2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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上前知洋氏(以下、上前):今日はお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。それではここからは、私と岩田さんと渡邉さんと一緒に進めていきたいと思っております。
このウェビナーは「経営視点で検討するワーケーションPROS&CONS 」という全4回のシリーズでお伝えしておりまして、今日は3回目です。初めてご参加の方もいらっしゃいますから、趣旨を簡単にご説明させていただきます。
ここ数年で働き方が大きく変わってきました。みなさんご承知のとおりかと思いますが、在宅ワークやリモートワークが働き方の選択肢の1つになってきています。
その延長線上にある「ワーケーション」という言葉も、みなさん大変興味深く聞いていらっしゃるかと思います。あるいは実施された方、検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかしながら「ワーケーション」というものが、どうしてもバケーションの文脈で使われることが過去数年あったかと思います。
そうなると、なかなか会社では容認できない。特に経営、あるいは労務といった視点から見ると、「実現はなかなかハードルが高いぞ」という声も聞くようになりました。
上前:そのような状況の中、私たち立科町はしっかりと仕事をするために、私、岩田さん、渡邉さんのバーチャル背景にある女神湖、白樺高原の周辺のペンション・ホテルを仕事場として提供して、がっつりと仕事をしていただく「立科WORKTRIP」という事業を展開して、多くの企業さまにお使いいただいております。
キラキラしたイメージで語られるワーケーション。一方ではそれもけっこうなんですが、それとは違う文脈で「会社の成果を上げてもらう」「事業の成果を上げてもらう」というところから、オフサイトミーティング・開発合宿等も含めて、ワーケーションを広く普及させていきたい。
そういう思いで、人事や労務、あるいは経理といった方が、これからワーケーションを企画・実施した際に整理しておくべきことをみなさまにお伝えさせていただくために、有識者の方々をお迎えしてこのウェビナーを開催しています。
今日は3回目の開催になりますが、第1回目は「企業のエンゲージメントを向上させるための戦略としてのワーケーション」というお話を、岩田さんにしていただきました。そして2回目はワーケーションの目的設定、あるいはその成果をどのように設定しようかという話を、今日と同じメンバーでさせていただきました。
過去2回の様子は、YouTubeの『立科worktrip』チャンネルで配信していますので、またお時間がある際にはご覧いただければと思います。
上前:それでは、本日ウェビナーのスピーカーであるお二人からお声を頂戴したいと思っております。まずは岩田さんから、簡単な自己紹介をお願いします。
岩田佑介氏(以下、岩田):あらためまして、社会保険労務士の岩田でございます。簡単に自己紹介と取り組みの紹介をさせていただきます。
私はもともと人材会社で地方創生の仕事をしておりました。ワーケーションとも関係しますが、「関係人口をどうやって増やしていくのか?」「その地域の産業をどう作っていくのか?」ということをやっておりました。
そのあとは事業会社の人事に移って、まだワーケーションは黎明期だったんですが、リモートワークの制度や兼業制度を作ったりしておりました。今は労務のご支援をしています。
今日に関係するお話でいくと、事業会社にいた時に、次回このイベントに登壇されるJALの東原(祥匡)さんのワーケーションに関するセミナーに参加した労務担当者から、「岩田さん。これからワーケーションが流行るらしいですよ。うちも制度化しませんか?」と言われました。
黎明期だったので、ワーケーションをまったく知らなかった当時の私は「これって労務はどうなるのかな?」「課税処理はどうなるのかな?」「遊びじゃないの?」と、反対してしまいました。その当時からやっていれば、もしかしたらJALに続く代表企業になっていたかもしれないのですが(笑)。
私がハードルになってしまったことがあって、大後悔しております。「むしろワーケーションを反対していた立場の方が、どういう気持ちで反対するんだろうか?」ということも織り交ぜながらお話しします。
岩田:今日集まっている方はワーケーションを推進したい方だと思いますので、頭の固い当時の私のような方に、どうやって説明してワーケーションを制度化していくのかを今日は説明できたらと思っております。
関連するところですと、2022年から観光庁のワーケーション関係のアドバイザーをさせていただいており、ここにも労務のご相談が非常に多く寄せられます。渡邉さんも非常に多くの事例をお持ちですので、「どんなご相談が多いか?」というところも2人でお話しできたらと思っております。
