2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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荒木博行氏(以下、荒木):「渦」ってすごく良い表現だなって思ったんですが、『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』で「手押し車の法則」というのがあって。要するに、「変革が手押し車である」という話なんです。
初めは重たくて動かないんですが、ずっと押し続けていると、ある瞬間回り始める。そうすると、自分の意思とは関係なく回り続ける。てんちょの話を聞いてると、まさに手押し車というか、回り始めている。それがまさに、渦のメタファーとすごく通じるなと感じました。
「動かないな」って思ってる大企業の社員もいっぱいいると思うんですが、それを押し続ける力もいただいたような気がします。
島田由香氏(以下、島田):そうですよね。この間、あるメタファーを思い出したんですよ。温泉に入ってる時に「あっ」て思ったんだけど、目の前にお湯があるじゃないですか。温泉の水面に、上から水蒸気の雫がポンって落ちたんですよね。
雫が落ちたら、そこから波紋が広がるじゃないですか。結局、流した涙や流した汗は、どんなに少量でも必ず良い意味で波紋を生むんですよ。だから、努力したことや泣いたことやかいた汗って、絶対にムダにならないなってすっごく思ったのね。
その雫にすごく勇気をもらったというか。ちょっとでもピッて雫を落とせば、ちゃんと広がっていく。いくつも落ちてきた時には、それぞれの波紋がちゃんとハーモニーになるんですよ。渦が一緒になるのもそうで、泣けばいいし、汗をかけばいいし、唾を飛ばせばいい。
それもちゃんと波紋になって、誰かの波紋とくっついたら、最後はすごくおっきな波紋になっていく。「これってすごいメタファーだな」と思って、温泉で1人でニヤニヤしてたんですよね。
荒木:怪しい(笑)。
島田:怪しい(笑)。それを今の話で思い出した。
荒木:でも、てんちょの人生もそういう感じですもんね。
井手直行氏(以下、井手):「押して、動くまでが重い」というのはまさにそうです。だけど、自分がやっていることが本当に大義があって、大事だと思って諦めなかったら、それを見ていた傍観者であるうちのスタッフが「私も共感して一緒に押します」と言ってくれるので、2人で押してみる。
がんばって押していると、「私もそれが大事だと思います」って3人になって、5人になって、動き出したらみんなで「俺も押す」みたいな。もう、これの繰り返しですよ。私もそうだし、いろいろ相談に乗って、いろんな大企業の方たちに同じような話をしたら、「本当にそういうことが起こっています」と言ってます。
最初の重いところで諦めない。誰かが必ず見ているし、直属の上司に潰されたとしても、方向性が合っていれば新しいチャレンジをしてほしい。
経営者はみんなそう思っているから、上司を飛び越えて、さらに上役、その人もだめならさらに上役、それでダメならトップに言う。トップがダメだったら、その会社にはいないほうがいいよと、そんな話をしています。
副業とか転職とか、それも本当に共感するけど、その前にそれぐらいやってから辞めてもぜんぜんいいんですよ。だって、大企業とかも含めた他の企業の社長さんで、「チャレンジしてほしい」と思っていない経営者は1人もいないわけです。
どっかでそれが狂っているか、伝わっていないわけなので、最後にトップに行ってダメなら、トップがダメだから辞めたほうが良いと(笑)。そう思います。
荒木:そろそろまとめの時間に入りたいと思うんですが、お互いに「こんなことを感じた」とか「やっぱりこれだな」というところを語り合って、クロージングにしたいと思います。
僕が今回のセッションで一番学んだのは、テクニカルな話云々の前に、その人の見方を変えなきゃ変わらない。逆に言うと、それが変わればすべて変わっていく。
組織の中にいると、記号的な人の見方をしちゃうことってあるんですよね。「この人は管理職何級」「何部で評価が高い」とか。肩書や役職だったりを見て判断してしまうので、「その人」を見てないんですよね。記号情報がすごく強いことってあるんですが、「それをやっていたら変わらない」ということでもあるわけです。
だから、てんちょが何をやっているのかわからなくても、「人として、この人はどんな人なんだろう?」という人間観そのものが、空気を変えていくというか、行動を変えていくんだと今回の学びとして感じました。由香さん、どんなセッションでしたか。
島田:おもしろかった。ありがとうございます。いろんな示唆をもらったのと、お二人が使われたいろんなメタファー、事例がとっても響いたなと思っていて。
やっぱり、どんな言葉を使うかが大事かなと思うんですよね。役職の話もあったけど、今でもまだ組織の中で「○○部長」って呼ぶとか、人事部長さまって言う。好きでやってるのかはわからないけど、言ってたらそうなっていっちゃうんですよね。
荒木:確かに。
島田:さっき荒木さんがおっしゃったみたいに、同じ人なんて1人もいなくて、一人ひとり全員違うわけです。十把一絡げに、例えば「マーケティングは」「人事は」って言っちゃうところを少し意識して、誰しもが一人ひとりと向き合いながら、相手を大事にできるのかどうかなんだろうなと、あらためて思いました。
最初に私は「学習性無力感」と言ったので、相対する言葉として、終わりに「学習性楽観主義」という言葉を残して去ろうと思います。去らないけど(笑)。
「学習性無力感」に対して、「学習性楽観主義」が対極の状況にあるわけです。「学習性」なので、学んで繰り返していきます。前を向いていくとか、組織が前向きに考えていく状態になっていくと、どんどん良いサイクルが回っていくんですよね。
たぶんてんちょの会社は、もうそういうふうになっていると思う。気づいてほしいのが、無力感の時は感覚なんですよ。でも、楽観主義っていうのは「主義」だから、姿勢とか考え方なんですね。
荒木:なるほどね。ということは、自分で選ぶことができるんですよ。「決める」という感じです。「ポジティブである」と決めるとか、「前を向く」と決めるとか、「幸せである」と決めるっていう感じですよね。
島田:自分でコントロールできると思うから、さっきの手押し車もそうだし、渦もそうだし、波紋もそうだし、みんなでやり合っていけば良いようにぐるぐる回ってくのかなと思います。
荒木:ありがとうございます。てんちょはいかがでしょう?
井手:とても楽しい時間をありがとうございました。由香さんとこういう対談をすると、だいたいこういう人系の話が多いんです。私はチームビルディングの勉強は大好きなのでしているんですが、それ以外の人事系のことはそんなに知らないんですよ。
由香さんはやっぱりすごい。組織も作りながら、専門知識がすごい。由香さんが言っていることはすごく共感するし、僕が言うことにも「そうだよね」なんて言ってくれて。なんとなくわかってることを、由香さんが専門的に解説してくれる。
島田:前もその話、したよね(笑)。
井手:それそれ。「世の中的にそういう整理がされていたり、そんなふうに唱えられてるんだ」というのを毎回教わって、勉強になっています。専門の方たちが見ても、我々がやってることは体系的に良いほうの部類の活動をしてるんだなと思って、自信にもなるし、勉強にもなる。
あと、荒木さんが、僕がいろいろ言ってるのを「人として見てるんですね」という切り口で整理してもらうと、「確かにそうだ」と思えました。その人のことを役職とかで見るのではなく、人として見るというのは、あらためて教えてもらいました。
「人として見ること」というのは、今後も使わせてもらいたいと思いました。すごく楽しく、勉強になりました。ありがとうございました。
島田:ありがとうございます。
荒木:それでは、本セッションは終了としたいと思います。最後までお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。
井手・島田:ありがとうございました。
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