2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
My Lean In Story 関美和さん 〜広告代理店→投資銀行→法学部→翻訳家→起業家!? 通説を疑う! わりとノープラン!? な自由なキャリアのストーリー(全3記事)
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古城佑希氏(以下、古城):直近の2021年に、ベンチャーキャピタルのMPower Partners Fundを立ち上げられていると思うんですけれども、これはどういったきっかけで立ち上げに至ったんでしょうか?
関美和氏(以下、関):キャシー(・松井)さんと村上(由美子)さんと私は、3人とも1965年の2月生まれで誕生日がすごく近いんです。
村上さんが海外にいらっしゃったりして、20年くらいは一緒になれなかったんですけど、この10年ぐらいは3人ともずっと日本にいたので、2月になると一緒に誕生日を祝っていたんですね。50歳の誕生日の時に「そろそろ、次どうする?」みたいな話をし始めました。
たぶん金融関連で、バイサイドというか投資する側をやろうというコンセンサスが、3人の間でなんとなくあったものの、「やはり世の中にインパクトを与えられるものがいいよね」という中で、じゃあVCをやってみようかと。最初に話し始めてから、2年から3年(で立ち上げに至った)という感じですかね。
古城:なるほど。翻訳をメインでやられていたところから、また金融の業界、バイサイドに戻られて、そこで変化したことはございますか?
関:ありますね。これは翻訳から金融に戻ったからというわけじゃないですけど、それまではほぼ1人の作業だったので、チームを作るという仕事、かつ私の中ではキャシーさんがリーダーだと思っているんですけれども、その中で創業パートナーとしてチームを率いていく責任を今はすごく重く考えています。
古城:確かにチームプレイ、かつVCはかなりの額を投資されていると思うので、預かったお金を運用する責任もすごくあると思います。
関:そうですね。責任は今も非常に重く感じています。なので、先ほどの「失敗するのが怖くなかったですか?」という質問に対しては、やはり今はその怖さをちょっと感じてはいます。
古城:なるほど。
古城:他のVCと違う特色として、MPower Partners Fundは女性3人で立ち上げられたところもそうですし、ESGを非常に重視されて投資先を選ばれていると思います。
ESGの中でも、昨今は「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」と言われる「組織の多様性」を重視される中で、社員として何か意識して向上させられることはありますか?
私も一般社員の身ですし、今回(の参加者)は会社員の方の参加もすごく多いので、社員として取り組めることやアクションできそうなことはございますか?
関:まずは「自分も含めてすべての人に偏見がある。偏見がない人はいない」という自覚をすることです。他人じゃなくて、まずは自分の無意識バイアス、あるいは意識しているかもしれないバイアスを自覚することが大切です。
私自身は、あんまり善悪の判断をしないことが、寛容な社会というかインクルーシブな社会につながるんじゃないかなと思っているので、それを自分の中で気をつけてはいます。
古城:確かに、昨今はよく会社の中でも、アンコンシャス・バイアスについての研修をやられたりします。一昔前は「男性・女性」という軸で、女性の活躍の比重が高かったと思うんですが、最近は男女という2軸だけではなく、いろんな面での多様性について言われています。
だから、アンコンシャス・バイアスという意識を持って、広くいろんな属性や考え方に対して寛容であることが、社員一人ひとりとしてできることなんですね。
関:職場では女性としてマイノリティかもしれないけれども、もしかしたらある場所では自分がマジョリティになっていて、マイノリティの存在に気づかないかもしれないですし。誰しもそういう「無意識あるいは意識の偏見」があるんだなと、まず自覚することが、すごく難しいですけど重要かなと思います。
古城:日本の企業にいると、どうしても「日本人であること」が大前提だったりするので。そうなると女性は少ないけれども、日本人というくくりでは一緒だったり、もちろん違う場所に行けばマジョリティになることも確かにあると思います。
関:あとは、今ここに集まっていらっしゃる方の中には、おそらく社会階層の多様性はあまりないと思うので、やはりそこも無自覚になりがちというのはすごく感じます。
古城:そうですね。確かに、ふだんから自分と似た人と付き合いやすかったり、そもそも自分以外の属性や階層など、いろんな側面で異なる人に触れる機会がなかったりします。
今、お話をおうかがいしていて、自分がマジョリティの中で生きていることにかなり無自覚な状態であると思いました。ありがとうございます。
古城:最初の電通のお話でも、雇用機会均等法の施行直後で、女性が(会社の中に)すごく少なかったり、試験が違ったりしたということでした。
実際に関さんがお仕事をされてきた女性が少ない職場で、今までにやりづらさを感じたことはなかったんでしょうか?
