2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小田木朝子氏(以下、小田木):では、進めてまいりましょうか。「組織カルチャー変革に取り組む人事のリアル」の第1ステップから、さっそく取り組んでいきたいと思います。
今日は、永井さんのリアルをインプットいただきながらワイガヤするという趣旨ですので、まずは「組織カルチャー変革」というテーマに取り組み出した起点はそもそも何だったのか、聞いてみたいなと思います。
ちなみに、ちょっと本題に入る前に。ヒト組織界隈で、「三井住友海上火災保険」という社名を最近よく目にするなっていう感覚を持ってる人はいますか?
沢渡あまね氏(以下、沢渡):新聞やインターネットでも、最近は本当によく見かけますよね。
小田木:新聞、Webメディア、そしてプレスリリース。最近もかなり話題になりましたよね。
沢渡:そうですね。出向や副業経験、越境体験を前提にした管理職登用の制度も、インターネットメディアやニュースで話題になりました。
沢渡:記憶に新しいところでは、2023年3月には、育休を取得したら同僚に最大10万円の応援手当。このニュースは、Twitterなどを見ていても「育休者がいる職場のことをわかってらっしゃる」みたいな賞賛のコメントも、ものすごく多くて。
小田木:賞賛のコメント。
沢渡:一言で言うと、「よくぞ走ってた、三井住友海上火災保険!」といったような、時代の先取りをするような施策で人の心を打っているなぁと、私も捉えています。
小田木:今日は表面上の施策ではなくて、矢継ぎ早にいろんなトライアルを仕掛けている組織の背景には、どんな事情や経緯、もっと言うと課題感やビジョンがあるのかを聞いていけるということです。
沢渡:そうですね。参加者のみなさんからも(コメントで)「(最近よく社名を)お見かけします」「それもあって気になっています」「この2つこそイノベーション」「応援手当、すごい」「育休の施策、会社でも話題でした」。ですって、永井さん。
小田木:「話題にのぼる会社」。いいですね。
永井泰右氏(以下、永井):持ち上げ、ありがとうございます(笑)。リアルこそ話したいと思いますので、ここから私にバトンタッチでよろしいですかね。
沢渡:そうですね。
小田木:お願いします。黙っていると、私と沢渡さんが鳴り止まないっていう感じなので。
沢渡:そうそう。止めてください、永井さん。
永井:我々は単なる保険会社ですが、保険会社から変わるために目指す姿を定義しました。「世界のリスクを解決していくイノベーション企業になる」というビジョンを掲げています。
今まで保険会社は、スライド真ん中の「事故発生時に補償をする」という部分で、お客さまや社会に提供価値を出してきました。
一方、リスクソリューションの観点から申し上げますと、補償の前後という言い方をするのですが、左側の(事故の)予防、右側の事故からの迅速なリカバリーといった部分に提供価値の幅を広げて、世の中に貢献していきたいと考えています。
例えば、弊社ではドライブレコーダー付き自動車保険をご提供しています。ドライブレコーダーで収集した映像データをAIで解析し、道路で欠陥箇所があったら「ここを直したほうがいいですよ」と、自治体にお届けしたりする「ドラレコ・ロードマネージャー」というサービスも始めています。
こういったことに取り組むことで、お客さまへの提供価値を広げ、「(保険会社から)リスクソリューションのプラットフォーマー」に変わる」ということを目指しています。
沢渡:自動車会社出身者としても、本当にうれしいですね。
永井:ありがとうございます。
永井:では、そのために何が必要かというと、やっぱりカルチャーを変えないと変わらないんです。日系金融機関あるあるですが、「お客さま第一」「法令順守」という部分は、当社のもともとの強みでした。
ここに合わせて、右側のカルチャーの「失敗を恐れずにチャレンジする」。さっき申し上げた(事故の)補償の前後の価値というのは、失敗の先にあるものなので、失敗を恐れずにチャレンジしていく、過去にとらわれない、自律的で主体的な行動が重要となります。
こういったカルチャーにしていく必要があるということで、今はそれに向かってみんなで取り組んでいます。
「今置かれている環境から、会社が変わらなきゃいけない」という強い危機感から、このような動きになっているとご認識いただければと思います。
沢渡:ありがとうございます。三井住友海上火災保険さんは、特に舩曵真一郎さんが社長になられてからは、「アジャイルな組織カルチャー」「アジャイルな行動」といった言葉を、中にも外にも発信されています。
永井:そうですね。舩曵はもともとCDO(最高デジタル責任者)で、DX推進に向けてさまざまな変革を強力にリードしていましたので、それがさらに全社に広がっています。
そのため、会社の目標自体もかなりムーンショット化していって、視座高く取り組まなければならないと。こういう、けっこう強いメッセージでみんなでドライブしている感じですね。
