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VUCAの時代のリーダーシップとマネジメント、そして人材育成(全2記事)

リーダーシップに必要なのは「自分自身を知ること」 チームをゴールに導くための「Lead the Self」の考え方

Sansan株式会社が提供するキャリアプロフィール「Eight」、朝日インタラクティブ株式会社が運営する中小企業向けウェブメディア「ツギノジダイ」の共催イベント「日本を変える 中小企業リーダーズサミット2023」より、「VUCAの時代のリーダーシップとマネジメント、そして人材育成」をテーマに語られた伊藤羊一氏の講演の模様をお届けします。変化が激しく、1つの正解のないVUCAの時代は、どのようなマネジメントやリーダーシップが求められるのか、同氏の考えが語られました。

1:1のコミュニケーションは、メンバーにとっても必要

伊藤羊一氏:コミュニケーションの極意として、私自身が感じているのがこちらです。

「1:N」と「1:1×N」。これは、例えばN人のチームで私がリーダーだったとして、私1がN人に対して働きかける1:Nと、それから1:1の関係でN人分ですね。こうやってコミュニケーションする。つまり、全体に対して働きかけるのと、1:1の関係をたくさんすることが、重要だなと思うわけです。

1:Nはわかりやすいと思うんですけどね。1:Nで「ゴールをこうやって設定しよう」とか、進捗会議で「みんなでやろう」とかね。それから「ハラスメントはダメですよ」と、1:Nで話しかけるのはわかりやすいと思うんですけど。

その裏では、例えば「今期のゴールはこれだ! おー!」とか言って、周りもみんな「おー!」と言う。でもそう言いながら、「これはやばいよ。今期は無理だわ。やめようかな」と思う人もいたり、「楽勝だぜ」と思う人もいたり、「よし、がんばるぞ」という人もいたり、いろいろです。それは1:1で話さないとわからない。

一方でメンバーも同じように一人ひとりに考えがあります。

「そもそも成果を上げるためにどうしたらいいんだっけ?」「人間関係をどうしよう?」「今やっている仕事はこれでいいんだっけ?」「どうやったらこの難局を突破するんだっけ?」ということを、モヤモヤしてるわけです。

そのためにどうしたらいいかというと、まず話してもらって考えてもらって気づいてもらって、そしてそれを習慣にしてもらわないと、解決できない。

そのために、1:1。1人で解決できればいいんだけど、なかなか解決できないので、1:1でコミュニケーションする。それで解決していくことで、メンバーとしても1:1のコミュニケーションが必要なんです。

なので、マネジメントをどうしたらいいのかということで、1つの特効薬というかベースというか、これをやったらどうですかということがあります。昨今流行りではあるんですけど、僕がおすすめしてるのは、「1on1 Meeting」。要は個別面談ですね。

マネージャーがメンバーのために定期的に時間を割き、メンバーの話に耳を傾けることを通して、目標達成と成長を支援する場です。私はヤフーにいるんですけど、ヤフーでは1週間に1回、目安として1人当たり30分程度でやっています。

1:1の面談の効果を引き出す、2つの要素

この1:1の面談、「そんなことをやっている時間はないよ」と思われるかもしれないですけど、これがけっこう効き目があるんです。まずこの2つの要素があって、1つはここにある「メンバーの話に耳を傾ける」ということです。

たくさんしゃべってもらうんですね。メンバーに主体的にいろいろ動いてもらいたいわけですね。主体的になってもらうほぼ唯一の方法は、話してもらう。なので、メンバーの話に耳を傾ける、イコールたくさん話してもらう。

話したいことをテーマにするし、振り返りを促すし、理解するための時間だし、サポートするための時間です。とにかくたくさん話してもらうことが大事です。そしてこれは誰のための時間かというと、マネージャー、リーダーじゃなくてメンバーのための時間。

なので、話す時間ではなくて聴く時間ということを、まず意識してみてください。武勇伝とかを聞かされても、メンバーは「もうなんなんだ」みたいになるし、進捗チェックとか1:1でやられても困ります。たくさんメンバーに話してもらうことが大事です。

聴くときは、背にもたれる姿勢じゃなくて、前のめりになって。表情もだし、頷きはもちろん、「おおお!」とか「へえ」とか「マジか!」とか言って。そして、5W1Hとか「具体的には?」とか、「つまり?」とか「もう少し教えて」「他にある?」という質問のパターンで、とにもかくにもたくさん話してもらいましょう。

