2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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年商300億円超の企業から個人事業主まで、これまで1,200件超の経営改善を行ってきた経営心理士の藤田耕司氏。心の性質を実例に基づいて体系化した「経営心理学」の観点から、「仕事はできるが組織を衰退させる人」というテーマで講演を行いました。「人の役に立つ仕事がしたい」という理由で転職するも、新しい職場に不満を持つ人の事例をあげながら、仕事を変える前におすすめの“振り返り”のやり方を解説します。
藤田耕司氏(以下、藤田):「欲求不満型野心家」に対してどう対応するか。いろんな対応があるんですが、今日は基本的なところだけお伝えしたいと思います。
欲求不満型野心家とはいえ、実績を残している場合は評価しないわけにはいかない。ですので、まずは会社の方針として、組織の生産性を高めるのは「PM型」。これはPもMも強いという意味のPM型です。PM理論では、強い場合は大文字で表記します。
PもMも強いPM型の人が、組織の生産性を高める。ですので、PもMも強いタイプの人を高く評価する人事評価とする。この点、有能な欲求不満型野心家は、Pは強いけどMが弱い「Pm型」が多いので、M機能の重要性を繰り返し伝える。
ただ、欲求不満型野心家の方は承認欲求が強いので、すごくプライドは高いです。こういった人に説教をするような言い方をすると、ものすごく反発してきます。そういう状況にならないように、相手のプライドを立てながら話を進めることが大事になってきます。
じゃあ、どういう言い方をする必要があるか。まずは、P機能の高さを十分に認めるわけですね。例えば営業の成績がすごくいいとか、業務処理能力が高いとか。
そういったところを強く認めた上で、「あなたはM機能も十分に発揮する力がある。なので、今後はP機能だけではなくM機能にも意識を向けてもらいたい。そうすると、かなりすばらしい人材になっていくと思う。それだけの可能性がある」という伝え方をすることによって、ご本人のプライドを立てる。そういう伝え方が大事です。
藤田:「P」と「M」両方を重視する人事評価は、例えばPが50点満点、M5が0点満点という評価にしますと、いくらPだけが高くても50点しか取れないわけですね。あとの50点はMなので、Mもがんばらないと100点は取れないわけです。
こういうかたちでM機能を強化していく、あるいはM機能が低い人を昇進させないことで、組織の一体感を維持する。こういうキャリアの設計は、会社としてもすごく難しいところではありますが、例えば外資系の生命保険会社は上手にやっています。
どういうふうにキャリア設計しているかというと、外資系の生命保険会社は営業を重視する会社ですので、営業がすごく強いんですね。
営業マンのキャリアには2つのキャリアがありまして、1つが営業マンとしてずっとやっていくキャリア。基本的に部下を持たず、1人で営業をごりごりやって、とにかく営業成績を高めていくキャリア。もう1つは、マネージャーというかたちで部下を抱えて、自分はあまり営業をしないキャリア。
おもしろいのが、一般的にはマネージャーのようなキャリアのほうが偉いと思われがちですが、外資系の生命保険会社は別にマネージャーのほうが偉いというわけではないんです。プレイヤーとしてキャリアを歩む方、マネージャーとしてキャリアを歩む方は、別にどちらが偉いというわけでもない。ただ、得意・不得意があるだけ。
藤田:よくあるのは、営業でなかなか成果を伸ばせなかった方がマネージャーに転身をして、人を育てるところで力を発揮して、それによって本人の才能も開花する。こんなパターンが多いんです。
Pが強くてMが弱いタイプの方がうまく活躍できるように、プレイヤーとしてのみのキャリアも用意しているのが、外資系の生命保険会社です。
過去に、Pが強くてMが弱い人材に悩んだ会社では、思いきってこういう人事評価制度を採り入れた会社もあります。「いくらPが強くてもMが弱いとダメだよ」と、Mの強さをあらためて本人に伝えていく。伝える際には、プライドに配慮した伝え方をしていくんですね。