小田木:今のお話を聞きながらの私の感想なんですが、資料を見せていただいた時に、「確かに、保険会社って事故が起こってなんぼの事業かな」といった認識がありました。
事故後の(補償だけを行う)会社ではなくて、もうちょっと範囲を広げて、リスク全体の課題解決とか、リスク回避に向けて価値を提供できる会社になると。
すごくシンプルに見えますが、「自分たちがどうなりたいか」を定義して、そこに至る手段のための組織カルチャー変革であり、話題になったいろんな施策があり、「どうなりたいか」を起点にした組織変革だったんだなという観点があります。
永井:まさにおっしゃるとおりですね。
小田木:「ちょっと目立つ手を打とうね」じゃなく、「何をどうやるか」という観点ともう1つ。さらっと永井さんが話してくださいましたが、信頼される事業をやっていこうと思うと、法令順守意識が高いことが強みになっていたりだとか。
今までの事業を根幹から作ってきた強みが、組織を変えていこうと思った時にはかえって足を引っ張ったり、そういう意味では相反するというか難しさの側面もあると思います。
「両利き」だとかいろんな言い方をしますが、元からある自社の強みを捨てるのではなく大事にしながら、さらに新しい強みを付加していくんだという流れの中にあるのだなと、聞きながら思いました。
永井:相反するというよりも、両方に取り込んでいきたいと思っています。事故発生時の補償というのは、我々の価値が一番発揮される瞬間なので、ここを軽視するわけではないんです。
ここをさらに強め、補償前後の価値提供を行っていくためにも、失敗を恐れずにチャレンジする・組織の無用な壁をなくすといったことに取り組んでいきます。
また、事故発生時や補償前後には我々だけではなくて、例えばさまざまな企業とパートナーシップを結んで、よりよい価値提供の仕方もあるわけなので、ここもどんどん深掘っていくためには、まさにさっきのお話があると。
沢渡:「越境思考」ですね。
永井:そうですね。強化を図るカルチャーに記載のとおりです。
小田木:「今のかたちを磨き上げるためにも」という感じ。
永井:おっしゃるとおりです。さらに幅を広げていくためにも、カルチャーが必要だと認識しています。言うのは簡単なんですが、「手段」と認識しながらやっていくのが大切なのかなと思っています。
小田木:ありがとうございます。
小田木:「組織カルチャー変革の取り組みの起点はどこにあったか」という、具体的なお話でした。
ここで、「半径5メートルからの変化を起こしたい」と私たちが思った場合に、起点のあり方や置き方をどう考えたらよいのか、沢渡さんと永井さんのそれぞれの着眼点で言語化していただきたいなと思っています。どちらからいきましょうか?
沢渡:永井さんからいきましょうかね。みなさんも永井さんに聞きたいと思うんですが、そうは言っても、安全・安心、ミスがないことを重視するカルチャーをアジャイルに・オープンに引き寄せていく。あるいは、そちらもできるようにしていくって、けっこうハードルがあると思うんです。
どう風穴を開けていったか、その起点の話をもう少し聞きたいなと思います。
永井:承知しました。(ポイントは)2つあると思っています。まずは1つは、視座が高い目標を設定することです、「我々はこうならなきゃいけない」ということをちゃんと掲げることですね。ここが、まずは最初の柱になると思っています。
その次が、言い出しっぺである人事部から変わる。ここがけっこう重要かなと思っております。
沢渡:なるほど。
永井:やっぱりメッセージ性を持ちますし、言い出しっぺが変わっていないと「なんで(この人たちは)発言力があるんだ?」というふうに思ってしまいますので。
言い出しっぺの我々から変わらなきゃということで、視座を高く持つことと、自分から変わる両方を大切にするように意識しています。
沢渡:ありがとうございます。このメッセージを聞いて、ドキドキしている人とわくわくしている人がたくさんいると思います。
小田木:ドキドキとわくわく。(視聴者から)「人事部から変わるって斬新ですね」というコメントもいただいています。
沢渡:「旗を立てる当事者意識」。
永井:そうですね。やるからにはけっこう大変なんですけど、おもしろみを持って、「やったら楽しいよね」という感覚でやることは、自分の中で大切にしていて。「わくわく」という言葉は重要かなと思っています。
小田木:さっき「リスク・ソリューションのプラットフォーマーになる」というお話をしていただいた時に、参加くださっている方からのフィードバックで「プラットフォーマーっていう着眼点いいですね」と、コメントが来ていました。
たぶん第三者が聞いても共感し得るし、「確かに、自分が中の人だったらわくわくしちゃうなぁ」と、感じうるものなのかどうかが、もしかしたら「視座が高い」の言い換えというか、物差しになりそうだなと感じました。
永井:そうですね。「リスクソリューションのプラットフォーマー」というのは単なる言葉なので、それを社員一人ひとりが自分事にするのは、正直まだまだだと思っています。