当時ワーケーションに反対していた私が今はどんな感じかというと、月に2~3回ワーケーションを楽しみ、効果や意義を非常に感じていて、本当にライフワークになっています。今月は京都、三重、名古屋、大阪、熊本とワーケーションをしていこうと思っています。このような活動をしている人間でございます。
今は各地域の方と、企業向けのワーケーションに関して稟議を通すためのホワイトペーパーを作る仕事もさせていただいております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
上前:よろしくお願いいたします。大変実感のこもったお話を頂戴しまして、ありがとうございます(笑)。まさか岩田さん自身がハードルだったとは、という感じです。
岩田:はい、大反省ですね(笑)。
上前:なので、とても実感がこもりますよね。どういった思考のプロセスがあったかも今日は共有できればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
岩田:よろしくお願いします。
上前:では次に渡邉さんからも、自己紹介と簡単な立科町の取り組みのご説明をお願いいたします。
渡邉岳志氏(以下、渡邉)渡邉です。自己紹介の順番に悪意があるんじゃないかというくらい自分の自己紹介は薄っぺらなんですが、信州たてしな観光協会に所属していて、日本ワーケーション協会の公認ワーケーションコンシェルジュも拝命しております。
さっきから「立科町」と言っているんですが、場所は(スライドを指して)長野県のだいたいこのあたりです。
東信(東信州)と呼ばれる右側の地域で、軽井沢から車で1時間くらいのところです。東京、名古屋、関西方面からアクセスしやすい場所に位置しています。
簡単に説明すると、当地でワーケーションというと「オフサイトミーティング」と「開発合宿」がほぼ9割になるくらい、偏った受け入れをしています。
ワーク多め・バケーション少なめと、キラキラした要素はあまりなく、ガツガツ仕事をするような「ワークマシマシ」のワーケーションをご提案させていただいています。
渡邉:これは、実際に受け入れさせていただいている方々のタイムスケジュールです。2泊3日なんですが、ほぼ仕事をしていますね。乗馬とかカヌーとか、そういうものは一切入っていません。
100社いれば100通りのワーケーションがあると思っていますので、ご希望をうまくプランに落とし込んでいく調整役・現地コーディネーターとして、いろいろお受けしています。いったんこのくらいで自己紹介を終わらせていただきます。
上前:ありがとうございます。ちなみに2022年度、だいたいどのくらいの数の企業さんがお越しになっているか、簡単に数だけでもいいのでご紹介いただけますか?
渡邉:個人のワーケーションや家族連れのワーケーションとかを抜いて、開発合宿やオフサイトミーティングだけ抽出すると、半年くらいのデータで31組・約330名さまに来ていただいています。
上前:ありがとうございます。なので、ワーケーションの実績はそれなりに出てきているところかなと思っております。またそういった事例もご報告いただければと思います。
上前:ではさっそく、今回のテーマ「ワーケーション推進のハードルをどう乗り越えるか」に対して、お二人にうかがっていきます。テーマがとても大きいので、まずは具体的にこんなトピックを用意いたしました。テーマを3つ設けています。
まず1つ目のトピックとして「業務規則をどう整えるか?」。規則がない中でどうやってワーケーションができるのか、ワーケーションするためにはまず規則を作らなきゃいけないのか、とか。そこは一番始めにひっかかるハードルかなと思いますので、まずは岩田先生にお教えいただきたいところです。
それから2つ目です。「実際にワーケーションを実施してみましょう」となった際に、法務や労務のリスクをどのように管理すればいいのか。要するに、(法務・労務のリスクに対して)どのように整備しておけばいいのかという点についても、ご教授いただこうと思います。
最後に経費負担について、「どのような整理をすればいいのか?」というのをご教授いただくかたちで、今日のウェビナーを進めていきたいと思っております。おそらくこの3つがご参加のみなさまが疑問に思う点かな? というところで、まとめました。
これから話を進めていく中で、他に聞いてみたいことや、具体的に「ここをもうちょっと掘ってほしい」というところがありましたら、チャットに投げていただければ拾いたいと思っております。
上前:それではさっそく3点について、岩田先生からざっとご説明いただきたいなと思います。
岩田:では私から、「ワーケーションのハードルになりがちな『労務リスク』を正しく理解する」というテーマでお話しさせていただきます。こういうタイトルをつけると「リスクがありそう」というふうに見えてしまうので、ちょっと間違えたなと思ったんですが(笑)。
今日一番お伝えしたい結論は、「労務、法務、税務を『ワーケーションをやらない言い訳』にするのをやめましょう」というメッセージです。
冒頭に申し上げたように、当時の私も「労務ってどう考えたらいいの? 面倒くさい」「課税は人事ではわからないから、経理と調整しなきゃいけないな。面倒くさいな」「法務部にも規程を作るのに、『ちゃんと決まっていない時に規程を作って大丈夫なんですか?』と言われたらどう答えようかな」とか。
