CLOSE

『転職の技法』出版記念講演― ちょいスラ転職を用いた転職・就職支援とは ―(全4記事)

転職で大事なのは“3つのステップ”の順番を間違えないこと 年代・フェーズ別に見る「Will」「Can」「Must」の考え方

社会人生活20年間で10回の転職を経験し、現在はキャリアコンサルタントとして活動する森田昇氏。著書『年収300万円から脱出する「転職の技法」』の内容をもとに、転職活動を成功させるノウハウを解説します。本記事では、年代別で異なる“転職のステップ”を解説します。

20代が転職する時のポイント

森田昇氏:では、「順番を間違えない、天職の輪①」にいきましょう。今回はあくまでも転職の本なので、転職相談と限定してしまいますが、転職相談を受ける時には、相談者の年代によって、何を身につけているのか・身につけていないかが分かれてきます。

20代の方であれば、会社の中で「Must→Can→Will」の順番で教育されています。ちなみに「Must」は、「求められること」「必要とされること」という言い方をしています。

やらなければならないことは、「Must」じゃなくて「May」。なので、この3つの輪の真ん中の重なりが、「やらなければならないこと」なんじゃないのかと私は思っています。

転職で考えると、求められることは「求人票に書かれたこと」ですよね。(アドバイスとしては)「その会社の求人を見なさいよ」になりますが、20代は兎にも角にも仕事を覚えるために、会社側から求められることをやらなければいけない。

求められたことをやっていくうちにできるようになっていき、できるようになって自分の裁量が増えていくことで、「やっていってもいいな」という気持ちになっていく。なので、「Must」と「Can」が先行して、徐々に「Will」が増えていくのが標準的な20代です。守破離でも説明できます。

30代の転職は、20代とはステップが変わる

あえて「標準的」と言ってしまいましたが、標準的な生き方をしている方々だと、「この仕事に就きたいから」「私はこういう人生を歩みたいので、そのためにこの会社に入りました」は少ないです。

キャリアプランの上の「キャリアビジョン」「キャリアゴール」「パーパス」という言い方もしますが、そういう志を持って就職や転職をしている方はかなり少ないです。ですので、就職したら何をやるのかといったら、まずいったんは求められること・与えられたことになります。

それらができるようになってくると、「この会社にいると実力を発揮できるな」「仕事ができるって楽しいな」となって、その会社でキャリアを歩んでいく・作っていく。そんな方がすごく多いです。だから標準的と言っています。

これが30代になると若干順番が変わって、できることが増えていくので今度は逆(Can→Must→Will)になっていきます。できることが求められてくるので、どんどん仕事が広がっていく。そうすると、ますます仕事が楽しくなっていくのが30代の動きです。守破離の後半ですね。

40代以降に発生する「中年の葛藤」

これが40代以降だと、どえらい逆転現象が起きてしまいます。会社が仕事を与えるのではなくて、「自分で生み出す」になるんですね。特に管理職になるとそうなってきます。「キャリアを積んでいるんだから、与えられた仕事じゃなくて自分で考えて動け」と。

なんとここで、サラリーマン人生の中で初めて「やりたいことを考えろ」が出るんです。このギャップに苦しむんですね。中年の葛藤です。

40代から50代、この年代はちょうど氷河期世代ですから、苦労して入った会社なのに教育から放り出されて、「やりたいことを考えろ」と言われて、まさに今あたふたしています。これは恐ろしいですよね。

キャリア自律という言葉がありますが、日本の会社はキャリアの主導権を企業に握られている方が大半です。だけど、なんだかんだそこそこ楽しく働いているんです。すごく仕事を楽しんでいるわけではないけど、居酒屋で愚痴れば解消するぐらいの不満しかない。

業務命令、異動、ジョブローテーションも「飽きがこなくていいよね」「新しい人と出会いがあるからいいじゃない」「いろんな仕事に巡り合って成長できるよね」と、プラスに捉える。そういった人たちに「キャリア自律をしなさいよ」「キャリアを自分の手に取り戻すんだ」と頭ごなしに言っても、ぜんぜん響かないです。

日本の企業人、大企業や中小企業に関わらずこういった方が大多数です。日本人はキャリアにすごく受け身です。受け身をどう変えていくかが今後の私たちの課題にもなっていますし、企業の課題にもなってきています。