でも、ちゃんと腹落ちすれば、「今までとは違う仕事の仕方をしなきゃいけない」「新たなことにチャレンジしなきゃいけない」と、自然になると思いますので、そこを根気強くやっていかなきゃなと思っております。
沢渡:そうですね。その意味でも、「言語化力」と言いましょうか、名前をつけることってものすごく大事な初めの一歩だと思います。
「保険会社」と言うのか、「リスクソリューションのプラットフォーマー」と表現するのかで、自分たちの仕事のあり方や組織のあり方を見直す機会になると思うんです。
永井:そうですね。まずは名前から入るのは重要だと思います。さらに重要なのが「納得感」ですね。上の空の言葉や距離感がある言葉ですと、正直「へー」で終わってしまうので。
ちゃんと納得する・理解する言葉に落とし込む。ここにはかなり汗をかく必要があるなと思っていますし、今も完全にできているわけじゃないです。ただ、やらなきゃいけないし、みんなでやろうとなっていますね。
沢渡:道半ばでいいと思うんですよ。まずは名前をつけて、目指す姿の景色を合わせていくことはすごく大事だと思います。
沢渡:例えば、同じように変革に取り組んでいる日本の大企業でいうと、富士通さんも最近は自らSIerという言い方はしていないんですよね。
SIではない新たな業界・業態、新たなビジネスモデルにチャレンジするという思いの表れでもあり、今までとは違う業態で目指す姿を1回捉えてみたり、今までとは違う視点での眼鏡をかけてみることって、すごく大事なのかなと思いました。
永井:そうですね。そのためにも、組織長であるマネージャー層が、「じゃあ、我々はプラットフォーマーとして何をやるんだ?」といった部分の言語化やタイミングが重要でして、そういった部分もひっくるめながら試行錯誤をしていますね。
沢渡:すばらしいです、ありがとうございます。そんな起点の話をしてきた中で、私ももう1つつけ加えたいんですが、小田木さんよろしいですか?
小田木:どうぞ。
沢渡:名前を付けるという行為も、名前を付けて景色を合わせるという行為もそうですが、やはりカルチャーってコミュニケーションに宿ると思うんですね。
日々どんなコミュニケーションをしているかによって、人々のマインド、あるいは統制管理型の仕事のやり方しかできないのか、組織を超えてオープンなディスカッションスタイルの組織運営ができるのか。コミュニケーションの仕方やツールの使い方の部分に(カルチャーが)宿ると思うんですね。
そういう意味でも、半径5メートル以内のコミュニケーションの仕方から、どうカルチャーをアジャイルにしていったのか。組織の目指す方向や、ミッション・ビジョン・バリューに合うような形に変えていこうとしているのか。
その部分を、ここからまたじっくり永井さんにおうかがいし、意味づけしていきたいです。
小田木:ありがとうございます。
小田木:変革において、具体的に「何をどうする」という話の前に、起点をどこに置くか。その起点をどう設計するかについて、永井さんと沢渡さんからそれぞれ言語化をしてもらったところです。
本当に、チャットのリアクションもありがとうございます。みなさんも腹落ち感や納得感があるんだなということと、いくつかご質問もいただいてますよね。永井さん、拾ってみてもいいですか?
まず、「人事から始める、言い出しっぺからやるというテーマに対して、人事の中で反発とかはなかったですか?」というご質問をいただいております。
沢渡:いいご質問ですね。
永井:当然ありました。変わらないことが心地良いと感じる方もいます。私もそのように感じることもあります。ただ、「まずはやってみようよ」というノリでやってみて、少しずつ変わっていく。かつ、やり続けることが重要かなと思っていますね。
それが、沢渡さんのおっしゃっていた「日々のコミュニケーションの積み重ね」だと思いますので、それにつながるようにやり続けることは大切にしてますね。
沢渡:そうですね。コミュニケーション、特に日々のやり取りは毎日やるものですから、実は積み重ねになるんですよね。
永井:一方で、戻るのも簡単だったということもあるので。
沢渡:おっしゃるとおり。
永井:やり続ける、意識し続けることですね。
小田木:ありがとうございます。
ちなみに、もう1つ質問があります。「自組織が変わったことは大小あると思いますが、社内や多部門へどのようにコミュニケーションされたのか気になります」というコメントをいただいてます。これは後半に出てきますか? それとも、ここで答えられますか?
永井:後半の施策の説明の中でフォローするようにいたします。
沢渡:そうですね。
小田木:まさに大事な着眼点だよ、ということでご質問ありがとうございます。
沢渡:さらには、スマートワークの取り組みそのものがさまざまな変化を生んできたかなと私も見てきていますので、永井さんと私で意味づけしていきます。
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