「ご自身に欲求不満型野心家の要素がないか?」というのは私の講座でお話しする内容なんですが、この話をすると「まさに自分がそうだった」という方がけっこう多いんです。
「自分はPのほうで仕事ができるから、十分組織には貢献している。だから少々ルールを破ろうがかまわんじゃないか」「部下にきつく当たろうが、自分は結果を残しているからかまわんじゃないか」と、そんなふうに思っている節があったという方が多いんです。
藤田:欲求不満型野心家の仕事の仕方を見直していくというところが、今は50代の中ですごく評価を得ております。と言うのも、私の知り合いの方で、50代の方に特化した転職支援をやっている方がおられるんです。
50代の方の転職理由として特に特徴的なのが、「次のキャリアは、自分のキャリアとしてはおそらく最後だ。最後のキャリアは人の役に立つ仕事がしたい、社会の役に立つ仕事がしたい」という理由で転職をされる方が多いんです。
「ここの会社だったら、きっと人の役に立つ仕事、社会の役に立つ仕事ができるだろう」と思って(いるので)、そういった会社を紹介するんですが、「『人の役に立つ仕事、社会の役に立つ仕事ができる』と言ったじゃないか。いざ入ってみたらそんな仕事はできない。話が違うぞ」とクレームが来ることが多いというんです。
よくよくそういった人たちのクレームを聞き、働き方を聞いて、何百人という方の面接をしてきた結果わかったのが、「人の役に立つ仕事がしたい、社会の役に立つ仕事がしたい」と言って転職する方の中で多いのが、今の会社で人の役に立つ仕事、社会の役に立つ働き方ができていないということなんです。
結局、どんな仕事であれ人の役に立っているんです。社会の役に立っているんです。人の役に立つような仕事の仕方、社会の役に立つような仕事の仕方ができてない人が、「そもそも仕事の内容が悪い」と言って、「だから人の役に立つ仕事ができる職場を紹介してくれ」と言っていると。
藤田:その中で、その方が転職支援の仕方を変えたんです。「人の役に立つ仕事、社会の役に立つ仕事がしたい」という方に対しては、「今、あなたがやっている仕事も人の役に立つ仕事であるはずだ。だから対価がもらえているんだ。あるいは何らかのかたちで社会の役に立っているはずだ」。
「にもかかわらず、人の役に立っている気がしない。社会の役に立っている気がしないのは仕事の内容が悪いのではなくて、あなたの働き方が悪いんだ。だから働き方を改めなさい。その上で転職を考えなさい」とレクチャーをすると言うんです。
「転職したい」と言っているのに、「転職する前に今の働き方を考え直せ」と指導しているというんです。もちろん、転職支援をしたら自分にもフィーが入ってくるので売上が立つ。それはそれでビジネスとしてはいいんだけれども、こういう人に限って転職支援をした後にクレームが来る。
そんなクレームが来るような仕事の仕方はしたくないんだということで、売上なんか得られなくてもけっこうで、まずはご自身の仕事の仕方を振り返っていただきたいと。つまり「What:どんな仕事をするか」以上に「Be:どう仕事をするか」が重要になる。
私の講座の中では「死の間際に人生を振り返った時、自分の人生に意義を感じる仕事の仕方とはどういった仕事の仕方ですか?」というディスカッションをしていただいているんです。
その内容を発表していただいて、会場で参加されている方には会場で発表していただき、Zoomで参加されている方にはチャットで入力をしていただき、発表内容を記録をして統計的に見ているんですが、「人の役に立つ仕事、社会の役に立つ仕事ができると、自分の人生に意義を感じる」という答えが圧倒的に多いです。
藤田:結局、自分の人生の満足度を高めるためには、「人の役に立てた、社会の役に立てた」という実感が得られるかどうかが大事であって、その実感を得るためには「どんな仕事をするか」ではなく「どう仕事をするか」が重要になる。
