれないけど、ちゃんと花を咲かせて種を残しているし、なんなら一番安全なところで花を咲かせているんですよね。
倉貫:そのまま土の中に種が残るという。
稲垣:そう、そのまま残ります。もしそこがいい場所だったら、種を遠くへ撒かないほうがいいわけじゃないですか。「種を遠くへばら撒かなきゃいけない」もけっこう思い込みで、そこがいい場所ならただ子孫が継いでくれればいいわけですよね。雑草はそこがすごくて、僕らの思い込みをすべて裏切ってくるんですよね(笑)。
「そんなのあり得ないじゃん」と思っても、「別に種を残すためにベストな方法なら、それでいいじゃん」というのが、雑草のすごくおもしろいところですよね
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