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『左ききのエレン』から学ぶ、天才になれなかった人が「何者か」になるまで。(トークセッション)(全3記事)

「1人の時間がない人は不幸だよなって思うな」 『左ききのエレン』作者が語る、自分の人生との向き合い方

「天才になれなかった全ての人へ」というキャッチコピーでおなじみの『左ききのエレン』。広告代理店出身で、自身もクリエイティブの世界を生きてきた作者のかっぴー氏をゲストに迎え、G’s ACADEMY学校長の山崎大助氏とトークセッションを行いました。本記事では「天才でなかったからこそ得ることができたもの」について、両氏が思いを明かします。

天才ではなかったから得られたもの

山崎大助氏(以下、山崎):「天才でなかったからこそ得ることができたもの」でいうと、僕が小さい時はけっこう器用だったなと思っていて。器用でなんでもできたんですが、じゃあなにかが得られたかっていうと、ほかのやつのほうがどんどんできるようになるんですよね。

最初は僕のほうがなんでもできるんですよ。だけど1ヶ月、2ヶ月くらいすると「あいつ下手くそだったのに、俺よりうまくなってる」と。

僕はすごく器用だからなんでもいけるはずなんだけど、なんであいつは不器用でできなかったはずなのにできるんだろう? というのに小学校の時に気づいて、小学生なりに観察してたんですよね。そうしたら、やはり努力がすごいんです。1つに対して一生懸命がんばってるなと。それで自分も努力するようになって。

人に負けないためには、なにかしらがんばらなきゃいけない時期はあるなと思っていて。すぐ抜かれちゃうくらいですから、そこが天才ではなかったってことですよね。

それに気づいて、何事も努力してやればなんでもなるとわかった。とにかく自分が楽しんで努力さえできれば、なんでもある程度できるようになることを知れたことが、得られたことですかね。

なんでも、「これ難しいかな。でも勉強してみよう」「それなりにできるようになるんだな」みたいな。だから、そもそも天才じゃなかったっていうところなんですが、努力すればなんでも得られることを知れたことくらいですかね。

成功を目指すからこそ、苦痛を伴うこともある

鈴木宣彦氏(以下、鈴木):努力を続けることも1つの才能だなとすごく思うんですが、それができる山崎先生なりのコツって何かあったりしますか?

山崎:そうですね。でも、そんなこと言いつつも結局、おもしろくないと思ったらやらないんですよね(笑)。なので努力できるものって、なにかしら自分が楽しめるもの、興味があるものなのかなと思います。

もしかしたらこの中には「成功したい」と思ってる方もいらっしゃると思います。もしそう思ってるのであれば、先ほどかっぴーさんが言ってた「トップを目指すとなると嫌なこともやらなきゃいけない」とか、本当に苦痛だと思うものも出てくるかもしれない。

だけどやりきれるとしたら、やはり自分が本当にやりたいこと、楽しめるものじゃないとできないだろうなとは思ってます。

鈴木:なるほど。「楽しむこと」というのが、やはりキーワードになってくるんですかね。ありがとうございます。かっぴーさん、こちらの質問はいかがでしょうか? そもそも天才状態かもしれないんですが(笑)。

かっぴー氏(以下、かっぴー):いやいや(笑)。でも、やはり考え続けることができたのは、天才という状態になってなかったからだと思うんですよね。「どうしたらその状態になるか」という状態で見て、自分よりうまくいってるものを見て考えるっていうふうにやっていくと、キリがないからけっこうずっといけるんですよね。

見る角度を変えれば、天才にも凡人にもなれる

かっぴー:さっき「段階を変えた」と言いましたが、「日本という凡人の塊が、どうしたら天才の塊である韓国に勝てるのか」というふうに考えるとキリがないじゃないですか。

じゃあ、僕が10年後にそれを達成したとするとしたら、今度はアジアっていう単位で考えようとか、単位を変えていけばいくらでもできるかもしれない。だから、見る水準を変えたら自分はいくらでも天才になれるし、凡人にもなれるんですよ。

僕が「あんまりこの人うまくいかねぇだろうな」と思ってる人は、「え、そこで自分を天才と判断する?」とか、調子に乗るのが早いみたいな。それはもうそこで終わるんだな、という感じがするし。

だからやはり、段階があるって思ってる。井の中の蛙ですよね。1個井を出たら次の井がある世界になってるので、どこでも満足できるし、どこでも不満になれるんですよ。それをどうコントロールするかっていうことかな。

……まぁ、こういうことも全部、自分が恵まれなかったから考えていたことで、常に考えて納得する癖をつけられたのが一番良かったんじゃないかなと思います。

鈴木:なるほど。

「1人の時間がない人は不幸だよなって思うな」

鈴木:お話を聞いていて、かっぴーさんは問いを作ることがすごくうまいなと思ったんですが、その問いってふだんの自分の感情というか、不満や悔しさとかから生まれてくるんですかね。どういったところからそういった問いが次々生まれてくるのかなと、ちょっと気になりました。

かっぴー:逆にみんな考えないですか? みんな考えてそうやって生きてると思ってるので。でも、これは本当に笑われるかもしれないけど、もしかしたら俺はあんまり友だちが多くないから良かったのかなと思って(笑)。