まだワーケーションに腹落ちしていない管理部門から、「それは面倒くさいし、リスクがあるのでやめてください」と言われてしまう。
たぶんこういうケースが、人事系とか管理系じゃない方が「ワーケーションを推進したい」という時に出会うハードルだと思います。
それから「管理部門もやりたいと思っているんだけれども、具体的にどういうリスクがあるかわからなくてまだ手がつけられていない」という2パターンがあると思いますので、「実はそんなにハードルが高くないですよ」ということをお伝えできたらなと思っております。
岩田:こちらは経団連さんの「企業向けワーケーション導入ガイド」です。まず特筆すべきは、経団連がワーケーションを推進しているところです。そこを大きな武器にしていただけたらと思っています。
経団連さんのワーケーション導入ガイドでは、いろんな大手企業の事例やワーケーション規程の案まで載っています。経団連の名前は非常に大きいので、これからワーケーションを推進していきたい方は、このガイドを「経団連も推進しているんですよ」と経営層に説明するための武器にしていただきたいなと思います。
これはワーケーション導入ガイドの中身です。まず最初のトピックとして、1つ目の「規程」というテーマでご説明しますが、「まずは出張規程だけやれば大丈夫ですよ」というのが端的にお伝えしたいところです。
さらにそこから、いろんなパターンやいろいろなことを決めていかなきゃいけないとなった場合は、ここに書いてあるようにまずは「テレワーク規程を作っていこうかな」とか。
例えば業務の出張ではなく、「どこどこで働きたい」という完全に個人の休暇型のワーケーションをやる場合はワーケーション規定があったほうがいいのですが、特に出張命令で行く立科WORKTRIPのような企業型ワーケーションであれば、出張規程で足りないところを見ておくぐらいでOKです。
岩田:規程を作ろうと思ったら、いろいろと細かいことが決まっていないと作れないんですね。おすすめは、「まずはトライアルでワーケーションをやります」と言っちゃうことです。
リスクとか、何を決めなきゃいけないのかがわからないので、まずは出張規程だけを使ったトライアルでやってみる。「あ、これも決めなきゃいけない」となったら、テレワーク規程やワーケーション規程に盛り込む、というプロセスでいいと思っています。「最初は出張規程がちゃんとあれば十分」というのが、規定のポイントです。
次に「労務」です。大きくは労働時間管理なんですが、ワーケーションをやろうと考えている企業さんのほとんどは、コロナ禍でリモートワークや在宅勤務をやっていると思います。それとほぼ同じだとご認識いただければ大丈夫です。「どこで働いていようが労働時間はちゃんと管理する」ということをやっていただければ大丈夫です。
ただし一部レジャーの時間とか、ワーケーション先で「ワークがメインなんだけれどもバケーションが入る」という場合には、労働時間かどうかをちゃんと取り決めることが必要となりますが、基本的にはリモートワークをやっているのと一緒です。
中抜け時間があるのであれば、在宅勤務の時も抜いていると思います。レジャーを完全に業務じゃないと整理するのであれば、ワーケーション先でも抜いて管理すればいいです。
岩田:一方で「やっぱり制度としてあったほうがいいよね」というのは、フレックスタイム制です。労働時間の管理の観点でも、フレックスタイムを導入しておくとやりやすいかなと思っています。
特に最近多いのは「コアタイム無しのフレックス」です。フレックスタイムは、働く方が「何時から何時まで働きます」と決めてもいいんですが、「必ずこの時間(コアタイム)は働いてくださいね」と企業が定めることができます。ただ、最近ではコアタイムなしにされている企業も増えています。
そうすると「何時から仕事をして、何時に終わってもいい」ということになりますので、ワーケーションとも非常に相性がいいです。
「労働時間はどうするの?」と管理や法務の方に言われても、「いや、うちはリモートワークしているので一緒ですよね」とご回答いただければ、「確かにね」となってきます。
岩田:「ワーケーションを厚生労働省はどう捉えているの?」と感じる人事系の方がいらっしゃった場合は、「(厚生労働省の)『テレワークガイドライン』にワーケーションと書いていますよ」と言っていただければいいと思います。
「テレワークガイドライン」では、実はワーケーションについても「テレワークの一種である」と明確に書いてありますから、何か奇をてらった特殊なことをやろうとしているわけではありません。
観光庁だけが認めているわけではなく、厚生労働省にも認めていただいているので、特に気負う必要はないと思います。
さっきも申し上げたように、規程は細かいことを決めなきゃいけないので、「まずはトライアルを」と言っていただいて、「いろいろなリスクとかデメリットが見えてきたら規程を作る」でいいのかなと思います。
時間単位年休は細かいので割愛します。ご興味のある方は、こちら(厚生労働省の「テレワークガイドライン」)を読んでください。
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