行動、スキル、マインドをサイクルで鍛える

もう1つは、話してもらうだけじゃやはりちょっと弱くて、目標達成と成長を支援する。サポートするための場だということです。人の力を分解するとこういうことです。これを、氷山だと思ってください。氷山の水面から上が行動で、下がスキル、マインド。これらをバラバラに鍛えるんじゃなくて、サイクルで鍛えていくということですね。

何か行動した、仕事をしたとすると、「どうだった?」と言葉にしてもらって、「どういう意味があった?」と考えてもらって、「おおお!」と気づいてもらう。

そして気づいたら、「それ、やってみなよ」ということで、このサイクルを回しながら、仕事をやっている中で1:1で話して、自分でメンバーに考えてもらうとガンガン成長します。

(3)に「おおお!」と軽く書いていますけど、この気づきを得ることが人の成長にとって一番大事なこと。気づきを得る時間だと考えていただければと思います。

そのためにコーチングとかフィードバックという言葉があるんですけど、これはご興味があればご自身で学んでいただければということで、私はもうこういう質問を通じてやっていくと決めています。

「どう?」「How are you?」と聞いて、調子が良かった・悪かった。そうしたら「どこが?」「Where?」と聞く。「それはなんで?」と聞いて、「こういうことでした」と気づいたら、「When?」「What?」「いつまでに何をするの?」。このパターンでずっと1on1をしています。これがコーチングの正しい姿かはわからないですけど、僕はこうしているということが1つ。

フィードバックは「Good」と「Motto」

そしてフィードバックですね。これはぜひ覚えておいていただきたいんですけど、観察結果を伝えるわけですよ。営業同行とかに一緒に行ったら、その時「あの同行どうだったよ」みたいな感じで伝えるのが大事で、そのときに「Good」「Motto」で伝えるとめっちゃいいです。

「これが良かったよ」というGoodポイント。それから「これがダメだ」とは言わないで、「こうするともっと良くなるよ」というMottoポイントですね。「Good」「Motto」、これを覚えておいてやってみてください。明日やってみてください。

メンバーも、「もっとこうしたらいいよ」と言われると、「もっと教えてください」となるので、ぜひ使ってみてください。明日から使えるんですね。質問とフィードバックです。

ということで、1on1 Meetingと言ったって難しいことではなくて、振り返って気づいてもらうことなんですね。メンバーがそれを行う。考えてもらってしゃべってもらうというのが大事。そしてあんまり教えないで、質問と「Good」「Motto」ですね。それだけじゃなくて、次の行動につなげてもらうことが大事ですと。

1:1で話すことが、マネジメントでは大事だと思うわけですね。だからマネジメントは、1on1ですと。1on1をみんなとやれば、絶対マネジメント力も高まります。みんな成果を出していきますという話を、僕は言い切っています。

リーダーシップに必要なのは「Lead the Self」

一方で、リーダーシップというのがあります。この「導く」部分はけっこう大変なんですよね。「もうこれは無理ですよ。部長」とか「社長、これはちょっとやばくないですか?」みたいな時でも、導いていくという局面があります。

それを導いていくマインドが僕は、リーダーシップだと思っています。最終的にはLead the Society、社会を導くリーダーシップを発揮する。そのためには、Lead the People、人を「これで行こうぜ」と導くリーダーシップが必要。

「みんなやろうぜ」というリーダーシップ。これをやるためにどうしたらいいかというと、最低限必要なのがLead the Selfです。「みんなでこれをやろうよ」と言って、「どうしてやるんですか?」と聞かれたのに対して「だって上が『やれ』と言っているからさ」とか言って、自分自身がリードできていなかったら、みんなドン引きですよね。

だからLead the Self、自分自身をリードすることが超大事ですね。自分自身が熱狂している。自分自身が本気でやる気になっていることが大事ですね。そのためにどうするか。まず自分自身を知れということです。

もう何も考えずに思考停止して、「行くぞ」とやるんじゃなくて、まず自分自身をちゃんと知ろう。自分は「何に盛り上がって何に熱狂するんだっけ?」みたいなことを、ちゃんと知ることが大事です。