この点、欲求不満型野心家のような働き方だと、とにかく自分が認められたい。そして「自分はこれだけ結果を残してやっているんだから、十分組織の成長に貢献している」というかたちで、人にきつく当たるとか、あるいは会社の統率を乱すとか、組織の雰囲気を乱す。
そういった仕事の仕方をすると、結果として自分が人の役に立った感じとか、社会の役に立った感じが得られにくい。
ですので、影響力を振り回す生き方と、影響力があるからこそみんなのために動く生き方。死の間際に人生を振り返った時、どちらが満足度が高いかを受講生の方には振り返っていただくわけですが、「これで自分の働き方を変えました」という方はけっこうたくさんおられます。
ある方は「自分は営業成績が1番です。そして同期の中でも一番早く昇格しました。なので、自分は社内の中でのかなりイケてると思ってました。ところが、今の自分はまさに欲求不満型野心家でした。部下にはきつく当たる、会社のルールを破っても平然としている」。
「『だって自分が一番売っているんだから何が悪い』と、そんな態度で仕事をしている。でも、イケてると思っていた。自分がめちゃくちゃ恥ずかしくなりました」ということで、「M機能を重視しようと働き方を改めました」という方が何人もおられます。
藤田:自分の働き方に関して、またディスカッションの時間を設けたいと思います。ご自身に欲求不満型野心家の要素がないかを振り返ってください。また、今後の人生の満足度を高める上ではどういった働き方が大事かを話し合ってください。
「人生の満足度」に関しては、自由な発想で考えていただければと思います。欲求不満型野心家がどうのこうのは置いといて、自由な発想で話し合っていただければと思います。それでは、ディスカッションを始めてください。ではどうぞ。
(参加者のディスカッションが始まる)
参加者:すみません。私の部屋に誰もいなかったので、戻ってきちゃいました。
中村智昭氏(以下、中村):おかえりなさい。ありがとうございます。いらっしゃらないこともあると思いますので。今日のテーマはいろいろと考えますね、(笑)。
参加者:言葉がいちいち心に刺さるといいますか(笑)。
中村:刺さりますか。こちらの内容はいかがですか?
参加者:私が今、会社で取り組んでいることなんですが、おっしゃる通り管理職の方はMの機能の方がちょっと弱いのかなと思って。批判するということじゃなくて、どうやってサポートしてあげられたらいいんだろうと思って、ちょうど考えているところですね。サポート、できるのかな。
藤田:それは上司の方ですか?
参加者:直属の上司ではないんです。うちの課は雰囲気はいいんですが、他のところの話を聞くと「あぁ」って。
藤田:「あぁ」(笑)。なるほどですね。
参加者:ちょっと上の方と会っても、「今日はこの人に会ってすごくうれしい」「がんばろう」という気持ちにはあんまりならないというか。個別で話すとすごく楽しい方というか、しっかり考えを持っている方が多いんですが、やはりシャイなのかな。それが、うまくみなさんに見えてないような気がしていまして。
欲求不満型の野心家は、私も職場で出会ったことがあります(笑)。ちょっときつかったんですが、今思うとたぶん疲れていらっしゃる。相手もがんばっちゃうタイプだから、一番きつい時は周りもその人ががんばるのが当たり前と思ってしまって、「大丈夫?」って声を掛けないというか。素人のコメントなんですが。
(参加者のディスカッションが終わる)
藤田:いろんなご経験があるかと思うんですが、みなさんおかえりなさいませ。ありがとうございます。
ディスカッションしていただきましたが、ご自身の仕事の仕方に欲求不満型野心家の要素がないかどうかを振り返ることは、ご自身が、PもMも強い本当の意味で組織を成長させる人材に近づくきっかけになろうかと思います。
私の講座の受講生の方も、何人もの方がここに気付かれまして、「PとMの両方を強めていこう」というかたちで、ご自身の成長にさらに磨きをかけている。また、その両面から組織に対する成長・貢献を考えるようになると、働き方や見え方がずいぶん変わってきたという方が多いんです。
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