友だちはいるけどさ、「この日、空いてる?」みたいにラフに会ってる仲良い友だちは10人もいないぐらいです。だから、友だちが多い後輩とかちょっと心配になるもん。「考える時間あんの?」「ずっと人といるじゃん」みたいな。

ちょっと陰キャのひがみみたいに聞こえるかもしれないけど、1人の時間がない人は不幸だよなって思うな。1人の時間を恐れてる人、というか。

その後輩は「人と一緒にいる自分が好きなんですよね」と言ってるけど、依存なんじゃないかなって俺はけっこう心配してる。自分1人で考える時間とか、作る時間があったほうがいいんじゃないって俺は思うけど。

人と会うことで思うこともあるだろうし、人それぞれのやり方あると思うけど、とにかくぼーっとしてたら一瞬で人生は終わるので、人に会うにせよ、ぼーっとしないのが大事なんじゃないかという気はしますね。

「妄想」を漫画に落とし込んだらビジネスになった

鈴木:考えられたことを人に伝えたりとか、そういうことはけっこうされるんですか? それとも1人で考えて、結論をある程度自分の中で留めておく。

かっぴー:それが漫画ですね。漫画という場が手に入ったので最高って感じです。mixiとかの時代は今みたいな話をmixiに書いてたから、普通にキモいですよね(笑)。

鈴木:いやいや、そんなことはないです(笑)。

かっぴー:mixiの足あとを見てさ、「あいつは俺のこの思想を読んだ」みたいな(笑)。

(会場笑)

かっぴー:基本、けっこうイタいやつだから。ずっと悶々と考えて「こういうことなんじゃないか」みたいな。それがちゃんとビジネスになってるから、こんなに幸せなことはないですよね。

Twitterがお金をもらえるようになったことで盛り上がってますけど、そんな感じで、俺が妄想で思ってたことを漫画にしたらビジネスになってるっていう感じなので。だから当然だけど、苦だと思ったことは1回もないですね。「背景描くのめんどくせぇな」と思ったことはいっぱいあるけど(笑)。

鈴木:(笑)。なるほど。

「照らす側の人生」という選択肢もある

鈴木:そういう意味では山崎先生も、先ほど「自分が考えたことを世の中にアウトプットして反応を見る」というお話もありましたが、ちょっと近しい部分があるんですかね?

山崎:ありますね。かっぴーさんの話の中でいろいろキーワードが出てきて、確かにそうだなと。例えば、その時はやってるものとうまく掛け合わせてというか、その時代に合ったものじゃないと成功してなかっただろうし。

例えば、さっきからこれがずっと気になってたんですが「照らす側の人生だってあるんだ」というセリフ。僕はぜんぜん向いてないと思ってたんですよね。

たまたまここの代表の児玉(浩康)さんと会って、「俺はエンジニアに向いてないけど、教えるほうは向いてるな」みたいなのはどこかにあったんです。

うちの学校からスタートアップはたくさん出てるんですが、自分ができなかったことをその人たちにやってほしいなと。その人たちがまさに光というか、僕らの夢というか、叶えてくれる人たちになってくれたらうれしいなと思っています。

『左ききのエレン』は、自分のために描き始めた漫画

山崎:僕は今、まさにこの「照らす側の人生」に来てる感じがありますね。このキーワード、「そうだな」と思ってさっきからずっと気になってました。そういう人生もあって、それで楽しめてるから今はできてるのかなと。

鈴木:これも僕が好きなシーンをピックアップさせていただいたんですが、広告のお仕事って主役はクライアントさんで、広告は照らす側というか。クライアントさんの商品が売れたりとか、いかに知ってもらえるかを考え続けるお仕事だったりします。

かっぴーさん、このセリフも広告の経験がすごく生きて思いついたセリフだったりしますか? それとも、人生的にこういうことを大事にしてるとか。

かっぴー:そうですね……けっこう前だからなぁ。このシーンよりももっと前の、一番最初は神谷雄介と朝倉光一が居酒屋で話してるシーンです。

あれを描いた時にどう思ってたかですが、当時の俺はもう「天才には一生なれない」って知るために描き始めたから、自分のために描いたんじゃないかなって思いますけどね。今思ったらゾッとしますけど、人を照らすなんて、俺がそんな器用なことができるわけない。

鈴木:なるほど、ありがとうございます。

夢中になれるものを見つけた人が「天才」になれる

鈴木:お二人のお話を聞いていて、ぜんぜん違う思考を持ちつつも、世の中へアウトプットしながら、自分の伝えたいことや楽しみ、好きなことをしっかり表現しているところが、共通点としてすごくあったなと思っております。

そろそろお時間なので、最後に会場および視聴者のみなさまへメッセージをお願いできればと思います。まず、山崎先生からお願いできますか。

山崎:かっぴーさんがおっしゃっていたように、たぶんみなさんもよく自分のことを考えていると思うんですよね。仕事が終わって家に帰って、夜な夜な「俺、これからどうすんだろう」とか。

