2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会者:それでは、ナジャ・グランディーバさんに、いろいろとお話をうかがっていきたいと思います。
ナジャ・グランディーバ氏(以下、ナジャ):わかりました。
司会者:これまで「Climbers(クライマーズ)」のプロデューサーを長くやってまいりましたが、いよいよリアル開催ということで、多くの方に楽しみにいただいて、すごくうれしく思っております。
ナジャさんの魅力をがんばって引き出したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
ナジャ:まず、そんなに引き出せる魅力があるのか、自分ではわからないですけれども。引き出せるものなら、ぜひ引き出していただきたいと思います(笑)。
司会者:わかりました。まず、最初におうかがいしたかったのがお名前なんですけど、「ナジャ・グランディーバ」さんという、1回聞いただけでインパクトのある名前だなと思っているんですが、これはご自身でつけられたんですか?
ナジャ:自分でつけましたね。
司会者:やっぱりそうなんですね。
ナジャ:私がドラァグクイーンをやり始めた時代に、流行りの名前っていうのがあって、ドラァグクイーンの中で長い名前が流行ってたんです。
「マツコ・デラックス」もそうですし、「ミッツ・マングローブ」もそうですし、みなさんご存じかはわからないですけど、「ダイアナ・エクストラバガンザ」とかね。
わりと仰々しい名前をつけるのが流行ってる時代に、ちょうど私もドラァグクイーンをやり始めたので、なにか長い名前がいいなと思って。
ナジャ:私は90年代に大活躍していたスーパーモデルの方々が大好きで、ちょうどその時は、毎日のようにファッションショーを見て学校に行ったりしてたんです。
その中でも、「ナジャ・アウアマン」という、ドイツ人の足がすごく長い超美人のモデルさんがいて、「この人かっこいいなぁ」と思って、その人に憧れてたんですね。
そこから、その人の名前の「ナジャ」というのを、まあまあ許可もなく勝手に使わせてもらった感じなんです。
司会者:「グランディーバ」は?
ナジャ:舞台上で、はるな愛ちゃんがよく「エアあやや」っていうのをやってるじゃないですか。曲に合わせて、当て振りで口パクしながらパフォーマンスをするのが、ドラァグクイーンのパフォーマンスの王道なんです。
そんな中で私は、ホイットニー・ヒューストンやダイアナ・ロスとか、いわゆる「ディーバ」と言われる人たちの曲をパフォーマンスでしたくて、「ディーバ」という言葉を(名前に)入れたいなと思って。
でも、ディーバだけだと物足りないから、最上級という意味の「グランド」という言葉と「ディーバ」を引っ付けて、「グランディーバ」にしようと思って、自分でつけました。
司会者:そうなんですね。じゃあ、最上級のディーバ。
ナジャ:最上級のディーバっていう意味ですね。
司会者:それで、ナジャ・グランディーバ。
ナジャ:ナジャ・グランディーバという名前をつけさせていただきました。
司会者:今、その名のとおりご活躍されていますけれども。
ナジャ:いや、まあまあ。できていればいいんでしょうけど、どうなんでしょうね。自分では、まだわかんないですけどね。
司会者:「ドラァグクイーン」という言葉、もちろん知ってるよという方も多いと思うんですが、ちょっと写真を見ていただきたいと思います。ドラァグクイーンってのは、そもそも……。
ナジャ:(笑)。いやいや、「ドラァグクイーンはそもそも?」で、この写真が出てくると……(笑)。でも本当に、そもそもドラァグクイーンっていうのはこの写真のとおり、特に私がドラァグクイーンをやり始めた頃は、こんな感じの人たちがほとんどだったんです。
まず、ドラァグクイーンの意味から言いますと、英語で「ドラッグストア」ってあるじゃないですか。薬のドラッグ(drug)。
(ドラァグクイーンの「ドラァグ」は)それとは別で、パソコンでドラッグするとか、ドラッグアンドドロップ。「ズルズル引きずる」という意味がある、別の言葉(drag)なんです。綴りが違うんですね。
女装をして、長いドレスの裾をズルズル引きずるぐらい大袈裟な女装をするゲイの人っていう意味が、ドラァグクイーンには込められてるんです。諸説あるんですけど。
それともう1つは、いわゆる男と女の境界線の間をズルズル行ったり来たりする、そういうドラッグの意味があるという説もあるんですけど、私が最初に教えられたのは、「裾をズルズル引きずるぐらい大袈裟な女装をするクイーン」っていう意味なんです。
司会者:なるほど、そうなんですね。
司会者:他にも写真がけっこうあって、この当時はまだYouTubeもない時代です。
ナジャ:そうなんですよ。この当時……(笑)。この写真を見てもらうのは本当に恥ずかしいんですけど、それこそ、もう20年以上前だと思います。
その当時は何の情報もないけど、ドラァグクイーンというものは知っていて。「え、かっこいいな! やってみたい! 女装してみたい!」って思ったんですけど、ドラァグクイーンの資料は写真しかないわけですよ。
だから、道具も何を使っていいかもわからないし、カツラはどうするんだろう? 衣装はどうするんだろう? と、全部何の情報もないまま、写真だけを参考にメイクの練習をしてたんですね。
毎日、本当にいろいろ試してみて、最初はこういう真っ白の白塗りでした。どうしていいかわからないまま、化粧品も数少ない中で、いろいろ練習したり毎日試行錯誤して。こういう時代をずーっと経て、今この美しさにたどり着いたっていう感じなんですけど。
司会者:いや~、あの時代から今までも、美貌は変わらずですね。
ナジャ:いや、ぜんぜん違うじゃないですか(笑)! 今は情報が全部あるから、「化粧品はこれを使うんです。ドラァグクイーンメイクはこういうふうにするんです」っていうのがわかるけど、当時YouTubeがあったら本当によかったなぁと思う。
だから逆に言うと、今からドラァグクイーンを始める人は、最初からみんなきれいですよ。教科書があるわけですから。羨ましいです。
司会者:ナジャさんが、ドラァグクイーンになるまでの原点たるものをお聞きしていきたいんですけど、小学生とか、そのぐらいのナジャさんはどんな方だったんですかね?
