2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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倉貫義人氏(以下、倉貫):倉貫です。
仲山進也氏(以下、仲山):仲山です。
倉貫:『ザッソウラジオ』は、倉貫と「がくちょ」こと仲山さんで、僕たちの知り合いをゲストにお呼びして、雑な相談の「ザッソウ」をしながらゆるくおしゃべりしていくポッドキャストです。
7月はテーマトークということで、老荘思想についてお話しすることになっております。老荘思想のゲストはクラシコムの青木さんです。よろしくお願いします。
青木耕平氏(以下、青木):よろしくお願いします。最近、老荘思想を知って、おもしろいなと思っているにわかファンの代表でまいりました。
倉貫・仲山:(笑)。よろしくお願いします。
倉貫:前回(第1回)は老子・荘子の入口のところと、孔子との違いという全体的なお話でした。前回は荘子についてのお話が出てこなかったので、少しだけ(説明します)。
荘子の最初の入口のお話をする時に、荘子は本当の人物かもわからないし、実在するかどうかも怪しいくらいなんです。エピソードがいくつかある中で、荘子を教えてくれたのはがくちょなんです。
倉貫:荘子も著名な諸子百家になったので、いろんな国から「うちで軍師をやってくれないか」「参謀をやってくれないか」「宰相をやってくれないか」といろんな話が来た中で、「なんだったら一番いいポジションを用意するので、うちの取締役になってくれませんか?」という誘いがあったわけです。
「名誉取締役」というすごい肩書がつくんだけど、荘子は「僕はそういうのはちょっと」と話していて。
「牛を見てください。着飾ってお祭りに使われる牛は、祭り上げられて立派な格好をしているけど、最後には食べられるのか・殺されるのかということになってしまいますよね。だったら僕は泥の中で遊んでいたいです」と言って、宰相の地位を辞退した。それを聞いて、「あれ、これってがくちょじゃね?」と思いました。
(一同笑)
倉貫:生まれ変わったのかなと(笑)。(荘子は)そういう人なんですよね。
仲山::それって、「定例会議とかいっぱいあるんですよね?」みたいなことですよね(笑)。
(一同笑)
倉貫:「定例会議に行くくらいだったら、僕はエア社員でいいです」みたいな。
青木:(笑)。
仲山:そうですね。
仲山:老子も荘子も、本当にいたかどうかはわからない位置づけなんですが、老子のほうは抽象的なんですよね。
表現が詩っぽいというかふわっとしていて、言っていることがさっぱりわからない。そもそも文字数がぜんぜん違っていて、老子は5,000語くらいで、荘子は6万5,000語くらいあるらしいです。
倉貫:すごい。
仲山:基本的に荘子は、「老子の言っていることが抽象的すぎてぜんぜん伝わらないから、わかりやすく伝わりやすいストーリーにしていろいろ説明してみよう」といって書かれている感じですよね。寓話が多いです。
青木:寓話ですよね。
倉貫:(荘子はまるで)『アオアシに学ぶ』ですよね。
仲山:(笑)。そうですね
青木:逆に僕は、老子がめちゃくちゃ読みやすかったです。めちゃくちゃ短いじゃん。
仲山:話の一つひとつが短いですよね。
青木:そうそう。だから僕にとっては、圧倒的に老子のほうが読みやすくてわかりやすくて。
青木:老子と荘子の大きな違いかなと思うのは、実は老子って統治論じゃないですか。
倉貫:国の話ですね。
青木:国の話というか、「どう統治するか」ということですよね。
仲山:「王様はこうしたほうがいいよ」という話がけっこう多いですよね。
青木:多い。だけど荘子は、どちらかと言うと個の認識というか、唯識論にもちょっと近い。中国仏教や禅に与えた影響がすごく大きいと言われていますが、個人の認識にけっこうアプローチしている。
だから、「不確実な世の中をどう見るか」「どう認識するか」「すべては等しい」みたいなこともそうです。荘子は発展系というか、統治論のようなものを広げて、ほぼすべての人に適用できるように広げた感じがありますね。
仲山:「働き方」みたいなことですね。
青木:そうです。「生き方」みたいなことです。
倉貫:「経営論」じゃなくて「働き方」にしたほうが読者が増える、みたいな。羨ましい(笑)。
(一同笑)
青木:それはすごくあるかも。
仲山:それこそ(僕の著書の)『「組織のネコ」という働き方』でいうと、イヌ的な働き方は儒家的じゃないですか。
青木:確かに(笑)。
仲山:ネコは「自由」がキーワードなので、老荘思想ですよね。
倉貫:そうですね。イヌ的なのは勤勉ですよね。
青木:儒家と道家の結節点はどこなのかなと考えていた時に、「三十にして立つ」という有名な言葉があるじゃないですか。
倉貫:「四十にして惑わず」みたいな。
青木:あれはずっと(続きが)あって、「七十にして矩を踰(こ)えず」というので一応終わるじゃないですか。
「七十にして矩を踰えず」とは、70歳になったら、もはや自分の心のままに振る舞っても道を外れなくなる、矩を踰えなくなるという意味だけど、道家の世界は最初からそれを前提としています。
仲山:最初からそうですよね。
倉貫:なるほど。
青木:第1回目の最後に倉貫さんが言ってくれた、「最初からそれでいいんだっけ問題」みたいなところに、考え方のおもしろいポイントがあると思います。
倉貫:それはちょっと知りたいですね。「不惑」「五十にして天命を知る」みたいな話は孔子が言っているんですよね。要は、立心出世、努力して立派になって、最後は自由気ままで生きられるというところに……「70歳か」みたいな。