関:今もあるかもしれないんですけれども、当時の日本企業は性別による役割分担がけっこうはっきりしていました。なので、女性が少ないからやりづらいというよりも、それがなんかちょっと嫌だなと思いました。
言い方がいいのかどうかわからないですけど、さっき「同じ人間だから、ハーバードに入れる女性がいるんだったらいけるかな」とお話ししたようなロールモデルが、日本企業(電通)にいる時は周りにちょっとしかいなかったので、イメージが湧かなかったというのはありますね。
2人の子どもが生まれて、まだ小さい時は、体力的に奪われるものや精神的なイライラや不安がすごくあって、綱渡りの状態だったと思います。
それは「女性だから」「会社が」というよりも、自分が若くてすごく未熟で不安定だったことも含めて、あるかなと思いますね。
古城:「男性だから」「女性だから」というよりは、自分が「子どもがいる」という環境に置かれている。
だから、お子さんがいない人や、あまり家事・育児をやらない男性とかと比べると、働くことと両立させることがどうしても難しくて、仕事をするハードルが高かったというイメージなんですかね。
関:そうだと思いますね。やはり最初の10年ぐらいの子どもが小さい時は、体力的にけっこうきつかったなと思います。
古城:でも、それを「男性ばっかりで働きづらい」とか外部環境のせいにはしないで、「自分のこういう状況があるから、他の人よりは仕事がしづらい」と考えるんだなと、今お話をうかがいながら思いました。
関:外部要因もすごくあるとは思いますよ。それに「子どもを生んでいると体力的にきつい」ということは、みんなともすごく共有している課題かなとは思うので、何らかのインフラがもっとあれば、もっと違う結果だったかもしれないですね。わからないですが。
古城:MPower Partners Fundを立ち上げたお二人とは、もともと長いお付き合いだったとおうかがいしていますけれども、このお二人から学んだことの1点目に「わりと無計画」と書かれています。
どういった面で「無計画だな」と感じられたんでしょうか? キャリアや仕事に関してでしょうか?
関:いや。日々、わりと2人とも無計画で(笑)。
古城:(笑)。
関:あんまり先のことを考える感じの性格じゃないみたいですね。私もあんまり考えないので、だから3人で「じゃあやろう」となったのかなとは思いますけれども。
古城:明確に「何年後」のゴールを立ててバックキャスティングするというよりは、「そんな先のことを考えてもわからないし」と、行動を起こされるイメージですかね。
関:そうですね。キャシーさんは「子育てと仕事を両立させるには、いつ子どもを生んだらいいですか?」みたいな質問を若い人からされると、よく「いや、それは妊娠した時に生んだらいいと思います」と答えていて。
古城:(笑)。
関:だから一事が万事、そんな感じなんですよ(笑)。
古城:ちょうど今日は、その部分をおうかがいしようかなと思っていたところでした。
古城:Lean In Tokyoでイベントをする中でも、子どもを生むとなると、仕事を半年ないし1年中断する期間が出てしまいます。
生んだ後も、時間の制約もあって今までどおりに働けないかもしれないという中で躊躇してしまい、「(出産は)いつのタイミングだったらいいんだろう?」と考えられる方がいらっしゃいます。
そういった方に対して、関さんがどういうふうに考えられているか、もしくは考えられていたかなど、アドバイスをおうかがいしたいなと思っています。
関:私はノープランで、まったく何の計画も立てず、いつでも妊娠したらいいなと思っていましたね。
古城:仕事を休むことや生んだ後の変化を恐れるよりも、まず先にアクションを起こしてみないとわからないという(ことでしょうか)。
関:私はそうですが、振り返ってみれば、もうちょっと計画していたほうが良かったかなとは思いますけれども、しょうがないかなと。
古城:コメントでも「考えすぎて動けなくなってしまう」という方がいらっしゃるようなので、今回「無計画でも大丈夫」というメッセージをいただいて、参加者の方で「新しい視点」「あんまり周りにいなかった」と感じた方も多いのではないかなと思います。
関さんは、もともとあんまりプランを考えないタイプだったのでしょうか? それともお二人の影響が大きかったんですか?
関:もともと無計画だったと思います。
古城:じゃあお三方が、わりと似た発想の中で集まって活動されている感じなんですね。
関:そうですね。
古城:あとは「人に任せる」「褒め上手」というところも、ふだん一緒にお仕事をされる中で学ばれることが多いんですか?
関:そうですね。特に村上さんはお子さんが3人いて、まだ下のお子さんは中学生ですが、人に任せて生産性を上げるのがすごく得意で羨ましいなと思います。
古城:男性も変わらないかもしれないですけど、責任感のある女性は「人に任せるのが苦手で、自分が関与していないと不安」というタイプの人がけっこういらっしゃると思うんですよね。でも(村上さんは)そこがもうあまりないということですね。
関:キャシーさんはわりと仕事ではハンズオンなところもありますけど、やはりお子さんとの接し方はいい具合に距離感があると思います。
古城:でも、「この人がいないと絶対に回らない」という組織よりは、任せてもらえる組織のほうが、きっとサステナブルなんだろうなとも思うので、それはすごく見習いたいところだなと感じますね。
あと「善悪の判断をしない」というのは、先ほどの「バイアスを持たない」といったところと近しいのかなと思うんですけれども、「ノーと言わない」というのは、どういった場面をイメージされているんですか?
関:これは「善悪の判断をしない」と同じで、ノーと言うこともあるんですが、「アグリーとディスアグリー」という感じで、お二人は反対意見に対して非常にウェルカミングな雰囲気を持っているんですよね。
古城:いろんな意見を受け入れてくださる雰囲気があるということですか?
関:いろんな意見というか、自分とぜんぜん反対の意見や考え方をとてもありがたがります。
古城:組織の中で、トップが「右」と言った時に「左がいいと思います」と言える環境や人はなかなかいないと思うので、見習いたいところですね。
ウェルカムな雰囲気を作ってくだされば、「左がいいと思う」、はたまた「右・左とかそういう軸じゃない」という話もできると思うので、確かにすごく大事な面ですね。
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