年代ごとに異なる、転職のステップ

受け身のキャリア観を変えない限り転職は成功しません。20代、30代は転職で勝手に評価されるんですよ。教育されてきているし、必要なものを得られているから。

しかし、40代以降は立場も変わってくるので、「Will」が求められすぎて、「Can」と「Must」がちっちゃくなって、できることが減っていくんです。

今までの立場が変わる。一番よくあるのは、現場のプレイヤーから管理職になるといったものですが、そうするとプレイヤーとしてできることがどんどん減っていくので、それまでのキャリア資本が目減りしてしまうんです。資産として残っていかないんです。転職で評価されなくなるんですね。

本人は気づけなくなっていきますから、プレイヤーではないからこそできることや、スキルをポータブルスキルとして私たちキャリアコンサルタントが見つけなきゃいけないんです。「年代別で(求められるスキルの)順番を間違えてはいけないよ」というのが、天職の輪の使い方です。

変化対応力が鍛えられると、仕事がおもしろくなる

みなさん、チャットありがとうございます。(視聴者コメントで)「私は20代から40代へ飛んだような気がします。転職はしていないですが、部署異動が多く、20代のステップが長かったような気がします。30代のステップや時間が短かったかも」。そういった会社もありますよね。

部署異動が多くても対応しているのは、変化に対応する力がすごくあるんだなと思います。すごく鍛えられますよね。鍛えられると、会社がおもしろくなったり、仕事がおもしろくなっていくので、「外に飛び出そう」という気持ちはどんどんなくなっていきます。

労働移動も起きなくなっていきます。それは悪いことなのかというと、そんなことはなくて。企業にとってはいいことなんですよ。ただ、それを悪いことだと決めつけてしまいがちなのが私たちキャリアコンサルタントなので、これは気を付けなきゃいけない。

もし、「それってキャリア自律と言えるの?」みたいに思う方がいるのであれば、今話した日本の社会構造を知る必要がある。私たちがキャリアコンサルティングをする時に、そういった構造も知っておかないと、変なフィルター・価値観にもとづいてセッションしてしまう可能性があります。

でも(今日の参加者は)そのフィルターを外しているみなさんですから、そんなことはないですよね。

お金持ちだからといって、幸せな人生を歩めるとは限らない

では、また質問です。みなさん、こんなことを言われたらどう思いますか? 「今よりもお金持ちになりたいんです」「お金がないと自分がやりたいことがなかなかできないので、できる分は欲しいな」と言われたら、どう受け答えしますか? 私はこれを常に考えています。

(視聴者コメントで)「どのぐらいの収入をお望みですか?」。そうですよね。「年収1,000万円になりたいんです」と言われても、年収1,000万円までいける日本の会社員って何パーセントいるか知っていますか? 5パーセントほどです。しかも男女差が激しくて、男性が6パーセント、女性が3パーセントちょいなんですね。

「わかります、私もです」。賛同したくなりますよね。「どのぐらいを『お金持ち』と考えていますか?」。なるほど、「どれぐらいで満たされるんですか?」ということですね。

「そのために、あなたはどんなスキルをお持ちですか」。お金持ちになるためのスキルは私もすごく知りたいです。とりあえず「『金持ち父さん貧乏父さん』を読んでこい」みたいなこと言いますかね。

「お金持ちになるとは、どんな状態を意味しますか?」。確かに、お金を持っているから豊かになるわけではないんですよね。この場合の「豊か」というのは、精神的な話です。

お金を得られたからといって、裕福な人生や幸せな人生を歩めるとはまったく限らない。日本の調査でも、年収700万円から800万円ぐらいまでが一番幸福度が高いと言われていて、そこから上に行っても満足度が上がらないといった結果が出ています。いろいろと(コメントを)ありがとうございます。

雇用されている限りお金持ちにはなれない

これは情報として知っておいていただけるとすごくうれしいんですが、お金持ちになる順番はこれです。「順番を間違えない、天職の輪②」。みなさんもご存知のとおり、同じ会社に長く勤めている限りはお金持ちになれませんし、言ってしまえば、雇用されている限りお金持ちにはなれないんです。

この場合の「お金持ち」というのは、年収2,000万円以上にしましょうか。社長じゃなくて雇用されている側で、年収2,000万円以上稼げる会社は本当にごく一部ですよね。普通の人は副業するしかないんですよ。