一人ひとり考えていることが違うのは、過去の経験が違うから

じゃあ、今、大事なことを知るために何をするのか。サッカー指導者の岡田(武史)さんもおっしゃっていました。一人ひとり違うんですよ。当たり前ですけどそうですよね。あなたにはあなたの特徴、あなたにはあなたの盛り上がる観点があるわけです。

なんで一人ひとり考えていることが違うかというと、過去の経験が違うからです。僕はある思いを持っています。それは、56年間生きてきた過去の経験がそうさせているからです。

現在の自分自身を知るためにどうするか。過去を振り返ってみてください。これはライフラインチャートといって、自分の人生の盛り上がりですね。テンションの高い・低い、ハッピー・アンハッピー。これをカーブにしたもので、これは、僕自身のライフラインチャートですね。

簡単に言えば、ちょっとハッピーに生きてたんだけど、ある要因があってバーンと下がって、それでそのあと10年間暗黒時代で、そこからガタガタしながら今はハッピー。こういう状態です。これが自分自身の現在を知るための前提になります。

僕自身はへっぽこからのスタートということで、26歳で人生の中で一番マイナスになっちゃった時があります。その前の10年間ぐらいは、やる気なしだったんですけど、それが爆発したのが26歳の時。

新卒で銀行に入って……僕、銀行員だったんですね。入ってすぐやる気なしですよ。研修で160人いる中で落第点が4人だけだったんですけど、そのうちの1人が僕。そして配属されたあと2日連続で遅刻して、2日目は灰皿を投げられたり。

それから「通信教育をやりなさい」と言われて、8科目あるんだけど1科目しか終わらないとか。それで「もう何のために働いているのかわからない」と言って飲み歩きして、帰ってきて寝ればいいんだけど、ゲームやらないと眠れないんですよ。明日になっちゃうのが怖いから。寝落ちしないと眠れない。

だから朝になると毎朝ゲーゲー吐くというね。そんな人生でした。「俺はまだ本気を出していないだけだ」とか言って、そこから会社に行けなくなっちゃったのが26歳の時です。これが僕自身のリーダーシップの前提というかスタートになります。

人の笑顔に貢献することは、自分のモチベーションの源泉だと気づいた

でも会社に行かないとクビになるぞということで、そのあとも吐きながら会社に行ったんですよね。数ヶ月、毎朝吐きながら会社に行っていたんですけど、ある案件をもって急回復したんです。

当時の上司が、ある案件を持ってきて、「伊藤くん、これやってみなよ」と言ってくれた。「ああ、やりたいです」と初めて思って、それを上司がめっちゃ助けてくれて、仲間というか先輩たちも助けてくれた。「仕事ってこうやって助け合いがあるんだね」みたいな感じで、その案件ができた。

そして、その案件を通じてお客さまから「ありがとう」と言われたわけですよ。仕事って、人の笑顔に貢献することなんだなと。これが自分のモチベーションの源泉なんだと、初めて気づいたんです。27歳の時です。「これは尊い。仕事ってそういうことなんだ」と思ったんですね。

「人の笑顔に貢献することは、自分のモチベーションの源泉だと気づいた」と言いましたけど、これをご覧になっているみなさん一人ひとり、当たり前のようにそうだと思うんですよね。人の笑顔に貢献する。

それは社外のお客さまだったり、社内の誰かだったり、いろいろいらっしゃると思うんですけど、人の笑顔に貢献することが、自分のモチベーションの源泉。それはみなさんそうだと思うんですよね。

ただ、そう思う気持ちの後ろにあるみなさんの経験は、一人ひとり違うわけですよ。だから、このベースの部分がちょっと変わってくる。あなたなりの色になってくるんですね。そこをちゃんと振り返ってみようねということです。

今日この瞬間の積み重ねが、未来を作る

私自身はこの26歳の時にメンタルをやられて、もう本当に起きている間中、胃腸がひっくり返っているように痛いんですよ。人の目が見られないんですよ。そういう状態の中で、生きていてもしょうがないみたいな感じだったところが、いろんな人の助けがあり支えられて、成功あり失敗ありをしながら、ちょっとずつ成長して今があるんですね。

だからこの30年。今偉そうに言っていますけど、30年でこの自分自身の想いが生まれてきた。自分の中に譲れない想いが生まれてきたんです。

それは、「人は変われる」ということです。僕自身がもう完全にキャラ変じゃん! みたいな感じで変わっているので、人は変われるという想いがある。だから人が変われることを証明しようということで本も書くし、大学の仕事もやるし、ヤフーの仕事もやるし、何でもやるということですね。