(一同笑)
倉貫:「当時、70歳まで生きた人はそんなにいないぞ」みたいな。
青木:そうです。
倉貫:そういうところに対して、いつでも無為自然でいる。
青木:無為自然と絶対に関係しているのは、道が見えている・道を把握しているということです。「道」を老荘的に言うと、世の理というか、大きい流れ、宇宙の法則みたいなことだと思うんですが、それが見えている。
それが普通に見えていたら、そのとおり道から外れないように行く。そうすれば、何かを殊更にがんばらなくても、大きい流れに合っているからいろんなことがうまくいく。たぶん、そういう考え方なんだと思っています。
青木:老荘的に言うと、この「道」が見えているかどうかは超重要じゃないですか。
倉貫:なるほど。
仲山:そもそも儒家的には、どちらかと言うと「道」は、人の行動規範、行為規範、社会規範みたいなものを指しているから、道という言葉の意味自体がぜんぜん違う感じですよね。
青木:そうですよね。
仲山:人の行為規範をちゃんとやっていくと、70歳になったら身についているぞという話と、もともと行為規範のような「仁義礼智」がある。
人が自分の思いどおりに(相手を)コントロールしようとしたり、喧嘩したり、本来のあり方と違うような振る舞いをして世の中がうまくいかない状態を、なんとかピシッとさせるために「仁義礼智が大事だぞ」と言っている感じじゃないですか。
青木:そうなんですよね。
仲山:だから、「最初から何もしなけりゃうまくいくのにな」というのが道家的な考え方ですよね。
青木:老子の中で、僕がすごくハッとさせられたことがあります。彼は「みんなに道が見えていて、社会が徳のある状態であれば一番いいんだけど、それが失われるからこそ、殊更に『仁』と言われるようになる」と書いています。
「仁」というのは、みんなのためにとか、家族のためにとか、国のためにとか、慈愛や博愛みたいなことですよね。
倉貫:そういうスローガンが必要になるわけですね。
青木:そうです。そういう愛情の深さや哀れみ深さを動機付けに、行動を正しくすることが求められる。その慈愛も失われると、今度は「正義」が殊更に言われるようになる。「正義」さえも失われたら、マナーや決まり事といった「礼」しかない、というようなことが書かれています。
だから、「仁」とか「義」とか「礼」とか、儒教の中で孔子がまさに徳としてあげていることって、実は老子が言う本当の徳は「道が見えている」こと。道が見えていて、そこから外れない行動が自然と取れていることが徳のある状態だと言っています。
仲山:自然と調和しているということですね。
青木:調和しなくなると、「仁」や「義」や「礼」が出てくる。これって全部、人間が頭で考えたことなんですよね。人間が生み出した概念です。
仲山:そうですね。
青木:でも実は「徳」のところだけはすごくフィジカルな感覚なんですよ。身体感覚にフォーカスするのは、老荘の1つの特徴かなと思っています。
他のところでも、法律をすごく作るから詐欺師のようなヤツが出てきたり、決め事が多いから社会が乱れるということも、人間が個々で考えたというより、身体感覚でその道を感じられている状態って大事だよねということです。
倉貫:今の話を聞いていて、要は「仁」「義」「礼」とかを整備していかないといけないと思ったんですよね。
「仁」があったら「義」はいらないし、「義」があったら「礼」はいらないけど、放っておくとどんどん悪いヤツが出てくるから、ルールを作らなきゃいけないという話になっていく。
その裏側にあるのが拡大思想なのか、それを確実にしようとすることなのか、相手に勝とうとすることなのか。要は、経済を拡大することなのか。
現代社会でも、何のために稼いでいるのかわからなくなる人っていますよね。僕もめちゃくちゃ働いていた時に、たまにわからなくなったことがあります。要は、めちゃくちゃお金を稼ぐんだけど、ストレス発散のために稼いだお金でいっぱい物を買う。
(一同笑)
倉貫:働かなかったらお金も使わなかったのに、無理してがんばったことを無理して解消する。そういうエネルギーロスがめちゃくちゃ起きているのが立身出世・統治拡大だから、「仁」「義」「礼」をやらなきゃいけなくなる。
そういうことって、片方だけなくなったら変な感じがします。最初からどちらもなければずっと幸せ、ということだと思います。
倉貫:よく言う、ブラジルのおじいさんの話があって。(そのおじいさんは)魚を釣るのがめちゃくちゃうまいから、ビジネスマンが来て「これをビジネスにしませんか?」と言いました。
「いいじゃないか。竿を2本にして船を買って、どんどん魚を釣ったら何ができるんだ?」と聞いたら、「隠居して好きな魚釣りができますよ」と言われて、「今やっとるわ」と言った。
仲山・青木:(笑)。
倉貫:今、話を聞いていてそんなことを思いました。
仲山:活動自体が地球に優しくないですよね。地球に厳しいし、資源を浪費している(笑)。
倉貫:そうです。無理をするためのエネルギーを、無理なもので解決している感じはあります。
会社で言うと、僕らの会社はあまりルールがないと言っていて。自然というか、わりと自由にさせている。「性善説だ」とか言われているんだけど、世の中にはめちゃくちゃ悪いヤツがいっぱいいると思うので、(自社では)採用にめちゃくちゃ時間をかけています。
採用にコストをかけることで後のコストを減らすというか、どこにコストをかけているの? という話にも通じるなと思って聞いていました。
青木:確かに。
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