副業から起業につなげ、そして稼いだお金を投資する。これがお金持ちになる順番ですが、副業や起業や投資をする前に、いったんそれらをできるぐらいの時間的、金銭的な猶予と、なによりも労力の3つを確保するためには、転職しないといけないんです。

今、ホワイト企業にお勤めの方で、収入に困っていないし、時間もあるし、やる気もあるのでしたら、今すぐ副業を始めましょう。サラリーマンという身分を活かしてお金を稼いでいけばいい。

副業の比率が大きくなっていけば、それをメインに起業する、もしくはパラレルという意味での「複業」にしていけばいい。稼いだお金を投資することによって、お金がお金を生み出していくようにもしていく。

副業は「やりたい気持ち」が強くないと続かない

『金持ち父さん貧乏父さん』を書いたロバート・キヨサキさんは、「雇用される側から飛び出していき、最終的には投資家になるのがお金持ちへの正しいルートだよ」と言っていました。

この順番を天職の輪で説明します。副業ルートとして副業したい方は「やりたいことから考えよう」です。メインの仕事があるのにサブの仕事をやるとなったら、時間の切り売りではいけないですよね。

「お金持ちになりたいから、仕事が終わったあとにコンビニでバイトします」と言われたら、私は止めます。疲れるだけですからね。「コンビニのバイトを心の底からやりたいんです」だったら止めませんけど、「お金を得るためだけに副業をやるんです」と言うんだったら、本業に集中しなさいよ、です。

ですので、副業だと「Will→Can→Must」で考えなきゃいけません。まず、やりたい気持ちが強いことじゃないと続かないです、副業ですから。また、本業でやっている人との競争にもなってくるので、やりたくないと勝てないです。もちろん「できること」も必要です。

最後は市場があるかどうかなので、「求められること」になるんですが、副業なので市場がどうこうよりも、まずはやりたい気持ちから始めましょう、です。副業を考えている方が相談に来た場合には、「この3つの順番で考えてみませんか?」とアドバイスするのがいいのかもしれません。

起業は“求められること+自分ができること”で基盤を作る

一方で、私が昔これを知らずに痛い目にあったのが起業ルートです。起業もまた順番が変わって、「Must→Can→Will」なんです。求められること、市場のニーズがないことをやろうとしても売れないからです。まずは市場があることをやる。

求められること、かつ自分ができることで経済的基盤を作りながら、やりたいエッセンスを入れていく。最終的に「やりたい」をどんどん大きくしていって、「Can」と「Must」がなくなっていけばいい。そうすると、「やりたいことだけやっています」という状態になります。

でも、そこに至るまでには「Can」と「Must」は避けられないんです。それを避けることができた人間は、私が知る限りいないです。

「今はやりたいことだけやっています」と話している社長とかもいますけど、それはCanとMustをやりきったからそうなったんです。やりたいことをやれるようにするためには、まずはやりたくないことでもやらなきゃいけない。

転職において大事なことは「Can」一択

転職ルートも、副業や起業とは順番が変わってきます。「転職はCan一択だ」と、私は何度も言っていますが、私たちの市場価値は経験、知識、スキル、ノウハウ、強みや弱みで評価されるので「Can」一択なんですよ。

「いやいや。でもそうしたら、やりたい仕事に就くという意味での転職はどうなんだ。『Will』っていらないのか?」と言われるんですが、年収を上げたい、待遇をよくしたい、ブラック企業から脱出したいというのであれば「Will」はいらなくて、「Can」だけで十分です。

こう言い切るから「極端だ」って言われるんですが、実際に私もそうでしたし、評価されるのはそこだからです。中途入社の転職組ですから。

もちろん、「がんばります。この仕事がどうしてもやりたいんです」という「Will」を評価する会社もありますが、大多数の会社は「何ができるんですか?」という「Can」しか見てこないです。

「Must」が一番後なのは、求人票に書いてあることだからです。「求人票、ちゃんと読んだ?」と聞かれて、「読みました」「私はその求めに応じられます」と面接時に言うだけです。なので、転職で大事なのは「Can」一択です。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 面接で「後輩を指導できなさそう」と思われる人の伝え方 歳を重ねるほど重視される経験の「ノウハウ化」

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!