その時に、「正直になってほしい」というのはきれいな言い方なんですが、本当に自分がやりたいもののためにやるべきだなと思うんですよね。

我慢して良いことはなにもないですし、向き合えるものが見つかった人が天才状態になると思うので。ふだんからいろんなことを考えつつ、「これをやってみたいな」てやってみればいいじゃないですかと。

ちょっとやってみて、楽しければそれを続けてみればいいじゃないですか。もしかしたら、天才状態になれるかもしれない。そういったものに常にアンテナ張ってるのは大事だなと、今日の話をしながら気づけたのが良かったなと思います。みなさん、ぜひがんばってください。

鈴木:ありがとうございます。

SNSを閉じて、暇さえあればとにかく作品を見る

鈴木:では、かっぴーさんお願いいたします。

かっぴー:僕が一番好きな韓国ドラマは……。

(会場笑)

かっぴー:『スタートアップ』っていう。それこそ業種的に見た人もいるかもしれないけど、『スタートアップ』はめちゃくちゃおもしろいので。ちょっと長いけど、おもしろくてあっという間に見れると思う。

どうしたらあれを漫画でできるかなとか、なんで日本からあれが生まれないんだろうと思いながら、ずっと『スタートアップ』を見てるけど、1話の終わりぐらいからおもしろさが爆発するのよ。1話の前半はタルいんで、ちょっとそこだけ気をつけてほしいんですが。

鈴木:そこを乗り越えれば(笑)。

かっぴー:1話の前半は「これ、誰の何の話よ?」みたいな感じ。だけどやっぱ考えてるね。とにかくうまい。1話の最後には……何の話してんだ、これ(笑)。1話の前半を乗り越えたらあとはあっという間なので。今日は『スタートアップ』を布教するために来ました。

(会場笑)

鈴木:ありがとうございます(笑)。

かっぴー:まぁ見てみてください。いかに日本のコンテンツが遅れてるかっていうのも思うかもしれないし。

暇さえあれば何か見たほうがいいと思うんですよね。若い子と話してると、クソみたいなことに時間を使ってるなと思うので。まずはTwitter(現X)とYouTubeのアプリを消して、NetflixとAmazonプライムを契約してください。

(会場笑)

鈴木:みなさま、よろしくお願いいたします。

かっぴー:よろしくお願いします、ありがとうございました。

「どういう人になりたいか」をもっと具体的に描く

鈴木:「天才になれない」と悩んでる方々に、もう一度最後にメッセージがあれば。

かっぴー:やり直し! ダメだった、通らなかった(笑)。

(会場笑)

かっぴー:でも、最後に言ったことがけっこう本当です。「どうしたら集中できますか?」「どうしたら努力できますか?」って聞かれるんだけど、その話をすると「時間は有限だよ」「みんな同じだよ、平等だよ」という話も、もう100万回みんなしてると思うんだけど。

じゃあ、なんで時間の使い方が人によってこんなに違うんだって思った時に、マジで冗談じゃなくて、YouTubeとかを見てないからだと思うんですよね。俺も作業をする時にBGM的にYouTubeを見てるけど、たぶん落合陽一はYouTube見ないでしょ、知らないけど(笑)。

俺は別にYouTube見ていいと思うんだけど、落合陽一とかそういうすごい人になりたいんだったら、見るなよって思う。俺は見てるけど。

(会場笑)

かっぴー:だから「どれぐらいの、どういう人になりたいか」っていうのを、漠然とじゃなくてもうちょっと具体的に思ったほうが、たぶん楽だと思うな。

「どこを目指すかによって、人生の難易度は変わる」

かっぴー:みんながみんな、本当の本当にすごい人を目指したら苦しくなるだろうし、「これぐらいの人」と言ったらちょっとナメてる感じがするけど、別に身近な人でいいし、「この先輩みたいになりたい」ぐらいでたぶんいいと思っていて。

みんながみんな、テレビに出てるような人に憧れるから意味わからなくなるんだろうなって思うから、「この人みたいになりたい」と思ってる人が、本当にベンチマークなのかは考えてもいいんじゃないかなと思って。

その人が本当になりたい像で、本当にその人を目指してるんだったら、マジで時間の使い方はバキバキに気をつけたほうがいいと思う。本当に、こんなクソみたいなトークイベント聞いてる場合じゃない(笑)。

(会場笑)

かっぴー:このトークイベント聞いてるレベルの人はたぶん……。今のは冗談だけど、それぐらい時間って大事だと思ってるから、なるべくヒントになることを本音で言っときたいなって。

鈴木:ありがとうございます。

かっぴー:だから本当に、「俺は世界を目指すから、マジかっぴーのトークイベント無駄だったわ」って、あとで言っていいから。

(会場笑)

かっぴー:「かっぴーなんか通過点にすぎない」みたいな気概で過ごしてほしいなと思いますよ。どこを目指すかによって、人生の難易度は変わる。

山崎:とても気づけた良いイベントでしたね(笑)。

鈴木:そうですね(笑)。ありがとうございました。では山崎先生、かっぴーさん、本当にありがとうございました。

かっぴー・山崎:ありがとうございました。

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