ナジャ:子ども時代ですか。子ども時代は、どっちかと言うとインドアでしたね。友だちが「遊ぼ~」ってピンポンして家に来たりしても、「いや、もうおれへんことにして」と言って、居留守を使ったりして。
1人で折り紙をしたりするのが好きだったんですけど、やっぱり子ども時代から、女の子っぽい所作や言葉遣いは、周りからちょっと見えてたんでしょうね。その時から、あだ名が「オカマラス」だったり。
司会者:オカマラス。
ナジャ:「男女(おとこおんな)」とか、それこそ「オカマ」みたいなあだ名をつけられたりはしてましたけどね。
司会者:そうですか。今は多様性という言葉もありますけど、当時を思い出していただくと、後ろ指を指されたり、ちょっといじられたりすることもあったりするのかなと思うんですが、どういう思い出がありますか?
ナジャ:でも、私はそこまで、オカマっぽいからといって誰かにいじめられたりした記憶はそんなにないです。
どっちかというと、オカマっぽさを武器にみんなと仲良くしてたというか。その頃から、「あたしはこういう人間なんだ」っていうのを、子どもながらに受け入れていたところがあると思うんですよ。
だから、無理して「男っぽくしないと」「周りに合わせないと」ということをせず、「私はこういう子どもなんです」って、自分なりに受け入れてたんでしょうね。
それで揶揄されたり、悪口を言われたりしても、そこまで気にせず、右から左に聞き流してうまいことやってきた感じです。
司会者:そこから少し年齢を重ねていって、青春時代とか、今の道に入られる時にはいろいろと葛藤があられたと思うんです。青年時代なんかは、どういうふうに過ごされていたんでしょうか。自分自身で受け入れて、「こうだ」って表明されてたんですか?
ナジャ:自分が女っぽい所作をしてたり、オカマって周りから言われてるのはもちろんわかってましたけど、「恋愛対象が男の子なのかな?」というのがわかってきたのは高校生ぐらいからですね。
司会者:そうなんですね。
ナジャ:「男の子が好きなんだ」ってわかったのは高校時代です。やっぱり、高校生って一番多感な時期じゃないですか。それこそオカマっぽいから、その時に「いわゆるオカマじゃないの?」「男が好きなんじゃないの?」とかって言われたりもしたんです。
私は、高校でもそんなに嫌な気持ちにはならず。嫌な気持ちにならずというか、まともに受け取らなかったっていうか。子どもの時と一緒で、「そうなんです。それがあたしなんです」という感じで受け入れていて。
逆に、何か言われた時に妙に反応してしまうと、余計に周りはおもしろがるんですよ。だから、「こいつに『オカマ』とか『男が好きなんだろう』みたいなことを言っても、そんなに響かないんだな」って思わせてしまえば、周りはそんなに何も言わなくなる。
逆に友だちになってくれたというか、「変わってるけど、しゃべってみたらおもしろいやつだな」っていうので、女っぽいのを武器に、友だちはすごくいっぱいいましたね。
司会者:周りからはそういう目で見られてるんじゃないかなって思うと、どうしても言い返すのが難しくて、あえて自分で聞かなかったようにする姿勢がイメージされるんですが、ナジャさんは違ったわけですね。
ナジャ:そうですね。(何かを)言われたら、「うん、そうやけど。だから何が悪いの?」って。
私はそんな強く言い返すわけじゃないけど、当たり前のように「そうやねんけど。え、なんかおかしいかな?」みたいな感じで返していましたね。そうすると、そんなにみんながいじってこなくなるんですよ。
司会者:そうなんですね。自己肯定感みたいなものをすごく感じるんですが、ご自身に自信がなかったりすると、余計にネガティブなほうにいってしまうと思うんです。「私は私だ」というふうに、当時からそんなに強くいられるのは、どういう背景があるんですかね?