あと1つ、自分自身が苦しんでいたのは、もう制約がめちゃめちゃあってフラットでもない。そして楽しくもない。こういう職場にいて、「もう無理」みたいな感じになっちゃったことなんですね。だから、フリー(FREE)でフラット(FLAT)でファン(FUN)。こういう社会を作りたいと思って、今一生懸命がんばっています。

僕自身の話をしましたが、みなさんも自分自身の人生を振り返りながら、「なんで俺、盛り上がっているんだっけ?」とか、「俺は・私は、そもそも何に燃えているんだっけ?」みたいな感じで、考えていただきたいんです。そうすると過去を振り返ることによって、現在が見えてきます。

その先に未来があるんです。つまり、リーダーシップを考える上で、Lead the Selfということでまず自分自身をリードしようね。だけど自分の未来をいきなり考えるのではなくて、過去を振り返り、現在の想いを知った上で未来を考える。

だってそうですよね。過去が現在につながっているんだから、現在が未来につながる。基本的には、現在の積み重ねが未来を作る。だから「未来はこうありたいね」と思うのも大事なんだけど、それだけじゃ未来は作れなくて、もう今日この瞬間の積み重ねが、未来を作るんです。

未来を変えたいなら行動を変えるしかない

もし未来を変えたい、「うちの会社も大逆転して」ということであれば、同じ行動をしていたら未来は変わらない。じゃあどうするか? 新しい未来を描いて、そこに向かって今日この瞬間から、一歩一歩踏み出すことによって未来が生まれてくる。

だから新しい未来に向けて、今日この瞬間から積み重ねが始まるということで、未来を変えたいなら行動を変えるしかないんです。これが僕は「Lead the Self」だと思っています。リーダーシップの原点です。

Lead the People、「みんなやろうぜ」と言う前に、Lead the Selfがある。これは過去・現在・未来の軸を持つということです。軸はこの過去・現在・未来だと思っています。このLead the SelfがLead the Peopleにつながって、それをやっていくと人が集まって、Lead the Society、社会が変わっていく。

社会といっても大げさなことではなくて、例えば、このお客さんがめっちゃ喜んでくれた。そのお客さんを喜ばすことが我々の仕事だ。これだけだったらめちゃめちゃ小さいかもしれないですけど、そのお客さんがめっちゃ喜んで、その他に対して働きかけをしたら、社会全体が変わってくるかもしれないじゃないですか。

だから我々は志高くLead the Society、「社会を変えようぜ」と言うわけなんだけど、それは足元の行動から始まるんです。

そのためにどうするかと言うと、2番目のLead the Peopleから始まります。Lead the People、人々をリードするためには、先ほど申し上げたように、Lead the Self、自分自身が熱狂していないとリードできないよということ。だから「リーダーシップってどういうことなの?」というのは、僕はこのLead the Self、自らを導くことが大事かなと思うわけです。

自分自身が本気で心からの言葉で語れば、みんなついてくる

ということで、今日は駆け足でマネジメントとリーダーシップについて語ってまいりました。マネジメントは「なんとかする」。いずれにせよ、マネジメントもリーダーシップもチームをゴールに導いていくこと。

そのためにやれることはなんでもやるし、なんとかするのがマネジメントの仕事です。マネジメントをする上で大事なのは、一人ひとり違うんだということですね。

一人ひとり違うんだから、一人ひとりとちゃんとコミュニケーションしようぜということで、1on1 Meetingの話をしました。ぜひやってみてください。お忙しくてもやってみたら、案外わからなかったことがわかるはずです。

武勇伝は話さない、それから進捗チェックとかはしないで、ただただ話を聴くのが、1on1の大事なところ。これでマネジメントはオッケーですね。

そしてリーダーシップ。リーダーシップも「やるぜ!」みたいな感じで、こうやって指させばいいのか? そんなので人が動くわけないですよね。そうじゃなくて、まず人々をリードするためには、自分自身をリードしよう。自分自身を熱狂させよう。

自分自身が本気で心からの言葉で語れば、みんなついてくる。ということでLead the Selfが大事。まず自分自身を見ようぜということですね。

ということで、マネジメントとリーダーシップについて、お話をさせていただきました。ありがとうございました。

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