ナジャ:背景?
司会者:背景だったり、自分の考え方、大事にされていたものはあるんですか?
ナジャ:結局、「私はゲイなんだ。男が好きなんだ」というのを自分で受け止めているわけじゃないですか。無理して自分を変えるのも無理ですし、こんな人間として生まれたんだから、受け入れて生きていこうって自分の中で決めてたんだと思います。
司会者:なるほど。誰かに言われてじゃなくて、自分で決めたところがきっかけだったと。
ナジャ:自分で決めたというか、そこまで決意表明したわけじゃないですけど。今思うと、自然に流れる感じで、自分でできていた感じがありますね。
司会者:そうですか。
ナジャ:無理はしてないです。逆に、言い返して揉めるぐらいなら、「いや、そうやねん」というふうに認めて、「こんなふうに生まれたから、だからしゃあないやんか」っていう感じで受け止めてたと思う。
司会者:もちろん、言葉ではそういうふうに言ってるとはしても、今みたいにドラァグクイーンのように女装したりとか、当時はそういうところまではないと思うんですが、その後この道に向かわれたのはどんなタイミングだったんですか?
ナジャ:いわゆるドラァグクイーンとして花開いたというか、ゲイライフを楽しむというか。私は兵庫県の田舎で生まれて、それこそ「自分はゲイだ」って認めていたから、そんなに苦労やいじめみたいなのは感じなかったんです。
ただ、1つだけずーっと悩んでたのは、「世の中にあたしみたいな人間っているのかな? そんなに数がいないんじゃないかな?」って思ってた。
それはなんでかというと、当時テレビに出ている、いわゆるオネエタレントと言われる人たちって、おすぎとピーコさんとか美輪明宏さん、ピーターさん、カルーセル麻紀さんぐらいだったんです。
その時はおすぎとピーコさんがすごく(テレビに)出ていて、私の中では「おすぎ・ピーコ・あたし。もしかしたら世の中には、この3人しかオネエって言われる人はいないんじゃないか? そんな、すごく数少ない人間として生まれてきたんじゃないか?」って、ずっと思ってたんですよ。
司会者:なるほど。
ナジャ:それで、大学に合格して大阪に出てきて、とある本屋さんに行った時に、ゲイ雑誌を見つけたんですね。
そのゲイ雑誌を恐る恐る買いまして、開いてみると、文通欄っていうのがあって。まだ文通の時代ですよ。文通欄で出会いを求めているゲイの人たちが、いっぱいそこに文章を載せているわけ。
司会者:なるほど。
ナジャ:そこから私はいい人を選んで、何人かに手紙を送ってみて、それで大阪のとある場所で待ち合わせをしました。その人が「ゲイバーって大阪にいっぱいあるんだよ。行ったことある?」って言うから、「いや、ないです。初めてです」と言って、ゲイバーに連れて行ってもらいました。
ナジャ:カランカランってゲイバーに入った時に、すごい数のゲイの人たちがお酒を飲んでるわけですよ。しかも、イケメンがいっぱいいたんです。
そこで私は、「あ、よかった。いわゆるお仲間と言われる人たちが、こんなにたくさんいるんだ。しかも、男前いっぱいいるやんか」って、そこですごく花が開いた。
キラキラキラキラした世界に見えたんです。プラス、そんな中でも、お店の中の人たちはオネエ言葉を話していたり、お客さんもオネエ言葉を話していて、みんな一人称が「あたし」なんですよ。私は別に無理してたわけじゃなく、高校時代までは「俺」とか「僕」を使ってたんです。
司会者:そうですよね。
ナジャ:やっぱり、私はずっとそういうオネエ言葉を話したかったんでしょうね。ゲイバーに連れて行ってもらって、カランカランって入って、「いらっしゃい。どうぞ座って」って、そこでいろんなゲイの人と会話が始まるじゃないですか。何の練習もしてないのに、すぐにオネエ言葉をペラペラスラスラっと話せたんです。
その時に、「あ、たぶんここがあたしの居場所なんだ。この世界で生きていくんだな」って感じたというか、たぶんそうなるんだろうなと感じましたね。
司会者:なるほどね。狭いコミュニティで「自分がおかしいんじゃないか」と思っていたところが、こんなに仲間がいたんだという瞬間があったと。
ナジャ:本当に花開きました。そこから、どっぷりゲイライフを楽しみましたね。
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